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セクハラ処分厳格化、働き手の意識改革が急務

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最高裁、セクハラ発言に対する懲戒処分は妥当と判断

セクハラ処分厳格化、働き手の意識改革が急務

言葉によるセクシュアル・ハラスメントを繰り返した社員に対する会社の懲戒処分の有効性が争われた訴訟で、先月、最高裁は「会社の懲戒処分は妥当」とする判断を下しました。

部下である女性社員に対し、上司である男性社員によって繰り返し行われたセクハラ発言。それを理由とした会社側の出勤停止及び降格処分について、処分を受けた男性社員が無効確認を求めていた事案です。

セクハラ発言に対する処分の妥当性が、最高裁まで争われ注目された今回の判決。そのポイントを見ていきましょう。

事前警告なしの懲戒処分であっても懲戒権の濫用には当たらず有効

もともと二審の大阪高裁では、男性社員が懲戒処分を受ける前段階として、セクハラ発言に対して会社から事前の注意・警告が無かったことが考慮され、出勤停止や降格処分は無効と判断されました。懲戒処分の有効性を判断する際、過去の判例においても「処分に至るまでの適正な手続き」が要件の一つとされています。二審においては、事前の注意・警告がなされなかったことにより、手続きの適正さを欠いた懲戒処分と見なされたのでしょう。

しかしながら、最高裁においては、この二審の判断が覆されました。本事案では、セクハラ発言の多くが第三者のいない状況で行われていたため、会社はその事実を把握できず、男性社員に対する注意・警告の機会も無かったとしています。そして、このような状況下であるならば、事前の注意・警告が無く行われた処分であっても懲戒権の濫用には当たらず、有効なものとされたのです。

「相手が嫌がっているとは思わなかった」は通用せず

もう一つのポイントは、女性社員からセクハラ発言に対する明確な拒否の姿勢が無く、言動が許されていると誤解していた点について、懲戒処分の妥当性を判断する上でどのように取り扱うかということ。二審においては、この点が男性社員にとって有利に考慮され、出勤停止処分は重すぎるという懲戒無効の判断につながることになります。

一方、最高裁では、この二審の判断についても認めず、セクハラ発言が許容されているという誤解があったことが、加害者を有利に導くことは適当でないとしています。職場でセクハラ行為を受けた場合、内心では不快感や屈辱感を抱きつつも、人間関係の悪化や報復を懸念して、加害者に対する抗議や会社に対する被害の訴えを躊躇してしまうことは容易に想像できます。このようなセクハラ被害の実情が勘案された判断であり、最高裁は、「相手が嫌がっているとは思わなかった」は通用しないと明確に示したと言えるでしょう。

セクハラ問題の本質は個々の働き手の意識にある

職場におけるセクハラの問題を考えるとき、私たちは企業や職場という単位で捉えてしまいがちです。男女雇用機会均等法においても、企業に対してセクハラ防止措置を義務づけており、企業にはさらなる取り組みが期待されます。ただ、セクハラは個人が個人に対して行う性的言動による嫌がらせであり、問題の本質は企業で働く個々の人間にあることを認識しなければなりません。

セクハラ行為は、自分の言動が相手にどのような影響を及ぼすかという想像力の欠如から生まれるものです。同じ言動であっても、当然ながら人により受け止め方も違います。人間性や価値観の違いを認め、相手に思いを馳せること。このような少しの意識改革が、私たち働き手ひとりひとりに求められているのではないでしょうか。

障がい者雇用・在宅勤務制度に強い社会保険労務士

佐々木淳行さん(リブレ社会保険労務コンサルティング)

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