リニア着工で試される「まちづくり構想力」
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リニア、平成39年に開業へ。沿線の地域で期待が膨らむ
平成39年に開業を目指すリニア中央新幹線(以下リニア)。東京-名古屋間を最速40分で結ぶとされています。そして、リニアの沿線では、地域やまちづくりに与える影響が期待されています。
リニア事業に限ったことではありませんが、大型建設事業には工事中と完成後の2段階で地域に大きな経済効果が発生します。前者では、用地買収や建設工事に伴う資材の取り扱い、建設関係者が落とす宿泊費や飲食費など直接的な効果がもたらされます。しかし、これらは工事が終了するとともに、すべてが無くなってしまいます。この経済的効果は、開業するまでの平成39年までの時限的なものです。
新幹線の駅周辺開発が必ずしも地域活性化に寄与したとは言えない
そして、開業後には東京との時間距離が短くなることによって効果が得られます。そのためには建設中の段階から、同時にその準備を行っておくことが大切です。昭和30~40年代の大型公共事業であれば、国や事業者がそれなりの地域活性化策を提示し、地域活性化という名目でほとんどの事業費を手当てしてくれました。しかし、今はそのようなことを期待することは難しくなっています。
また、行政や事業者がそれなりの支援をしてくれた時代でも、新幹線の駅周辺開発が必ずしも地域の活性化やまちづくりに寄与したとは言えません。期待はずれの事例も数多くみることができます。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
リニア効果を最大に生かすには、地域の未来予想図を描くこと
それは、新幹線駅を地域が本当に必要とするさまざまな機能の一つに割り当てることができたのかどうかにつきます。ただ、受け身に徹していると、駅周辺に時間貸しの駐車場ばかりが目立ってしまうということになります。リニアによるまちづくりの効果を最大に生かすために、その地域の未来予想図という設計図を描くことができるかという地域の構想力が試されているといえます。
その際に留意しないといけないのは東京から多くの人たちが押し寄せるという幻想です。実際は、東京という巨大経済都市に吸収されるだけに終わる可能性が高くなります。リニアは国土計画レベルの事業のため、まちづくりなどのコミュニティレベルの計画は慎重に準備を行わないと取り込まれてしまうことを念頭に置いておくことが必要です。
リニア開通後の在来の東海道新幹線をいかに活用するかにヒントが
例として、名古屋駅周辺の地域での影響を考えてみましょう。名古屋は先ほどの国土計画レベルで見ると、名古屋経済圏にとっては大きなプラスとなることでしょう。しかし、その周辺都市や地域がその恩恵を享受するには先ほどのリニア沿線地域と同様、地域の構想力が試されることになります。ただ、リニア沿線との違いは、リニア開通後の在来の東海道新幹線をいかに活用するかということにヒントが隠されているといえます。
リニアが大阪まで開通してからが本格化すると想定されますが、東海道新幹線の旅客がリニアにシフトすることで、東海道新幹線の役割が旅客だけでなく貨物も視野に入ってくることが考えられます。東海道新幹線に貨物専用列車が運用されるようになると、モノの移動も可能となるため東京でなくても稼働できる部門のオフィス移転などに拍車が掛かることになるでしょう。その受け皿として、まちづくりと連動できる地域の未来予想図を描いてみても良いかもしれません。
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