【親子問題】SNSで知り合った相手に子が金を送り続けている|ロマンス詐欺・投資勧誘の構造と、止められない理由
この記事は、2026年10月時点の民法・労働基準法などの規定と、行政の解釈をもとに書いています。2022年4月から成年年齢は18歳に引き下げられており、この記事でいう「成人した子」は18歳以上の子を指します。
「子が会社に行かなくなって1週間になります。会社から家に電話がかかってくるので、親の私から『辞めます』と伝えてしまっていいのでしょうか」。親子問題のご相談では、こうした声を伺うことがあります。一方で、「子は辞めたいと言っているものの、会社に電話をかける気力がないようです。代わりに連絡するのは甘やかしになるのでしょうか」と迷われる親御さんもいます。
退職の連絡は本人がするもので、親が出ていくのは過保護だという受け止め方もあれば、親が連絡すれば手早く片づくという話も見かけます。どちらも一面ではありますが、法律の上で「誰が退職を決めるのか」「親の連絡はどういう位置づけになるのか」を分けて考えないと、会社とのやり取りがかえってこじれることがあります。
この記事では、無断欠勤している成人した子に代わって親が会社に退職を伝える場面を取り上げ、親の連絡が持つ意味、無断欠勤が続いたときに会社の側で進むこと、連絡の前に確かめたいことを順に整理します。子の勤務先から親に連絡が来たときの一般的な受け答えは、【親子問題】子の勤務先から親に連絡が来た|会社とのやり取りの範囲で扱っています。
親が伝えても、それだけで退職が成り立つわけではない
退職を決めるのは、会社と雇用契約を結んでいる子本人
雇用契約は、会社と働いている本人との間で結ばれています。期間の定めのない雇用であれば、労働者はいつでも解約の申入れができ、申入れから2週間が経つと契約は終了します(民法627条1項)。期間の定めがある雇用でも、やむを得ない事由があれば直ちに契約を解除できるとされています(同法628条)。
ここで押さえておきたいのは、退職の意思表示をする立場にあるのが子本人だという点です。子が18歳以上であれば、親には子の契約について法律上当然に代理する権限(法定代理権)はありません。親が「辞めさせます」と伝えても、子本人の意思に基づかない限り、それだけで退職の効果が生じるわけではありません。
会社の側から見ても、親からの連絡だけでは本人が本当に辞めるつもりなのかが分からないため、本人への確認を求めるのが一般的です。後になって子が「辞めるつもりはなかった」と言い出せば、会社も親も対応に困ることになります。成人した子の問題に親がどこまで関われるかは、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲でも整理しています。
子が決めたことを「伝える」連絡なら、親が担うこともできる
他方で、子が自分で退職を決めていて、その内容を親が会社に伝えるだけであれば、法律上問題になりにくい場面です。この場合の親は、子が決めた意思を届ける役回り(使者と呼ばれます)にあたります。また、子が親に「会社とのやり取りを任せる」と頼んでいれば、親が子の代理人として連絡することも考えられます(民法99条)。
いずれの場合も、出発点は子本人の意思です。無断欠勤が続いていると、親としては早く会社への迷惑を止めたいと考えがちですが、まず子が「辞める」と決めているかを確かめることが、結果として会社とのやり取りを短くします。
なお、弁護士でない者が報酬を得る目的で会社と退職条件などを交渉することは、弁護士法72条との関係で問題になることがあります。親が無償で子の意思を伝えることはこれにあたりませんが、未払いの賃金や退職日をめぐって会社と話がまとまらない場合は、交渉を担える弁護士への相談を考える段階といえます。
子が18歳未満の場合は扱いが異なる
子が18歳未満の場合、親権者は、労働契約が子にとって不利であると認めるときに、将来に向けてその契約を解除できます(労働基準法58条2項)。ただし、これは子に不利な契約から子を守るための規定であり、どのような場合でも親の判断で辞めさせられるという意味ではありません。子が働き続けたいと考えているなら、その意思も踏まえて判断することになります。
無断欠勤が続くと、会社の側では何が進むのか
会社が親に連絡してくるのは、まず安否を確かめるため
本人と連絡がつかない状態が続くと、会社は登録されている緊急連絡先に電話をかけたり、自宅を訪ねたりして、本人の無事を確かめようとします。親に電話が来るのは、親の責任を問うためというより、本人の状況が分からないためであることが多いと考えられます。
子の無事が確かめられているなら、親からはその事実と、本人と話をしたうえで改めて連絡することを伝えれば足ります。その場で退職を約束したり、子の事情を細かく説明したりする必要はありません。子が部屋から出てこず、親も様子が分からない場合の確かめ方は、【親子問題】子が自室から出てこない|安否確認はどこまで許されるかで解説しています。
懲戒処分や解雇が検討される目安
連絡のない欠勤は、多くの会社の就業規則で懲戒の対象とされています。解雇予告を不要とする場合についての行政の認定基準では、原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合が例として挙げられており(労働基準法20条1項ただし書に関する行政解釈)、実務ではこの期間が一つの目安とされています。
また、就業規則に「連絡のない欠勤が一定期間続いた場合は退職とする」といった定めを置く会社もあります。欠勤が長引くほど、本人の意思による退職ではなく、会社の判断で雇用が終わる方向に進むおそれがあります。懲戒解雇となった場合は、退職金の扱いや雇用保険の給付、次の仕事を探すときの説明などに影響することも考えられます。
会社から損害賠償を求められる場面は限られる
無断欠勤や急な退職について「損害賠償を請求する」と言われ、心配される親御さんもいます。もっとも、欠員の補充に手間や費用がかかったという程度で、退職した人に賠償の責任が認められることは多くないと考えられています。会社の重要な物を持ち出したまま連絡を絶っているといった事情があれば話は別ですので、貸与されている物は早めに返す段取りをつけておくことが大切です。
また、子が成人していれば、子の仕事上の責任を親が当然に負うことはありません。ただし、入社の際に親が身元保証書に署名している場合は、その内容を確かめておく必要があります。
親が会社に連絡する前に確かめたいこと
子は「辞めたい」のか、「今は行けない」のか
無断欠勤の背景には、職場の人間関係や仕事の負担、体調の悪化など、さまざまな事情があります。子が口にしている「もう行かない」が退職の意思なのか、今は出勤できないという意味なのかで、取るべき対応は変わります。
体調や心の不調が原因であれば、退職より先に、勤務先の休職制度や、健康保険の傷病手当金(健康保険法99条)を使える余地がないかを確かめる方法もあります。退職を急いで決めると、在職中であれば使えた制度の利用の幅が狭まる場合があります。医療につなぐかどうかの判断については、【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断も参考にしてください。
子が自分で連絡できない理由を聞いておく
子が自分で会社に連絡しない理由が、上司と話すのが怖い、責められるのがつらいといった気持ちの問題なのか、体調が悪く話せる状態にないのかによっても、親の関わり方は変わります。電話がつらいのであれば、メールや郵送の退職届で本人から伝える方法もあります。
親が代わりに連絡するのは、本人が自分で伝える方法を考えたうえで、それが難しいときの選択肢と位置づけておくとよいでしょう。親がすぐに引き受けてしまうと、子が自分の言葉で会社に向き合う機会がなくなることもあります。
連絡の前に親子で決めておくこと
親が会社に連絡するのであれば、事前に次のような点を子と確かめておくと、会社とのやり取りで迷う場面が減ります。
- 退職するのか、休職などを希望するのか。
- 退職する場合、いつを退職日とするか。
- 退職届を本人が書いて郵送できるか。
- 会社から借りている物(社員証・制服・パソコンなど)と、職場に残している私物。
- 会社に伝えてよいこと、伝えてほしくないこと。
- 今後、会社からの連絡を誰が受けるか。
子が話し合いそのものに応じない場合、親だけで動ける範囲は限られます。その場合の考え方は、【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲で取り上げています。
会社に伝える内容と、退職後の手続
親から会社に伝える内容は「本人が決めたこと」に絞る
子が退職を決めていて、親が連絡を引き受ける場合は、子の意思を伝える立場であることをはっきりさせておくと、会社も対応しやすくなります。たとえば、本人が退職の意思を固めていること、本人の希望する退職日、退職届は本人が署名して郵送すること、欠勤について本人に代わってお詫びすること、といった内容です。
反対に、子の病状や家庭の事情を詳しく説明する必要はありません。会社への不満がある場合も、親の電話の中で持ち出すと話が長引きやすくなります。未払いの賃金などの問題が残っているときは、退職の連絡とは切り分けて考えるほうが進めやすいでしょう。親からの連絡は本人の決めたことを伝える範囲にとどめ、会社が本人の意思を確かめられる形を残しておくことが、行き違いを防ぐことにつながります。
退職届は本人の署名で出す
親が退職届を代わりに書いて署名・押印することは、避けたほうがよいでしょう。本人の意思によるものかを会社が確かめられず、受け付けてもらえないことがあるうえ、後で本人が否定したときに争いの種になります。本人が署名した退職届を、配達の記録が残る方法で郵送するのが、行き違いの起きにくい方法です。
退職後に必要になる手続
退職が決まった後も、いくつかの手続が残ります。最後の給料は、法律上、本人に直接支払うものとされているため(労働基準法24条1項)、親が代わりに受け取ることは原則としてできません。本人の口座に振り込まれる形で受け取ることになります。
ほかにも、次のような書類や手続を確かめておく必要があります。
- 源泉徴収票の受け取り(次の勤務先での年末調整や確定申告に使います)。
- 雇用保険の離職票(失業給付を受けるときに使います。本人が希望すれば会社が交付の手続をします)。
- 健康保険の切替え(任意継続、国民健康保険への加入、家族の被扶養者になるなど)。
- 国民年金への切替え(会社の厚生年金を抜けた後の手続です)。
- 貸与物の返却と、職場に残した私物の引き取り。
これらの手続は、本来は子本人が行うものです。親が手伝う場合も、本人が内容を把握できるよう、書類は本人に渡して一緒に確かめる形をとるとよいでしょう。
退職の連絡で終わらない親子の課題
辞めた後の暮らしをどう組み立てるか
会社への連絡が済むと、親としては一区切りついたように感じるかもしれません。しかし、無断欠勤に至った背景がそのまま残っていれば、次の仕事でも同じことが起きたり、家で過ごす期間が長くなったりすることがあります。退職をきっかけに、生活費の負担や家での過ごし方をどうするかを、親子で話し合っておくことが望まれます。
次の仕事に向けては、地域若者サポートステーションなどの就労支援を使う方法もあります。詳しくは【親子問題】就労支援の選択肢|サポステ・就労準備支援事業の実際や、【親子問題】仕事探しの現実|職歴の空白をどう埋めるかで解説しています。
親が窓口を抱え込みすぎないために
勤務先とのやり取りを親が引き受け続けると、子が自分の問題に向き合う機会が少なくなり、親の負担も大きくなります。退職の連絡が、親が子の代わりに何でも処理する流れの始まりにならないよう、親が引き受ける範囲をあらかじめ決めておくことも一つの考え方です。
家庭の中に暴力やお金の要求といった問題があり、親子だけで話を進めるのが難しい場合は、第三者が間に入る方法もあります。親子の間に第三者が入ることで、親も子も感情的な対立から少し離れて、これからのことを考えやすくなります。弁護士が関わることで何が変わるかは、【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で取り上げています。
よくあるご質問
親が書いた退職届を会社に出してもいいですか?
おすすめできません。本人の署名がない退職届では、本人の意思によるものかを会社が確かめられないため、改めて本人への確認を求められることが多いと考えられます。後で本人が「出した覚えはない」と言えば、退職が成り立っているのかをめぐって争いになるおそれもあります。本人に署名してもらい、郵送で提出するのが行き違いの起きにくい方法です。
会社から「このままでは懲戒解雇になる」と言われました。親にできることはありますか?
まず子本人の意思と体調を確かめ、退職するのであれば、本人から、または本人の了解を得て親から、その旨を早めに会社に伝えることが考えられます。体調不良が欠勤の理由であれば、医療機関を受診し、休職などの扱いを相談できる余地がないかを確かめる方法もあります。親が本人の意思を確かめないまま退職を約束することは、避けたほうがよいでしょう。
弁護士に頼めば、子の代わりに退職の手続をしてもらえますか?
弁護士が子の代理人として会社とやり取りするには、子本人からの依頼(委任)が必要です。親からの依頼だけで、子の代わりに退職を申し入れることはできません。一方、親の代理人として、子と今後の生活について話し合う場を設けたり、親が取るべき対応を整理したりすることは考えられます。
まとめ
- 成人した子の退職を決めるのは子本人であり、親に法律上当然の代理権はない(民法4条・99条)。
- 期間の定めのない雇用は、退職の申入れから2週間で終了するのが原則である(民法627条1項)。
- 子が決めた退職の意思を親が伝えることはでき、本人に頼まれていれば代理人として連絡することも考えられる。
- 18歳未満の子については、契約が子に不利な場合に親権者が将来に向けて解除できる(労働基準法58条2項)。
- 2週間以上の無断欠勤が続くと、会社の判断で解雇などに進む一つの目安とされている(同法20条1項ただし書に関する行政解釈)。
- 最後の給料は本人に直接支払われるもので、親が代わりに受け取ることは原則としてできない(同法24条1項)。
- 退職届は本人の署名で出し、退職後の保険・年金・離職票などの手続も確かめておく。
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お子さんの無断欠勤や退職をきっかけに、この先の暮らしをどうするか考え始めた方は、早い段階でご相談ください。ご相談から自立までの流れや費用は、【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問でご案内しています。


