【風俗トラブル】風俗トラブルの相談は、名前を伏せたままでもできる?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

風俗店を利用した後に店やキャストから連絡が来て、弁護士に相談したいと思っても、「名前を言った時点で記録に残るのではないか」「家族や勤務先に知られないか」と迷い、問い合わせを先延ばしにしてしまう方は少なくありません。

 最初の問い合わせの段階では、名前を伏せたまま状況を伝えられることが多いです。一方で、具体的な助言を受ける段階や、弁護士に交渉を任せる段階では、名前を伝える必要が出てきます。それは相談者のことを詮索するためではなく、弁護士の側に守らなければならない決まりがあるためです。

 この記事では、風俗トラブルの相談で名前を伏せられる範囲と、名前を伺う理由、名前を伝えた後に情報がどう扱われるのかを、段階ごとに整理します。

本記事は、風俗店を利用した客の側が、店やキャスト、その関係者から金銭の請求などを受けている場面を想定しています。問い合わせや相談の受け付け方は事務所ごとに異なるため、実際の扱いは相談先にご確認ください。


名前を伏せたままでも、最初の問い合わせはできる

 弁護士への相談は、「問い合わせ」「相談」「依頼」の3つの段階に分けて考えると整理しやすくなります。名前が必要になるかどうかは、この段階によって変わります。

段階名前の扱いこの段階でできること
問い合わせ伏せたままで受け付ける事務所が多い相談の対象になるか、費用や流れの確認
相談伝えるのが原則状況に即した見通しや対応の助言
依頼必ず伝える弁護士が窓口となって店などと交渉


 問い合わせの段階では、「デリヘルを利用した後に店から連絡が来ている」「示談金として一定の金額を求められている」といった概要を伝えれば、相談の対象になるかどうか、どのような流れで進むのかの案内を受けられることがあります。この段階で名前や勤務先まで伝える必要はないのが一般的です。

 ただし、問い合わせの段階で分かるのは一般的な見通しにとどまります。具体的にどう動くべきか、相手にどう返事をするべきかといった助言は、次の「相談」の段階に進んでからになります。

相談の段階で名前を伺う理由

 具体的な相談に入る前に名前を伺うのは、主に「利益相反」の確認のためです。

相手方の側からすでに相談を受けていないかを確かめる

 弁護士法25条1号は、相手方から相談を受けて助言をした事件や、相手方から依頼を受けた事件について、弁護士がその反対側の依頼を受けることを禁じています。たとえば、同じ店やそのキャストの側から先に相談を受けていた場合、その事件で客の側の相談に乗ることはできません。

 この確認のため、弁護士は相談に入る前に、相談者の名前と相手方の名前を照らし合わせます。風俗トラブルでは、相手方として店の名前や運営会社名、キャストの源氏名、連絡してきた担当者の名前などを伺うことになります。相手方の正式な名前が分からないことも多いため、分かる範囲で構いません。

名前を伏せたまま具体的な助言をすると、後で問題になることがある

 利益相反の確認をしないまま具体的な助言をしてしまうと、後になって相手方とのつながりが分かった場合に、弁護士がその事件に関われなくなるおそれがあります。相談者にとっても、途中まで話した内容が生かせなくなりかねません。名前を伺うのは、相談者自身が安心して相談を続けられるようにするための手順でもあります。

 利益相反の確認の仕組みや、匿名での相談の限界については、次の記事でも解説しています。


別の名前を名乗って相談することは勧められない

 名前を明かしたくない気持ちから、相談の段階で別の名前を名乗ろうと考える方もいるかもしれません。しかし、別の名前では利益相反の確認が正しくできず、依頼の段階で改めて本当の名前を伝え直すことになります。名前を伝えることにためらいがある場合は、その気持ちを最初に伝えていただくほうが、相談の進め方を一緒に考えやすくなります。

相談した内容や名前が、店や家族に伝わることはない

 名前を伝えることへの不安の多くは、「その名前が店や家族、勤務先に伝わるのではないか」という点にあると思います。

 弁護士には守秘義務があり(弁護士法23条)、職務上知った秘密を、本人の了解なく第三者に伝えることは原則としてありません。相談したこと自体についても同じで、依頼に至らず相談だけで終わった場合も変わりません。

 また、相談を受けた弁護士の側から、相談者に無断で店に連絡を入れることもありません。店に連絡を入れるのは、依頼を受け、誰が、いつ、どのような方法で連絡するかを相談者と決めた後になります。

 守秘義務の範囲については、次の記事でも取り上げています。


依頼する段階では名前を伝えるが、店に伝える範囲は別に考えられる

 弁護士に交渉を任せる段階では、委任契約を結ぶため、名前や住所、連絡先を伝えることになります。ここは名前を伏せたままでは進められない部分です。

 ただし、「弁護士に名前を伝えること」と「店に名前を伝えること」は別の問題です。店がすでに本名を把握しているかどうかは、予約の方法や利用時のやり取りによって異なります。

店が本名を知らない場合

 偽名で予約し、身分証も見せていないような場合、店側は電話番号程度の情報しか持っていないことがあります。この場合、弁護士が窓口となって交渉する中で、相談者の本名や住所を店に伝えずに進められないかを検討します。合意書を作成する場面でも、代理人限りで署名する方法が取れないか、相手方と協議することがあります。もっとも、相手方がこれに応じるかどうかは事案によって異なり、希望どおりになるとは限りません。

店がすでに名前や勤務先を把握している場合

 身分証の写しを取られた、名刺を渡した、免許証を撮影されたといった場合は、店側がすでに情報を持っています。この場合は、その情報を使わないよう約束してもらうことが交渉の中心の一つになります。合意書に、相談者の情報を第三者に伝えないことや、写しやデータを消去することを盛り込めないかを検討します。

 予約時の情報の扱いや、偽名で利用していた場合の請求、本名を明かさない合意については、次の記事で詳しく解説しています。


家族や勤務先に知られないための連絡方法を最初に決めておく

 名前を伝えた後に気になるのは、弁護士からの連絡が家族の目に触れないかという点ではないでしょうか。相談や依頼の際には、連絡の方法についても最初に取り決めておくことができます。

  • 連絡を受ける電話番号と、メール・LINEのどれを使うか。
  • 電話をかけてよい時間帯と、避けてほしい時間帯。
  • 留守番電話に事務所名を残してよいかどうか。
  • 自宅に郵便物を送るかどうかと、送る場合の差出人の表記。
  • 連絡がつかないときに、どのくらい待ってから別の手段を取るか。


 家族と共用の端末やメールアドレスを使っている場合は、その点も伝えておくと安心です。連絡手段を先に決めておくことで、相談をきっかけに家族に知られるという事態は避けやすくなります。

 すでに家族が店からの電話に出てしまった場合など、家族への対応が必要な場面については、次の記事も参考にしてください。


名前を伏せた問い合わせで伝えておくとよいこと

 最初の問い合わせを名前を伏せたまま行う場合でも、次のような情報があると、相談の対象になるかどうかや、急ぐ必要があるかどうかを判断しやすくなります。

  • 利用した店の業態(店舗型、派遣型、メンズエステなど)。
  • 利用した日と、店から最初に連絡が来た日。
  • 店から言われている内容(本番行為、盗撮、けがをさせたなど)。
  • 求められている金額と、支払いの期限。
  • その場で書いた書面や、渡した身分証・連絡先の有無。
  • すでに支払ったお金があるかどうか。


 特に、支払いの期限が迫っている場合や、店から「今日中に来るように」と言われている場合は、その点を最初に伝えてください。名前を伝える前の段階でも、急ぐべきかどうかの目安を聞けることがあります。

 相談の前に整理しておくとよい材料については、次の記事でも解説しています。


インターネットの匿名相談サービスとの違い

 インターネット上には、名前を出さずに質問を投稿し、複数の弁護士から回答を受けられるサービスもあります。風俗トラブルについても、利用時の状況や店からの請求内容を書き込んだ質問が数多く見られます。

 こうしたサービスは、同じような立場の人がどう考えているかを知ったり、一般的な考え方をつかんだりするうえでは役立ちます。一方で、回答する弁護士は投稿された文章だけを手がかりにしているため、回答はどうしても一般論にとどまります。書面の文言や、相手からのメッセージの細かな言い回しによって判断が変わる場面では、記録を見たうえでの相談が必要になります。

 また、投稿した内容は公開されるため、利用した店の名前や日時、具体的なやり取りを書き込むと、読む人によっては誰のことか推測できてしまうおそれもあります。公開の場に書き込む内容は、ご自身が特定されない範囲にとどめるのが無難です。

よくあるご質問


問い合わせのときに電話番号は伝える必要がありますか

 折り返しの連絡が必要な場合は、何らかの連絡先を伝えることになります。電話番号を伝えたくない場合は、メールやLINEでの問い合わせを選ぶ方法もあります。

相談したら、必ず依頼しなければなりませんか

 相談だけで終えても構いません。相談した結果、ご自身で対応できると判断される方もいます。依頼しなかった場合も、相談の内容が外に出ることはありません。

家族の名前で相談の予約をしてもよいですか

 相談の当事者は利用したご本人ですので、予約や相談はご本人の名前で行うのが原則です。家族が相談の場に同席することや、家族が先に問い合わせることについては、事情を伝えたうえで相談先と調整することになります。

店から「弁護士に相談したら名前を公表する」と言われています

 弁護士に相談することは、ご自身を守るための正当な行動です。相談したことを理由に不利益を与えると告げられている場合、その言葉自体が交渉のうえで問題になることがあります。言われた内容は、日時とともに記録しておいてください。


まとめ

 風俗トラブルの相談では、名前を伝えることへのためらいから相談が遅れ、その間に店とのやり取りだけが先に進んでしまうことがあります。最初の問い合わせは名前を伏せたままでも行えることが多く、名前を伝える段階に進むかどうかは、その後に決めることができます。まずは状況の概要だけでも伝えてみてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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