【刑事事件】電動キックボードの事故で警察に呼ばれた
別れ話がこじれたときや、相手の言動に強い怒りや悲しみを感じたとき、勢いのままに元恋人へメッセージを送ってしまい、後から「これは脅迫になるのではないか」と不安になる方は少なくありません。相手から「警察に相談する」と返されたり、ブロックされたりして、どうしてよいか分からなくなっている方もいらっしゃると思います。この記事では、元恋人に送ったメッセージが脅迫罪にあたるかどうかを分ける考え方と、脅迫罪以外に問題になりうる罪、送ってしまった後にしておきたいこと・避けたいことを、刑事事件を扱う弁護士の立場から整理します。
この記事は、2025年6月に施行された拘禁刑(懲役・禁錮を一本化した刑罰)を反映した内容です。罪になるかどうかは、実際の文面や前後のやり取りによって判断が分かれるため、個別の事情は弁護士にご相談ください。
脅迫罪が成立するかを分ける考え方
脅迫罪は、相手やその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加えることを告げて、人を脅迫した場合に成立する罪です(刑法222条)。法定刑は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金とされています。直接会って言った場合だけでなく、LINEやDM、メールで送った文章も、害を加えることを告げる手段にあたります。
感情的なメッセージのすべてが脅迫罪になるわけではありません。判断の中心になるのは、次のような点です。
一般の人が怖いと感じる内容かどうか
脅迫罪では、受け取った人が実際に怖がったかどうかではなく、その内容が一般に人を怖がらせる程度のものかどうかが問われると考えられています。そのため「相手は気にしていないはず」「本気ではなかった」という事情だけで、成立が否定されるわけではありません。
一方で、同じ言葉でも、前後のやり取り、2人の関係、送った回数や時間帯、相手の住所や勤務先を知っているかどうかなどによって、受け取られ方は変わります。「覚えておけよ」「どうなっても知らない」のように直接的ではない表現でも、文脈によっては害を加えることをほのめかしたと評価されることがあります。
告げた害悪が、送った側の意思で左右できるものか
「天罰が下る」「不幸になればいい」のように、送った側が実現をコントロールできない内容は、一般に脅迫罪の害悪の告知にはあたりにくいとされています。これに対し、「家に行く」「会社に全部話す」といった内容は、送った側が実際に行えることなので、脅迫として評価されやすくなります。
「訴える」「警察に言う」は原則として脅迫にあたらない
貸したお金の返済を求めて「返してくれないなら訴える」と伝えるように、正当な権利を行使することを告げるだけであれば、原則として脅迫罪にはあたりません。ただし、本来の目的を離れて相手を困らせるために言った場合や、伝え方が度を越している場合には、問題とされる余地があります。詳しくは「訴えるぞ」「警察に行くぞ」は脅迫か|正当な権利行使との境界線で解説しています。
メッセージの内容ごとの見方
元恋人とのやり取りで問題になりやすい文面を、害の向かう先ごとに整理すると、おおむね次のようになります。あくまで目安であり、実際には文面全体と前後の経緯で判断されます。
| メッセージの例 | 害の向かう先 | 見方の目安 |
|---|---|---|
| 「殺す」「痛い目にあわせる」 | 生命・身体 | 脅迫罪の典型にあたりやすい内容です |
| 「家の前で待っている」「どこにいるか分かっている」 | 自由・身体 | 文脈によって脅迫と評価されることがあります |
| 「秘密を会社や家族に話す」 | 名誉 | 内容によって脅迫にあたることがあります |
| 「写真や動画をネットに流す」 | 名誉 | 脅迫や強要のほか、性的画像に関する規制が問題になることがあります |
| 「家族がどうなっても知らない」 | 親族の生命・身体 | 親族への害悪として脅迫罪の対象になります |
| 「許さない」「最低な人間だ」 | 具体的な害は示していない | 感情の表現にとどまれば脅迫にはあたりにくいものの、回数や内容によって別の規制が問題になります |
家族に向けた内容については家族に危害を加えると言った|脅迫罪の「親族」の範囲、画像に関する内容については画像をばらまくと言ってしまった|脅迫・強要と私事性的画像の規制もあわせてご覧ください。
なお、「死んでやる」のように自分自身に向けた内容は、相手やその親族への害悪ではないため、通常は脅迫罪の対象とはされません。ただし、それを理由に復縁や面会を求めれば強要罪の問題になりえますし、繰り返し送ればストーカー規制法の対象となることがあります。
脅迫罪以外に問題になりうる罪
元恋人へのメッセージは、脅迫罪だけでなく、次のような罪や規制の対象になることがあります。
強要罪・恐喝罪
「別れるなら会社に話す」「会わないなら写真を流す」のように、害を告げたうえで相手に義務のないことをさせようとすると、強要罪(刑法223条、3年以下の拘禁刑)の問題になります。相手が要求に応じなかった場合でも、未遂として処罰の対象になります。また、「お金を払わなければ秘密をばらす」と金銭を求めた場合には、恐喝罪(刑法249条、10年以下の拘禁刑)が問題になり、刑の重さが大きく変わります。違いは恐喝・強要・脅迫はどう違うのか|言い方で罪名が変わるで整理しています。
ストーカー規制法
恋愛感情や、それが満たされなかったことへの恨みの感情から、拒まれているのに連続してメッセージを送ったり、乱暴な言葉を送ったりする行為は、ストーカー規制法の「つきまとい等」にあたることがあります。1通ごとの内容は脅迫にあたらなくても、送り続けたこと自体が問題になる点に注意が必要です。2025年の改正では、被害を受けた人からの申出がなくても警察が警告を出せる仕組みが設けられています。両者の重なりについてはしつこいDM・メッセージを送った|脅迫とストーカー規制法の重なりで解説しています。
名誉毀損罪・侮辱罪
名誉毀損罪や侮辱罪は、不特定または多数の人が知りうる状態で行われることが前提です。そのため、1対1のメッセージで悪口を送っただけであれば、通常はこれらの罪にはあたりにくいと考えられます。ただし、共通の友人がいるグループや、SNSの公開投稿に書き込んだ場合は事情が異なります。
送ってしまった後に考えられる流れ
相手がメッセージを怖いと感じた場合、警察に相談することが考えられます。その後の流れは事案によってさまざまですが、おおむね次のような段階をたどることがあります。
- 相手が警察に相談し、メッセージの画面などを示す。
- 警察から電話や呼出しがあり、事情を聞かれる、または注意や警告を受ける。
- 相手が被害届や告訴状を出し、事件として捜査が進む。
- 捜査の結果をふまえて、検察官が起訴するかどうかを決める。
脅迫罪は、被害を受けた人の告訴がなければ起訴できない罪(親告罪)ではありません。被害届が出ていない段階でも捜査が進むことはあり、逆に相談だけで終わることもあります。逮捕されるかどうかは、メッセージの内容、送った回数、相手への接触が続くおそれなどをふまえて判断されます。警察から連絡が来た場合の考え方は【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味、警告を受けた場合については警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのかをご覧ください。
送ってしまった後にしたほうがよいこと・避けたいこと
追加のメッセージを送らない
送ってしまったことを後悔して、謝罪や言い訳、「本気ではなかった」という説明を重ねたくなる方は多くいらっしゃいます。しかし、相手が連絡を望んでいない状況では、謝罪のつもりの連絡であっても、連続した連絡として受け取られるおそれがあります。共通の友人や相手の家族を通じて伝えてもらうことも、同じように受け取られることがあります。この点は【ストーカートラブル】謝りたい|謝罪の連絡そのものが問題になる理由でも解説しています。
送ったメッセージを消さない
送信の取消しや削除をしても、相手の端末にスクリーンショットなどの形で残っていることがあります。自分の側だけ記録を消すと、後で経緯を説明する材料がなくなるうえ、記録を隠そうとしたと受け取られるおそれもあります。前後のやり取りには、相手からの言葉など、自分にとって説明の手がかりになる内容が含まれていることもあるため、そのまま残しておくことをおすすめします。
経緯を時系列で整理する
後で弁護士に相談するときや、警察から事情を聞かれたときに備えて、次のような点をメモにまとめておくと、状況を正確に伝えやすくなります。
- 交際の期間と、別れた時期・経緯。
- 問題になりそうなメッセージを送った日時と回数。
- メッセージを送るきっかけになった出来事や、相手からの言葉。
- 相手から「連絡しないで」などと言われたかどうか、言われた時期。
- 警察や相手方の代理人から連絡があったかどうか。
謝罪や示談を考えるとき
相手に謝罪したい、事件として大きくなる前に話をつけたいと考える場合には、本人が直接連絡するのではなく、弁護士を通じて申し入れる方法が考えられます。相手が加害者本人に連絡先を知られたくないと考えている場合でも、弁護士が窓口であれば話し合いに応じてもらえることがあります。
示談では、謝罪の気持ちを伝えることに加え、今後は連絡や接触をしないこと、解決金の有無や金額などを取り決めるのが一般的です。示談が成立し、相手が処罰を望まない意思を示した場合には、検察官の判断において有利な事情として考慮されることがあります。もっとも、相手には示談に応じる義務はなく、示談が成立しても処分が決まるわけではありません。謝罪の手紙を用意する場合は謝罪文の書き方|構成要素と、書いてはいけないことも参考になります。
よくあるご質問
一度送っただけでも脅迫罪になりますか
脅迫罪は、回数を要件とする罪ではありません。内容によっては、1通のメッセージでも成立しうると考えられています。ただし、回数や頻度は、悪質さの評価や、ストーカー規制法の対象になるかどうかに影響します。
相手が先にひどい言葉を送ってきた場合はどうなりますか
相手の言動がきっかけになったという事情は、経緯として考慮されることがあります。もっとも、それだけで脅迫罪の成立が否定されるわけではないため、やり取りの全体を残したうえで弁護士に相談することをおすすめします。
相手から連絡が来たら、返信してもよいですか
相手から連絡が来た場合でも、警告を受けている状況などでは、返信の仕方によって問題になることがあります。考え方は【ストーカートラブル】相手から先に連絡が来た|返信したら違反になるのかで整理しています。
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元恋人へのメッセージでお悩みの方へ
感情的なメッセージを送ってしまった後は、不安から追加の連絡をしたり、記録を消したりしてしまいがちですが、そうした行動がかえって状況を難しくすることがあります。脅迫罪にあたるかどうかは文面と経緯によって変わるため、まずは手元のやり取りを残したまま、弁護士と一緒に状況を整理することが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


