自閉症に対する無理解が引き起こした悲劇 「彼女の名はサビーヌ」
カウンセリングの中で使われる言葉に「HERE&NOW」という言葉があります。
つまり「今、ここで」の感情を大切にしましょう、という意味です。
私たちは、なかなか「今、ここで」感じていることを表現することに戸惑いを感じてしまいます。こんなことを言ったらどう思われるだろう、とか、こんな感じ方は私のわがままではないか、とか。そういう風に今、ここでの正直な自分の思いを表現できないことが、いろいろな困惑を生み出すことにつながっていることが多い、ということでしょう。
ところが発達障害と呼ばれる子供たちと接していると、全く逆のことを感じてしまうことがあります。つまり
彼らは「今、ここ」でしか生きられないのではないか、と。
「いま、ここで」しか生きられないから、過去の経験や反省がなかなか教訓として生かされない。だから何度も同じようなことを繰り返してしまう。ただ、決して過去の反省はうそではないのです。なぜなら、その時は本当に心から「今、ここで」の感情に従っているのだから。しかし現時点では、それが「かつて、そこで」になってしまってる。
また未来を見通して今の自分をコントロールすることも苦手です。
なぜなら未来の目標は、「いつか、そこで」のことであり、現時点での「今、ここ」とはつながっていないからです。
ですから、彼らに「何度いったらわかるんだ!」とか「もう少し状況を見て考えろ」というような叱責はあまり効果的ではありませんね。やはり繰り返し、「今、ここで」その行動はふさわしくない、ということを伝え続けることが大切ではないでしょうか。
なかなか、根気の要る指導ですが、そういう彼らでも必ず成長・発達を遂げてくれることを信じて伝え続けることが必要な気がしています。
「今、ここ」の気持ちを表現できない辛さと、「今、ここ」でしか生きられない辛さ、それはどちらも大変だと思いますね。
いかがでしょうか?