【親子問題】ひきこもりの子が昼夜逆転している、生活を変えさせられる?
子が一人暮らしを始めるときに、賃貸住宅の連帯保証人を引き受けた親御さんは少なくありません。ところが、子の家賃の支払いが遅れがちになった、子と連絡が取りにくくなった、親自身が年金生活に入って支払う余力がなくなった、といった事情から「保証人をやめたい」と考える場面が出てきます。この記事では、親が子の賃貸住宅の連帯保証人から外れられるのか、外れられない場合にどこまで責任を抑えられるのかを、契約書の確かめ方とあわせて整理します。
この記事は、2020年4月1日に施行された改正民法を前提に解説しています。保証契約を結んだ時期や契約書の文言によって扱いが異なることがあるため、実際の判断はお手元の契約書を確認したうえで行ってください。
連帯保証人をやめるには、誰の承諾が必要か
賃貸住宅の連帯保証は、子と大家(貸主)との賃貸借契約とは別に、大家と保証人である親との間で結ばれる契約です。契約の当事者は大家と親であり、借りている子は当事者ではありません。そのため、保証人をやめるには、原則として大家の承諾を得て保証契約を終わらせる必要があります。
子が「保証人はもういらない」と言っても外れない
親子の間で「もう保証人を降りていい」と話がついても、それだけで大家との保証契約が終わるわけではありません。反対に、親が大家に「今日で保証人をやめます」と一方的に通知しても、大家が応じなければ保証契約は続くのが原則です。弁護士ドットコムにも、管理会社に保証人をやめたいと伝えたところ、借主を交えた話し合いが必要だと言われて手続が進まない、という相談が複数寄せられています。
また、管理会社や不動産会社から「外れています」と電話で伝えられただけでは、後になって言った・言わないの争いになるおそれがあります。承諾が得られた場合は、合意の内容を書面で受け取っておくことが大切です。
更新のタイミングで自動的に外れるわけではない
賃貸借契約は2年ごとなどに更新されますが、更新したからといって保証人の責任が当然に終わるわけではありません。最高裁判所は、建物賃貸借の保証人について、特段の事情がない限り更新後の賃貸借から生じる債務についても責任を負うと判断しています(最判平成9年11月13日)。
もっとも、更新は大家や管理会社が契約内容を見直す時期でもあります。保証人の変更を申し出るきっかけとしては、更新の少し前が話を切り出しやすい時期といえます。
大家が承諾しやすい代わりの手立て
大家にとって保証人は家賃の支払いを確保する手段ですから、親が外れた後も支払いが確保される見通しを示せるかどうかが、承諾を得られるかの分かれ目になります。考えられる手立てを整理すると、次のとおりです。
| 手立て | 内容 | 確かめておきたいこと |
|---|---|---|
| 家賃保証会社への切り替え | 子が保証会社と契約し、親の連帯保証と入れ替える | 保証料の負担者、審査に通るか、保証会社から親を連帯保証人に求められないか |
| 別の保証人を立てる | 親に代わって、きょうだいなど別の人が保証人になる | 負担を別の家族に移すだけにならないか |
| 子の住み替え | 子が保証会社を使える物件などに移り、今の契約を終える | 退去時の原状回復費用や未払い分の扱い |
家賃保証会社に切り替える場合でも、保証会社が子との保証委託契約で親を連帯保証人や緊急連絡先に求めることがあります。連帯保証人であれば支払いの責任を負いますが、緊急連絡先であれば原則として支払いの責任はありません。書類に署名する前に、どちらの立場で名前を書くのかを確かめておくことが大切です。新しく部屋を借りるときの保証人の考え方は、【親子問題】家を借りる際の保証人・保証会社の問題|無職の子のために親が引き受ける前にでも解説しています。
契約書で確かめておきたいこと
保証人をやめる話し合いに入る前に、手元の契約書を確認しておくと、取れる手段の幅が見えてきます。
保証契約を結んだ時期
2020年4月1日に改正民法が施行され、個人が保証人になる場合のルールが変わりました。改正前に結ばれた保証契約には、原則として改正前の規定が適用されます。賃貸借の更新の際に保証契約そのものを結び直したかどうかで扱いが分かれることがあるため、最初の契約書だけでなく、更新時の書類にも目を通しておくと安心です。
極度額が書面に定められているか
改正民法のもとでは、個人が賃貸住宅の連帯保証人になる場合、保証する金額の上限である極度額を書面などで定めなければ、保証契約は効力を生じません(民法465条の2)。改正後に結んだ保証契約で極度額の記載が見当たらない場合は、保証契約が有効かどうかを検討する余地があります。記載がある場合も、親が負う責任はその金額が上限になります。
保証人の欄に署名したのは誰か
子が親に断りなく保証人の欄に親の名前を書き、押印していたという相談も見られます。親が保証を引き受けていないのであれば、保証契約は成立していないと主張できる可能性があります。ただし、事情を知った後に請求に応じて支払うと、保証を認めたと受け取られるおそれがあります。この点は【親子問題】子が親名義で契約した|追認しないという選択もあわせてご覧ください。
外れられない場合に、責任の広がりを抑える方法
大家の承諾が得られず、すぐには保証人を外れられない場合でも、親の負担がふくらむのを抑えるために使える仕組みがあります。
滞納の状況を大家に問い合わせる
子から頼まれて保証人になった場合、保証人は大家に対し、家賃の滞納があるかどうかや、その金額を教えるよう求めることができます(民法458条の2)。子が「払っている」と言っていても、実際の状況は大家に確かめるのが確実です。滞納が小さいうちに把握できれば、子との話し合いや住み替えの検討を早めに始められます。
滞納が放置されている場合の事情の変化
古い裁判例には、保証契約から長い期間が経ち、借主が家賃を払い続ける見込みがないのに大家が契約を解除しないまま放置していたような事情があると、保証人からの解約を認めたものがあります。また、大家が明渡しなどの手続を取らずに損害を広げた場合に、保証人への請求を制限した裁判例もあります。ただし、こうした扱いが認められるかは個別の事情しだいであり、一般に広く認められるものではありません。滞納が続いている場合は、保証契約を終わらせたいという意思を早めに書面で伝えておくことが考えられます。
保証の金額が確定する場面
改正民法のもとでは、子または親が亡くなったとき、親の財産に強制執行の申立てがされたとき、親が破産手続開始の決定を受けたときに、保証する元本が確定します(民法465条の4)。確定した後に生じた家賃は保証の対象になりません。親が亡くなった場合、相続人が引き継ぐのは、その時点までに確定した分に限られます。
子に退去や住み替えを促すときの注意点
保証人の負担を根本から終わらせるには、子の賃貸借契約そのものを終えるのがもっとも確実です。子が退去すれば、その後の家賃は発生しません。ただし、それまでの未払い分や原状回復費用は、保証の範囲内で残ることがあります。
注意したいのは、保証人である親には、子の賃貸借契約を解約する権限がないという点です。解約できるのは借主である子です。親が子の部屋から荷物を運び出したり、鍵を替えたりすることも、子の権利を侵害するおそれがあります。管理会社から「保証人の側で退去の手続を進めてほしい」と頼まれることがあっても、応じる前に契約上の立場を確かめる必要があります。親が契約者になっている部屋の場合は扱いが異なるため、【親子問題】子が親名義で借りた部屋を解約したい|契約者としてできることと退去までの順序をご覧ください。
子が親との話し合いに応じない、話をすると激しい口論になる、といった場合は、第三者を間に入れることも選択肢になります。当事務所では、弁護士が親の代理人として子と話し合い、自立支援のカウンセラーが住まい探しや生活の立て直しを支える形で、子の住み替えをお手伝いすることがあります。
すでに滞納の請求が届いている場合
大家や管理会社から保証人として請求が届いた場合は、支払う前に次の点を確かめておくと、後の整理がしやすくなります。
- 請求の根拠となる契約書と、保証人の欄の署名を確認すること。
- 滞納している月と金額を、書面で明らかにしてもらうこと。
- 子に事情を聞き、今後の支払いの見通しを確かめること。
- 支払う場合は、振込の記録や領収書を必ず残すこと。
保証人として支払った分は、後から子に返すよう求めることができます(求償)。ただし、親子の間では実際に返してもらうのが難しいことも多く、支払いを重ねるほど親の負担は大きくなります。保証人として払い続けるのか、どこで区切るのかを考える材料として、【親子問題】保証人になってしまった後にできることも参考にしてください。
よくあるご質問
内容証明郵便で「保証人をやめる」と通知すれば外れられますか
通知を送っただけで保証契約が終わるわけではなく、原則として大家の承諾が必要です。ただし、滞納が続いているのに大家が対応しないといった事情がある場合には、通知を送っておくことが後の主張の土台になることがあります。
親が高齢になり、収入が年金だけになりました。それだけで外れられますか
収入が減ったことだけで、保証契約が当然に終わるわけではありません。ただし、大家にとっても支払い能力の下がった保証人は心配の種になりうるため、保証会社への切り替えを提案する理由にはなります。
子の家賃を親が直接払っているのですが、保証人と同じ扱いですか
保証人として払っている場合と、親が自分の意思で援助として払っている場合とでは、意味が異なります。援助として払っているのであれば、いつまで続けるかは親が決められる事柄です。この点は【親子問題】独立した子の家賃を払い続けている|いつまで払うのかで解説しています。
関連する解説記事
子の賃貸住宅の連帯保証人は、親の一存ですぐにやめられるものではありませんが、契約書の確認、大家との交渉、子の住み替えといった道筋を順に考えることで、負担を抑えられる場合があります。子との話し合いが難しいときや、すでに請求が届いているときは、早めに状況を整理しておくことが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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