【親子問題】息子夫婦・娘夫婦との同居をやめたい|二世帯の解消
ひきこもりの状態が続いている子が、咳が長引いている、歯が痛そうにしている、急にやせてきたといった様子を見せながら、病院に行こうとしない。親として心配しながらも、声をかけると不機嫌になるため、そのまま時間だけが過ぎているというご相談は少なくありません。この記事では、成人した子の受診について親ができること・できないことを法的な観点から整理し、受診につなげるための段取りと、相談できる窓口をご紹介します。
この記事は、親御さんが受診を勧めるときの考え方と窓口を整理したものです。症状の重さや病名の判断は医師が行うものですので、具体的な症状については医療機関や救急相談窓口にご確認ください。
まず確かめたいのは「今すぐ医療が必要な状態か」どうか
受診を勧める方法を考える前に、目の前の状態が急いで医療につなぐべきものかどうかを見極めることが先になります。本人が嫌がるかどうかよりも、命や健康に関わるかどうかを優先して判断することになります。
急ぎの対応を考えたい様子
- 呼びかけへの反応が鈍い、意識がはっきりしない。
- 息苦しそうにしている、呼吸の様子がいつもと違う。
- 強い痛みを訴えている、または痛みでうずくまっている。
- 水分や食事がほとんど取れていない状態が続いている。
- 話し方や手足の動きが急におかしくなった。
このような様子があるときは、本人が受診を嫌がっていても、119番に連絡して判断を仰ぐことを優先してください。救急車を呼ぶべきか迷う場合には、救急安心センター事業(#7119)に相談できる地域もあります(東京都では東京消防庁が実施しています)。本人が意識を失っているなど自分で判断できない状態であれば、医療機関は必要な処置を行うことができます。
急ぎではないが不調が続いている場合
長引く咳、虫歯の痛み、皮膚の湿疹、体重の変化、むくみなど、すぐに命に関わるとはいえないものの放置が続いている不調は、本人の気持ちに配慮しながら受診を勧めていくことになります。この記事の中心は、こちらの場面です。
成人した子に受診を強制することはできるのか
結論からいうと、成人した子に対して、親が本人の意思に反して受診や治療を受けさせることは原則としてできません。
医療は本人の同意が出発点
医療行為は、本人が説明を受けたうえで同意することを前提に行われます。成人した子については、親は法律上の代理人(親権者)ではないため、本人に代わって診察や治療に同意する立場にはありません。未成年の子であれば親権者として受診させる判断ができますが、子が18歳を過ぎると、受診するかどうかは原則として本人が決めることになります。
そのため、親ができるのは「受診するように強く働きかける」ことと「受診しやすい環境を整える」ことであり、本人を無理に病院へ連れて行くことは想定されていません。
無理に連れ出す方法が問題になる理由
「本人を説得して病院や施設に連れて行く」とうたう民間業者もありますが、本人の同意なく連れ出したり閉じ込めたりする対応については、親が依頼していても違法と判断された裁判例があります。親の依頼があることは、本人の同意の代わりにはならないという考え方です。受診を急ぐ気持ちから強引な手段を選ぶと、かえって本人との関係が損なわれ、その後の受診がさらに遠のくおそれもあります。
【親子問題】本人の同意なく連れ出すことが違法とされる理由|親の依頼では代わりにならない
場面ごとの整理
| 場面 | 本人の意思の扱い | 親ができること |
|---|---|---|
| 意識がない・急変した | 本人が判断できないため、医療機関が必要な処置を行う | 119番への連絡、状況の説明 |
| 不調が続いているが判断はできる | 受診するかどうかは本人が決める | 受診の勧め、付き添い、費用や保険の準備 |
| 心の不調が強く疑われる | 原則は本人の同意による受診。例外的な制度は法律で要件が決まっている | 保健所・精神保健福祉センターへの家族相談 |
子が受診を拒む理由を考えてみる
ひきこもりの状態にある子が病院に行かない背景には、「病院が嫌い」という一言では片づけられない事情があることが少なくありません。理由によって、親が整えられる部分が変わってきます。
- 待合室で人と顔を合わせることや、医師と話すことへの不安が強い。
- 長く外出していないため、身なりや外見を人に見られることに抵抗がある。
- 保険証やマイナンバーカードが手元になく、受付で困ることを心配している。
- 費用がいくらかかるか分からず、親に頼みにくいと感じている。
- 過去の受診で嫌な思いをした経験がある。
- 気力の低下などから、不調そのものに向き合う余裕がない。
本人が理由を話さない場合も多いため、親が推測で決めつけず、「何が心配なのか」を少しずつ聞いていく姿勢が大切です。理由が分かれば、付き添いや予約の手配、費用の準備など、親が引き受けられることが見えてきます。
受診につなげるための段取り
受診を勧めるときは、一度で決着をつけようとせず、段階を踏んで本人の負担を減らしていく方法が現実的です。
伝え方を工夫する
「なぜ病院に行かないのか」と問い詰めると、本人は責められていると受け取りやすくなります。「咳が続いていて心配している」と、親が気づいた事実と気持ちを短く伝え、受診するかどうかの判断は本人に返す形が比較的受け入れられやすいといわれます。返事がなくても、同じことを繰り返し迫るのではなく、時間を置いて改めて伝えるほうがよい場合もあります。
受診のハードルを下げる
- 予約制のクリニックや、比較的空いている時間帯を選ぶ。
- 初回は親が付き添い、受付や説明を手伝う。
- 症状によっては、オンライン診療に対応する医療機関を検討する。
- 通院が難しい事情があるときは、往診や訪問診療を行う医療機関に相談する。
- まず市販薬や歯科など、本人が抵抗の少ない窓口から始める。
オンライン診療や訪問診療は、症状や医療機関の方針によって対応できる範囲が異なります。利用を考える場合は、事前に医療機関へ問い合わせて確認してください。
保険証と費用の準備をしておく
健康保険証は新規発行が終了しており、現在はマイナ保険証か、それを持たない人に交付される資格確認書で受診する仕組みになっています。ひきこもりの状態が長い子の場合、資格確認書がどこにあるのか分からない、国民健康保険の保険料が未納になっているといった事情があることもあります。本人に受診の気持ちが出てきたときに手続で止まらないよう、親の側で市区町村の窓口に確認しておくと、受診までの流れが滑らかになります。
本人より先に、親が相談しておく
本人が受診に応じない段階でも、親だけで相談できる窓口があります。家族のかかりつけ医に状況を伝えて受診先の助言を受ける、保健所の保健師に相談する、ひきこもり地域支援センターや市区町村の福祉窓口に家族として相談する、といった方法です。保健所などでは、状況によって家庭訪問を検討してもらえることもあります。
【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲
【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないこと
心の不調が背景にあると思われるとき
体の不調を放置している背景に、気分の落ち込みや強い不安、あるいは周囲への強い警戒心といった心の不調がうかがえる場合もあります。そのようなときは、体の受診と並行して、精神保健福祉センターや保健所の精神保健相談に家族として相談することが考えられます。
精神科の入院には、家族の同意による医療保護入院など、本人の同意がなくても入院できる制度がありますが、法律で厳格な要件が定められた例外的な手続です。家族が同意を求められる場面もあるため、制度の意味を知っておくことは役に立ちますが、受診を嫌がる子に対する通常の手段として考えるものではありません。
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【親子問題】医療保護入院の同意を求められた|家族が同意することの意味
放置が続いたときに家族が抱える問題
受診するかどうかは本人が決めることですが、同居している家族として全く関わらなくてよいというわけでもありません。
生活を共にしている家族としての配慮
刑法には、病気の人などを保護する責任のある者が、生存に必要な保護をしなかった場合を処罰する規定(保護責任者遺棄等罪・刑法218条)があります。成人した子と同居しているだけで直ちにこの責任が問われるわけではありませんが、子が自力で動けないほど衰弱しているのに気づきながら何もしない、といった状況は避けなければなりません。急変の兆しがあれば119番に連絡する、心配な状態が続けば公的窓口に相談するといった対応を重ねておくことが、子の健康を守ることにもつながります。
治療費や入院費の負担
受診が遅れて症状が重くなると、治療費や入院費がかさむことがあります。成人した子の医療費を親が当然に負担する義務があるわけではありませんが、実際には親が支払いや入院の手続を求められる場面も出てきます。どこまで負担するのかを、あらかじめ家族の中で考えておくと慌てずに済みます。
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親自身が高齢・体調不良の場合
親が高齢になり、自分の通院や介護で手一杯という家庭もあります。その場合は、親自身の相談先である地域包括支援センターに、同居の子の状態もあわせて伝えておくと、関係機関につないでもらえることがあります。親の健康を後回しにしないことも、家庭全体を支えるうえで欠かせません。
弁護士が関われる場面
受診そのものは医療の領域であり、弁護士が受診を命じたり、治療を受けさせたりすることはできません。一方で、受診を勧めることが難しくなっている背景に、子からの暴力や金銭の要求、親子の会話が途絶えているといった事情がある場合には、弁護士が関わる意味があります。
当事務所では、弁護士が親御さんの代理人として子との窓口を担い、民間の自立支援カウンセラーとチームを組んで対応しています。カウンセラーが子と継続的に関わる中で、仕事探しや生活の立て直しとあわせて通院のサポートを行うこともあります。親が直接言うと反発される話でも、第三者からであれば受け止められるということもあります。
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よくあるご質問
子の代わりに親が病院へ行き、薬をもらうことはできますか
医師は原則として本人を診察したうえで処方を行うため、本人を診ないまま親が薬を受け取ることは通常はできません。ただし、親だけで医療機関に相談し、受診の進め方について助言を受けることはできる場合があります。
子の部屋に入って様子を確かめてもよいですか
親の家であっても、成人した子の部屋には一定の配慮が求められます。とはいえ、物音がしない、呼びかけに応じないなど安否が気になる状況では、様子を確かめることが優先されます。どこまでの対応が許されるかは状況によって異なります。
【親子問題】子が自室から出てこない|安否確認はどこまで許されるか
本人が「放っておいてほしい」と言う場合はどうすればよいですか
本人の意思は尊重されるべきですが、親が心配していることを伝え続けることまで控える必要はありません。本人の言葉を受け止めつつ、親自身は公的窓口や支援者に相談を続け、急変の兆しがあればためらわずに119番に連絡する、という二つを並行して進めることが考えられます。
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成人した子の受診は、最終的には本人が決めることです。だからこそ、親は無理に動かそうとするのではなく、急ぎの場面では迷わず救急につなぎ、そうでない場面では本人が受診しやすい条件を少しずつ整えていくことが大切です。親だけで抱え込まず、公的な窓口や専門家を早めに頼ることも選択肢の一つです。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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