【男女トラブル】交際相手の学歴や経歴の嘘は、婚約を解消する正当な理由になる?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

婚約した相手について、出身大学や勤務先、職歴などが聞いていた話と違っていたと分かると、このまま結婚に進んでよいのか迷う方は少なくありません。一方で、婚約は法的に保護される約束でもあるため、こちらから解消を申し出た場合に慰謝料を求められないかという不安もあります。本記事では、交際相手の学歴や経歴の嘘が、婚約を解消する「正当な理由」と評価されるかどうかの考え方と、解消する場合に整理しておきたいことを解説します。

本記事は一般的な考え方を整理したものです。婚約の解消に正当な理由があるかどうかは、嘘の内容や婚約に至る経緯など個別の事情を踏まえて判断されるため、同じような嘘でも結論が異なることがあります。


婚約の解消と「正当な理由」の関係

婚約は、将来結婚しようという当事者どうしの合意で成立し、書面がなくても成立すると考えられています。ただ、実際に争いになったときには、両親への挨拶、結婚式場の予約、婚約指輪や結納のやり取りなど、周囲から見て結婚の約束があったと分かる事情があるかどうかが確かめられます。
 婚約が成立した後に、一方が正当な理由なく解消すると、相手に生じた精神的な損害(慰謝料)や、式場のキャンセル料などの財産的な損害を賠償する責任を負うことがあります。反対に、解消に正当な理由があれば、解消を申し出た側が慰謝料を負わないと考えられています。
 もっとも、正当な理由がある場合でも、結婚準備のために二人で支出した費用の分担をめぐる話し合いは残ることがあります。そのため、「正当な理由があるか」と「お金をどう整理するか」は、分けて考えておくと見通しを立てやすくなります。婚約の解消全般と正当な理由の考え方については、結婚をやめたい|婚約の解消で慰謝料を払わずに済む「正当な理由」とはでも解説しています。

学歴や経歴の嘘が「正当な理由」と評価されやすい場面

法律事務所の解説では、婚約解消の正当な理由の典型として、異性関係、暴力や暴言などと並んで、重要な事情についての嘘が挙げられることがあります。具体例として示されるのは、実際とかけ離れた収入を伝えていた、職業を偽っていたといったものです。ただし、嘘があれば一律に正当な理由になるわけではなく、次のような観点から評価されると考えられます。

結婚生活の前提にかかわる事実かどうか

職業、勤務先、収入、婚姻歴や子どもの有無、多額の借金などは、結婚後の生活設計に直接かかわる事実です。こうした点について大きく事実と異なる説明がされていた場合は、正当な理由と評価されやすい傾向があります。
 学歴は、それだけで結婚生活の中身が変わるとは限らないため、職業や収入に比べると評価が分かれやすい事情です。もっとも、医師や弁護士といった資格を持っていると偽っていた場合のように、学歴の嘘が職業や収入の嘘と一体になっているときは、生活の前提にかかわる事実として扱われる余地があります。

積極的に偽ったのか、言わなかっただけか

尋ねられたことに対して事実と異なる説明をしていたのか、聞かれなかったので話していなかっただけなのかによっても、評価は変わり得ます。弁護士ドットコムに掲載された解説でも、婚約者からはっきり尋ねられたのに事実と違う内容を伝えたことは、違法と判断される要素になるという趣旨の指摘がされています。
 また、一度きりの見栄による発言なのか、卒業証書や名刺を用意するなど、長い期間にわたって作り話を重ねていたのかも、信頼関係への影響を測るうえで考慮されることがあります。

婚約を決める判断にどれだけ影響したか

その経歴を前提にして結婚を決めたといえるかどうかも、ポイントになります。たとえば、相手の勤務先や収入を前提に住まいや仕事の計画を立てていた場合は、嘘の影響が大きいと説明しやすくなります。
 反対に、婚約する前から事実を知っていた、あるいは薄々気づいたうえで婚約したという場合は、後からその点を理由に解消しても正当化しにくいと考えられています。

嘘が分かった後の相手の対応

嘘を指摘された後に事実を認めて話し合いに応じたのか、さらに別の嘘を重ねたのかも、関係を続けられるかどうかの評価に影響します。発覚後の説明が二転三転するようであれば、信頼関係が損なわれたことを示す事情として考慮されることがあります。

 目安として、嘘の内容ごとの評価の傾向を整理すると、次のようになります。いずれも個別の事情によって結論が変わり得る点にご注意ください。

嘘の内容評価の傾向考慮されやすい事情
職業・勤務先を偽っていた正当な理由と評価されやすい結婚後の生活設計への影響
収入を大きく偽っていた正当な理由と評価されやすい実際との差の大きさ
資格の有無を偽っていた評価されやすい場合がある職業や収入との結びつき
出身校・最終学歴だけを偽っていた評価が分かれやすい学歴を重視した経緯の有無
過去の職歴の一部を誇張していた評価されにくいことが多い現在の生活への影響


「正当な理由」と評価されにくい場面

学歴や経歴に事実と異なる点があっても、次のような場合には、それだけを理由に婚約を解消すると、正当な理由がないと判断されるおそれがあります。

  • 卒業した大学は正しいが、学部や在籍期間を少し違って伝えていたなど、内容が軽微である場合。
  • 過去の転職回数を少なめに話していたが、現在の職業や収入は説明どおりである場合。
  • 嘘を知った後も交際や結婚の準備を長く続け、その間に問題にしていなかった場合。
  • 別の理由で結婚をやめたくなり、後から見つけた小さな食い違いを理由として持ち出している場合。


 参考までに、労働の分野では、採用時の経歴詐称を理由とする解雇などについて、採用の判断に影響する「重要な経歴」を偽ったかどうかが一つの目安とされています。婚約は雇用とは性質の異なる関係ですが、相手の判断にとって重要な事実だったかを問う点では、考え方に通じるところがあります。
 なお、相手が経歴を偽ったうえで結婚をちらつかせ、金銭を受け取っていたような場合には、結婚詐欺として別の問題になることもあります。その場合の考え方は、結婚詐欺に遭ったかも|結婚詐欺の立証と損害賠償請求で解説しています。

嘘が分かったときに整理しておきたいこと

婚約を解消するかどうかを決める前に、次の点を手元で整理しておくと、後で話し合いや請求が生じたときに説明しやすくなります。

  1. 何について、どのような説明を受けていたか(日時や場面、伝えられた内容)。
  2. 事実と違うと分かった経緯と、それを裏づける資料(プロフィール画面、メッセージ、名刺、相手が見せた書類の写真など)。
  3. 婚約がどの段階まで進んでいたか(両親への挨拶、式場の予約、指輪や結納の授受、同居の有無)。
  4. 結婚準備のために支出した費用と、それぞれ誰が負担したか。
  5. 嘘を指摘した後の相手の説明と、そのやり取りの記録。


 相手のプロフィールの記載がマッチングアプリ上のものだった場合、アプリの退会などで後から確認できなくなることがあります。画面の保存は早めに行っておくと安心です。アプリ上の年収や職業の詐称については、【男女トラブル・マッチングアプリ】プロフィールの嘘はどこから違法になるか|年収・職業・独身の詐称もあわせてご覧ください。

婚約を解消した後のお金の整理

学歴や経歴の嘘を理由に婚約を解消する場合、お金の問題は「慰謝料」と「結婚準備の費用」に分けて整理すると、話し合いの論点がはっきりします。

項目整理の考え方
慰謝料正当な理由があれば、解消を申し出た側は負わないと考えられている
結納金・婚約指輪解消の原因をつくった側が贈ったものは、返還が認められにくい傾向がある
式場のキャンセル料など共同の出費正当な理由があっても、分担の話し合いが必要になることがある
結婚に備えた退職や転居の損失嘘との結びつきや経緯によって、請求の可否が検討される


 また、婚約を解消せざるを得ない状況をつくった側が責任を負うという考え方もあります。重大な嘘が原因で解消に至った場合には、解消を申し出た側から、嘘をついた相手に慰謝料や支出した費用を求める余地が検討されることもあります。ただし、請求するかどうかは、嘘の内容や証拠の状況、相手との関係を踏まえて慎重に判断することをおすすめします。
 結納金や結婚を前提に渡したお金の扱いについては結婚を前提に渡したお金・結納金は返還請求できるかで、婚約を解消された側からの請求については婚約を一方的に破棄された|慰謝料を請求できるケース・できないケースで解説しています。

相手から「婚約破棄だ」と慰謝料を求められたら

嘘を指摘して婚約の解消を申し出たところ、相手から反対に「一方的な婚約破棄だ」として慰謝料を求められることがあります。このような場合でも、すぐに支払いや書面への署名に応じる必要はありません。
 まずは、相手が求めている金額の内訳と根拠を確認し、先ほど整理した嘘の内容や記録と照らし合わせることが大切です。相手の言い分の中に、婚約の成立そのものや、嘘の重さについての食い違いがあれば、それが話し合いの論点になります。感情的なやり取りが続くと、後で不利に受け取られかねない発言が残ることもあるため、窓口を弁護士に移すことも選択肢の一つです。当事務所が扱った事例として、【解決事例】婚約破棄を理由とする慰謝料請求に対し、弁護士が窓口となり支払いなく終結した事例もご参照ください。

自分で話し合うか、弁護士に任せるか

相手が嘘を認め、費用の分担についても冷静に話し合える状況であれば、当事者どうしで合意し、その内容を書面に残す方法もあります。一方で、相手が嘘を否定している、高額な請求をしてくる、直接会うことに不安があるといった場合には、弁護士を通じて解消の意思を伝え、条件を整理する方法が考えられます。
 弁護士が代理人として入ることで、相手と顔を合わせずに話し合いを進めることができ、合意した内容を書面にまとめるところまで任せることができます。具体的な流れは、【男女トラブル】別れ話を弁護士に任せるときの流れ|本人と会わずに関係を終えるや【解決事例】相手と直接顔を合わせずに婚約を解消したい―弁護士介入で約1ヶ月半にて円満解決した事例で紹介しています。

よくあるご質問


学歴の嘘だけでも、婚約を解消する正当な理由になりますか。

学歴だけの嘘の場合は、結婚生活への影響が直接には見えにくいため、評価が分かれやすいと考えられます。交際の中で学歴を重視していることを伝えていた、学歴の嘘が職業や収入の説明と結びついていたといった事情があれば、正当な理由として考慮される余地が出てきます。

嘘を知った後も、しばらく交際を続けていました。今から解消できますか。

解消すること自体は可能ですが、嘘を知りながら長く結婚の準備を続けていた場合、その嘘を理由とする解消が正当化しにくくなることがあります。嘘が分かった時期や、その後にどのような話し合いをしていたかを整理したうえで判断することをおすすめします。

関連する解説記事



 学歴や経歴の嘘が婚約を解消する正当な理由になるかどうかは、嘘の中身だけでなく、それがどれほど結婚の判断に影響していたか、発覚の前後にどのようなやり取りがあったかによって変わります。結論を急ぐ前に、事実と記録を一度整理しておくことが、その後の話し合いを落ち着いて進めることにつながります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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