出張・旅行先での風俗トラブル|遠方で逮捕・被害届が出たらどうなる

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 出張や旅行先での解放感から立ち寄った風俗店で、盗撮・本番・お触りといったトラブルになってしまう——。その場で警察が来た、あるいは自宅に帰ったあとで見知らぬ地方の警察署から連絡が来た、というご相談は少なくありません。

 こうした「遠方でのトラブル」は、地元で同じことが起きた場合と比べて、判断を難しくする事情がいくつも重なります。身柄を取られれば出張から予定どおり帰れず、家族もすぐには会いに来られません。帰宅後に呼び出されても、事件を扱う警察署は遠く離れた土地にあります。

 この記事では、性風俗を利用した男性が出張・旅行先でトラブルに巻き込まれたとき、「遠方であること」が具体的に何をもたらすのか、そして何に注意して動くべきかを、客側の立場から整理します。どのような罪に当たるか、示談をどう進めるかといった中身の解説は、関連するコラムに譲り、ここでは距離にまつわる部分に絞ります。

なぜ「遠方」だと話がややこしくなるのか

 まず押さえておきたいのが、事件を扱うのは、原則として事件が起きた土地(犯罪地)を管轄する警察署だという点です。地方に住む方が旅行先で、あるいは首都圏に住む方が出張先でトラブルになれば、その土地の警察が捜査を担当します。インターネットを介したやり取りが絡む場合などには、別の管轄になることもあります。

 裁判所の管轄も同じ考え方です。刑事訴訟法2条1項は、裁判所の土地管轄を「犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による」と定めています。つまり、仮に起訴されて公判になった場合、その裁判は犯罪地——出張先や旅行先の土地——の裁判所で開かれることが十分にあり得ます。

 言い換えれば、トラブルが起きた出張先が、そのまま「自分の事件のホーム」になるということです。捜査も、示談交渉の相手方も、場合によっては裁判も、自宅から離れた場所を軸に動いていきます。ここが遠方トラブルの出発点になります。

遠方トラブルには2つの入口がある

 遠方での風俗トラブルは、大きく次の2つの入り方に分かれます。どちらの入口かによって、直面する困りごとが変わってきます。

  • 入口A:その場で身柄を取られる——トラブルの現場やその近辺で、逮捕されたり任意同行を求められたりする。出張先で身動きが取れなくなるパターンです。
  • 入口B:帰宅後に連絡が来る——いったんは何事もなく帰宅したものの、後日、遠方の警察署から呼び出しの電話が来たり、「被害届が出ている」と告げられたりする。

 以下、それぞれについて、遠方ならではの点を見ていきます。

【入口A】出張先でその場で身柄を取られたら

 その場で逮捕されると、身柄は原則として、事件を扱う(犯罪地の)警察署の留置場に置かれます。自宅の近くに移してもらえるわけではないという点が、まず押さえどころです。

 逮捕後は、逮捕による拘束(最長72時間)に続いて勾留が認められると、原則10日、延長でさらに最長10日と、合わせて最長23日ほど身柄拘束が続き得ます。出張の予定どおりに帰ることはできず、会社には長期の欠勤が生じます。この「なぜ帰ってこないのか」が、遠方ゆえにかえって説明しづらくなることもあります。

 家族にとっても遠方は重い負担です。逮捕直後から勾留が決まるまでの数日間は、家族であっても面会が難しく、この段階で会えるのは基本的に弁護士に限られます。遠方の留置場まで家族が繰り返し足を運ぶのも、現実には簡単ではありません。

 だからこそ、遠方で身柄を取られたときは、弁護士へのアクセスの選び方が特に重要になります。

  • 当番弁護士——逮捕された本人や家族の求めに応じて、その地域の弁護士会が派遣する制度です。初回の接見は無料で、まず状況を確認し、取調べ対応の助言を受ける入口として使えます(原則1回限り)。遠方で身柄を取られ、頼れる弁護士の当てがないときの最初の一手になり得ます。
  • 私選弁護人——継続的に依頼する場合の選択肢です。ここで遠方特有の費用が関わってきます。自宅の近くの弁護士に頼むと、接見のたびに犯罪地まで出張する費用がかかり、総額がかさむ原因になり得ます。事件が起きた土地の近くで刑事事件を扱う弁護士を選ぶことも、接見のしやすさやコストの面で有力な選択肢です。
  • 国選弁護人——勾留された後、一定の要件を満たせば、費用の負担なく選任してもらえる制度です。

 なお、「任意同行を求められたが応じるべきか」「その場の求めが実質的に逮捕にあたらないか」といった、任意という手続そのものの意味については、別コラム(警察から呼び出しの電話が来たときの対応)で詳しく整理しています。ここでは、遠方だと身柄と弁護士アクセスの問題がより切実になる、という点を押さえてください。

【入口B】帰宅後に遠方の署から呼び出された・被害届が出たと言われたら

 その場では何も起きず帰宅できたとしても、それで終わったとは限りません。捜査は犯罪地で進んでいるため、後日、遠方の警察署から連絡が来ることがあります。「帰ってしまえば大丈夫」と考えるのは危険です。

 電話を受けたとき、まず何を確認すべきか(担当部署・担当者名、自分が被疑者なのか参考人なのか、どの件についてか、日時・場所・持ち物など)は、上記の呼び出しコラムで整理しています。そのうえで、遠方ならではの論点が次の2つです。

 ひとつは、出頭場所の交渉です。 遠隔地への出頭がどうしても難しい場合、最寄りの警察署などで対応してもらえないか相談する余地はあります。ただし、これに応じるかどうかは捜査機関の判断であり、必ず変更してもらえるものではありません。

 もうひとつは、移動にかかる費用です。 遠方への出頭であっても、交通費は原則として自己負担になります。捜査上の必要から嫌疑をかけられている側に旅費が支給されることは、原則としてありません。出頭にあたって費用の扱いがどうなるかは、事前に捜査機関へ確認しておくとよいでしょう。

 一方で、遠いからと無視したり着信を拒否したりするのは避けたほうが賢明です。出頭に応じないことが、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると評価され、かえって逮捕状の請求につながってしまう場合があるためです。日程の調整を申し入れること自体は、通常のやり取りの範囲です。

出張・旅行という状況ならではの困りごと

 罪の重さや示談の中身とは別に、「出張・旅行中だった」という状況そのものが、次のような現実的な悩みを生みます。

帰りの予定が崩れる
 身柄を取られれば、新幹線や飛行機、宿泊の予定はそのまま流れます。取調べのために再度その土地へ足を運ぶ必要が出ることもあります。

会社への説明に困る
 長期の不在をどう説明するかは、遠方であればあるほど取り繕いにくくなります。風俗トラブルが会社に発覚する典型的なルートや、私生活上の行為と懲戒・失職の関係については、別コラム(風俗トラブルが原因の失職・懲戒)で扱っています。慌てて場当たり的な説明をする前に、見通しを立てておくことが大切です。

示談を地元からどう進めるか
 ここは特に注意が必要です。相手方(キャストなど)や店に対して、自分から直接連絡を取って謝罪したり示談を持ちかけたりするのは避けてください。相手の連絡先を無理に調べて接触することは、新たなトラブルの火種になり、証拠隠滅を疑われる材料にもなりかねません。示談を検討する場合は、捜査機関を経由して連絡を取り次いでもらう、あるいは弁護士を通じて進めるのが原則です。遠方にいて直接動けないからこそ、窓口を一本化する意味は大きいといえます。

なお、性犯罪にあたる行為(不同意わいせつ罪や不同意性交等罪など)は、2017年の改正で非親告罪とされており、被害者との示談が成立しても当然に不起訴となるわけではありません。示談は処分を軽くする方向に働き得る一要素ですが、それだけで結論が決まるものではない、という前提も押さえておいてください。

起訴後・裁判になった場合の見通し

 前述のとおり、起訴されて公判になった場合、その裁判は犯罪地の裁判所で開かれることがあり得ます。遠方に住んでいれば、そのたびに現地へ足を運ぶ負担が生じます。

 ただし、住居が遠方だからといって保釈が認められないわけではありません。保釈は起訴後の手続ですが、住まいが離れていても、逃亡のおそれがないことを、本人の反省や家族の監督の具体的な内容とともに示すことができれば、認められる余地はあります。遠方であること自体が直ちに不利に働くと決めつける必要はありません。

避けたいこと・やっておきたいこと

 最後に、遠方トラブルで特に意識したい行動を整理します。

避けたいこと

  • 慌ててその場で高額の金銭を払う、内容を確かめないまま書面にサインする
  • スマートフォン内のデータを削除する(復元され得るうえ、証拠隠滅と評価されかねません)
  • 相手方や店に自分から直接連絡・謝罪する
  • 逃げるように帰宅して、以後は着信を拒否・放置する
  • うろ覚えの記憶で、あいまいな点まで断定的に話す

やっておきたいこと

  • 身の安全を最優先にする(その場で危険が及ぶなら110番)
  • 何がいつ起きたのかを時系列でメモし、記録(やり取りの画面など)を消さずに残す
  • できるだけ早い段階で弁護士に相談する(犯罪地の近くで刑事事件を扱う弁護士も視野に入れる)
  • 連絡や交渉の窓口を一本化する
  • 会社の休みの取り方など、現実的な段取りも並行して考える

 遠方でのトラブルは、「距離」がそのまま不安や判断の遅れにつながりがちです。何罪にあたるのか、示談や弁護士費用は具体的にどうなるのか、といった中身は、それぞれの関連コラムをあわせてご覧ください。距離の問題は、早めに専門家へ相談することで、現実的な負担をかなり抑えられる部分でもあります。

若井綜合法律事務所では、全国から365日24時間相談を受け付けております。
現在まで、北海道から沖縄まで風俗店のトラブルを100%客側に立ち対応してまいりました。
出張中や旅行中に起きたトラブルについても速やかに対応いたします。
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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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