【風俗トラブル】「DNA鑑定をする」と店に言われたら、応じなければならない?
この記事は、2025年6月28日に施行された改正風営法と、2020年4月1日に施行された改正民法の保証に関するルールを前提にしています。個別の事情によって結論が変わることがあるため、具体的な判断はご相談のうえで行ってください。
ホストクラブで売掛(ツケ)が積み重なり、支払いの話になったところで、担当ホストや店から「友だちに保証人になってもらって」と求められることがあります。反対に、ホストクラブに通う友人から「名前を書いてくれるだけでいいから」と頼まれ、どう答えればよいか迷っている方もいるかもしれません。
保証人になるかどうかは、頼まれた友人自身が決めることで、売掛を抱えた本人や店が代わりに決められるものではありません。また、保証人がついたとしても、売掛そのものに問題があれば、その問題は保証人の側でも主張できます。この記事では、売掛の保証をめぐって押さえておきたい法律上のルールと、求められたときの考え方を、売掛を抱えたご本人と、保証人を頼まれた友人の両方の立場から整理します。
保証人を求められる場面は大きく二つ
売掛の保証人をめぐる相談は、おおむね次の二つの形に分かれます。
| 場面 | よくある求め方 | 確かめたいポイント |
|---|---|---|
| 売掛を抱えた本人が求められる | 「払えないなら友だちを保証人に立てて」「友だちの連絡先を書いて」と言われる | 本人が友人の代わりに約束できるか、友人の情報を渡してよいか |
| 友人が直接求められる | 一緒に来店した友人が、その場で伝票や借用書への署名を求められる | 署名しなければ義務は生じないこと、署名してしまった後の確認点 |
どちらの場面でも、出発点は共通しています。保証の義務は、保証人になる人が自分で約束しなければ生じない、という点です。
保証の義務は、本人が書面で約束して初めて生じる
民法は、保証契約は書面(またはそれに代わる電磁的記録)でしなければ効力を生じないと定めています(民法446条2項・3項)。保証人になる人が、保証の内容を確認したうえで自ら署名するなどして約束していなければ、保証人としての支払義務は生じません。
そのため、売掛を抱えた本人が「友だちが保証人になってくれると言っていた」と店に伝えたり、友人の名前や電話番号を伝票に書いたりしても、それだけで友人に支払義務が生じるわけではありません。友人が口頭で「いいよ」と言っていた場合でも、書面がなければ保証契約は成立していないと考えられます。
一緒に来店しただけの友人も同じです。同じ席にいたことや、ホストと顔見知りになったことを理由に、ほかの人の売掛を支払う義務を負うことはありません。友人自身が注文して飲食した分の料金は別の問題として残りますが、それと他人の売掛の保証とは分けて考える必要があります。
友人の名前を代わりに書くことは避ける
店から「名前だけ書いておけばいい」と言われ、本人が友人の名前を借用書の保証人欄に書いてしまう例も見られます。友人の承諾なく書いた場合、友人は保証人として扱われず、支払義務を負わないのが原則です。
一方で、書いた本人の側は、他人名義の文書を勝手に作ったとして、私文書偽造などの罪に問われるおそれがあります。後からその点を指摘され、新たな要求の材料に使われることもあるため、求められても応じないことが大切です。
友人の連絡先を店に渡すことの影響
保証人の署名がなくても、友人の連絡先や勤務先を店に伝えると、店やホストから友人に直接連絡が入ることがあります。友人に支払義務がなくても、繰り返し連絡を受けること自体が負担になり、友人関係に影響が出ることもあります。連絡先を求められたときはその場で伝えず、誰が何のために使うのかを確かめることをおすすめします。
「これからの売掛もまとめて」という保証には上限額が必要
ホストクラブの売掛は、来店のたびに金額が増えていくことが少なくありません。そのため、今ある売掛だけでなく、これから生じる売掛までまとめて保証するよう求められることがあります。
このように、将来の不特定の債務までまとめて保証する契約を「根保証契約」といいます。個人が保証人になる根保証契約は、保証の上限額(極度額)を書面で定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項・3項)。「売掛はすべて保証する」といった内容だけで上限額が書かれていない書面であれば、その保証は効力を生じないことになります。
上限額が書かれている場合でも、保証人が負うのはその範囲までです。署名を求められた書面に、保証の対象と上限額がどのように書かれているかは、必ず確かめてください。
保証人の負担は、売掛そのものの中身に左右される
保証人の義務は、主たる債務、つまり売掛を抱えた本人の支払義務を前提にしています。売掛そのものが成り立っていなかったり、取り消せるものだったりすれば、保証人の負担にも影響します。
- 本人が主張できる反論(注文していない、金額が説明と違うなど)は、保証人も店に対して主張できます(民法457条2項)。
- 本人が売掛の契約を取り消せる場合や相殺できる場合、保証人はその範囲で支払いを拒むことができます(民法457条3項)。
- 保証人の負担が本人の負担より重く定められていても、本人の負担の範囲まで減らされます(民法448条1項)。
売掛の中身として問題になりやすいのは、次のような事情です。
- 注文していない飲食やボトルの代金が含まれています。
- 事前に説明された料金と異なる金額が請求されています。
- 酔って判断が難しい状態で、高額な注文をさせられています。
- ホストへの恋愛感情に乗じて、注文を重ねるよう求められています。
- 延滞金などの名目で、高い割合の上乗せがされています。
改正風営法では、料金に関する虚偽の説明、客が注文していない飲食等の提供、客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求が、接待飲食営業を営む者が守るべき事項として定められました。これらは主に行政処分の対象となる規制で、違反があったからといって売掛が当然に消えるわけではありません。ただ、消費者契約法による取消しや、公序良俗(民法90条)に反する契約として無効を主張する場面では、こうした事情が判断材料になります。本人の側でこうした主張ができる場合、保証人もそれを前提に支払いを拒める余地があります。
売掛の支払義務そのものの見分け方は、【風俗トラブル・ホストクラブ】ホストクラブの売掛を請求された|改正後に『払う必要のある売掛』を見分けるで詳しく解説しています。
改正風営法は、保証人を求めること自体を禁じているか
改正風営法は、保証人を立てるよう求めること自体を、直接の禁止行為としては定めていません。ただし、料金を支払わせる目的で客を威迫することは、罰則のある禁止行為とされました。料金を支払わせるために売春や性風俗店での勤務、アダルトビデオへの出演などを要求することも、同じく罰則のある禁止行為です。
保証人を求める場面でも、大声で迫る、帰らせない、家族や職場に知らせると告げるといった言動があれば、威迫として問題になり得ます。取立ての場面で威迫を受けたときの考え方は、【風俗トラブル】売掛の取立てで威迫された|22条の2と刑事罰が使える場面で整理しています。
友人が直接求められて署名してしまった場合には、保証契約そのものについて、強迫による取消し(民法96条1項)や、消費者契約法の困惑類型(帰りたいと伝えたのに帰らせてもらえなかった場合など)による取消しを検討する余地もあります。
友人に保証人を頼む前に考えておきたいこと
店から求められて、友人に頼むかどうか迷っている方は、保証人になった友人が実際にどのような立場に置かれるかを知っておくことが大切です。
| 場面 | 保証人 | 連帯保証人 |
|---|---|---|
| 店が本人より先に請求してきたとき | まず本人に請求するよう求めることができる(民法452条) | この主張はできない(民法454条) |
| 本人に財産があるとき | 先に本人の財産から回収するよう求めることができる(民法453条) | この主張はできない(民法454条) |
| 友人が支払った後 | 本人に対して、支払った分を返すよう求めることができる(民法459条など) | 同じく本人に求めることができる |
借用書の保証人欄が「連帯保証人」となっている場合、友人は本人とほぼ同じ立場で請求を受けることになります。また、友人が支払えば、友人は本人にその分の返還を求めることができます。売掛の問題が、そのまま友人との間の金銭の問題に移ることになり、関係を続けにくくなることもあります。
支払いが難しい状況で保証人を立てても、売掛の額が減るわけではありません。保証人を探す前に売掛の中身を確かめ、支払義務があるのか、あるとしていくらなのかを整理するほうが、本人にとっても友人にとっても負担の少ない進め方になることがあります。
友人の立場で頼まれたとき、署名してしまったとき
頼まれた段階なら、断ってかまわない
保証人になるかどうかは、頼まれた人が自由に決めることができます。断ったことを理由に、友人の側に支払義務が生じることはありません。その場で書面を差し出されても、内容を持ち帰って確認したいと伝え、署名しないことが大切です。身分証の写しを渡すことや、伝票の裏などへの署名にも注意が必要です。
店やホストから直接連絡が続く場合には、やり取りを記録に残し、保証人になるつもりはないことを一度はっきり伝えたうえで、それ以上の対応は専門家に相談することをおすすめします。
すでに署名してしまったとき
署名してしまった後でも、次の点を確かめることで、支払義務の範囲が変わることがあります。
- 署名した書面の写しを手元に用意し、保証の対象になっている売掛の範囲を確かめます。
- 将来の売掛まで保証する内容であれば、上限額(極度額)が書かれているかを確かめます。
- 本人の売掛に、注文していない代金や説明と違う金額が含まれていないかを確かめます。
- 署名したときに、帰らせてもらえない、強く迫られるといった事情がなかったかを振り返り、記録に残します。
請求が来た場合には、すぐに支払うのではなく、請求の根拠となる書面と金額の内訳を示してもらうことから始めます。友人の側だけで店とやり取りを続けると、新たな書面への署名を求められることもあるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
今の段階でできること
売掛を抱えたご本人が、保証人を求められている段階で取れる手立ては、次のとおりです。
- 保証人を立てる約束や、友人の連絡先を伝えることは、その場では保留します。
- 伝票、LINEのやり取り、料金の説明を受けた記録など、売掛の中身が分かるものを手元に残します。
- 威迫や、性風俗店での勤務などを求める言動があれば、日時と内容を記録し、警察への相談も検討します。
- 消費生活センター(消費者ホットライン188)や弁護士に相談し、売掛の支払義務と金額を整理します。
弁護士が代理人として入ると、店やホストとの連絡の窓口を弁護士に一本化できます。友人に保証人を頼む前の段階でご相談いただければ、友人を巻き込まずに進める道を一緒に考えることができます。
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ホストクラブの売掛で保証人を求められると、友人に頼めば当面の請求は収まるように見えるかもしれません。ただ、保証人がついても売掛の中身は変わらず、負担が友人に広がるだけになることもあります。売掛そのものの支払義務を確かめるところから始めることが、ご本人と友人の双方を守ることにつながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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