自閉症の青年を草なぎ剛が演じたドラマ「僕の歩く道」
この映画は何度見ても、本当に涙が出てきます。
と言っても感動の涙とか、哀しみの涙ではありません。そうではなく「よくぞ、ここまで障害とともに生きる人たちとその親の生き様をリアルに描いてくれたものだ!」という感謝の涙です。
監督のシュエ・シャオルーさんについて
私は仕事柄、障害とともに生きる子どもたちやその親御さんと関わることが多くあります。
もちろんそれは第3者として関わるだけであり、実際に私の子どもが障害とともに生きているというわけではないので、あくまでも間接的な経験でしかないのですが、それでもこの映画を見ると監督のシュエ・シャオルーさんの実にリアルで真正面から見つめるまなざしを感じてしまうのです。
それもそのはずシュエ・シャオルー監督は北京大学在学中から14年にわたって自閉症の人たちへのボランティア活動を続けていると言う方なのです。
そしてその監督の書いた脚本に感動したカンフー映画で有名なジェット・リーさんが、父親役をノー・ギャラで引き受けてくれ、さらにわが日本の久石譲さんが音楽を担当されています。
“平凡にして偉大なるすべての父と母へ”
ストーリーはネタばれしない程度でいえば、知的障害と自閉症の重複障害とともに生きる主人公、大福(ターフー)とその父親の心誠(シンチョン)との親子愛と現実の厳しさを軸に展開します。
最初のカットが、海の上に浮かぶ二人が足にロープを結びつけ、その先には錘を結びつけるところから始まります。しかしその心中は失敗に終わり、そこから二人の現実の生活が展開していきます。
父親のシンチョンは末期がんで死を覚悟せざるを得なくなり、残された息子のこれからをどうすれば良いのか、いろいろ手を尽くすのですが、なかなか受け入れてくれる施設も見つかりません。
自分の死後も生きていかなければならない息子が少しでも自立した生活ができるように、お金の使い方やバスの乗り降りの方法、簡単な食事の作り方、仕事の技術等々を愛情をこめてしかし厳しく教えていくのです。
このあたりの情景が、障害とともに生きる子どもたちとその親の切実なこころをそのまま引き写しています。そして当然のことながら、大人になったタイフーの恋愛感情も織り成して、一人の人間として生きていくさまざまな情景を誠実なまなざしで描いてくれます。
最初に私は「障害とともに生きる人たちとその親の生き様をリアルに描いてくれた」と書きましたが、ドキュメンタリーではないので、当然リアルさだけでなく、ファンタジーの要素もたくさんあり、そのブレンド具合が絶妙、と言う印象を受けました。
もしよろしければ一度ごらんになって下さい。
最後にこの映画のエンディングにはこういう文章が書かれていました。
“平凡にして偉大なるすべての父と母へ”