【男女トラブル】AIで作られた自分の性的画像が出回った|現行法で何が使えるのか
この記事は2026年9月時点の法令に基づいています。賃貸借契約の内容や物件の状況によって取れる手段は変わりますので、実際の対応は個別にご確認ください。
別れることは決まった。部屋の契約者は自分で、家賃も自分が払ってきた。それなのに相手が出ていかない。荷物もそのままで、話し合いにも応じない。自分名義の部屋なのに、なぜ追い出せないのか。そうしたご相談を受けることがあります。
この状況で最も多い誤解は、契約者だから自分の判断で退去させられるというものです。実際には、契約者であることと、相手を退去させられることは別の話になります。そして、この点を知らずに動いてしまうと、こちらが責任を問われる側に回ることがあります。
この記事では、力ずくで出させられない理由、相手の立場が法律上どう扱われるか、退去を求める通知の出し方、家賃や光熱費の整理、そして話し合いで動かないときに進む手続と時間の見通しを、順に整理します。
名義人であっても、力ずくで出させることはできない
最初に押さえていただきたいのが、自力救済の禁止という考え方です。
最高裁は、私力の行使は原則として法の禁止するところであり、法律に定める手続によったのでは権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能または著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情がある場合に限り、必要の限度を超えない範囲で例外的に許されるにとどまる、としています(最高裁昭和40年12月7日判決)。
ここでいう例外は、実務上ほとんど認められません。契約書に「無断で不在が続けば荷物を処分できる」といった条項があっても、それだけで適法になるわけではないと判断された裁判例もあります。
やってしまいがちで、危ないこと
相談前にすでに実行してしまっている方もいますので、先に挙げておきます。
- 相手の外出中に玄関の鍵を交換する。
- 相手の荷物を室内から運び出す、または処分する。
- 電気やガス、水道を止める。
- 無断で室内に立ち入って荷物を持ち出す。
これらは、相手から損害賠償を求められるおそれがあるほか、状況によっては住居侵入や器物損壊といった刑事上の問題として扱われることもあります。立場が逆転してしまうのが、この分野のこわいところです。
なお、暴力を受けている、身の危険を感じているといった場合は別です。その場面では退去を求めることより先に、ご自身の安全の確保を優先してください。いったん部屋を離れると占有を失うのではないかと心配される方もいますが、明渡しを求める権利がそれで消えるわけではありません。安全を確保したうえで、後から手続を進められます。
相手の立場は「使用貸借」として扱われることがある
では、家賃を1円も払っていない相手に、なぜ権利があるように扱われるのか。ここが分かりにくい部分だと思います。
無償で物を使わせる契約を、法律では使用貸借といいます(民法593条)。同棲を始めるにあたって、契約者である方が「ここに一緒に住んでいい」と認めていた場合、その合意が使用貸借として評価されることがあります。書面がなくても、口頭や事実上の了解で成立し得ます。
いつ終わるのかは、決め方によって変わる
使用貸借の終わり方は、何を決めていたかで変わります。
| 決めていた内容と、いまの状況 | どう終わるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 期間を定めていた | 期間が満了すれば、それだけで終わる | 民法597条1項 |
| 目的だけ定めていて、その目的を果たし終えた | 果たし終えた時点で、それだけで終わる | 同条2項 |
| 目的だけ定めていて、まだ果たし終えてはいないが、果たすのに足りる期間が過ぎた | こちらから解除を伝えて終わらせる | 民法598条1項 |
| 期間も目的も定めていない | こちらからいつでも解除を伝えられる | 同条2項 |
2行目と3行目は似ていますが、違いは目的を果たし終えたといえるかどうかです。果たし終えていれば、何も言わなくても契約は終わっています。まだ果たし終えていない段階では、契約は続いているので、こちらから終わらせる意思を伝える必要があることになります。
同棲の場合、「二人で暮らすため」という目的があったと見られやすく、その目的をいつ果たし終えたといえるかは評価が分かれます。関係が解消された時点で目的は失われたと見ることもできますが、相手からは「まだ終わっていない」と言われる余地が残ります。
そのため実務では、3行目にあたる場面として組み立てるのが安全です。つまり、終わらせる意思をこちらから明確に伝え、そのうえで相応の期間を置くという進め方になります。今日言って明日出ていってもらう、という形が通りにくいのはこのためです。
もっとも、いつまでも待つ必要はありません。相手が転居先を探すのに要する期間として、実務上は1か月前後を置くことが多いと感じています。
内縁と評価される場合
交際の期間が長く、生計を一つにし、周囲にも夫婦として認識されていたような場合には、単なる同居ではなく内縁関係として扱われることがあります。この場合、居住についての扱いや、生活費の分担についての考え方が変わってくることがあります。
また、相手が持ち込んだ家具や家電、共同で購入した物の帰属も争点になりやすい部分です。どちらが代金を出したかが分かる記録が残っていれば、後の整理がしやすくなります。関係の実態と期間を整理したうえで判断する必要があります。
退去を求める通知の出し方
口頭で何度伝えても、後から「言われていない」と言われれば水掛け論になります。書面にしておくことには、相手を動かす以上に、いつ何を伝えたかを固定する意味があります。
通知に入れておきたいのは、次の内容です。
- 共同生活を解消したこと、無償で使わせていた関係を終わらせる意思。
- 退去してほしい期限(日付を特定する)。
- 期限を過ぎても居住を続ける場合、その分の負担を求めること。
- 残置された荷物の扱いについて、こちらから処分はしない旨と、引き取りの方法。
- 連絡先と、連絡してほしい期限。
届いたことをどう残すか
同じ部屋に住んでいる相手に郵便を送るのは、形としては奇妙に思えるかもしれません。それでも、内容証明郵便のように差し出した内容と日付が記録に残る方法を使う意味があります。受取を拒まれる場合は、手渡しの場面を記録に残す、メッセージアプリでも同じ内容を送っておく、といった重ね方をします。
実際に通知から解決に至った流れは、【解決事例】名義を貸した部屋から交際相手が退去しない場合の対処法でご覧いただけます。
家賃と光熱費をどう整理するか
この局面でよくあるのが、支払いを止めて相手を追い出そうとするという発想です。これは避けてください。
賃料を滞納すれば、賃貸人との関係で契約を解除される事由になり得ます。解除されれば、部屋を明け渡す義務を負うのは契約者であるご自身です。相手を追い出すつもりで、自分の側の立場を悪くする結果になります。
| 費目 | 当面どうするか | 後の請求 |
|---|---|---|
| 家賃 | 契約者が支払いを続ける | 退去までの期間分を相手に求めることを検討 |
| 光熱費 | 名義人が支払いを続ける | 使用実態に応じて分担を求める |
| 退去時の原状回復 | 契約者が賃貸人に負う | 損傷の原因に応じて相手に求める |
相手に対する請求の根拠としては、無償で使わせる関係が終わった後も居住を続けている以上、その利益を返してもらうという整理(不当利得)や、明渡しが遅れたことによる損害という整理が考えられます。金額は、その部屋の賃料相当額を基準に組み立てるのが一般的です。
なお、敷金や原状回復の負担をどう分けるかは、退去の後にもう一段の争点になります。この点は同棲解消の敷金・原状回復・退去費用は誰が払う?で整理しています。
先に解約しないこと
もう一つ、順番の問題があります。早く清算したいという気持ちから、賃貸人に解約を申し入れてしまう方がいます。
しかし、解約すれば、明け渡す義務を負うのは契約者です。解約日が来ても相手が住み続けていれば、賃貸人に対して責任を負うのはご自身になります。実務上も、室内に人や物が残った状態では解約の手続を受け付けてもらえないことが少なくありません。解約は、相手の退去のめどが立ってから進めるのが安全です。
話し合いで動かないときの手続と時間
通知にも応じない場合、裁判所の手続に進むことになります。おおまかな流れと、それぞれにかかる期間の目安は次のとおりです。
| 段階 | 内容 | 期間の見方 |
|---|---|---|
| 通知・交渉 | 退去期限を示して求める | 数週間から1か月程度 |
| 保全の申立て | 占有が第三者に移らないよう手当てする | 必要な場合のみ |
| 明渡しの訴訟 | 建物の明渡しを求める | 相手が争うかどうかで大きく変わる |
| 判決の確定 | 控訴がなければ確定する | 判決後2週間 |
| 強制執行の申立て | 執行官が手続を進める | 申立てから2週間以内に催告 |
| 明渡しの催告 | 引渡し期限を定めて公示する | 催告の日から1か月を経過する日 |
| 断行 | 執行官が占有を解く | 引渡し期限の数日前が通常 |
このうち、強制執行の部分は法律に期間が定められています。執行官は、明渡しの催告をする際に引渡し期限を定めますが、これは催告があった日から1か月を経過する日とされています(民事執行法168条の2第2項)。また、催告はやむを得ない事由がある場合を除き、申立てから2週間以内に実施することとされています。
つまり、判決を得てからでも、実際に部屋が空くまでには1か月半程度を見ておく必要があります。訴訟そのものにかかる期間を加えると、相手が争う姿勢を見せた場合は年単位になることもあります。話し合いの段階で解決したほうが、費用の面でも時間の面でも負担が小さいのは、この構造によるものです。
なお、強制執行に要した費用は債務者の負担とされていますが、実際にはこちらが先に立て替えて支払う必要があります。回収できるかどうかは、相手の資力によります。
交渉から解決に至った実際の経過は、【解決事例】交際関係解消後の賃貸物件居座りトラブルをご覧ください。
どの順で手をつけるか
最後に、進め方を整理します。
- 契約書を確認する。同居人の届出の有無、解約の予告期間、禁止事項を見る。
- 同棲を始めた経緯と、費用を誰がどう負担してきたかを書き出す。
- 退去期限を示した通知を、記録の残る方法で出す。
- 家賃と光熱費の支払いは止めずに続け、支払った記録を残す。
- 期限を過ぎても動かない場合に、裁判所の手続に進むかを検討する。
2番目を挙げたのは、後の請求で必要になるからです。誰が何を負担してきたかがあいまいなままだと、金銭の清算の場面で主張の根拠を組み立てにくくなります。通帳の記録やアプリの送金履歴は、この段階で集めておいてください。
1番目も見落とされがちです。契約に同居人の届出が必要と書かれていながら届け出ていなかった場合、賃貸人との関係でこちらに問題が生じることがあります。相手に退去を求める前に、契約上の自分の立場を確認しておくと、後で慌てずに済みます。
自分名義の部屋に他人が居座っている状況は、日常の生活が続いている分だけ消耗が激しく、早く終わらせたいという気持ちが先に立ちやすい場面です。ただ、順番を誤ると、かえって時間も費用もかかることになります。どの手段をどの順で使うかは、契約の内容と経緯を見ないと決められません。動き出す前に、一度整理する機会をお持ちいただければと思います。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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