無銭飲食・無賃乗車・宿泊費の未払い|詐欺と利益窃盗の境界
交際相手や別れたばかりの相手から「車に傷をつけたのはあなたでしょう」「自転車のタイヤをパンクさせたのではないか」と言われ、戸惑っている方からのご相談は少なくありません。別れ話がこじれている時期ほど、相手が「あの人ならやりかねない」と考えやすく、身に覚えがなくても疑いの目を向けられることがあります。一方で、感情的になって実際に手を出してしまい、後から警察や修理代のことが心配になったという方もいらっしゃいます。この記事では、交際相手の車や自転車を傷つけたと疑われたときに問題となりうる罪と、身に覚えがない場合・心当たりがある場合それぞれの向き合い方を整理します。
この記事は、2025年6月施行の改正刑法(懲役・禁錮を拘禁刑に一本化)を反映した内容です。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
車や自転車を傷つける行為は、どの罪に当たりうるか
他人の車や自転車を傷つける行為は、主に器物損壊罪(刑法261条)として扱われます。法定刑は「3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料」です。交際相手であっても、元交際相手であっても、相手の持ち物である以上、この扱いは変わりません。
「損壊」は壊すことだけに限られない
器物損壊罪の「損壊」は、物を物理的に壊す場合だけでなく、その物の本来の効用を害する場合も含むと解されています。車体を引っかいて線状の傷をつけた場合は、走行には支障がなくても損壊に当たると考えられています。タイヤをパンクさせる、ミラーを折る、塗料をかけるといった行為も、同じように問題となりえます。
自転車のタイヤの空気を抜いただけの場合のように、簡単に元に戻せる行為は損壊に当たらないとする見方もありますが、回数や態様によって評価が分かれることがあり、最終的には個別の事情を踏まえて判断されます。
親告罪であることの意味
器物損壊罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪です(刑法264条)。告訴は原則として犯人を知った日から6か月以内にする必要があり(刑事訴訟法235条)、起訴される前であれば被害者が告訴を取り消すこともできます(同法237条1項)。ただし、親告罪であっても、告訴の前から警察が捜査を進めることはあり、事情によっては逮捕に至ることもあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 罪名 | 器物損壊罪(刑法261条) |
| 法定刑 | 3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料 |
| 告訴の要否 | 親告罪(刑法264条) |
| 告訴期間 | 犯人を知った日から6か月(刑事訴訟法235条) |
| 公訴時効 | 3年 |
| 民事上の責任 | 修理費などの損害賠償(民法709条) |
交際関係だからこそ疑われやすい事情
交際相手どうしのトラブルでは、第三者による被害よりも「誰がやったのか」が早い段階で特定されたように扱われやすい傾向があります。たとえば、次のような事情が重なると、相手は疑いを強めることがあります。
- 別れ話の直後や、口論の翌日に傷が見つかりました。
- 車のスペアキーや自転車の鍵を持っていました。
- 相手の自宅や駐車場の場所を知っています。
- 以前の口論で「車に当たる」などの言動がありました。
- 共通の知人を通じて「怒っていた」と伝わっています。
こうした事情は、それだけで犯人であることを示すものではありません。しかし、相手が警察に相談したときに「心当たりのある人物」として名前が挙がる理由にはなりえます。
一緒に買った車や、自分が代金を出した車の場合
交際中に二人で使っていた車や、頭金の一部を自分が出した車であっても、名義や実際の所有関係によっては、法律上は「他人の物」として扱われることがあります。共有の物を壊した場合も、器物損壊罪の対象となりうると考えられています。「自分にも権利がある」という気持ちがあっても、傷をつけてよいことにはならない点には注意が必要です。お金を出した分の清算は、別に話し合うべき問題です。交際中に相手の車で事故を起こしてしまった場合の修理代の考え方は、【男女トラブル】交際中に相手の車で事故を起こした|別れた後の修理代で解説しています。
身に覚えがないのに疑われたとき
弁護士ドットコムにも、身に覚えのない車の傷について弁償を求められ続けているという相談が寄せられており、映像などの裏付けを示されないまま請求が続くと、どう対応すべきか迷う方が多いことがうかがえます。身に覚えがない場合は、次の点を意識して行動することが大切です。
相手のもとへ弁明に行かない
疑いを晴らしたい一心で、相手の自宅や駐車場へ出向いたり、何度も連絡を入れたりすると、かえって状況を悪くするおそれがあります。別れた相手に繰り返し連絡をとる行為は、内容によってはストーカー行為と受け取られることもあります。正当な用件であっても注意が必要な場面については、【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面もあわせてご覧ください。
その日の行動を示す記録を残しておく
傷がついたとされる日時が分かっている場合は、その時間帯に自分がどこにいたかを示す記録を早めに確保しておくと、後で説明するときの手がかりになります。
- 勤務先の出退勤記録や業務日報。
- 交通系ICカードの利用履歴やクレジットカードの利用明細。
- スマートフォンの位置情報の履歴や、撮影した写真の日時。
- 一緒にいた人の連絡先と、会っていた場所。
- 相手とのやり取りが残っているLINEやメール。
駐車場や店舗の防犯カメラの映像は、一定期間で上書きされることが多いため、確認が必要なら早めに動くことが望ましいといえます。ただし、自分で管理者に強く映像の提供を迫ると新たなトラブルになりかねないため、弁護士を通じて進め方を検討するのが無難です。
謝罪や弁償の言葉を安易に使わない
相手から強く責められると、その場を収めるために「ごめん」「修理代は払うから」と送ってしまうことがあります。しかし、こうした言葉は、後から「本人が認めていた」と受け取られる材料になるおそれがあります。関係の修復を願う気持ちから出た言葉であっても、文面だけを見ると事実を認めたように読めることがある点に注意が必要です。身に覚えがない段階での示談の考え方は、無実でも示談すべき?否認と示談のジレンマで詳しく扱っています。
警察から連絡が来たら
相手が警察に相談し、警察から事情を聞きたいと連絡が来ることもあります。呼び出しに応じる前に、何を聞かれそうか、どのように説明するかを整理しておくことで、不正確な内容の供述調書が作られるおそれを減らせます。警察から連絡が来た時点での弁護士への相談については、【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味をご覧ください。
心当たりがあるとき
感情的になって実際に傷をつけてしまった場合は、被害を回復し、相手との関係をこれ以上悪化させない方向で動くことが基本になります。
示談と告訴の取消し
器物損壊罪は親告罪のため、起訴の前に示談が成立し、被害者が告訴をしない、または告訴を取り消すことに合意すれば、起訴されずに終わる可能性があります。もっとも、別れた相手と直接お金の話をしようとすると、相手が恐怖を感じて話し合いに応じないことも多く、接触そのものが新たな問題になるおそれもあります。弁護士が窓口となって謝罪と弁償の申し入れをし、示談書に接触しないことの約束や、告訴の取消しについての条項を入れる形が一般的です。なお、示談が成立しても処分が残る場合については、示談が成立しても処分が残る場合|示談=不起訴ではない理由で解説しています。
請求された金額が妥当かを確かめる
相手から示された修理代が、実際の傷の範囲を超えていると感じることもあります。民事上の損害賠償は、原則として壊した部分の修理に必要な範囲が基本となり、以前からあった傷の修理費まで負担する必要はありません。修理工場の見積書や傷の写真を確認し、どの部分がいつついた傷なのかを切り分けることが、金額を話し合う前提になります。
よくあるご質問
相手が「被害届を出した」と言っています。もう逮捕されるのでしょうか
被害届が出されたからといって、すぐに逮捕されるとは限りません。器物損壊のような事件では、在宅のまま事情を聞かれる形で進むことも多くあります。ただし、相手への接触が続いているなど、事情によっては身柄を拘束されることもありますので、早めに弁護士へご相談ください。
相手が別れた後に自分で傷をつけ、こちらのせいにしているのではないかと思います
そうした可能性を考えたくなる気持ちは自然なものです。ただ、それを相手に直接ぶつけると、対立がさらに深まるおそれがあります。まずは自分の行動を示す記録を整え、相手との話し合いは弁護士を通じて進めることをおすすめします。
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交際相手の物をめぐる疑いは、早めにご相談ください
交際相手の車や自転車を傷つけたと疑われたときは、身に覚えがあるかどうかにかかわらず、相手と直接やり合う前に状況を整理することが大切です。当事務所では、警察対応への助言、相手方との窓口、示談交渉まで、事案に応じてお手伝いしています。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


