【親子問題】ひきこもりの子にアルバイトを勧めたら暴れた、どうすればいい?
この記事は、2026年10月時点の法令をもとに、一般的な考え方を整理したものです。実際の対応は、家の名義、お子さんの年齢、出入りしている人との関係などによって変わります。
成人したお子さんが、親の知らない人を自宅に招き入れている。夜遅くに誰かが来て、そのまま泊まっていく。玄関に見慣れない靴が並び、名前を聞いても答えてもらえない。こうした状況について、「防犯上どうすればよいのか」「やめさせることはできるのか」というご相談をいただくことがあります。
お子さんにとっては友人や交際相手であっても、親にとっては素性の分からない人です。家には通帳や印鑑、家族の個人情報があり、高齢の親が一人で在宅している時間もあります。不安を感じるのは自然なことです。一方で、お子さんもその家で暮らしている以上、親が一方的に締め出すような対応には法的な限界があります。
この記事では、子が家に知らない人を出入りさせている場合に、法律上どう考えるか、防犯のために今日からできること、警察や弁護士に相談する目安を順に整理します。
まず整理しておきたい4つの事情
対応を考える前に、いま起きていることを落ち着いて整理しておくと、その後の判断がしやすくなります。
| 確認すること | 整理しておく理由 |
|---|---|
| 出入りしている人は誰か(友人、交際相手、SNSで知り合った人、仕事関係を名乗る人など) | 相手との関係によって、話し合いの進め方や注意したい点が変わるため |
| 頻度と時間帯、宿泊の有無 | 一時的な来訪なのか、事実上住み着いているのかで、取れる手段が変わるため |
| 家の名義と、賃貸か持ち家か | 誰が退去を求められるのか、大家との関係が生じるかを左右するため |
| お子さんの年齢(18歳未満か成人か) | 未成年であれば、親権者として関わる範囲が広くなるため |
あわせて、出入りが始まった時期、物がなくなったり壊されたりしたことがあるか、家族が怖い思いをしたことがあるかも、メモに残しておくとよいでしょう。後で警察や弁護士に相談する際の材料になります。
子が招いた人が家に入ることは、法律上どう考えるか
住居侵入罪は「住んでいる人の意思」が問題になる
刑法130条は、正当な理由なく人の住居に侵入した場合や、退去を求められても退去しない場合を処罰の対象としています。ここでいう「侵入」にあたるかどうかは、その住居で暮らす人の意思に反して立ち入ったかどうかで判断されます。
難しいのは、同居する家族のうちお子さんが招き入れ、親は反対しているという場面です。家族の一人の承諾があるときにどう扱うかは考え方が分かれており、お子さんが招いたというだけで、直ちに来訪者が罪に問われるとは言い切れません。
ただし、親が来訪者本人にはっきりと「入らないでほしい」「帰ってほしい」と伝えたにもかかわらず居座る、親の不在時を狙って入り込む、といった事情が重なると、住居侵入罪や不退去罪の検討対象になることがあります。親の意思を相手に明確に伝えておくことには、こうした意味もあります。
子が家を使う権利と、第三者を入れることは別の問題
親名義の家にお子さんが家賃を払わずに住んでいる場合、一般には「使用貸借」という関係にあると考えられます。民法594条2項は、借りている人が貸主の承諾なく第三者に使用させることはできないと定めており、これに反した場合、貸主は契約を解除できるとされています(同条3項)。
つまり、お子さんが親の承諾なく知らない人を住まわせているような場合は、お子さん自身の居住の根拠にも影響が出る可能性があります。もっとも、実際に家から出てもらうには段階を踏んだ対応が必要です。詳しくは【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しをご覧ください。
賃貸住宅の場合は、契約で同居人の範囲が決められていることが多く、無断で人を住まわせると、大家との関係で契約違反を指摘されるおそれがあります。契約書の同居人に関する条項を一度確認しておくと安心です。
防犯のために今日からできること
お子さんとの話し合いがすぐにまとまらなくても、家と家族を守るための手当ては先に進められます。
- 通帳、キャッシュカード、印鑑、権利証、年金関係の書類などは、施錠できる場所や家の外(貸金庫、信頼できる親族宅など)に移します。
- 親の寝室や書斎など、親が使う部屋に鍵を付けます。
- 家の合鍵が何本あり、誰が持っているかを確認します。第三者に渡っている疑いがあれば、お子さんに返却を求めます。
- 来訪があった日時、人数、人相や服装、車のナンバーなど、分かる範囲で記録を残します。
- 玄関や家の外まわりに防犯カメラを設置します。家族の居室内は撮影しないなど、プライバシーへの配慮も必要です。
- 家族の個人情報が書かれた郵便物や書類を、来訪者の目に触れる場所に置かないようにします。
気をつけたいのは、お子さん本人を家に入れなくする目的で玄関の鍵を替えることです。お子さんがその家で生活している以上、こうした対応は法的な手続によらない実力行使として問題になることがあります。親の部屋に鍵を付けることとは分けて考える必要があります。詳しくは【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界で解説しています。
お子さんに「家のルール」として伝える
防犯の手当てと並行して、お子さんには来訪についてのルールを伝えることになります。頭ごなしに「誰も入れるな」と言うと反発を招きやすいため、親が心配している理由と、守ってほしい内容を具体的に伝えるのが一つの方法です。
- 来訪の前に、誰が何人来るのかを知らせること。
- 宿泊させないこと、または宿泊させる場合は事前に相談すること。
- 深夜の出入りを控えること。
- 親が不在のときは家に人を入れないこと。
- 親の部屋や共用部分の物に触れさせないこと。
口頭で伝えるだけでは「言った」「聞いていない」の行き違いが生じやすいため、伝えた内容を書面やメッセージで残しておくと、後で第三者に相談するときにも経緯を示しやすくなります。お子さんの交際相手が実際に住み着いてしまっている場合の進め方は、【親子問題】子の交際相手が家に居着いている|第三者を家から出すで整理しています。
気にとめておきたいサイン
出入りしている人の様子によっては、単なる友人づきあいとは別の問題が隠れていることがあります。次のような様子が見られる場合は、早めに専門の窓口に相談することを考えてもよいでしょう。
- 子宛てではない宅配便や郵便物が、家に頻繁に届く。
- 来訪者が短時間で入れ替わり、出入りが深夜や早朝に集中する。
- お子さんが急に多額の現金を持つようになった、または金銭に困っている様子がある。
- お子さんが来訪者を怖がっている、断れない様子がある。
- 見慣れない薬品や器具、においなどに気づいた。
荷物の受け取り役などを通じて犯罪グループに関わってしまう例もあり、本人が「抜けられない」状態に置かれていることもあります。こうした疑いがある場合は、【親子問題】子が闇バイトに関わっていると分かった|親の立場でできること・してはいけないことや【親子問題】スカウト・匿名流動型グループに取り込まれている疑い|接触を断つ順序と安全確保の考え方もあわせてご覧ください。薬物が疑われる場合は【親子問題】子の薬物使用に気づいた|通報すべきか迷ったときで考え方を整理しています。
お子さんが18歳未満の場合
お子さんが未成年であれば、親は親権者として子の監護や教育にあたる立場にあります(民法820条)。来訪者を家に入れないよう求めることや、相手方に直接連絡を控えるよう伝えることも、成人した子の場合より広く認められると考えられます。
また、東京都の青少年の健全な育成に関する条例では、保護者の同意などの正当な理由なく深夜に青少年を連れ出したり、とどめたりすることが制限されています。大人がお子さんを自宅に連れ込んでいる、連れ出しているといった事情があれば、警察の少年相談窓口や児童相談所にも相談できます。性的な被害が疑われる場合は、【親子問題】18歳未満の子が性的搾取の被害に遭っている場合の窓口もご参照ください。
警察に相談する目安
次のような事情があれば、警察への相談を考えてよい段階といえます。
- 家の物や現金がなくなった。
- 来訪者から脅されたり、乱暴な言動を受けたりした。
- 親が帰ってほしいと伝えても、来訪者が居座る。
- 家族の身に危険を感じる。
なお、親子など一定の親族の間で起きた窃盗には刑を免除する特例がありますが(刑法244条)、これはあくまで親族の間の話です。親族ではない来訪者が家の物を持ち出した場合には、この特例は及びません。
その場で危険があるときは110番、急ぎではないものの相談したいときは警察相談専用電話「#9110」や最寄りの警察署の生活安全課が窓口になります。すぐに事件として扱われなくても、相談した記録が残ることには意味があります。【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続もあわせてご覧ください。
弁護士に相談するとできること
お子さんに直接話をすると衝突してしまう、来訪者と顔を合わせるのが怖い、という場合には、弁護士が親の代理人として間に入る方法があります。来訪者に対して立ち入りや連絡を控えるよう書面で求めることや、お子さんとの話し合いの窓口を引き受けることなどが考えられます。窓口を代えることの意味は、【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で解説しています。
当事務所では、親御さんの代理人としての対応に加え、自立支援カウンセラーとチームを組み、お子さんの生活の立て直しまでを視野に入れて支援しています。来訪者の問題の背景に、お子さんの孤立や金銭の問題があることも少なくありません。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
まとめ
- 子が招いた人の立ち入りがすぐに罪になるとは限りませんが、親の意思を相手に明確に伝えておくことには意味があります。
- 親名義の家に子が無償で住んでいる場合、親の承諾なく第三者を住まわせることは、子の居住の根拠にも影響することがあります。
- 貴重品の移動、親の部屋の施錠、来訪の記録など、防犯の手当ては話し合いと並行して進められます。
- 子本人を締め出す鍵の交換は、法的に問題になることがあるため慎重に考える必要があります。
- 盗難や脅し、居座りがあれば、警察や弁護士への相談を検討します。
子が家に人を招くこと自体を責めるのではなく、家族の安全を守るための線を引き、その線を落ち着いて伝えていくことが、問題を大きくしないための一歩になります。一つの家庭だけで抱え込まず、早めに外の力を借りることも考えてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


