【親子問題】子の自己破産に親は協力すべき?親への影響は?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

子の借金が返せなくなり、自己破産を考えていると打ち明けられた。そうした場面で親御さんから多く寄せられるのは、「親にも請求が来るのか」「親の家や預金まで調べられるのか」「協力しなければならないのか」というご相談です。子の弁護士から書類の提出を頼まれ、どこまで応じてよいのか迷っているという方もいます。

 自己破産について解説した情報の多くは、「家族にはほとんど影響がない」と説明しています。原則としてはそのとおりですが、親が子の連帯保証人になっている、子にお金を貸している、子と同居して家計を共にしているといった事情があると、親にも具体的な手続や負担が生じることがあります。

 この記事では、成人した子が自己破産をする場面を親の立場から見て、親に及ぶ影響と、協力するかどうかを決める前に整理しておきたいことをまとめます。子の借金を親が返す義務があるかという一般的な問題は、【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのかで解説しています。

この記事は、成人した子が自己破産を検討・申立てする場面を、親の立場から整理したものです。破産手続の進め方や求められる資料は、裁判所や事案によって異なります。


子の自己破産で、親に及ぶ影響・及ばない影響


親が子の借金を引き継ぐわけではない

 自己破産は、子本人の財産と債務を整理する手続です。子が免責を受けても、その借金が親に移るわけではありません。親子の間には扶養義務がありますが(民法877条1項)、これは生活に困っている親族を援助する義務であり、子が自分で契約した借金を親が代わりに返す義務とは別のものです。

 破産したことは子本人について官報に掲載され、子の信用情報に登録されますが、親の信用情報や戸籍に記録が残ることはありません。親自身のクレジットカードや住宅ローンが、子の破産を理由に使えなくなることも通常はありません。

影響が出やすいのは4つの立場

 一方で、親が次のような立場にあると、子の自己破産が親の生活に直接関わってきます。

親の立場起きやすいことまず確認したいこと
子の連帯保証人・保証人債権者から親に請求が届く契約書の種類と残高
子にお金を貸している親も債権者の一人として扱われる貸した時期・金額・返済の有無
子と同居している世帯の家計や親の収入の資料を求められる家計を共にしているか
子名義の物を使っている・共有している車や共有不動産が処分の対象になる名義と購入資金の出どころ


親が子の連帯保証人になっている場合


子が免責されても、保証の責任は残る

 子が免責を受けても、債権者が保証人に対して持つ権利には影響しないと定められています(破産法253条2項)。そのため、奨学金や賃貸住宅、ローンなどで親が連帯保証人になっていると、子の申立てをきっかけに、債権者から親へ請求が届くことになります。子が分割で返していた借金でも、親には残額をまとめて請求されることがあります。

 どの契約に親が保証人として入っているのかを、子自身が把握していないこともあります。子が弁護士に依頼すると債権者に通知が届き、その後に保証人への請求が始まるのが一般的な流れです。親としては、自分が保証人になっている契約を、子の申立て前に洗い出しておくことが備えになります。

請求が届いたときの考え方

 保証人への請求は一括の形で届いても、債権者との話し合いで分割払いに応じてもらえることがあります。連帯保証人ではなく単なる保証人で、ほかにも保証人がいる場合は、負担の範囲が変わることもあるため(民法456条)、契約書の文言を確認してから対応を決めることが大切です。保証債務の支払いが親の生活を圧迫する場合は、親自身の債務整理を検討する場面もあります。保証人になった後に取れる手立ては、【親子問題】保証人になってしまった後にできることで整理しています。

親が子にお金を貸している場合


親も債権者の一人として扱われる

 親が子の生活費や返済資金を貸していた場合、親は消費者金融などと同じく債権者の一人として、子が裁判所に出す債権者の一覧に載ることになります。裁判所から親宛てに通知が届くこともあり、子が免責を受ければ、親が貸したお金も原則として返してもらえなくなります。

 「親から借りた分は一覧に書かず、あとで返す」と考える子もいますが、債権者を正確に申告しないことは、手続上の問題として扱われるおそれがあります。親子の貸し借りであっても、ほかの債権者と同じように扱われるという前提で考えておく必要があります。

申立て前に「親にだけ返す」と問題になる

 支払いが苦しくなってから子が親にだけ借りたお金を返すと、特定の債権者だけを優遇する「偏頗弁済(へんぱべんさい)」にあたることがあります。偏頗弁済は後から破産管財人に否認され、親が受け取ったお金を返すよう求められることがあります(破産法162条1項)。受け取った側が親族や同居者である場合は、子の苦しい状況を知っていたものと推定されるため(同条2項1号、同法161条2項)、親の側から「知らなかった」ことを示さなければならなくなります。

 事情によっては、子自身の免責の判断に影響することもあります(同法252条1項3号)。子から「今のうちに返しておきたい」と言われたときは、受け取る前に、子が依頼している弁護士の判断を確認するのが安全です。親が子に貸したお金の扱いは、【親子問題】子に貸したお金を返してもらいたい|「もらった」と言われたときの整理と請求の進め方でも解説しています。

同居している親に求められること


世帯の家計や収入の資料を求められることがある

 自己破産の申立てでは、子の収入と支出を示す家計の資料を提出します。親と同居して家計を共にしている場合は、世帯全体の収支が確認の対象になることが多く、裁判所から親の給与明細や年金の資料を求められることもあります。

 これは親の財産を処分するためではなく、子の生活の実態を確認するためのものです。提出に応じるかどうかは親が決めることですが、資料がそろわないと手続が進みにくくなることがあります。どの資料が何のために必要なのかを子の弁護士から説明してもらったうえで、判断するとよいでしょう。

子名義と親名義の線引き

 処分の対象になるのは子名義の財産です。親が日常的に使っている車でも子の名義であれば処分の対象になることがあり、子が本会員のクレジットカードの家族カードを親が使っている場合は、利用できなくなります。親の家を子と共有している場合や、子が相続で実家の持分を持っている場合は、子の持分が処分の対象となり、親が買い取りを打診されることもあります。

 反対に、親名義の家や預金が処分されることはありません。ただし、申立て前に子の財産を親の名義に移すと、財産隠しと受け取られ、子の免責が認められなくなったり、移した財産を取り戻されたりするおそれがあります。名義の整理は、申立て前に弁護士に相談しながら進めることが大切です。子の携帯や車の名義の問題は、【親子問題】子の携帯・車の名義を親が持っている場合のリスクもあわせてご覧ください。

協力するかどうかを決める前に整理したいこと


肩代わりを続けるか、手続に進むか

 子の借金を親が返してしまえば、その場は収まります。ただ、浪費やギャンブル、ホストクラブへの支出などが原因の場合、親が返済を引き受けるほど、借りる習慣そのものは変わらないことがあります。自己破産は借金を整理して生活を立て直すための手続ですが、一度免責を受けると、7年以内の再度の免責は認められにくくなるという制限もあります(破産法252条1項10号)。

 浪費やギャンブルは免責が認められない事由に挙げられていますが(同条1項4号)、事情を考慮して裁判所が免責を認めることもあります(同条2項)。原因が浪費だから手続を使えないと決めつけず、子の弁護士の見通しを聞いたうえで、肩代わりと手続のどちらが家族にとって負担が少ないかを考えることになります。親がまとまった金額を肩代わりする場合は税金の扱いが問題になることもあるため、税理士への確認も検討してください。浪費が原因の場合の考え方は、【親子問題】ホスト・推し活・ギャンブルへの支出が原因の場合で整理しています。

協力の範囲は親が決めてよい

 自己破産の申立ては子本人が行う手続で、親に協力する法的な義務があるわけではありません。協力の中身としては、資料の提出、弁護士費用や裁判所に納める費用の援助、手続中の生活の支えなどが考えられますが、どこまで応じるかは、親自身の生活や老後の資金とのバランスで決めることです。

 費用を援助する場合は、贈与として渡すのか、後で返してもらう貸付として渡すのかを明確にし、子の弁護士にも伝えておくと、手続の中で扱いが問題になるのを避けやすくなります。

子の弁護士は親の代理人ではない

 子の破産を担当する弁護士は、子の代理人です。親が保証人や債権者である場合、親と子の利害は一致しないことがあり、子の弁護士が親の立場に立って助言することはできません。また、「破産の費用がいる」「手続のためだ」という名目で、子からの金銭の要求が続いてしまう家庭もあります。親の財産や生活を守る観点から相談したいときは、親の側で別に相談先を持つことも一つの方法です。子からの金銭の要求への向き合い方は、【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで解説しています。

よくあるご質問


子が自己破産すると、親の信用情報に傷がつきますか

 子の破産によって、親の信用情報に記録が残ることはありません。ただし、親が子の保証人で、請求された保証債務の支払いが滞った場合は、親自身の信用情報に影響が出ることがあります。

子の自己破産が、近所や親の勤務先に知られることはありますか

 裁判所や弁護士から、近所や親の勤務先に連絡が行くことは通常ありません。官報には子本人の情報が掲載されますが、日常的に官報を確認する人は限られています。親が資料として給与明細を提出しても、そのことが勤務先に伝わる仕組みではありません。

免責を受けた後に、子がまた借金をしたらどうなりますか

 免責後の新しい借金は子本人が返すもので、親に支払義務が生じないことは変わりません。ただ、短い期間で再び破産を申し立てても、免責は認められにくくなります。お金の使い方そのものが変わらなければ同じ相談が繰り返されることになるため、手続と並行して、金銭管理の支援を受けられる体制を考えておくことも大切です。

まとめ


  1. 子が自己破産をしても、親が子の借金を引き継ぐことはありません(民法877条1項の扶養義務とは別の問題です)。
  2. 親が連帯保証人になっている契約は、子が免責を受けても親への請求が残ります(破産法253条2項)。
  3. 親が子にお金を貸している場合は、親も債権者の一人として扱われます。
  4. 申立て前に子が親にだけ返済すると、偏頗弁済として返還を求められることがあります(同法162条)。
  5. 同居している場合は、世帯の家計や親の収入の資料を求められることがあります。
  6. 協力の範囲は親が決めることであり、親の側で別に相談先を持つことも選択肢の一つです。


子の借金や自己破産でお悩みの親御さんへ

 子の自己破産は子本人の手続ですが、保証や貸し借り、同居の事情によっては、親の生活にも関わってきます。当事務所では、親御さんの代理人として子との窓口を担い、自立支援カウンセラーと連携して、子の生活の立て直しや金銭管理の支援にも取り組んでいます。詳しくは、【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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