【親子問題】子の勤務先から親に連絡が来た|会社とのやり取りの範囲
ひきこもりの子のことで相談先を探していると、「訪問支援」や「アウトリーチ」という言葉を目にすることがあります。支援者に家まで来てもらえるのは心強い一方で、どのような立場の人が来るのか、子がどう受け止めるのかが分からず、申し込みをためらう親御さんも少なくありません。この記事では、訪問支援の依頼先ごとに、どのような人が訪問するのか、訪問に至るまでにどのような流れをたどるのか、依頼する前に確かめておきたい点を整理します。
この記事は、2026年10月時点で公表されている国や東京都などの資料をもとに作成しています。訪問支援の対象や進め方は自治体・団体ごとに異なり、変更されることもあるため、利用の際は各窓口で最新の内容をご確認ください。
訪問支援とは、支援者が家庭に出向く支援のこと
ひきこもりの支援では、本人が相談窓口や医療機関に足を運ぶことが難しい場合が多くあります。そのため、支援者のほうから家庭を訪ねる「訪問支援(アウトリーチ型支援)」が、支援の方法の一つとして位置づけられています。厚生労働省の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」でも、相談や受診に踏み切れない本人に対し、家庭訪問を中心とした支援が有効な方法の一つとして期待されると示されています。
もっとも、訪問支援は、最初の一回で本人を外に連れ出すためのものではありません。支援者が本人と少しずつ関係をつくり、本人が相談や居場所、就労支援などへ進める状態を整えていくための手段です。同じガイドラインでは、訪問のタイミングを慎重に考え、訪問の前に情報の収集や関係づくりなどの準備を行うことの大切さも指摘されています。
訪問する人は、依頼先によって変わる
「訪問支援」と一口にいっても、依頼する先によって、来る人の職種や立場、費用は大きく異なります。主な依頼先を表にまとめます。
| 依頼先 | 主に訪問する人 | 費用 |
|---|---|---|
| 市区町村の相談窓口・保健所・保健センター | 保健師、精神保健福祉士、社会福祉士などの職員 | 原則として無料 |
| ひきこもり地域支援センター・東京都ひきこもりサポートネット | 心理職や福祉職などの相談員 | 原則として無料(通信費などを除く) |
| 生活困窮者自立相談支援機関 | 相談支援員 | 原則として無料 |
| 民間の支援団体・NPO法人 | カウンセラー、支援スタッフ、ひきこもりの経験があるスタッフなど | 有料のことが多い |
| 精神科の医療機関・訪問看護 | 医師、看護師、精神保健福祉士など | 医療保険の対象となる場合がある |
| 弁護士(当事務所の場合) | 弁護士と、連携する自立支援カウンセラー | 有料 |
公的な窓口から来る人
市区町村や保健所の窓口では、保健師や精神保健福祉士などの専門職が訪問を担うことが一般的です。東京都では「東京都ひきこもりサポートネット」が、電話やメール、来所による相談のほか、家庭への訪問相談も受け付けており、利用料は無料とされています。区によっては、区の相談窓口や健康福祉センターを通じて訪問相談を申し込む形をとっているところもあります。
ひきこもりの経験がある人やその家族が支援に加わる取組もあります。東京都ひきこもりサポートネットでは、ひきこもりの経験がある方やその家族がピアサポーターとしてオンライン相談に応じています。また、他県には、ひきこもりの経験者やその家族、支援の経験がある人が訪問サポートを担う事業を設けているところもあります。
民間の支援団体から来る人
民間の支援団体では、カウンセラーや支援スタッフ、ひきこもりの経験があるスタッフなどが訪問することがあります。公的な窓口より柔軟に動ける場合がある一方で、支援の考え方や訪問する人の資格・経験、費用の設定は団体によってまちまちです。東京都では、一定の理念に沿って活動する民間団体と協定を結び、連携団体として公表する取組も行われていますので、選ぶ際の手がかりの一つになります。
医療につながる場合に来る人
精神疾患が背景にあると考えられる場合には、精神科の医療機関による訪問や訪問看護が選択肢になります。ただし、受診や医師の判断が前提となることが多いため、まずは保健所や精神保健福祉センターに相談し、医療につなぐ必要があるかを一緒に考えるのが現実的な順序です。医療につなぐかどうかの考え方は、【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断で解説しています。
公的な訪問支援は、親の相談から始まることが多い
公的な窓口に訪問を頼んでも、申し込んだ翌日に支援者が家に来る、という流れになることは多くありません。ひきこもりの支援は家族への支援から始まることが多く、まずは親が窓口での面談を重ね、本人の状態や家庭の状況、これまでの経過を伝えるところから始まります。
そのうえで、支援者が本人の状態や周囲の状況、訪問を本人がどう受け止めそうかなどを見極め、訪問するかどうかや、その時期を判断します。面接相談を通じて本人の状態や承諾などを確認したうえで自宅を訪問するとしている自治体もあれば、相談の内容によっては訪問を断る場合があると明記している自治体もあります。
早く来てほしいという親の気持ちと、支援者の判断とがずれることもあります。本人の拒否感が強い時期に訪問を急ぐと、かえって関係がこじれるおそれがあるためです。訪問に至るまでの期間は、親が子への接し方を見直したり、訪問のことを本人にどう伝えるかを考えたりする準備の時間と捉えることもできます。
訪問の当日に起こりやすいこと
訪問支援では、初回から本人と顔を合わせられるとは限りません。ドア越しに声をかけるだけで終わる、手紙を置いて帰る、親との面談だけで終わる、といったことも珍しくなく、何度か訪問を重ねてようやく本人と話ができるようになる場合もあります。訪問を受ける前に、親として支援者と決めておきたいのは次のような点です。
- 訪問があることを本人に事前に伝えるかどうかと、その伝え方。
- 支援者に本人の部屋の前まで入ってもらうかどうか。
- 本人が強く拒んだときに、その日の訪問を切り上げる目安。
- 本人に暴力の傾向がある場合に、支援者と共有しておく情報。
- 訪問の後に支援者と振り返りをする方法と時期。
本人に何も知らせないまま支援者を家に入れると、本人が「だまされた」と受け止め、その後の支援が進みにくくなることがあります。伝え方に迷う場合は、その点も含めて支援者に相談しておくとよいでしょう。本人が支援者と会うことを拒んだ場合の考え方は、【親子問題】カウンセラーと会うことを子が拒んだ場合で取り上げています。
「連れ出し」を前提にした業者には注意が必要
支援をうたう業者の中には、家族の依頼を受けて予告なく本人を訪ね、その日のうちに施設へ連れて行く手法をとるところがあり、「引き出し屋」と呼ばれて問題になってきました。こうした業者をめぐっては、本人の同意なく連れ出したり閉じ込めたりする行為を違法と判断し、業者に賠償を命じた判決が複数出ています。親が業者と契約して了承していたとしても、それが本人の同意の代わりになるわけではない、という考え方が示されています。
報道では、こうした施設が適切に運営されているかを専門に監督する行政機関がないことも指摘されてきました。訪問を頼む先を選ぶ際には、契約の前に次の点を確かめておくことをおすすめします。
- 訪問するのは誰か(氏名、職種、資格、経験)。
- 本人の同意をどのように確かめるのか。
- 訪問の後に、施設への入所や寮での生活が前提となっていないか。
- 費用の総額と内訳、途中で解約した場合の扱い。
- 支援の経過を親にどのような方法で報告するのか。
「必ず自立させる」「短期間で解決する」といった言葉で契約を急がせる業者や、早い段階で入所を勧める業者には、特に慎重になる必要があります。民間の施設を選ぶ際の確認事項は【親子問題】民間の自立支援施設を選ぶ前に確認すべきこと|契約・担い手・解約・本人の意思で、連れ出しが違法とされる理由は【親子問題】本人の同意なく連れ出すことが違法とされる理由|親の依頼では代わりにならないで詳しく解説しています。
弁護士が訪問する場合は、何が違うのか
訪問支援の担い手として、弁護士が来ることは一般的とはいえません。もっとも、子の暴力や繰り返しの金銭要求が続いている家庭や、親が子と直接話すとどうしても衝突してしまう家庭では、弁護士が親の代理人として子に向き合う形が選択肢になることがあります。
当事務所では、弁護士が親御さんの代理人となり、民間の自立支援カウンセラーとチームを組んで対応しています。弁護士は、子からの暴力や金銭の要求に対して親御さんを守る窓口となり、カウンセラーは、住まい探しや仕事探し、生活保護の申請の手助け、日々の金銭管理や悩みごとの相談など、子の生活面を支える役割を担います。必要に応じて弁護士とカウンセラーがご自宅を訪問し、子と直接話をすることもあります。暴力の傾向がある場合などには、事案に応じて警察と連携をとりながら、安全に配慮して進めます。
訪問の目的は、子を無理に連れ出すことではなく、子と時間をかけて話をし、子自身が家を出て自立に向かう道を選べるようにすることです。訪問の前に、弁護士から子に連絡を入れ、親の代理人がついたことを知らせる場合もあります。最初の連絡の内容については【親子問題】弁護士から子に最初の連絡が入るとき|通知で伝えることで、弁護士とカウンセラーの役割分担については【親子問題】弁護士とカウンセラーが組むという形|役割を分ける理由で紹介しています。
どこに頼むかを考える目安
家庭の状況によって、最初に相談するのに向いている先は異なります。目安を表にまとめます。
| 家庭の状況 | 最初の相談先の目安 |
|---|---|
| 暴力や金銭の要求はなく、まずは本人との関係をつくりたい | 市区町村の相談窓口、ひきこもり地域支援センター、東京都ひきこもりサポートネット |
| 精神疾患が背景にある可能性がある | 保健所、精神保健福祉センター、医療機関 |
| 本人の収入や生活費の確保が課題になっている | 生活困窮者自立相談支援機関 |
| 暴力や繰り返しの金銭要求があり、親が直接対応するのが難しい | 警察(緊急時)、弁護士 |
どこか一か所に決めなければならないわけではなく、公的な窓口に相談しながら、必要に応じて医療や弁護士につなぐという組み合わせも考えられます。身の危険を感じる場面では、まず警察に連絡し、安全を確保することを優先してください。相談先ごとの役割については、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
訪問する人の性別や年齢は選べますか
依頼先によりますが、希望を伝えられる場合があります。同性の支援者のほうが話しやすい、年の近い人のほうが受け入れやすいといった事情があれば、相談の段階で伝えておくとよいでしょう。ただし、支援者の人数や体制によっては、希望に沿えないこともあります。
本人が「誰にも会いたくない」と言っていても頼めますか
本人が拒んでいても、親が相談を始めることはできます。公的な窓口でも、まず家族との相談を重ね、訪問の時期を見極めるのが一般的です。本人の拒否が強い段階では、訪問よりも親の関わり方を整えることを優先する場合もあります。家族だけで動ける範囲については、【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲で解説しています。
訪問を頼んだことが近所に知られないか心配です
公的な窓口の職員には守秘義務があり、訪問の際もプライバシーへの配慮が図られます。民間の団体に頼む場合は、個人情報の扱いを契約の前に確かめておくとよいでしょう。いずれの場合も、訪問の時間帯や、車で来るかどうかといった来訪の方法を事前に相談しておくと安心です。
関連する解説記事
- 【親子問題】支援機関の情報をどう見分けるか
- 【親子問題】契約するのは親、支援を受けるのは子|この構造のリスク
- 【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないこと
- 【親子問題】弁護士とカウンセラーはどう介入するのか|4つの事例で見るサービスの実際
訪問支援を考え始めたら
訪問支援は、誰に頼むかによって、来る人も、支援の進め方も、費用も変わります。公的な窓口で家族としての相談を重ねることが出発点になることが多い一方で、暴力や金銭の要求がある家庭では、親の安全を守る手立てをあわせて考える必要があります。どこに頼めばよいか判断がつかない段階でも、家庭の状況を整理するところから始めてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


