【親子問題】子の問題で近所づきあいを避けるようになった、親の孤立はどう防ぐ?
本記事は2026年10月時点の法令と、一般的な自治体の運用をもとにしています。国民健康保険の保険料(税)の計算方法や減免の基準、納付相談の扱いは自治体ごとに異なりますので、個別の事情はお住まいの区市町村や年金事務所でもご確認ください。
成人した子宛ての督促状や催告書が実家に届き、「親が払わなければならないのか」「家の財産まで差し押さえられるのか」と不安を抱えてご相談に来られる方がいます。子が家を出たまま連絡がつかない、ひきこもりで収入がない、本人に話しても取り合わないなど、事情はご家庭によってさまざまです。
結論からいえば、税金は原則として課税された本人が納めるもので、成人した子の住民税や所得税を親が代わりに納める義務はありません。一方で、国民健康保険の保険料(税)と国民年金の保険料には、世帯主に納付の義務や連帯して納める義務を定めた規定があり、親が子と同じ世帯の世帯主になっている場合には、親に請求が来ることがあります。
この記事では、滞納しているものの種類ごとに親が負う義務の有無を整理し、請求を受けたときや、子から「代わりに払ってほしい」と求められたときに、親としてどう考えればよいかを解説します。
滞納している「もの」の種類によって、親の立場が変わる
「税金を滞納している」とひとくくりにされがちですが、法律上は、住民税や所得税のような税金と、国民健康保険・国民年金のような社会保険の保険料とで、誰が納める義務を負うかの定め方が異なります。まずは届いた書面の名目と宛名を確かめるところから始めると、親として対応が必要かどうかの見通しが立ちます。
| 滞納しているもの | 納める義務を負う人 | 親に請求が来る場面 |
|---|---|---|
| 住民税・所得税・自動車税など | 課税された本人 | 原則としてない |
| 国民健康保険料(税) | 住民票上の世帯主 | 親が子と同じ世帯の世帯主である場合 |
| 国民年金保険料 | 本人(世帯主・配偶者が連帯して納付義務を負う) | 親が子と同じ世帯の世帯主である期間の分 |
表のとおり、親に直接関係してくるのは主に国民健康保険と国民年金です。ただし、住民税などでも、後で触れる相続や財産の譲り受けといった別の事情が加わると、親に影響が及ぶことがあります。
住民税・所得税は、親が納める義務を負わない
住民税や所得税は、所得のあった本人に課される税金です。子が成人していれば、親子であっても別の納税者として扱われ、親が子の税金を納める法律上の義務はありません。親が子と同居していても、親が住民票上の世帯主であっても、この点は変わりません。
督促状が実家に届いた場合
子が実家に住民票を置いたまま別の場所で暮らしていると、督促状や催告書は住民票の住所である実家に届きます。宛名が子本人であれば、届いた書面は子への通知であって、親への請求ではありません。
本人に渡す、あるいは本人に連絡をとって届いていることを伝えるのが基本の対応です。親が役所に問い合わせても、子本人の税の情報は守秘義務の関係で詳しく教えてもらえないことが多く、本人の委任状を求められるのが一般的です。子の住民票が実家に残っていることで書面が届き続けている場合は、住民票の扱いも含めて考える必要があります。
親名義の財産が差し押さえられることはあるか
税金の滞納による差押えは、裁判所の手続を経ずに行政が進められる点で一般の借金と異なりますが、対象になるのは滞納している本人の財産です。親名義の預金や親が所有する自宅が、子の住民税の滞納を理由に差し押さえられることは、原則としてありません。
気をつけたいのは、同居している場合に、家の中の物や預金が誰のものかがはっきりしないケースです。子のお金を親名義の口座で管理している、子が買った物と親の物が混在しているといった状況では、財産の帰属について行政から確認を求められることがあります。日頃から、誰のお金で何を買ったのかを分けておくと、説明がしやすくなります。家計の分け方については【親子問題】家計を分ける実務|口座・光熱費・保険をどう切るかで解説しています。
例外として親に影響が及ぶ場面
住民税などでも、次のような事情があると、親が納税の負担を負うことがあります。
- 子が滞納している間に、子から財産を無償または著しく低い価格で譲り受けた場合は、受けた利益の範囲で親が第二次納税義務を負うことがあります。
- 親が子の滞納税金について納税の保証をした場合は、保証した範囲で親に請求が来ます。
- 子が亡くなり親が相続人になった場合は、相続によって子の納税義務を引き継ぎます。
子が亡くなった場合の滞納税金は、借金と同じく相続の対象になります。子に配偶者や子どもがいなければ親が相続人になりますので、プラスの財産より滞納税金などの負担が大きいときは、相続放棄を検討することになります。相続放棄は、原則として自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。
国民健康保険は、世帯主に納付義務がある
国民健康保険の保険料(自治体によっては国民健康保険税)は、加入者一人ひとりではなく、世帯主が納める仕組みになっています(国民健康保険法76条1項、地方税法703条の4)。保険料は世帯単位で計算され、納付書も世帯主宛てに届きます。
そのため、子が国民健康保険に加入していて、親が同じ世帯の世帯主になっている場合、子の分の保険料が未納になれば、その請求は世帯主である親に向けられます。法律上の納付義務者が親ですので、督促を経て、最終的には親名義の財産への差押えに進む可能性もあります。
親が勤務先の健康保険に入っていても世帯主として扱われる
親自身は勤務先の健康保険や後期高齢者医療制度に加入していて、国民健康保険には入っていないという場合でも、住民票上の世帯主であれば、原則として国民健康保険上の世帯主として納付義務を負います。このような世帯主は「擬制世帯主」と呼ばれ、親自身の保険料はかかりませんが、子の分の保険料を納める義務を負うことになります。
なお、自治体によっては、加入している本人が実際に保険料を支払っている場合などに、国民健康保険上の世帯主を本人に変更できる扱いがあります。お住まいの自治体の国民健康保険の窓口に確認してみるとよいでしょう。
請求を受けた後に検討できること
世帯主として請求を受けた場合でも、すぐに一括で払う以外の方法が用意されていることがあります。
- 失業や収入の大幅な減少、災害などの事情があるときの保険料の減免。
- 世帯の所得が一定の基準以下のときに均等割・平等割が軽くなる軽減。
- 一度に払えないときの分割納付の相談。
軽減の判定には、国民健康保険に加入していない世帯主の所得も含めて計算されるのが一般的です。無収入の子が加入していても、親の所得によっては軽減の対象にならないことがあります。また、子に収入がないことを申告していないと、軽減が受けられないまま保険料が計算されていることもあります。
世帯を分けると何が変わるか
子が住民票上の世帯を分け、子自身が世帯主になれば、その後の子の国民健康保険料は子が世帯主として納めることになり、親が納付義務を負うことはなくなります。ただし、それまでに親が世帯主だった期間の未納分は、世帯を分けても消えません。
また、住民票上の世帯は、住まいと生計をともにする単位として扱われます。同じ家に住みながら世帯を分けられるかどうかは、生計が実際に別になっているかによって判断され、窓口で事情を聞かれることがあります。世帯分離の考え方は【親子問題】世帯分離とは|住民票・保険・年金の扱いでも取り上げています。
国民年金保険料は、世帯主が連帯して納める義務を負う
国民年金の保険料は、本来は加入者本人が納めるものですが、国民年金法88条2項は、世帯主に対して、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を定めています。子が20歳以上で国民年金の第1号被保険者になっていて、親が同じ世帯の世帯主である期間に未納があれば、親にも督促が届くことがあります。
国民年金の場合は、未納のまま置いておくよりも、本人による免除や納付猶予の申請を検討する余地があります。収入がない、または少ない場合には保険料の全部または一部が免除される制度があり、50歳未満であれば、本人と配偶者の所得で判定される納付猶予制度もあります。免除の判定では世帯主の所得も考慮されますが、納付猶予の判定には世帯主である親の所得は含まれません。申請は原則として本人が行うもので、一定の期間はさかのぼって申請できるため、年金事務所や区市町村の国民年金窓口に相談してみるとよいでしょう。
また、親が子の国民年金保険料や国民健康保険料を負担した場合、親と子が生計を一にしていれば、親の所得税・住民税の計算で社会保険料控除の対象になります。払うかどうかを考える際の材料のひとつになります。
親が代わりに払う前に確かめておきたいこと
法律上の義務がない場合でも、親が子の滞納分を自発的に払うことはできます。ただ、一度肩代わりをすると、「次も払ってもらえる」という期待を生むことがあります。払うかどうかを決める前に、次の点を整理しておくことをおすすめします。
- 届いた書面の名目(何の税金・保険料か)と宛名、納付期限。
- 親が世帯主として納付義務を負っている分と、子本人だけが義務を負っている分の区別。
- 滞納の総額と、延滞金が加算されていく仕組み。
- 子本人が減免・分納・免除などの申請をする余地。
- 払う場合に、援助として渡すのか、返してもらう約束の貸付とするのかの区別。
とくに最後の点は、後になって「もらったものだ」「貸したはずだ」という食い違いになりやすいところです。貸付とする場合は書面に残しておくほうがよいでしょう。子の借金全般について親がどこまで責任を負うかは【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのかで整理しています。
子から「税金を代わりに払ってほしい」と求められたとき
滞納の請求をきっかけに、子から親へ支払いを強く求められることもあります。「払わないと差し押さえられる」「親のせいでこうなった」と迫られ、言われるまま払い続けているご家庭もあります。
住民税のように親に納める義務がないものについては、払うかどうかは親が決めてよいことです。成人した子に対する親の扶養義務は、親が自分の生活を維持したうえで余力がある範囲での援助と考えられており、子の税金を払い続けることまで求められるものではありません。扶養義務の範囲については【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで解説しています。
一方で、断ったことで暴言や暴力に発展するおそれがある場合や、すでに金銭の要求が繰り返されている場合は、親が一人で子と向き合い続けるのは負担が大きくなります。当事務所では、弁護士が親の代理人として子との窓口に立ち、金銭の要求を整理するとともに、自立支援カウンセラーと連携して子の生活の立て直しを支える取組みを行っています。子が自分で役所に相談し、分納や免除の手続を進められるよう支えることも、自立に向けた一歩になります。要求への向き合い方は【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
家を出て行方が分からない子の督促状が届き続けています。親が払う必要はありますか
住民税などであれば、親が払う義務はありません。国民健康保険料や国民年金保険料の場合は、子が家を出た後も住民票が実家の世帯に残っていれば、親が世帯主として請求を受ける可能性があります。子が実際にはその住所に住んでいないのであれば、住民票の扱いを含めて区市町村の窓口に相談することが考えられます。
ひきこもりで収入のない子の国民健康保険料も、親が払うのですか
子が親と同じ世帯で国民健康保険に加入していれば、収入がなくても均等割などの保険料がかかり、世帯主である親に納付義務があります。子の所得の申告をしておくと軽減の判定を受けられる場合がありますので、まずは申告の状況を確認するとよいでしょう。
まとめ
- 成人した子の住民税や所得税を、親が納める義務は原則としてありません。
- 国民健康保険料(税)は世帯主に納付義務があり、親が子と同じ世帯の世帯主であれば親に請求が来ます。
- 国民年金保険料は、世帯主が連帯して納める義務を負います。
- 子が亡くなった場合の滞納税金は相続の対象になるため、相続放棄を含めて早めの検討が必要です。
- 肩代わりをするかどうかは、義務の有無を確かめたうえで、親自身の生活を守れる範囲で判断することが大切です。
子の滞納の問題は、お金の話であると同時に、子との距離の取り方の問題でもあります。親が負うべきものとそうでないものを分けて考えることが、子が自分の問題として向き合うきっかけにもなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


