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岸井謙児

カウンセリング歴35年、経験と信頼のカウンセリングのプロ

岸井謙児(きしいけんじ) / 臨床心理士

カウンセリング・オフィス岸井

コラム

視力を失った軍人の「強さ」と「もろさ」を描いた作品「セント オブ ウーマン」

2016年9月22日

テーマ:「こころ」を描いたこんな映画

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

今回紹介するDVDはこれ



「セント オブ ウーマン  夢の香り」です。パラリンピックで障害者に注目を浴びたからというわけではないのですが、この映画はアル・パッチーノが視覚障害を負って退役した元中佐で、口の悪い人癖も二癖もあるオヤジさんを演じています。障害と言っても先天性のものもあれば、後天性のものもあります。このオヤジさんの場合、軍人で活躍していた時に酒に酔っぱらって仲間と手りゅう弾でお手玉をして遊んでいて、暴発させて視力を失ったという設定ですから、後天性の障害ですね。

ストーリーは一見、破天荒でエネルギーあふれる盲目の退役軍人スレイドの介助のバイトに応じた高校生チャーリーがスレイドに振り回されながらも彼と行動を共にしていくうちに、不思議な友情を感じていきます。このあたりのスレイド役のアル・パッチーの演技は引き込まれます。しかし実はスレイドは後天的に視力を失ったことで、暗闇にし買い生きられない自分の存在価値や将来に絶望をしていて、一見破天荒な言動はその絶望感の裏返しだったのです。

障害を受け入れられずに、自分自身を否定して自殺を図るスレイド。チャーリーはその計画を打ち明けられ、自殺寸前の場面に直面しながらも、冷静にスレイドを落ち着かせて行きます。同時にチャーリー自身の抱えた問題についてはスレイドがそのサポートをして乗り越えていくことに。

後天的に自分の能力を失った場合、多くの場合「対象喪失」というパターンで示される経過を乗り越えることになると言われます。もちろん人によって個人差はありますが、ごく一般的に言えば「否認」⇒「抗議」⇒「絶望」⇒「受け入れ」⇒「立ち直り」と言うものです(他にもいくつかのパターンが指摘されることもありますが・・・)。このスレイドの場合は「絶望」の段階だったのでしょう。その様子をアル・パッチーノが鬼気迫る演技で表現してくれました。

そして今回は何とか危機を乗り越えたようですが、実際のところこういうパターンは人生の中で、何度も繰り返し何度も立ち向かうことになるのだろうと思います。パラリンピックが終わりましたが、彼らも大会が終わったら、また日常生活に戻らなければいけません。しかし再び悩み苦しむ日々があったとしても、一度乗り越えたという体験と自信は必ずその時の自分の支えと希望になるだろうと思います。

「障害」を中心にして感想を書いてきましたが、「身体」「や「精神」の障害だけでなく、日常生活すべてにわたって私たちは自分の思うように行かない場面に出くわします。そんなとき過去の自分が苦しみに打ち勝った体験や、あるいは自分自身ではないけれど、障害を負った方々があれほどまでに自分の可能性に挑戦するパラリンピックの映像を心に刻むことで、「あきらめなければ、きっとなんとかなる!」「自分はやれる!自分を信じよう!」と言う希望が芽生えることにつながるのだ、と私は感じました。

◇◆◇  合わせて読みたい  ◇◆◇
映画「博士と彼女のセオリー」:一人の人間、ホーキング博士を描いた作品
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