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百年読み継がれる名作。夏目漱石「こころ」
夏目漱石の「こころ」が発表、刊行されたのは大正3年、1914年のことですから、来年で満百年になります。文字通り、百年間読み継がれている名作です。
上・中・下の三部構成となっているこの作品で、最もよく知られているのは、「下 先生と遺書」の骨格的な部分、「先生」(「下」では「私」)がお嬢さん(のちの「妻(さい)」)への恋のために、親友である「K」を裏切り、その結果「K」が自死するくだりでしょう。「なぜ『K』は自死したのか?」。これは現在、高校二、三年生用の現代文の教科書に掲載されている関係で、多くの高校生が一度は考える疑問ではないでしょうか。
教科書には、このくだりだけが掲載されているため仕方のないところではありますが、これだけで「こころ」に関する考察を終わりにしてほしくないということが率直な願いです。「K」が失恋して自死を選んだ、あるいは唯一心をゆるせる親友に裏切られ、生きるのぞみを失った「物語」。そのようにだけとらえたのでは、この作品の深さや魅力を理解したとは言えないからです。
「先生」は、「K」を出し抜いただけでなく、最後には自分をこの世でただ一人愛し、頼り、信じている「妻」をも裏切って、自死の道を選びます。かつて自分が犯した過ち(「K」を裏切ったこと)を「妻」に打ち明け、懺悔した上で、ともに手を取り合って生きることを「妻」も望んでいるであろうと承知していながら、「妻」の記憶を純白なものに保っておきたいという、他者には受け入れられそうにない、独りよがりな理由で、「妻」を残して自死してゆく。その心情を、若い「私」(「上」、「中」で「先生」を慕う主体)に書き遺すという形で、作品は終わります。
「こころ」が描く「人間のエゴイズム」とは?
昔からこの作品は、「エゴイズム=我執」をテーマにしたものと言われています。何が「我執」なのかと言えば、「K」を出し抜いたことよりも、「妻」を一人残して自死してしまう、その「先生」の心理こそがそうなのだと考えています。そして、「人はたった一人で淋(さむ)しくって仕方がない」という心境、そこに思い至ることができれば、この大作を読む労苦に値するものが得られるだろうと、考える次第です。
教科書でしかこの作品を読まなかった人はもちろん、通しで読んだ人もまた、こうした機会にこの作品を読んでほしいと思います。年を経て読むと、改めて違ったものが見えて来る。そんなところに長く読み継がれる名作の魅力の一端があるのではないでしょうか。
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