【解決事例】風俗店から示談金100万円を対面で要求されるも、弁護士の即日対応で安全に解決
「注文した覚えのないボトルが伝票に載っていた」「席に着いた途端に出てきた小皿と、同席していたキャストの前に並んだグラスの分まで請求された」。繁華街の飲食店をめぐって、こうしたご相談は今も続いています。逆に、「その場で断ったつもりだったが、勧められて一口飲んでしまった」と後から気づく方も少なくありません。
インターネット上には「注文していないものに支払義務はない」という説明が数多くあります。この説明自体が誤っているわけではありません。ただ実際の会計の場では、頼んだものと頼んでいないものが1枚の伝票に混ざっていて、どこまでが自分の負担なのかがその場では見えないという難しさがあります。
この記事では、2025年6月に施行された改正風営法の18条の3第3号を手がかりに、注文していない飲食を出されて請求された場面を整理します。支払いを免れる方法をご案内するものではなく、払う義務のある部分とない部分を切り分けるための考え方をまとめたものです。高額会計そのものへの対応や東京都のいわゆるぼったくり防止条例の詳細は、別の記事で扱っています。
「頼んでいない」にもいくつかの型があります
同じ「頼んでいない」という言葉でも、法律上の扱いは場面によって変わります。まず、ご自身の状況がどの型に当たるのかを見分けるところから始めます。
席に着くと自動的に出てくるもの
お通し、席料、テーブルチャージ、サービス料などがこれに当たります。この型では、入店前や入店時に説明や表示があったかどうかが最大の分かれ目になります。表示があれば、それを了解して席に着いたと評価される余地が生まれるためです。
同席者が頼んだもの
接客する従業者のドリンク、ボトル、シャンパンなどです。誰が注文したのかという事実そのものが争点になりやすく、後から確かめる手段が乏しいのが特徴です。「担当者が勝手に入れた」という主張と、「客が了承した」という主張が正面から食い違います。
「サービスです」と言われて出てきたもの
無料だと理解して受け取ったのに、会計では有料の品として計上されていた、という型です。ここでは、注文の有無に加えて、料金についての説明が事実と違っていなかったかという点も問題になります。
どの型かによって、後に述べる契約のルールと風営法のどの部分が効いてくるかが変わります。
支払義務があるかどうかは、契約が成立しているかで決まります
風営法や条例は、店を取り締まるための法律です。客が支払うべきかどうかという民事の結論は、まず民法の契約のルールから考えることになります。
申込みと承諾がそろってはじめて契約になる
契約は、内容を示して締結を申し入れる意思表示に対して、相手方が承諾をしたときに成立します(民法522条1項)。店が黙って品物を置いた行為が「申込み」だとしても、こちらの承諾がなければ、その品物についての契約は成立していません。注文していないものについて支払義務が生じないと言われるのは、この理屈によります。
黙っていただけでは承諾になりませんが、「意思実現」はあります
注意が必要なのは、承諾は言葉に限られない、という点です。民法には、承諾の通知を必要としない場合には、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に契約が成立する、という規定があります(同法527条)。意思実現による契約の成立と呼ばれます。
飲食店の場面に当てはめると、出されたものに口をつける、栓を開けさせる、グラスに注がせるといった行為が、承諾と評価される可能性があるということです。断るのであれば、手をつける前に、その場で言葉にして伝えることが要になります。黙って置いたままにしていた場合の評価は、店の説明や表示の有無、その品物の性質によって分かれます。
送りつけ商法のルールはそのままは使えません
「注文していない商品は直ちに処分してよい」というルールを聞いたことがある方も多いと思います。これは特定商取引法59条の規定で、令和3年7月6日から施行されているものです。ただし、この条文が対象としているのは販売業者が「送付」した商品です。店内で目の前に置かれた飲食物にそのまま当てはまるものではありません。この点を混同すると、その場での主張の組み立てを誤ります。
風営法18条の3第3号が新しく引いた線
2025年6月28日に施行された改正風営法で、接待飲食営業の遵守事項として18条の3が新設されました。その3号が、注文前の提供を正面から扱っています。
条文が禁じている行為
18条の3第3号は、客が注文その他の遊興又は飲食の提供を受ける旨の意思表示をする前に、遊興又は飲食の全部又は一部を提供することにより、客を困惑させ、それによって飲食等をさせることを禁じています。単に注文前に出したというだけでは足りず、それによって客を困惑させ、断りにくい状況を作ったことが要件になっている点が重要です。
対象となる店は、思われているより限られます
この規定の名宛人は「第2条第1項第1号の営業を営む風俗営業者」です。つまり、接待をして客に飲食をさせる営業について許可を受けている店に限られます。接待をしていない通常のバーや居酒屋、深夜酒類提供飲食店の届出だけで営業している店には、この条文はそのままは及びません。一般の居酒屋のお通しをこの条文で争うことはできない、ということです。
違反があっても、支払義務が自動的に消えるわけではありません
18条の3には罰則の定めがありません。違反があった場合の効果は、公安委員会による指示(同法25条)や営業停止命令、許可の取消し(同法26条1項)といった行政処分です。そして風営法は行政上の取締りの法律ですから、違反があったことから直ちに支払義務が消えるという関係にもありません。もっとも、店の側の行為が法令に触れる態様であったという事実は、契約が成立していたか、料金の説明が適正だったかを判断するうえでの材料になります。
| ルール | 対象となる店 | 主な要件 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 風営法18条の3第3号 | 接待をして飲食をさせる営業の許可を受けた店 | 注文前の提供により客を困惑させ、飲食をさせたこと | 指示・営業停止などの行政処分。罰則の定めはない |
| 東京都のぼったくり防止条例 | 接待があり、かつ指定区域内にある店 | 料金等の表示義務違反、誤認させる表示、迷惑を覚えさせる方法での取立てなど | 罰則あり。区域の指定は丁目単位 |
| 民法の契約のルール | すべての飲食店 | 申込みと承諾がそろっているか | 支払義務そのものの有無を決める |
会計の場で何をしておくか
その場での対応が、後の交渉の材料をつくります。深夜で、酒が入っていて、判断の時間がほとんど与えられない状況であることを前提に、優先順位をつけて考えます。
頼んだ分は現実に差し出す
争いになりやすいのは「ゼロか全額か」という構図に持ち込まれる場面です。自分が注文したと認識している分については、金額を示したうえで現実に支払いを申し出ておくことが考えられます。債務の本旨に従った弁済の提供をすれば、その後の不履行の責任を免れます(民法493条)。店が受け取らなければ受領遅滞の問題になります(同法413条)。無銭飲食ではないかという指摘に対して、自分の側の姿勢を示す意味もあります。
記録を残す
伝票、メニューや料金表の掲示状況、入店から会計までの時刻、やり取りの内容が後の材料になります。次のような点は、その場でしか確認できません。
- 伝票の明細と、どの品目に納得していないかの内訳。
- 入口や店内に料金の表示があったかどうかと、その位置。
- 注文の場面で誰が何と言ったか。
- 説明を受けた時刻と、品物が出てきた時刻の前後関係。
その場を離れられないと感じたとき
帰らせてもらえない、大声で責められる、関係先に知らせると告げられるといった状況では、監禁(刑法220条)、脅迫(同法222条)、恐喝(同法249条)といった問題が生じ得ます。安全の確保が最優先です。話し合いを続けることが難しいと感じたときは、その場で110番することを含めて考えてください。カードへの署名や暗証番号の入力は、後から取り消すためのハードルを上げる行為になります。
すでに支払ってしまった場合
支払った後に取り戻すのは、支払う前に争うよりも難しくなります。クレジットカードで決済した場合は、できるだけ早くカード会社に連絡し、経緯を伝えて記録に残しておくことが第一歩です。現金の場合は相手方の特定と資力の問題が加わります。
また、後日、請求の一部だけを支払う対応は、請求全体を認めたと評価される場合があります。支払うか否かを決める前に、内訳のどこに納得していないのかを整理しておくことをお勧めします。消費者ホットライン(188)や警察相談専用電話(#9110)といった公的な窓口も利用できます。
よくあるご質問
お通しは断れますか
入店時の説明や、店頭・メニューでの表示があった場合は、了解して席に着いたと評価される余地があります。表示も説明もなく出された場合は、契約が成立していないという主張が成り立ち得ますが、手をつけてしまうと承諾があったと見られる可能性が高くなります。不要であれば、出された時点で伝えるのが確実です。
接客する従業者が勝手に頼んだドリンクも、客が払うのですか
注文したのが誰かという事実の問題になります。伝票への記載だけでは注文の事実が証明されたことにはなりませんが、その場で異議を述べていないと、後から争うのは難しくなります。翌日以降にやり取りが残る手段で経緯を確認しておくと、材料が残ります。
風営法違反を指摘すれば、支払わなくてよくなりますか
そうはなりません。風営法は行政上の取締りの法律で、違反が支払義務の消滅に直結する仕組みにはなっていません。ただし、店の行為が18条の3第3号に触れる態様であったことは、契約が成立していたのか、料金の説明が適正だったのかを判断するうえでの評価材料になります。
まとめ
- 支払義務の有無は、まず契約が成立しているかで決まる(民法522条1項)。
- 黙っていただけでは承諾にならないが、口をつけるなどの行為は承諾と評価され得る(同法527条)。
- 送りつけ商法のルール(特定商取引法59条)は「送付」された商品の規定で、店内での提供にそのまま当てはまるものではない。
- 風営法18条の3第3号は、注文前の提供により客を困惑させて飲食させる行為を禁じている。
- 同条の名宛人は、接待をして飲食をさせる営業の許可を受けた店に限られる。
- 違反の効果は指示や営業停止などの行政処分(同法25条・26条1項)で、罰則の定めはなく、支払義務が自動的に消えるわけでもない。
- その場では、頼んだ分の弁済の提供(民法493条)と記録の確保、そして安全の確保を優先する。
頼んでいない飲食の請求でお困りの方へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、繁華街の飲食店をめぐるトラブルに関するご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。会計の場で判断を迫られている段階でも、すでに支払ってしまった後の段階でも、伝票の内訳と当日の経緯をうかがったうえで、どこまでが争える部分なのかを一緒に整理します。
「頼んでいないのに請求された」というご相談は、金額の大小よりも、その場でどう振る舞ったかによって見通しが変わります。ご家族や勤務先に知られたくないというご事情がある場合も、窓口を一本化して対応することが可能です。まずはお早めにご相談ください。


