【刑事事件・被害者側】性的画像を拡散された、刑事告訴はどう進める?

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

本記事は、2026年10月時点の法令にもとづいて解説しています。2025年6月1日施行の改正刑法により懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されたため、法定刑は拘禁刑で表記しています。


元交際相手などに性的な画像や動画をネット上へ公開された、あるいは知人に送られたと分かったとき、考えたいのは「画像の削除」と「相手の刑事責任の追及」を、どの順序でどう進めるかです。こうした行為はいわゆるリベンジポルノと呼ばれ、法律で処罰の対象とされていますが、罪によっては被害者の告訴がなければ起訴できない仕組みになっており、告訴には期間の制限もあります。

 この記事では、性的画像を拡散された方が刑事告訴を検討するときに、どの罪が問題になるのか、告訴の前に何を準備するのか、警察での手続がどう進むのかを順に整理します。

性的画像の拡散で問題になる主な罪

 性的画像の拡散で問題になる罪は、画像がどのように撮られ、どのように広められたかによって変わります。主なものは次のとおりです。

罪名主な内容法定刑告訴の要否
公表罪(私事性的画像記録提供等処罰法3条1項・2項)撮影対象者が特定できる方法で、性的な画像を不特定または多数の人に提供し、またはネット上などで公然と陳列する行為3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金必要(親告罪)
公表目的提供罪(同法3条3項)第三者に公表させる目的で、性的な画像を特定の人に提供する行為1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金必要(親告罪)
性的影像記録提供等罪(性的姿態撮影等処罰法3条)ひそかに撮影されたなど、撮影罪にあたる方法で記録された画像を人に提供し、または公然と陳列する行為3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(不特定多数への提供・公然陳列は5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその両方)不要
撮影罪(同法2条)同意のない状況などで、性的な姿態をひそかに撮影する行為3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金不要


交際中に同意して撮った画像も対象になる

 リベンジポルノ防止法(正式名称は「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」)が対象とする画像には、交際相手との間だけで見ることを前提に撮影を許した画像や、自分で撮影して相手に送った画像も含まれます。撮影の時点で同意していたことは、公表を許したことを意味しません。「自分で送ったのだから仕方がない」と考えて相談をためらう方もいますが、被害として扱われる場面は少なくありません。

ひそかに撮影された画像の場合

 撮影に気づいていなかった画像が拡散された場合は、撮影そのものが撮影罪にあたり、その画像を広める行為が性的影像記録提供等罪にあたる可能性があります。これらは親告罪ではないため、告訴がなくても捜査や起訴は可能です。それでも、処罰を求める意思を告訴という形で示しておくことには意味があります。

脅しや書き込みが重なっている場合

 拡散の前後に「ばらまく」「職場に送る」などと告げられていれば、脅迫罪や強要罪、金銭を求められていれば恐喝罪が問題になることがあります。画像とあわせて名前や中傷する文言が書き込まれていれば名誉毀損罪(親告罪)が重なることもあります。まだ拡散されておらず脅されている段階であれば、『拡散するぞ』と脅されている|拡散前にとるべき緊急対応3ステップもあわせてご覧ください。

 なお、写っているのが18歳未満の方である場合は、児童ポルノ禁止法などが適用され、扱いが大きく変わります。お子さまの被害については【親子問題】性的画像を撮られた・拡散された子への対応|削除と刑事手続の二段構えで解説しています。

告訴と被害届の違い、告訴できる期間

 被害届は「こういう被害に遭った」という事実を警察に申告するものです。これに対して告訴は、事実の申告に加えて「犯人の処罰を求める」という意思を示すものです。公表罪や公表目的提供罪のような親告罪では、告訴がなければ検察官は起訴できません。両者の違いについては被害届と告訴の違い|ストーカー・脅迫でどちらを選ぶでも整理しています。

 親告罪の告訴は、原則として「犯人を知った日」から6か月以内にしなければなりません(刑事訴訟法235条)。「犯人を知った」とは、犯人が誰かを特定できる程度に分かったことを指すと解されており、匿名で投稿されて相手が分からないうちは、期間は進まないと考えられています。ただ、相手の見当がついている場合にいつから数えるかは争いになることもあるため、期間ぎりぎりを待たずに動くことが望ましいでしょう。

告訴の前に準備しておきたいこと

 画像の削除を急ぎたい気持ちは自然ですが、削除された後では、投稿があったこと自体を示すのが難しくなることがあります。可能な範囲で、次のものを残しておきます。

  • 投稿されたページのURL。
  • 投稿日時・アカウント名・閲覧数などが分かる画面全体のスクリーンショット。
  • 相手が投稿したことをうかがわせるやり取り(「ばらまく」といったメッセージ、元の画像を送った履歴など)。
  • 画像が撮影・送信された時期と、拡散に気づいた経緯を時系列でまとめたメモ。
  • 相手の氏名・住所・勤務先・アカウント名など、分かっている範囲の情報。
  • 削除依頼をした場合は、その日時とサイト側の回答。


 ご自身の画像を何度も見返して保存する作業は、大きな負担になります。どこまで残せば足りるかは弁護士と相談しながら決めることもできますので、一人で抱え込む必要はありません。告訴状に添える資料の考え方は告訴状はどう書くのか|受理されやすい書き方と添付資料で解説しています。

刑事告訴の進め方

 事案によって前後することはありますが、一般的には次のような流れで進みます。

  1. 証拠と経緯の整理。
  2. 警察署への相談と告訴の申出。
  3. 告訴の受理と、被害者からの事情聴取。
  4. 捜査(投稿者の特定、端末の押収、相手の取調べなど)。
  5. 検察官への送付と、起訴・不起訴の判断。
  6. 告訴人への処分結果の通知。


相談先の警察署と窓口

 相談先は、お住まいの地域を管轄する警察署が一般的です。犯罪捜査規範では、警察官は管轄区域内の事件かどうかを問わず告訴を受理しなければならないとされています(63条)。事前に電話で相談の予約を入れ、性的な被害であることを伝えておくと、対応する担当者や部屋に配慮してもらえることがあります。性犯罪被害の相談電話「#8103」も利用できます。

告訴状を出すか、口頭で告訴するか

 告訴は書面でも口頭でもすることができ、口頭の場合は警察官が調書を作成します(刑事訴訟法241条)。実際には、被害の内容と処罰を求める意思を整理した告訴状を用意しておくと、話が伝わりやすくなります。告訴は弁護士を代理人として行うこともできます(同法240条)。

「まずは被害届で」と言われたとき

 窓口で「まず被害届を」「もう少し様子を見ては」と言われることがあります。公表罪などの親告罪では告訴がなければ起訴に進めないため、処罰を求める意思があることをはっきり伝えることが大切です。書面の補充や証拠の追加を求められた場合は、何が足りないのかを確認したうえで出し直す方法があります。受理に至らないときの考え方は被害届を受理してもらえない|断られたときにできることもご参照ください。

受理された後の流れ

 受理されると、被害の内容や相手との関係について事情聴取が行われます(【ストーカートラブル】被害届を出した後の事情聴取|何を聞かれるのか)。告訴を受けた警察は、書類と証拠物を速やかに検察官へ送付することとされています(刑事訴訟法242条)。検察官が起訴・不起訴を決めたときは告訴人に通知され(同法260条)、不起訴の場合は請求により理由の告知を受けることもできます(同法261条)。不起訴に納得できないときは、検察審査会への申立てという手段もあります。

削除の手続は告訴と並行して進める

 刑事手続は結論が出るまでに時間がかかることが多く、その間にも画像が転載されていくおそれがあります。そのため、削除の手続は告訴とは別に、並行して進めるのが一般的です。

 リベンジポルノ防止法には、サイトの管理者が投稿者に削除してよいかを照会し、2日を経過しても反対の申出がなければ削除しても責任を問われない、という特例があります(同法4条)。通常よりも短い期間で削除が進むように設けられた仕組みです。また、2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法により、大規模なプラットフォームには削除の申出を受け付ける窓口の整備や、一定期間内の対応と通知が求められるようになりました(【男女トラブル】情報流通プラットフォーム対処法で削除依頼はどう変わったのか)。

 削除と投稿者の特定をどちらから動かすかは、拡散の範囲や相手が分かっているかによって変わります。順序の考え方は【不当要求対応】拡散された後の順序|削除と発信者特定のどちらを先に動かすかで解説しています。

投稿した人が誰か分からないとき

 告訴は、相手の名前が分からなくても「氏名不詳者」として行うことができます。警察の捜査で投稿者が特定されることもありますし、民事の手続として、裁判所に発信者情報の開示を求める方法もあります。ただし、プロバイダが接続記録を保存している期間には限りがあるため、特定を目指すのであれば早めの対応が欠かせません。

告訴した後に知っておきたいこと


相手側から示談を申し入れられたら

 告訴の後、相手の弁護人から示談の申入れが届くことがあります。親告罪の場合、示談の条件として告訴の取消しを求められるのが通常です。告訴は起訴されるまでは取り消すことができますが、一度取り消すと同じ事件について再び告訴することはできません(刑事訴訟法237条)。取消しに応じるかどうかは、画像の削除や元データの消去、今後の接触禁止、違約金といった条件が書面で確保できるかを確かめたうえで判断することが大切です。書面の作り方は被害届の取下げ・告訴の取消をどう書くかで取り上げています。

住所や連絡先を知られないか

 示談交渉は、弁護士を窓口にすれば、ご本人の連絡先を相手に伝えずに進めることができます。また、2023年の刑事訴訟法改正により、起訴状などに記載される被害者の氏名や住所を相手に知らせない措置も設けられています。不安がある場合は、告訴の段階から警察や弁護士に伝えておくとよいでしょう。

弁護士に依頼してできること

 性的画像の被害は、刑事手続・削除・相手との交渉が同時に動くことが多く、ご本人だけで並行して進めるのは負担が大きくなりがちです。弁護士に依頼すると、たとえば次のような対応ができます。

  • 証拠の範囲と残し方を一緒に決め、告訴状を作成します。
  • 警察署への同行や、告訴の手続を代理して行います。
  • サイト管理者への削除請求や発信者情報の開示請求を、刑事手続と並行して進めます。
  • 相手方や相手の弁護人との示談交渉の窓口になります。
  • 慰謝料などの損害賠償請求を検討します。


関連する解説記事



 性的画像を拡散されたときは、証拠を残すこと、削除を進めること、告訴の意思を固めることを、それぞれ並行して考える必要があります。告訴には期間の制限があるため、相手が分かっている場合は特に、早めに方針を立てておくことが大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【刑事事件・被害者側】性的画像を拡散された、刑事告訴はどう進める?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼