【親子問題】子が友人から借りたお金を「親が払え」と言ってきたら?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

成人した子から「友達に借りたお金が返せない。親なんだから払ってほしい」と言われ、どう答えればよいか迷う親御さんは少なくありません。子の友人本人から親に電話やメッセージが届き、「親にも責任がある」と返済を求められることもあります。この記事では、子が個人から借りたお金について親に支払う義務があるのか、払う前に何を確かめるべきか、払うと決めた場合と断る場合にどう進めるかを順に整理します。

本記事は2026年10月時点の法令に基づき、主に18歳以上の成人した子を想定して解説しています。子が18歳未満の場合の扱いは、本文中で別に触れています。


保証人になっていなければ、親に返済の義務はありません

 お金の貸し借りは、貸した人と借りた人との間の約束です。子が友人から借りたのであれば、返す義務を負うのは借りた子本人であり、親子であることだけを理由に親が支払う義務を負うことはありません。親が保証人として書面に署名している場合などを除けば、友人が親に返済を求める法的な根拠は基本的にないと考えられます。

 「親には子を養う義務があるはずだ」と言われることもあります。たしかに民法には親族間の扶養義務の定めがありますが、成人した子に対する扶養は、親が自分の生活を維持したうえで余力のある範囲で生活を支えるというものです。子が個人的に作った借金を肩代わりすることまでは含まれていません。扶養義務の範囲については、【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで詳しく解説しています。

 また、友人が子を相手に裁判を起こして判決を得たとしても、差し押さえの対象になるのは子本人の財産です。親名義の預貯金や不動産が、子の借金のために差し押さえられることはありません。子の借金全般について親の責任を整理した記事として、【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのかもあわせてご覧ください。

「払う」と答える前に確かめておきたいこと


借りた金額と経緯が説明どおりか

 子の説明だけでは、実際の金額や借りた時期、返済の約束の内容が分からないことがあります。借用書やメッセージのやり取りが残っているか、これまでにいくら返しているかを確かめ、求められている金額と合っているかを確認します。説明が曖昧なまま支払うと、実際には存在しない借金や、すでに返し終わっている分まで払ってしまうおそれがあります。

 個人間の貸し借りでも、利息制限法の上限を超える利息の約束は、超えた部分が無効になります。上限は元本の額によって次のとおり定められています。

元本の額上限の利率(年)
10万円未満20%
10万円以上100万円未満18%
100万円以上15%


 さらに、年109.5%を超える利息を約束したり受け取ったりした場合は、貸金業者でない個人であっても出資法による処罰の対象になります。友人から高い利息や「返済が遅れた分の罰金」を上乗せされていないかも、確認しておきたい点です。

子が18歳未満のとき

 未成年の子が親の同意を得ずにお金を借りた場合、その契約は原則として取り消すことができます(民法5条)。取り消すと、子は受け取ったお金のうち現に利益として残っている範囲で返せばよいとされています(民法121条の2第3項)。ただし、親から自由に使ってよいと渡されたお小遣いの範囲での行為などは、取り消せないことがあります。返す範囲は事情によって変わるため、取り消しを考えるときは早めに専門家へ相談することをおすすめします。

借金の背景に別の問題がないか

 友人からの借金と説明されていても、実際には先輩や知人から強く返済を迫られていたり、ギャンブルや遊興費の穴埋めだったりすることがあります。知人からの借金や「借りを返せ」という圧力が、違法な仕事に引き込まれるきっかけになることもあります。子が怯えている、急に高額を求めるようになったといった様子があれば、お金の問題として片付ける前に背景を確かめることが大切です。この点は【親子問題】子が闇バイトに関わっていると分かった|親の立場でできること・してはいけないことでも触れています。

親が書面に署名すると、支払う立場に変わることがある

 親に支払う義務がないのは、あくまで親が借金の当事者になっていない場合です。友人や子に求められるまま、「子の借金は私が責任を持って払います」といった念書や、保証人欄のある書面に署名すると、その時点から親自身が支払う義務を負うことがあります。保証契約は書面でしなければ効力を生じないとされていますが(民法446条2項)、裏を返せば、署名した書面があれば保証が成立し得るということです。

 保証とは別に、親が子の借金を一緒に負うことを約束した(併存的債務引受)と評価されることもあります。電話や対面で「私が払います」と答えた内容が録音されていると、後で約束の有無が争いになることもあるため、その場で支払いを約束しないことが大切です。書面への署名を求められたときは、いったん保留して内容を持ち帰ってください。すでに署名してしまった場合については、【親子問題】保証人になってしまった後にできることで解説しています。

それでも親が代わりに払うと決めた場合の注意点

 親に義務はなくても、子の生活や友人関係を考えて、親が代わりに支払うと判断することもあると思います。親が子に代わって借金を返すこと自体は、法律上も可能です(民法474条)。その場合は、次の点を押さえておくと、後のトラブルを減らすことにつながります。

  • 借用書ややり取りの記録で、元本・利息・すでに返した額を確定させること。
  • 子に現金を渡して任せるのではなく、友人に直接支払うこと。
  • 振込など記録が残る方法で支払い、受け取りの確認を書面でもらうこと。
  • 完済したことと、今後は親に請求しないことを書面で確認すること。
  • 立て替えたお金を子に返してもらうのか、援助として渡すのかを子との間で決めておくこと。


 子にお金を渡して「これで返しておいて」と任せると、実際には返済に使われず、借金が残ったまま次の要求が来ることがあります。また、一度支払うと「次も親が払ってくれる」という受け止め方が、子にも友人にも生まれやすくなります。支払うのは一度限りと決め、そのことを子にもはっきり伝えておくことが大切です。立て替えたお金を後から子に返してもらう場面については、【親子問題】子に貸したお金を返してもらいたい|「もらった」と言われたときの整理と請求の進め方も参考になります。

友人から親に直接請求が来たとき

 子の友人から親に連絡が入り、「親が払え」「払わないなら家に行く」などと迫られることもあります。保証人になっていない親は、こうした請求に応じる義務はありません。「本人との間のことなので、本人と話をしてください」と伝え、支払いの約束や書面への署名はしないようにします。

 貸金業者であれば、貸金業法によって、保証人でない家族に返済を求めることや、夜間の電話・訪問などの取り立てが禁止されています。個人の友人にはこの規制が直接は及びませんが、どのような求め方でも許されるわけではありません。危害を加えるような言葉で脅したり、恐怖を感じさせて支払わせようとしたりすれば、脅迫罪や恐喝罪に当たる可能性があります。自宅に来て帰るよう求めても居座る場合には、不退去罪が問題になることもあります。

 連絡があった日時と内容、相手の名前や電話番号は、メモや録音で記録しておきます。身の危険を感じたときはためらわず110番し、繰り返しの連絡で生活に支障が出ている場合は、警察の相談専用電話(#9110)に相談することも考えられます。弁護士が親の代理人として窓口になり、親への直接の連絡をやめるよう求める方法もあります。窓口を代えることの意味は、【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で説明しています。子の交際相手から同じような請求を受けている場合は、【親子問題】子の交際相手が金銭を要求してくる|親が支払う義務と、窓口を代える判断もご覧ください。

子から繰り返し支払いを求められるとき

 「友人に借りたお金」を理由にした要求が一度で終わらず、名目を変えながら何度も続くことがあります。その場合は、一つひとつの借金の問題というより、子からの金銭の要求そのものにどう向き合うかという問題になっています。成人した子からの金銭の要求を断ることは、親として法的に問題のある行動ではありません。断ることの位置づけは、【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで整理しています。

 断ったことで子が声を荒らげたり物に当たったりする場合や、「払わないなら何をするか分からない」と追い詰められる場合は、親だけで抱え込まず、早めに第三者を入れることを考えてください。暴力を受けている場合の初動は、【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録で解説しています。

よくあるご質問


子の代わりに一部だけ払ってしまいました。残りも払わなければなりませんか

 親が一部を支払ったことだけで、残りを払う義務が生じるわけではありません。ただし、支払いの際に「残りも親が払う」と書いた書面に署名していた場合などは、その書面の内容によって扱いが変わることがあります。支払ったときのやり取りの記録を、手元で確認しておくとよいでしょう。

友人が子を相手に裁判を起こしたら、親も訴えられますか

 お金を借りたのが子である以上、訴えられるのは子本人です。親が保証人などになっていなければ、親が当事者として訴えられることは通常ありません。ただし、子が実家に住んでいる場合は、裁判所からの書類が実家に届くことがあります。届いた書類は親が処分したりせず、子に確実に渡すようにしてください。

子が自己破産を考えています。友人からの借金はどうなりますか

 自己破産の手続では、友人など個人からの借金も、ほかの借入れと同じように申告する必要があります。特定の相手にだけ先に返済すると、手続の中で問題になることがあるため、親が友人の分だけを肩代わりしようと考えている場合も、事前に手続を依頼する弁護士に相談しておくことをおすすめします。

当事務所がお手伝いできること

 当事務所では、子の借金や金銭の要求に悩む親御さんの代理人として、友人など相手方との窓口を担い、親に支払う義務がないことを書面で伝えたり、親への直接の連絡をやめるよう求めたりしています。親が支払うと決めた場合には、金額の確認や、完済と今後の請求をしないことを確かめる書面の作成もお手伝いできます。

 お金の問題の背景に、ひきこもりや家庭内暴力、子の生活の立て直しといった課題がある場合には、自立支援カウンセラーとチームを組み、親の保護と子の生活の支援を並行して進める取り組みも行っています。サービスの内容は、【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

 子の借金を前にすると、何とかしてあげたいという気持ちと、払い続けてよいのかという迷いの間で揺れるものです。まずは親に支払う義務があるのかを確かめ、払うにしても断るにしても、記録と書面を残しながら進めることが、親自身と子の生活を守ることにつながります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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