【親子問題】子が「起業する」と言って資金を求めてきたら、出すべき?
ひきこもりの状態が続く子が、何日も入浴しない、同じ服を着続けている。部屋に近づくとにおいが気になり、声をかけても返事がない。こうした状況に、どこまで口を出してよいのか、放っておいてよいのか迷っている親御さんは少なくありません。本記事では、入浴や着替えをしなくなる背景、親がしてしまいがちな対応とその影響、法律の面から見た「できること・控えたいこと」、そして外部に相談を考えたい目安を整理します。
本記事は、主に成人した子と同居している親御さんを想定しています。未成年の子の場合は、学校や児童相談所など相談先が異なる部分があります。
入浴や着替えをしなくなる背景
入浴や着替えは、毎日当たり前に行っているようでいて、実は多くの気力と段取りを必要とする行動です。服を脱ぎ、体を洗い、髪を乾かし、新しい服を選んで着る。気持ちや体力が落ちているときには、この一連の流れが大きな負担に感じられることがあります。各地の精神保健福祉センターが家族向けに出している資料でも、身なりを気にしなくなることや昼夜逆転は、ひきこもりの状態にある人に見られやすい様子の一つとして挙げられています。
気力や体調の低下が表れていることがある
入浴をしなくなる背景には、意欲の低下や疲れやすさ、睡眠の乱れなどが隠れていることがあります。うつ状態など心の不調が関係している場合もあり、本人の「怠け」や「わがまま」と決めつけてしまうと、本当の原因を見落とすおそれがあります。
人目や感覚の問題が関係していることもある
浴室が家族と共有の場所であるため、家族と顔を合わせたくないという理由で入浴を避けている場合もあります。また、お湯の温度や水の感触、服の肌ざわりなどに強い不快感を覚える人もいます。理由は一人ひとり異なり、本人自身もうまく説明できないことが多いため、「なぜ入らないのか」を問い詰めても答えが返ってこないことがあります。
親がしてしまいがちな対応と、その影響
| 親の対応 | 起こりやすいこと |
|---|---|
| 強い口調で叱る、責める | 本人が自分を責める気持ちを強め、親との会話そのものを避けるようになることがある |
| 毎日繰り返し入浴を促す | 「また言われる」という負担感から、浴室や家族のいる場所に近づかなくなることがある |
| 食事やお小遣いを入浴の条件にする | 親子の関係が取引のようになり、反発や不信を招くことがある |
| 何も言わず、関わりを断つ | 体調の変化や心の不調に気づくきっかけを失うことがある |
親としては、心配だからこそ強く言ってしまうものです。ただ、入浴の回数を増やすことだけを目標にすると、親子のやり取りが「入浴させる・させられる」の攻防になりがちです。入浴していない状態は、子の生活全体の様子を知らせる一つのサインとして受け止め、その背景に目を向けることが大切です。
本人の同意なく入浴や着替えをさせることはできるのか
成人した子がどのように身の回りのことをするかは、基本的に本人が決めることです。親であっても、本人の意思に反して入浴や着替えを強いる法的な権限はありません。
たとえば、嫌がる子の服を力ずくで脱がせる、腕を引いて浴室に連れていく、といった行為は、親子の間であっても暴行罪(刑法208条)にあたる可能性があります。また、害を加えることを告げて義務のないことを行わせれば、強要罪(刑法223条)が問題になることもあります。実際に処罰されるかどうかは個別の事情によりますが、力で解決しようとすると、法的な問題に加えて親子の関係が大きく損なわれるおそれがあります。
部屋の中の様子が分からず心配なときに、どこまで立ち入ってよいかについては、【親子問題】子が自室から出てこない|安否確認はどこまで許されるかで整理しています。
親ができる関わり方
入浴そのものより、入りやすい環境を整える
入浴を促す言葉を重ねるより、本人が入ろうと思ったときに入れる環境を用意しておく方が、負担をかけずに済むことがあります。
- 脱衣所に清潔なタオルと着替えを置いておく。
- 家族が浴室を使わない時間帯を作り、深夜でも使えるようにしておく。
- 湯船にこだわらず、シャワーだけでもよいと伝えておく。
- 本人が使いやすい洗面用具や衣類を選べるようにしておく。
声かけは短く、返事を求めない
自治体の家族向け資料では、あいさつなどの声かけを、返事を期待せずに淡々と続けることが勧められています。「お風呂わいてるよ」「着替え、置いておくね」といった短い言葉を、責める調子にならないよう伝える程度にとどめると、本人が受け取りやすくなります。入浴した日に大げさにほめるより、普段と同じように接する方が、本人にとって負担が少ない場合もあります。
洗濯や衣類の扱いを家族で決めておく
脱いだ服を部屋に置いたままにする、洗濯物を出さない、といった状況が続くと、家族の負担も大きくなります。「洗濯物はこのかごに入れてくれれば洗う」など、家族として引き受けられる範囲をあらかじめ決め、本人に一度伝えておくと、親が一人で抱え込まずに済みます。
家族自身の生活を保つ
子の様子に気持ちが振り回され続けると、親自身が疲れ切ってしまいます。同じ悩みを持つ家族と話せる場を利用することも、関わり方を見直すきっかけになります。家族会の役割については、【親子問題】家族会・当事者会の役割|弁護士に頼む前にできることをご覧ください。
受診や相談を考えたい変化
入浴をしない状態だけで、すぐに医療が必要とは限りません。ただし、次のような変化が重なっている場合は、早めに専門の窓口へ相談することを考えてよい段階です。
- 入浴しない状態が数か月単位で続き、少しずつ悪化している。
- 食事や睡眠も大きく乱れている。
- 皮膚のただれやかゆみ、急な体重の変化など、体の不調がうかがえる。
- 独り言が増える、誰かに見張られていると話すなど、以前と違う言動が見られる。
- 「生きていても仕方がない」といった言葉が聞かれる。
本人が受診を拒んでいる場合でも、まずは家族だけで相談に行くことができます。医療につなぐかどうかの考え方は【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断、家族だけで動ける範囲は【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲で解説しています。
| 相談先 | 主な役割 |
|---|---|
| 保健所・精神保健福祉センター | 心の不調や受診の要否について、家族からの相談に応じる |
| ひきこもり地域支援センター | ひきこもりに関する相談や、地域の支援機関への橋渡しを行う |
| 市区町村の自立相談支援機関 | 生活や仕事、お金のことを含めて、世帯全体の相談に応じる |
| 医療機関(精神科・心療内科など) | 診察を通じて、背景に病気があるかどうかを見立てる |
ひきこもり地域支援センターの役割と限界については、【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないことにまとめています。なお、医療機関から入院について家族の同意を求められる場面もあります。その意味については【親子問題】医療保護入院の同意を求められた|家族が同意することの意味をご覧ください。
受診させないと親が責任を問われるのか
弁護士ドットコムにも、心の不調を抱えてひきこもっている家族を病院に連れて行かない場合に罪になるのか、という趣旨の相談が寄せられています。同じ不安を持つ方は多いようです。
刑法218条は、病者などを保護する責任のある者が、その生存に必要な保護をしなかった場合を処罰の対象としています。また、民法877条1項は、親子のような直系血族の間に互いの扶養義務を定めています。もっとも、成人した子が入浴をしない、受診を嫌がるといった状況で、親が無理に連れて行かなかったことが、それだけで直ちに罪に問われるとは考えにくいところです。一方で、明らかに命に関わる状態にあることを知りながら、何の手立ても取らずにいた場合には、問題とされる可能性があります。
大切なのは、本人の意思を尊重しつつも、心配な変化に気づいたときに相談の記録を残し、必要な窓口につないでおくことです。親が負う扶養の範囲については、【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで詳しく解説しています。
暴力や金銭の要求が重なっているときは
入浴や着替えを促したことをきっかけに子が暴れる、物を壊す、お金を要求してくるといった状況が重なっている場合、家族だけで関わり方を工夫するには限界があります。まずは家族の安全を確保し、起きたことを記録しておくことが優先です。具体的な手順は【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録で解説しています。
当事務所では、弁護士が親御さんの代理人として子との窓口を担い、自立支援カウンセラーが住まい探しや仕事探し、日々の生活の立て直しを支えるという形で、親子それぞれの自立に向けた取り組みを行っています。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応、ご相談から自立までの流れや費用は【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問でご案内しています。
入浴や着替えをしないという変化は、子が言葉にできない不調や行き詰まりを知らせているサインであることがあります。叱って変えようとするより、環境を整え、必要に応じて外部の力を借りながら、焦らずに関わり方を探っていくことが、本人と家族の双方にとって負担の少ない道につながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


