【刑事事件】風俗トラブルで在宅のまま捜査されると、どう進む?
交際相手に手を上げてしまった、怒鳴ったり物に当たったりするのが止められない。そうした自分の行動に気づき、「このままではいけない」「やめたい」と考えている方は少なくありません。ところが、交際相手からの暴力(いわゆるデートDV)の相談窓口を調べると、表示されるのはほとんどが被害を受けた方向けの案内です。加害の側として、どこに何を相談すればよいのか分からず、誰にも話せないまま時間が過ぎてしまうこともあります。
この記事では、交際相手への暴力をやめたいと考えている方が利用できる相談先と、それぞれの窓口でできること・できないこと、すでに起きた行為について法的に整理しておきたい点を解説します。
本記事は、2024年4月施行の改正配偶者暴力防止法(保護命令制度の拡充)と、2025年6月施行の拘禁刑の導入を反映した内容です。各窓口の受付日時や対象者は変更されることがあるため、利用の前に各機関の公式サイトでご確認ください。
「やめたい」と考えた段階で相談先を探す意味
交際相手への暴力は、一度で終わらず、繰り返されるうちに程度が強くなっていくことがあると指摘されています。自治体の啓発資料でも、イライラが募る時期、感情を抑えられず暴力に至る時期、謝って優しくなる時期が循環する「DVのサイクル」が紹介されています。謝って関係が落ち着いた時期には「もう大丈夫だろう」と感じやすい一方で、根本の原因に手が付けられていなければ、同じことが起きるおそれは残ります。
また、法律の面から見ると、交際相手への暴力は「恋人同士のけんか」として片付けられるものではなく、暴行罪や傷害罪などの犯罪にあたることがあります。相手が警察に相談すれば、ある日突然、警察から連絡が来たり、逮捕されたりする可能性もあります。
「やめたい」と思えている今の段階は、自分の行動を見直すうえでも、すでに起きたことの法的な影響を整理するうえでも、相談を始めやすい時期といえます。
デートDVにあたる行為と、問われうる罪
デートDVは法律上の用語ではなく、交際相手や元交際相手との間で起きる暴力を広く指す言葉です。殴る・蹴るといった身体的な暴力だけでなく、怒鳴る・人格を否定する・行動を監視するといった精神的な暴力、お金を取り上げる経済的な暴力、性的な行為を強いる性的な暴力も含まれるとされています。
このうち、刑事事件として扱われる可能性がある主な行為と罪名は、次のとおりです。
| 行為の例 | 問われうる罪 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 叩く、突き飛ばす、腕を強くつかむ | 暴行罪(刑法208条) | 2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留または科料 |
| 暴力によってけがをさせる | 傷害罪(刑法204条) | 15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 「殺すぞ」など、危害を加えると告げる | 脅迫罪(刑法222条) | 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 脅して謝罪や土下座などをさせる | 強要罪(刑法223条) | 3年以下の拘禁刑 |
| 相手のスマートフォンや私物を壊す | 器物損壊罪(刑法261条) | 3年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金または科料 |
どの程度の力であれば暴行罪にあたるのかについては、押した・つかんだだけで暴行罪になるのか|「有形力の行使」の範囲で詳しく解説しています。
なお、暴行罪や傷害罪は、被害を受けた方の告訴がなければ起訴できない「親告罪」ではありません。そのため、相手が「もう怒っていない」と言ってくれた場合でも、それだけで刑事手続の対象から外れるわけではない点には注意が必要です。
同棲している場合は配偶者暴力防止法の対象にもなる
配偶者暴力防止法(DV防止法)は、配偶者だけでなく、生活の本拠を共にする交際相手からの暴力にも準用されます(同法28条の2)。同棲している交際相手への暴力であれば、相手が裁判所に申し立てることで、接近禁止命令や退去命令などの保護命令が出されることがあります。
2024年4月施行の改正により、身体への暴力だけでなく、自由・名誉・財産に対する脅迫を受けた場合も保護命令の申立てができるようになり、保護命令に違反した場合の罰則も2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金へと引き上げられました。同棲していない交際相手の場合は配偶者暴力防止法の対象外ですが、別れた後の連絡や待ち伏せなどは、ストーカー規制法の対象になることがあります。両者の違いはストーカー規制法とDV防止法の違い|自分のケースはどっちで守られる?で整理しています。
加害の側が相談できる窓口
被害を受けた方向けの窓口に比べると数は限られますが、加害の側が利用できる相談先もあります。目的によって向いている窓口が異なるため、それぞれの特徴を確認しておくことが大切です。
自治体の男性相談・総合相談
多くの自治体の男女平等推進センター(男女共同参画センター)では、男性を対象とした悩み相談を設けています。東京都では、東京ウィメンズプラザが「男性のための悩み相談」(電話03-3400-5313)を実施しており、原則として都内在住・在勤・在学の男性が対象で、匿名で利用できるとされています。区によっては、区の男女平等推進センターでも男性向けの電話相談を行っています。
これらの窓口は、夫婦や交際相手との関係、職場の人間関係など、男性が抱える悩みを幅広く扱う場です。受付の曜日や時間帯が限られていることが多いため、事前に公式サイトで確認しておくと安心です。なお、他県には、パートナーに暴力をふるってしまったことに悩む男性を対象として明記した電話相談を設けている例もあります。女性の方で加害に悩んでいる場合は、自治体の一般相談で相談できる窓口を案内してもらう方法があります。
DV加害者プログラムを行う民間団体
DV加害者プログラムは、暴力をふるってしまう人が、グループワークなどを通じて自分の考え方や行動の傾向に向き合い、暴力に頼らない関係の築き方を学ぶ取り組みです。主に民間団体が実施しており、内閣府男女共同参画局も、被害者支援の一環として自治体と民間団体による取組の事例を紹介しています。
一方で、内閣府が2024年6月に公表した調査報告では、加害者に関する取組を計画に盛り込んでいる自治体は多いものの、加害者プログラムの実施にまで至っている自治体は多くないとされています。お住まいの地域で利用できるプログラムがあるかどうかは、自治体の男女共同参画担当窓口や男性相談で尋ねてみるのが一つの方法です。
加害者プログラムは、被害を受けた方の安全を確保することを前提として位置づけられています。プログラムに参加したことで、すでに起きた行為の法的な責任がなくなるわけではない点も理解しておく必要があります。
医療機関・依存症の相談窓口
お酒を飲んだときに手が出てしまう、怒りの感情を自分でもコントロールできないと感じる場合には、精神科や心療内科などの医療機関に相談することも考えられます。飲酒や薬物の問題が背景にあると感じる場合は、各都道府県の精神保健福祉センターで、依存症に関する相談を受け付けています。
弁護士
弁護士は、暴力をやめるための心理的な支援を行う立場ではありません。一方で、すでに起きた行為がどの罪にあたる可能性があるのか、警察から連絡が来たらどう対応するか、相手との話し合いや示談をどう進めるかといった、法的な見通しと対応を相談できる窓口です。
| 相談先 | 主にできること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 自治体の男性相談・総合相談 | 悩みを話す、相談先の案内を受ける | まず誰かに話して整理したいとき |
| 加害者プログラム実施団体 | 行動や考え方を見直す継続的な取組 | 暴力をやめるために継続して取り組みたいとき |
| 医療機関・精神保健福祉センター | 心身の状態の評価、治療、依存症の相談 | 飲酒や感情の制御が背景にあると感じるとき |
| 弁護士 | 刑事・民事の見通し、警察対応、示談の交渉 | すでに手が出ている、相手や警察が動いているとき |
弁護士に相談したほうがよい場面
自治体の相談や加害者プログラムは、主に「これから暴力をふるわないため」の支援です。すでに起きた行為をめぐって、相手や警察が動いている、あるいは動く可能性がある場合には、法的な対応を早めに検討しておくことが大切です。次のような場面では、弁護士への相談を考えてみてください。
- 相手にけがをさせてしまい、病院に行ったと聞いている。
- 相手から「警察に相談する」「被害届を出す」と言われている。
- 警察から電話があり、話を聞きたいと言われている。
- 相手から慰謝料や治療費などの支払いを求められている。
- 保護命令の申立てをされた、または裁判所から書面が届いた。
- 別れた相手に謝りたいが、連絡してよいか判断がつかない。
警察から連絡が来た段階での対応については、【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味もあわせてご覧ください。また、相手から「デートDVだ」と指摘されて、自分の言動がどこまで法的に問題になるのか整理したい場合は、【男女トラブル】デートDVの加害者だと言われた|自分の言動を法的に見直すが参考になります。
相談する前に気をつけたいこと
謝罪のつもりの連絡が、新たな問題になることがある
暴力をふるってしまった後、相手に謝りたい、関係をやり直したいと考えるのは自然なことです。しかし、相手が連絡を拒んでいるにもかかわらず電話やメッセージを繰り返したり、自宅や職場を訪ねたりすると、ストーカー規制法上のつきまとい等にあたるおそれがあります。保護命令が出ている場合には、命令違反として処罰の対象になることもあります。
相手が警察に相談しているかもしれない状況で直接連絡を取ると、「口止めをしようとしている」と受け取られ、身柄拘束の判断に影響する可能性も否定できません。謝罪や話し合いを望む場合は、弁護士を通じて、相手の意向を確かめながら進める方法を検討することをおすすめします。
自首を考えている場合
自分のしたことに向き合うため、警察に出頭したいと考える方もいます。刑法42条1項は、罪を犯した人が捜査機関に発覚する前に自首したときは、刑を減軽することができると定めています。ただし、すでに相手が被害を申告していて捜査機関が把握している場合には、法律上の自首にはあたらないことがあります。
出頭するかどうか、するとしてどのような準備をしておくかは、事情によって判断が分かれます。詳しくは自分から出頭すべきか|自首の成否と実務上の意味で解説しています。
相談したことが相手や警察に伝わるか
「加害者として相談したら、そのまま警察に通報されるのではないか」と不安に感じて、相談をためらう方もいます。弁護士には法律上の守秘義務があり(弁護士法23条)、ご相談の内容をご本人の了承なく警察や相手に伝えることはありません。自治体の相談窓口でも秘密を守ることを掲げているところが多いですが、取扱いは窓口ごとに異なるため、気になる場合は相談の最初に確認しておくとよいでしょう。
よくあるご質問
一度手が出ただけでも、相談してよいのでしょうか
回数にかかわらず、ご相談いただいて差し支えありません。一度の行為でも暴行罪や傷害罪にあたることはあり、相手の受け止め方によっては警察が関わることもあります。早い段階で状況を整理しておくことで、その後の選択肢を考えやすくなります。
相手からも叩かれていた場合はどうなりますか
互いに手を出していた場合でも、自分の行為が暴行罪などにあたる可能性はなくなりません。一方で、経緯によっては正当防衛が問題になる場面もあります。双方に行為がある場合の考え方は、相手も殴ってきた(相互暴行)|被害者でも加害者でもある場合で解説しています。
加害者プログラムに参加すれば、処分は軽くなりますか
加害者プログラムは、暴力をやめるための取組であり、刑事処分を軽くする目的の制度ではありません。ただし、刑事手続の中では、反省の態度や再発防止に向けた具体的な取組が、事情の一つとして考慮されることがあります。どのように位置づけられるかは事案によって異なるため、刑事手続が進んでいる場合は弁護士にご相談ください。
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まとめ
交際相手への暴力をやめたいと考えたときの相談先には、自治体の男性相談や総合相談、DV加害者プログラムを行う民間団体、医療機関、弁護士などがあり、それぞれ役割が異なります。暴力をやめるための取組と、すでに起きた行為への法的な対応は、並行して考えていくことが大切です。相手や警察がすでに動いている、あるいは動く可能性があると感じる場合は、ご自身だけで判断せず、早めにご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


