【ストーカートラブル】加害者と同じ駅や路線を使わざるを得ないとき、何ができる?
本記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(職権による警告の創設など)を踏まえて作成しています。実際の対応は、相手の行動や残っている記録によって変わることがあります。
マッチングアプリで知り合い、一度だけ食事をした。その後、こちらは会うつもりがないと伝えたのに、メッセージや電話が止まらない。ブロックしたら別のアカウントから連絡が来た。このようなご相談は、交際に至っていない段階のものも少なくありません。
「付き合ってもいないのに、ストーカーとして扱ってもらえるのか」「大げさにして相手を刺激したくない」と迷ううちに、対応が遅れてしまうことがあります。この記事では、一度会っただけの相手からのつきまといについて、法律上の位置づけと、最初の数日から数週間で取っておきたい動きを順に整理します。
一度会っただけでも、法律の対象になりうる
ストーカー規制法が対象にしているのは、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を充たす目的で行われる「つきまとい等」です(ストーカー規制法2条1項)。交際していたかどうかは要件になっていません。一度会っただけの相手が好意を断られたことをきっかけに連絡を続けている場合も、この枠組みで考えることになります。
同じような行為を繰り返すと「ストーカー行為」となり、刑事罰の対象になります(同法18条、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)。一方で、好意や怨恨の目的がはっきりしない場合には、東京都の迷惑防止条例が定めるつきまとい行為の規制が使えることもあります。
| 相手の行動 | 関係しうる規定 |
|---|---|
| 断ったのに、メッセージや電話が続く | 拒まれたのに連続して電話・メッセージを送る行為(ストーカー規制法) |
| ブロック後に別アカウントやSNSで連絡してくる | 同上。経路が変わっても同じ相手の行為としてまとめて扱われる |
| 自宅や職場の近くで待っている | 待ち伏せ・見張り・押し掛け・うろつき(ストーカー規制法) |
| 「どこにいるか知っている」と伝えてくる | 監視していると告げる行為(ストーカー規制法) |
| 写真を拡散すると言ってくる | 名誉を害する行為、脅迫罪など |
最初に確かめたい「相手が知っていること」
一度会っただけの相手であれば、相手が持っている情報は限られていることが多いはずです。不安が大きいときほど、相手に何を伝えたかを一度書き出してみると、優先して手当てすべき点が見えてきます。
- 本名(フルネームか、名字だけか)。
- 勤務先・業種・職場の最寄り駅。
- 自宅の住所や最寄り駅、待ち合わせ場所との位置関係。
- LINEのID、電話番号、メールアドレス。
- InstagramやFacebookなど、本名で使っているSNSのアカウント。
- アプリのプロフィールに載せていた写真。
勤務先を知られている場合は【男女トラブル】アプリで知り合った相手に勤務先を知られた|連絡や来訪が起きる前に整えておくこと、自宅を知られている場合は【男女トラブル】一度会っただけの相手が自宅を知っている|その後の不安への備えもあわせてご覧ください。
断り方と、連絡を絶つ順序
意思表示は一度、短くはっきりと
会うつもりがないことは、短い文面ではっきり伝えます。理由を詳しく説明したり、何度も謝ったりすると、相手が説得の余地があると受け取り、やり取りが長引くことがあります。「直接会って話したい」と求められても、応じる必要はありません。一度会っただけの関係であれば、文面で終えて差し支えないと考えられます。
はっきりと断った記録は、後に警察へ相談する際、「拒まれたにもかかわらず」連絡が続いていることを示す材料にもなります。
ブロックや退会の前に記録を残す
ブロックやアプリの退会をすると、それまでのメッセージや相手のプロフィールが見られなくなることがあります。先に、やり取りの画面を日時が分かる形で保存し、相手のプロフィール画面や表示名も残しておきます。着信履歴も同様です。詳しい手順は【男女トラブル・マッチングアプリ】退会するとやり取りは消えるのか|証拠を残す順序で解説しています。
アプリの運営会社へ報告する
多くのアプリには、迷惑行為を報告する機能があります。報告によって相手のアカウントが利用停止になることもあり、同じアプリ内での接触を減らす効果が期待できます。ただし、運営会社が相手の本名や住所を利用者に教えることは通常ありません。運営への報告は、警察や弁護士への相談と並行して行うものと考えておくとよいでしょう。
別アカウントや別の経路から連絡が来たとき
弁護士ドットコムにも、一度会った相手との2回目の約束を断ってLINEをブロックしたところ、別のアカウントからキャンセル料を求められたという相談や、ブロック後にFacebookを探し当てられ、悪口を送られたという相談が寄せられています。回答する弁護士の多くは、相手のペースに合わせて返信を重ねないことや、記録を残すことを勧めています。
こうした連絡に反論したくなるのは自然なことですが、言い返した文面が、かえって相手に新たな材料を与えてしまうこともあります。「訴える」「個人情報を開示させる」といった言葉が含まれていても、その場で返事をせず、届いた日時と内容を記録しておくことを優先します。文面の受け止め方については【男女トラブル】既読無視をしたら脅すようなメッセージが来た|返信しないことの位置づけと、届いた言葉の見分け方も参考になります。
メッセージの回数や頻度がどの程度でストーカー規制法の問題になるかは、SNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れで整理しています。
警察へ相談する目安
自宅や職場の近くに相手が現れた、待ち伏せをされた、身の危険を感じたという場合は、ためらわずに110番通報をしてください。そこまでの状況でなくても、断ったのに連絡が続いている段階で、最寄りの警察署の生活安全課や、警察相談専用電話(#9110)に相談することができます。
2025年12月30日施行の改正により、被害者からの申出がなくても、警察が必要と判断すれば職権で警告を出せるようになりました。相手からの報復が心配で申出をためらう場合も、まずは状況を伝えておく意味があります。相談の際は、保存した画面や着信履歴、相手について分かっている情報をまとめて持参すると、話が伝わりやすくなります。
警察と弁護士のどちらに先に相談するか迷う場合は【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序を、相談したのに動きがないと感じる場合は【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段をご覧ください。
弁護士に相談すると何ができるか
弁護士は、相手との連絡の窓口を引き受けることができます。相手の連絡先が分かっていれば、代理人として連絡をやめるよう求める通知を送り、以後のやり取りを弁護士に一本化します。事案によっては、警察への相談に同行したり、裁判所に接近禁止の仮処分を求めたり、精神的な苦痛についての慰謝料を請求したりすることも検討します。
マッチングアプリで知り合った相手の場合、本名や住所が分からないことが壁になりがちです。手がかりからどのように相手をたどるのか、たどれない場合にどう身を守るのかは、【ストーカートラブル】マッチングアプリで一度会った相手が付きまとう|交際していなくても使える手段と、相手の情報が少ないときの進め方と【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で詳しく扱っています。代理人を立てる意味全般については【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味をご覧ください。
よくあるご質問
一度会っただけなのに、警察に相談してもよいのでしょうか
相談できます。ストーカー規制法は交際していたことを要件にしておらず、好意や、断られたことへの不満から連絡が続いている状況であれば、相談の対象になります。早い段階で相談しておくことで、状況が変わったときにも経緯を踏まえた対応を受けやすくなります。
相手から「キャンセル料を払え」「訴える」と言われています
会うかどうかは本来、それぞれが自由に決められることです。誘いを断ったことだけを理由に、法的な支払い義務が生じる場面は限られると考えられます。ただし、事前に費用の負担を具体的に約束していたなど、事情によって見方が変わることもあります。その場で支払いを約束したり、反論を重ねたりせず、やり取りを保存したうえでご相談ください。
本名を伝えていなくても、身元を調べられることはありますか
写真や会話の内容、共通の知人などから、SNSのアカウントにたどり着かれることはあります。本名で使っているSNSの公開範囲を見直す、プロフィール写真を差し替えるなど、相手が使える手がかりを減らしておくと安心です。一方で、「弁護士を通じて個人情報を開示させる」といった言葉が、実際にそのとおり実現するとは限りません。言われた内容に慌てて応じず、まずは記録を残してください。
ご相談について
一度会っただけの相手からのつきまといは、関係が浅いぶん「大ごとにしたくない」と感じやすく、相談が遅れがちです。相手に何を知られているかを確かめ、記録を残し、警察や弁護士に状況を伝えておくことで、取れる手段は広がります。不安を一人で抱え込まず、早めにご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


