【刑事事件・被害者側】元恋人に脅されてお金を払った、恐喝として訴えられる?
お金を払って会った相手から、数日後や数週間後になって「実は未成年だった」「警察に知られたくなければお金を払ってほしい」と連絡が来ることがあります。突然の連絡に動揺し、言われるままに支払ってしまう方も少なくありません。この場面では、自分の行為が罪に問われるかという問題と、相手の要求が恐喝などにあたるかという問題が同時に動いています。本記事では、この二つを分けて整理したうえで、連絡を受けた直後に確かめたいこと、払う前に知っておきたいこと、弁護士に相談した場合の進め方を解説します。
本記事は2026年10月時点の法令に基づいて記載しています。2025年6月以降の刑罰は「拘禁刑」と表記しています。個別の事案の見通しは事情によって異なりますので、具体的な判断は弁護士にご相談ください。
「未成年だった」という連絡で、何が問題になっているのか
後から「未成年だった」と告げられる場面には、性質の異なる二つの問題が含まれています。一つは、お金を払って会った側の行為が罪にあたるかどうか、もう一つは、それを持ち出して金銭を求める側の行為が罪にあたるかどうかです。
| 問題の軸 | 問われ得る人 | 主に関係する法律 |
|---|---|---|
| 自分の行為が罪になるか | お金を払って会った側 | 児童買春・児童ポルノ禁止法、青少年健全育成条例、刑法など |
| 相手の要求が罪になるか | 後から金銭を求めてきた側 | 刑法の恐喝罪・脅迫罪など |
この二つは別々に評価されます。相手の要求が恐喝にあたるとしても、それで自分の行為の評価が変わるわけではありません。反対に、自分の行為に問題があったとしても、相手がそれを材料に何を求めてもよいということにはなりません。どちらか一方だけを見て判断すると、対応を誤りやすくなります。
連絡を受けた直後に確かめたいこと
動揺しているときほど、すぐに返信したり支払ったりしたくなるものです。その前に、次の点を手元の記録から確かめておくと、後の判断がしやすくなります。
相手の年齢は、まだ確定していない
「未成年だった」というのは、現時点では相手がそう述べているにすぎません。本当に18歳未満なのか、18歳や19歳なのに「未成年」という言葉を使っているのか、そもそも年齢自体が作り話なのかは、この段階では分からないことがほとんどです。2022年4月の民法改正により成年年齢は18歳に引き下げられており、児童買春などで問題になる「児童」も18歳未満の者を指します。18歳・19歳の相手であれば、児童買春の問題にはなりません。
会ったときに何があったのか
食事や会話だけだったのか、性的な行為があったのか、お金はいつ、何の名目で渡したのかによって、問題になる法律が大きく変わります。会う前のメッセージ、プロフィールの記載、送金や支払いの記録は、記憶よりも正確に当時の状況を示します。
連絡してきたのは誰か
会った本人なのか、親を名乗る人物なのか、交際相手や知人を名乗る男性なのかも重要です。第三者が出てきて金銭を求める形は、いわゆる美人局と似た構図であることがあります。美人局の典型的な流れについては、マッチングアプリで美人局に遭った|「彼氏を名乗る男」への対処で解説しています。
相手が18歳未満だった場合に問われ得る罪
相手が実際に18歳未満だった場合、行為の内容によっては次のような罪が問題になることがあります。
| 罪名 | 主な内容 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 児童買春(児童買春・児童ポルノ禁止法4条) | 18歳未満の児童に対償を供与し、またはその約束をして性交等をすること | 5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| 青少年健全育成条例違反 | 18歳未満の青少年とのみだらな性行為など(都道府県ごとに規定) | 条例により異なる |
| 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪(刑法177条・176条) | 16歳未満の者との性交等やわいせつな行為(13歳以上16歳未満の場合は行為者が5歳以上年長であることが要件) | 177条は5年以上の有期拘禁刑、176条は6月以上10年以下の拘禁刑 |
| 児童ポルノ関連(同法7条) | 18歳未満の児童の性的な画像・動画の撮影、所持、提供など | 行為の態様により異なる |
どの罪が問題になるかは、相手の実際の年齢、対価の有無、行為の内容によって決まります。食事だけでお金を渡した場合でも、連れ回しの態様によっては未成年者誘拐が問題になることがありますが、多くの場合は性的な行為の有無が大きな分かれ目になります。パパ活の場面で問われる刑事責任の全体像は、パパ活相手が未成年だった|男性側の児童買春リスクと対応で整理しています。
年齢を知らなかった場合の扱い
児童買春は故意犯であり、成立には相手が18歳未満であることの認識が必要です。ただし、はっきり知っていた場合に限られるわけではなく、「18歳未満かもしれない」と思いながら会った場合には、認識があったと評価されることがあります。年齢をどのように確かめたか、プロフィールや会話にどのような記載があったか、外見や話の内容から何が分かったかといった事情が、総合的に見られます。この点については、相手が18歳未満だと知らなかった|年齢の確認と認識の評価と年齢を偽られていた|児童買春事件で年齢の不知はどこまで通るかで詳しく解説しています。
「払わなければ警察に言う」という要求は恐喝にあたるのか
人を脅して金銭などを交付させると、恐喝罪(刑法249条、10年以下の拘禁刑)にあたります。実際にお金を受け取っていなくても、恐喝未遂として処罰の対象になります(刑法250条)。
もっとも、「警察に相談する」と伝えること自体は、被害を受けた人の正当な権利の告知であることもあります。問題になるのは、警察への申告をちらつかせながら、正当な範囲を超える金銭を求めたり、支払いを迫ったりする場合です。どこからが脅しにあたるかの考え方は、「被害届を出す」と言われた|正当な権利の告知と脅迫の境界で取り上げています。
自分の側にも問題がある場合でも
自分の行為に違法の疑いがあるとしても、それを材料にした金銭の要求が正当化されるわけではありません。恐喝の被害として警察に相談することは可能です。ただし、相談をきっかけに自分の行為も捜査の対象になり得るため、両方の見通しを踏まえて判断する必要があります。この難しさについては、自分にも非がある場合の警察相談|恐喝被害を申告する際の障害で解説しています。
本人や保護者からの正当な申し入れとの違い
相手が本当に18歳未満で、保護者が弁護士などを通じて謝罪や示談を求めてくる場合は、恐喝とは区別して考える必要があります。誰が、どのような経路で、どの程度の金額を、どのような言葉で求めているのかが、見分けるときの手がかりになります。払う前に確認したい点は、美人局と正当な慰謝料請求の見分け方|払う前に確認すべきことにまとめています。
お金を払えば、それで終わるのか
児童買春は、被害者からの告訴がなくても起訴できる罪です。そのため、相手との間でお金を払ったからといって、刑事手続が止まる仕組みにはなっていません。口止めのつもりで支払っても、捜査機関が事実を把握すれば手続は進み得ます。また、一度支払うと「まだ払える人」と見られ、要求が繰り返されることも少なくありません。
一方で、相手が実際に18歳未満で、保護者との間で弁護士を通じて適切な示談が成立すれば、処分を決める際の事情として考慮されることがあります。未成年者との示談では、書面の当事者や保護者の同意が問題になります。詳しくは、未成年の被害者と示談する|親権者の同意と書面の当事者をご覧ください。口止め料として相手に直接払うことと、正式な手続として示談をすることは、意味合いが大きく異なります。
すでに払ってしまった場合
支払った日時、金額、方法、そのときに言われた言葉を記録として残しておくことが大切です。脅されて支払った場合には、事情によっては返還を求められることもあります。考え方については、払ってしまった後に取り戻せるか|恐喝・強迫を理由とする返還で解説しています。
連絡を受けた後に避けたい対応
焦りから取った行動が、後の見通しを悪くしてしまうことがあります。次のような対応は、できるだけ避けたほうが安全です。
- 相手の自宅や学校の近くへ出向いて、直接話をつけようとすると、新たなトラブルにつながるおそれがあります。
- 年齢を確かめようとして、相手に身分証の写しなどを強く求めると、かえって関係がこじれることがあります。
- 「誰にも言わないでほしい」と頼んだり、口止めとしてお金を渡したりすると、後から不利な事情として扱われるおそれがあります。
- メッセージや送金の記録を消すと、自分にとって有利な事情まで確かめられなくなります。
- 相手の画像や動画を他人に見せたり送ったりすると、それ自体が別の問題になり得ます。
- 支払いのために借入れをすると、要求が繰り返された場合の負担が大きくなります。
手元に相手の画像や動画がある場合、その保存や削除をどうするかは、相手の年齢や事件の見通しによって判断が分かれます。自己判断で扱わず、弁護士に相談してから決めることをお勧めします。
自首を考える場面
相手が18歳未満である可能性が高く、自分の行為が罪にあたるおそれがある場合には、自首を検討する場面もあります。刑法42条1項は、罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、刑を減軽することができると定めています。ただし、減軽は必ず認められるものではなく、すでに捜査機関が事実や人物を把握している場合には、法律上の自首にあたらないこともあります。
相手の年齢や当時の事実関係がはっきりしない段階では、まず記録をもとに事実を整理し、自首すべき事案かどうかを見極めることが先になります。判断の視点については、自分から出頭すべきか|自首の成否と実務上の意味で取り上げています。
弁護士に相談した場合の進め方
弁護士に相談した場合、事案に応じて次のような順序で対応を進めることが一般的です。
- 経緯と記録の整理(いつ、どこで、何をし、いくら支払ったか、年齢についてどのようなやり取りがあったか)。
- 相手の要求の評価(正当な請求の範囲か、恐喝にあたり得るか)。
- 連絡窓口の切り替え(弁護士が相手とのやり取りを引き受け、本人への直接の連絡を控えるよう求める)。
- 刑事手続への備え(自首の要否、警察から連絡が来た場合の対応、相手が18歳未満だった場合の示談の進め方)。
弁護士が窓口になることで、相手からの連絡に一人で向き合う状態から離れ、要求の中身を落ち着いて確かめられるようになります。脅しを受けた場面での事実確認の進め方は、「未成年だった」と脅された|事実確認と恐喝への対応でも解説しています。
後から「未成年だった」と告げられたとき、言われるままに支払うことも、連絡を無視し続けることも、どちらも状況を良くするとは限りません。自分の行為の評価と相手の要求の評価を分けて考え、記録をもとに一つずつ確かめていくことが、落ち着いた対応につながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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