風俗・パパ活相手から妊娠を理由に金銭請求された|認知・養育費の考え方

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 性風俗やパパ活で関係を持った相手から、ある日突然「妊娠した。認知して」「養育費を払って」、あるいは「妊娠したから慰謝料・示談金を払え」と連絡が来る。そんな相談は少なくありません。

 強い言葉で迫られると、その場で慌ててお金を渡してしまったり、勢いで「認知する」と口にしてしまったりしがちです。しかし、いったん認めた発言や一度の支払いは、後から覆すことが難しくなります。まずは冷静に、法的な整理をしておくことが大切です。

 この記事では、性風俗を利用する男性が「妊娠を理由に金銭を請求された」ときに知っておきたい、認知と養育費の基本的な考え方と、慌てて動く前の初動を、客側の立場から整理します。

「請求された」ことと「支払義務がある」ことは別

 大前提として、金銭を請求されたこと自体は、支払義務があることを意味しません。請求は誰でも自由にできますが、実際に払う義務が生じるかどうかは、法的な根拠があるかどうかで決まります。

 風俗・パパ活の場面で「妊娠を理由に」される請求は、性質の異なるものが混ざりがちです。大きく分けると、①認知にもとづく養育費、②中絶費用や出産費用など妊娠に伴う費用、③慰謝料や「示談金」といった名目の請求、の3種類です。それぞれ法的な位置づけが違うため、「まとめていくら」と言われても、中身を分けて考える必要があります。

養育費の出発点は「認知」

 婚姻関係のない男女(交際・パパ活・風俗の客と相手など)の間に生まれた子については、認知によって法律上の父子関係が生じて初めて、父としての扶養義務(民法877条)が発生し、養育費の問題になります。認知には、父が自ら届け出る任意認知(民法779条)などがあります。

 裏を返すと、認知をしていない段階では、法律上の父子関係が確定していないため、法的な養育費の支払義務は生じないのが原則です。相手が「あなたの子だから払って」と言うだけでは、それだけで義務が確定するわけではありません。

 ただし、「認知しなければ払わなくてよい」と単純に考えるのは危険です。理由は主に次の点です。

  • 強制認知の手続きがある。相手は、認知調停を申し立て、話し合いがまとまらなければ認知の訴え(民法787条)を起こすことができます。ここではDNA鑑定の結果が重視されます。本当に自分の子であれば、最終的に認知が認められ、養育費の義務が生じ得ます。
  • 「認知しない」と口約束しても覆り得る。認知を請求する権利は子ども自身にもあり、母が子を代理して請求できます。母と「認知はしない」と合意しても、それによって子の認知請求権まで消えるわけではありません。
  • 養育費の回収は強化されている。2026年4月施行の改正民法で、養育費債権に一般先取特権(民法306条3号)が付与されるなど、回収の実効性が高められました。もっとも、新設された法定養育費(民法766条の3)は離婚した父母を前提とする制度であり、婚姻外のケースでは、これまでどおり「認知があって初めて養育費」という出発点は変わりません。

 つまり、養育費については「認知の有無」がまず入口になります。

風俗・パパ活だからこそ大切な「本当に自分の子か」の確認

 対価を伴う関係や、避妊の有無・不特定の相手との接触といった事情から、父性がはっきりしないケースもあり得ます。だからこそ、「妊娠した=あなたの子=払え」という流れに、そのまま乗らないことが重要です。

 認知はいったん成立すると撤回ができず、その後の扶養義務や相続にも影響します。父子関係に疑問や争いがあるなら、DNA鑑定で確認するのが筋です。任意に鑑定に応じる方法もあれば、強制認知の手続きの中で判断される場合もあります。

 注意したいのは、その場の発言や記録が後々効いてくる点です。「自分の子だ」と認める発言、LINEなどでのやり取り、一部だけでも支払ってしまうこと、これらは後に父子関係や債務を認めた証拠と評価されるおそれがあります。事実関係がはっきりしないうちは、安易に認めない・支払わないという姿勢が無難です。

中絶費用・出産費用の考え方

 まず、双方が合意して性交渉を行った結果として妊娠しただけでは、慰謝料は原則として発生しないと考えられています。妊娠は合意した行為の結果であり、それだけで法的に賠償すべき「精神的苦痛」があるとは言いにくいためです。

 もっとも、中絶に関しては、男性にも一定の責任を認めた裁判例があります。合意のうえでの性行為・中絶であっても、男性が話し合いに真摯に応じず、負担を一方的に女性へ押しつけた行為を不法行為ととらえ、損害賠償を命じたものです(東京高裁 平成21年10月15日判決。慰謝料や実費など合計で約114万円が認められた事案)。ここから読み取れるのは、妊娠を伝えられて無視したり、話し合いから逃げたりするのは得策ではないということです。

 一方で、これは「中絶費用は必ず折半」という固定のルールではありません。事案ごとに、話し合いへの対応や誠実さなどが評価されます。中絶に伴う費用の分担は、まずは冷静な話し合いで解決を図るのが基本です。

「妊娠」が事実でない・金銭目的の場合——妊娠詐欺や恐喝の見極

 残念ながら、妊娠の事実そのものが偽りだったり、妊娠を口実に法外な金銭を迫ったりするケースもあります。次のような点に注意してください。

  • 「妊娠した」の一言で、確認せずに払わない。診断書などの客観的な資料や、受診への同行といった形で事実を確かめることが考えられます。妊娠していないのに「妊娠した」と偽ってお金を交付させれば、詐欺罪(刑法246条)が問題になり得ます。
  • 害悪の告知で金銭を迫る場合。「認知しないと会社や家族にバラす」「払わなければ訴える」などと脅して金銭を要求する行為は、恐喝罪(刑法249条)や脅迫罪(刑法222条)、強要罪(刑法223条)にあたるおそれがあります。こうした請求は、一度払っても要求が続き、終わらないことが少なくありません。

 ただし、正当な養育費や費用の請求まで「詐欺だ」「恐喝だ」と決めつけるのは適切ではありません。正当な権利行使との線引きは微妙で、自己判断は危険です。

パパ活・風俗特有の注意点

  • 相手が既婚者だった場合。妊娠の問題とは別に、相手の配偶者から不貞慰謝料を請求されるリスクがあります。
  • 相手が18歳未満だった場合。妊娠や金銭の話し合い以前に、児童買春など刑事上の別問題が生じ得ます。年齢に不安がある場合は、自己判断せず早めに弁護士へ相談してください。
  • やり取りは証拠になり得る。振込やアプリの履歴、メッセージのやり取りは、後で事実を確かめる手がかりになります。自分から消さないようにしましょう。

請求されたときの初動

避けたいこと

  • その場で言われるまま即金を渡す
  • 事実確認をしないまま「認知する」と即答する
  • 一部だけでも支払って、認めた形をつくる
  • 感情的に相手へ直接反論する
  • スマホのやり取りなど記録を消す
  • 連絡を無視して放置し、話し合いから逃げる

とりたいこと

  • 妊娠の事実・週数・父子関係について、客観的な確認を求める
  • 請求の中身と根拠を整理する(誰が・何を・いくら・いつまで/それは養育費なのか、費用なのか、慰謝料や「示談金」なのか)
  • やり取りを保存しておく
  • 回答期限を示されても即断せず、期限の前に弁護士へ相談し、窓口を一本化する

 妊娠を理由とする請求は、正当な養育費・費用の問題と、金銭目的の不当な要求とが入り混じり、素人には切り分けが難しいのが実情です。本当に自分の子であれば、父としての責任は避けられませんが、その責任の中身も、認知や養育費のルールにのっとって冷静に決めていくべきものです。逆に、事実に裏づけのない請求や度を越えた要求に、その場の勢いで応じる必要はありません。

 対応に迷ったときは、早い段階で弁護士に相談し、事実の確認と請求の整理から進めることをおすすめします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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