【親子問題】子が親名義の家を勝手に人に貸していたら?
「18歳になった息子が、親に知らせないままローンを組んでいた」「大学1年の娘が高額なエステの契約をしてきた。親の同意がないのだから取り消せるのではないか」。子が18歳を迎えた後、こうしたご相談が親御さんから寄せられることがあります。
この記事は、2022年4月1日に施行された改正民法(成年年齢の引下げ)を前提に、2026年10月時点の法令に基づいて解説しています。個別の契約がどう扱われるかは、契約の内容や勧誘の経緯によって変わります。
18歳になると、親の同意がなくても契約は有効に成立します
民法は、成年を18歳と定めています(民法4条)。成年年齢が20歳だった時代には、18歳・19歳の子が親の同意を得ずに結んだ契約は、原則として取り消すことができました。2022年4月からは、18歳になった時点で一人で有効な契約を結べる立場になり、親の同意がないことだけを理由に契約をなかったことにはできなくなっています。
成年年齢には、一人で有効な契約ができる年齢という意味と、父母の親権に服さなくなる年齢という意味があります。18歳以降は、住む場所や進路を本人が決められるようになるのと同じように、契約を結ぶかどうかも本人が決め、その結果についても本人が責任を負うことになります。
| 項目 | 17歳まで(未成年) | 18歳以降(成年) |
|---|---|---|
| 契約に親の同意が必要か | 原則として必要(民法5条1項) | 不要 |
| 親の同意のない契約 | 本人または親が取り消せる(民法5条2項) | 同意がないことだけでは取り消せない |
| 親が子に代わって契約・解約できるか | 法定代理人としてできる | 本人の依頼がなければできない |
| 契約から生じる支払いの責任 | 取消しがなければ本人が負う | 本人が負う |
携帯電話の購入、一人暮らしの部屋を借りる契約、クレジットカードの作成、ローンを組んでの買い物なども、18歳からは親の同意なしに申し込めます。ただし、申込みができることと審査に通ることは別の話で、収入などの状況によっては契約できない場合もあります。
17歳までに結んだ契約は、18歳以降も取り消せることがある
未成年者が親の同意なく結んだ契約を取り消せる仕組みを「未成年者取消権」といいます。18歳になったからといって、17歳までに結んだ契約についての取消権が消えるわけではありません。
取り消せないとされる主な場面
未成年者取消権には、もともと次のような例外があります。
- 親が同意していた契約。
- 小遣いなど、親が使い道を許したお金の範囲で結んだ契約(民法5条3項)。
- 「成年である」「親の同意を得ている」と偽って相手を信じさせた場合(民法21条)。
- 親から許された営業に関して結んだ契約(民法6条1項)。
年齢を偽った場合でも、業者側から「嘘の年齢を書けばいい」と促されたようなときは、取消しが認められる余地があるとされています。
18歳になった後の支払いに注意が必要な理由
取り消せる契約であっても、取り消すことができる状態になった後に代金を支払ったり、商品を受け取り続けたりすると、契約を認めたもの(追認)と扱われ、取り消せなくなる場合があります(民法124条・125条)。17歳のときの契約について、18歳になってから請求が続いている場合は、支払いを続ける前に、取り消せる契約かどうかを確かめておくことをおすすめします。取消権には期間の制限もあり、追認できる時から5年、契約の時から20年を過ぎると行使できなくなります(民法126条)。
法律とは別に、業者が慎重な運用をしている分野もあります
法律上は親の同意が不要になっても、業者が独自の判断で親の同意や追加の確認を求めることはあります。たとえば貸金業の分野では、成年年齢の引下げに合わせて、金融庁が貸金業者に対し、18歳・19歳への貸付けに特段の配慮をするよう要請しています。業界団体である日本貸金業協会もガイドラインを定め、利用限度額を低めに設定する、資金の使い道を確認する、少額でも収入の証明を求めるといった取組みが紹介されています。
また、貸金業法には、年収の3分の1を超える貸付けを原則として禁じる、いわゆる総量規制があります。収入のない学生が高額の借入れをすることは、制度上もある程度抑えられています。
ただし、こうした取組みは業者ごとに異なり、すべての契約に当てはまるわけではありません。分割払いのローンやクレジット、エステや脱毛、情報商材や副業の勧誘、マルチ商法など、18歳・19歳の若者が狙われやすいとして消費生活センターなどが注意を呼びかけている分野もあります。
18歳以降の契約でも、見直せる道は残っています
未成年者取消権が使えなくなっても、契約を見直す手段がなくなるわけではありません。成年・未成年を問わず使える制度として、次のようなものがあります。
- 特定商取引法のクーリング・オフ(訪問販売・電話勧誘販売・エステなどの特定継続的役務提供は書面を受け取った日から8日間、マルチ商法などは20日間)。
- エステや美容医療、語学教室などの長期契約を、法律で上限が定められた違約金の範囲で途中解約する方法。
- 消費者契約法による取消し(事実と異なる説明、断定的な判断の提供、帰らせない勧誘、不安をあおる勧誘、好意の感情を利用した勧誘など)。
- 民法上の詐欺・強迫による取消しや、錯誤による取消し。
- 個別クレジットを利用した場合に、販売店との間の問題をクレジット会社に主張する方法(割賦販売法の抗弁の接続)。
消費者契約法の取消しには、追認できる時から1年、契約の時から5年という期間の制限があります。クーリング・オフの期間はさらに短く、気づいた時点で日数が残っていることもあれば、すでに過ぎていることもあります。
実際、ポータルサイトの法律相談でも、18歳の学生の子が親に知らせずに脱毛エステの長期ローンを組み、支払開始の通知が届いて初めて知った、という親御さんからの質問が見られます。このような場面では、「18歳だから取り消せない」で終わらせず、クーリング・オフの期間内か、途中解約はできるか、勧誘に問題はなかったかを順に確かめていくことになります。
親は子の契約にどこまで関われるのか
子が18歳になると、親は法定代理人ではなくなります。そのため、親の判断だけで子の契約を解約したり、取り消したりすることはできません。業者によっては、契約者本人以外には契約の内容を伝えないこともあります。
本人と一緒に動くことが前提になる
親ができることの中心は、本人から事情を聞き、契約書や申込みの画面、勧誘時のやり取りといった資料を一緒に確認し、本人が業者や相談窓口に連絡するのを支えることです。消費生活センター(消費者ホットライン188)は家族からの相談にも応じていますが、業者との交渉は、本人の意思を確認しながら進めることになります。
成人した子の問題に親がどこまで関われるかは、契約に限らず多くの場面で問題になります。全体像は、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲で整理しています。
子の契約の支払いを、親が負う義務はない
18歳以降に子が自分の名義で結んだ契約について、親が保証人などになっていない限り、親に支払いの義務はありません。業者から親に支払いを求める連絡が来ても、それだけで親が払う立場になるわけではありません。詳しくは、【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのか、【親子問題】子がローンで車を買い、支払いを親に求めてくる|親に返済義務はあるのかでも解説しています。
一方で、親が連帯保証人になっている場合や、子が親の名義を使って契約した場合は、整理の仕方が変わります。
- 【親子問題】保証人になってしまった後にできること
- 【親子問題】家を借りる際の保証人・保証会社の問題|無職の子のために親が引き受ける前に
- 【親子問題】子が親名義で契約した|追認しないという選択
- 【親子問題】子の携帯料金やサブスクを止めたい|名義と契約の整理
判断能力に不安がある場合
病気や障害などによって、本人の判断する力が十分でない状態で高額な契約を繰り返している場合には、家庭裁判所に補助人や保佐人を選んでもらい、契約に同意や取消しの仕組みを設ける方法が検討されることがあります。本人の意思をできるだけ尊重することが求められる制度で、浪費が多いという理由だけで使えるものではありません。検討の目安は、【親子問題】浪費が止まらない子|保佐・補助を検討する場面で解説しています。
子が18歳を迎える前後に、家庭で話しておきたいこと
契約のトラブルは、起きた後よりも、起きる前に家庭で話題にしておくほうが防ぎやすいものです。18歳の誕生日や進学・就職の時期に合わせて、次のような点を共有しておくと、何かあったときに子から相談しやすくなります。
- その場で決めず、いったん持ち帰って誰かに相談すること。
- 契約書や申込み画面、勧誘時のメッセージを保存しておくこと。
- クーリング・オフには日数の制限があるため、迷ったら早めに動くこと。
- 「今日だけ」「友人を紹介すれば元が取れる」といった勧誘には特に注意すること。
- 困ったときは消費者ホットライン188や家族に相談してよいこと。
「親に知られたら怒られる」と感じると、子は一人で抱え込みやすくなります。責めるよりも、早く話してもらえる関係をつくっておくことが、結果として選べる手立てを多く残すことにつながります。
弁護士に相談したほうがよい場面
契約の金額が大きい場合、業者が解約に応じない場合、すでに支払いが滞って督促が来ている場合、親のもとにまで請求や連絡が来ている場合などは、早めに弁護士に相談することが考えられます。また、子が契約の支払いを理由に親へ繰り返し金銭を求めてくる場合は、契約の問題と親子の間の金銭要求を分けて考える必要があります。
当事務所では、弁護士が親の代理人として、子からの金銭要求への対応や、親名義の契約・保証の整理を行っています。子自身の契約について業者と交渉するには本人の依頼が必要になりますが、親子それぞれの立場を整理したうえで、どの順序で何をすべきかを一緒に考えることはできます。
18歳になった子の契約は、法律上は本人のものです。それでも、契約の経緯や時期によっては見直せる余地が残っていることもあり、親が知っておくべきことも少なくありません。気になる契約が見つかった段階で、資料をそろえて状況を整理しておくことが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


