同じ店で複数回の万引きが判明した|余罪の一括処理と量刑

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

同じ店舗で万引きを何度か繰り返していたことが、防犯カメラの確認や店舗側からの申告をきっかけに、まとめて明らかになることがあります。1件のことで呼び出されたはずが、話が数件に広がり、これからどう処理されるのかが見えなくなる場面です。

 この記事では、複数回の万引きが判明した後に、それがいくつの罪として扱われ、どこまでが一度にまとめて処理され、刑の枠がどう決まるのかを整理します。発覚を避ける方法や、取調べでの具体的な受け答えの仕方は扱いません。

 押さえておきたいのは順序です。件数が固まり、処理の範囲が決まり、そのあとに刑の枠が決まります。回数がそのまま刑の重さに置き換わるわけではありません。

「複数回」がそのまま「複数の罪」になるとは限らない

 万引きは、刑法235条の窃盗罪として扱われます。法定刑は10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

 次に問題になるのが、複数回の行為をいくつの罪として数えるかです。原則は1回ごとに1個の窃盗罪ですが、同じ機会に接着して行われた複数の窃取は、全体をまとめて1個の罪と評価されることがあります。接続犯と呼ばれる考え方で、最高裁も昭和24年7月23日の判決でこの処理を認めています。

 裁判例では、窃盗罪の罪数を検討するにあたっては、本人の主観面だけでなく、窃取行為の時間的・場所的関係、行為の態様、被害者の同一性などを総合して考慮するのが相当である、と示されています(名古屋高等裁判所 平成18年2月20日判決)。同じ店舗内の短時間のうちに続けて商品を取った事案で、途中で新たに思い立ったものであっても、まとめて1個と扱われた例があります。

数え方の見当


場面数え方の見当理由として挙げられるもの
同じ日に同じ店で続けて1個にまとめられることがある時間的・場所的に接着し、被害者が同一
日を分けて何度も回ごとに別個とされることが多い機会が異なると評価されやすい
同じ店でも間隔が空く個別に判断される上の要素を総合して決まる


 この表は目安であり、実際の判断は事案ごとに分かれます。もっとも、「同じ店で5回」と言われた時点で罪の数が5個に確定しているわけではない、という点は最初に知っておいて差し支えありません。

同じ店であることが処理に与える影響

 被害を受けたのが一つの店舗であれば、弁償や示談の相手方も一つになります。複数の店舗にまたがる事案と比べて窓口が分散しない点は、実務上の違いとして表れます。

 一方で、店舗側は棚卸しの差異や防犯カメラの確認を通じて、過去の来店と商品の欠品を結び付けていることがあります。1件の現場のやり取りで提出される資料が、その1件分にとどまらないことがあるのはこのためです。

 ただし、店舗が把握している件数と、刑事事件として立件される件数は一致するとは限りません。映像の保存期間、商品の特定、日時の確定といった裏付けが取れた範囲が、手続の対象になります。

一括処理はどのように行われるか

 在宅で捜査が進む場合、判明した数件をまとめて送致し、検察官が一度に処分を判断する流れが取られることがあります。先に送致した事件の後から資料が整った分を追加して送る扱い(追送致)や、起訴後に別の事実を追加して起訴する扱い(追起訴)もあります。

 身柄が拘束されている場合は、事件ごとに逮捕・勾留の枠が立つため、期間の見通しが変わってきます。この点は身柄手続そのものの話になるため、ここでは触れるにとどめます。

処理の形と、そこで決まること


処理の形起きること決まること
数件をまとめて送致一度の処分で判断される全体の処分が同じ時期に決まる
後から追送致資料が整った分が加えられる処分の時期が後ろにずれる
起訴後の追起訴審理する事実が追加される同じ裁判の中で併せて判断される


 どの形になるかは、裏付け資料が整う時期と、検察官の判断によって決まります。本人の側で選べるものではありませんが、被害品や日時の整理が早く進めば、判断の材料がそろう時期にも関わってきます。

まとめて裁かれると刑の枠はどうなるか

 確定裁判を経ていない2個以上の罪は、併合罪となります(刑法45条前段)。併合罪として有期の拘禁刑に処するときは、最も重い罪について定めた刑の長期に、その2分の1を加えたものが長期になります(刑法47条本文)。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期を合計した年数を超えることはできません(同条ただし書)。罰金については、各罪について定めた多額の合計以下となります(刑法48条2項)。

 窃盗罪の複数件が併合罪として処理される場合、拘禁刑の長期は15年、罰金は各罪の多額を合計した額が上限という計算になります。

 ここで確認しておきたいのは、これは枠の上限が広がるという意味であって、件数に刑期を掛け合わせる仕組みではないという点です。下限が引き上げられるわけでもありません。実際に言い渡される刑は、この枠の中で事情を踏まえて決められます。

まとめられなかった場合に起きること

 併合罪の関係に立つのは、確定裁判を経ていない罪どうしです。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪と、その裁判が確定する前に犯した罪とに限って併合罪となります(刑法45条後段)。併合罪のうちに確定裁判を経た罪とまだ経ていない罪があるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断されます(刑法50条)。

 つまり、判決が確定した後になって別の回が明らかになった場合、その分は改めて別の手続で扱われることになります。一度の裁判で区切りがつく形にはなりません。同じ内容の事実であっても、同時に処理されるか時期がずれるかで、経過する時間や手続の回数は変わってきます。まとめて処理されること自体を、不利な方向にだけ受け取る必要はないということでもあります。

量刑にはどう効くのか

 起訴されていない事実の扱いについて、最高裁は昭和41年7月13日の判決で、起訴されていない犯罪事実を余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮することは許されない一方、被告人の性格や経歴、犯罪の動機・目的・方法などの情状を推知するための資料として考慮することは差し支えない、という枠組みを示しました。昭和42年7月5日の判決も、余罪の期間・回数・被害金額が具体的に認定されていた事案について、この枠組みに沿って判断しています。

 この結果、立件されなかった分がそのまま刑期に加算されるという構造にはなっていません。評価に影響しやすいのは、繰り返しの期間や態様、被害額の合計、発覚した後の対応など、起訴された事実そのものから読み取れる事情のほうです。

「常習」と言われることと常習累犯窃盗は別

 繰り返しがあると常習性を指摘されることがありますが、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律3条の常習累犯窃盗は、行為前10年内にこれらの罪について3回以上、6月の拘禁刑以上の刑の執行を受けたか、その執行の免除を得たこと、という形式的な要件を伴います。回数が重なっていることだけを理由に、この規定が適用されるわけではありません。

弁償と示談をどう組み立てるか

 同一店舗の事案であれば、判明している分をまとめて弁償の対象として整理できます。被害品の一覧と金額を突き合わせ、争いのない範囲を先に確定させておくと、その後の話が進めやすくなります。日時や商品名に食い違いがある部分は、分けて扱うことになります。

 店舗によっては、方針として個別の示談に応じない扱いをしていることがあります。その場合に取り得る対応は別の論点になるため、ここでは立ち入りません。

 なお、民事の弁償と、刑事で立件される範囲は別の話です。弁償したから立件されない、立件されていないから弁償しなくてよい、という関係にはありません。

時期による区切り

 窃盗罪の公訴時効は7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。行為ごとに期間が進むため、古い回については対象から外れることがあります。まとめて1個と評価される部分については、その全体が終わった時点が起算の基準になります。

誤解されやすい点


  • 回数が多いほど刑期が比例して積み上がる、という仕組みではありません。
  • 同じ店であれば当然に1件にまとめられる、というわけでもありません。
  • 立件されなかった分が、そのまま刑に上乗せされるわけではありません。
  • まとめて処理されることは、不利にだけ働くとは限りません。
  • 「常習」と言われることと、常習累犯窃盗にあたることは同じではありません。


まとめ


  • 複数回の行為がいくつの罪になるかは、時間的・場所的関係、行為の態様、被害者の同一性などから判断されます。
  • 確定裁判を経ていない罪どうしは併合罪となり、長期は最も重い罪の長期に2分の1を加えた範囲になります。
  • 判決が確定した後に別の回が明らかになった場合は、改めて別の手続で扱われます。
  • 起訴されていない事実を実質上処罰する趣旨で量刑に反映させることは許されないとされています。
  • 同一店舗の事案では、被害品の一覧と金額の突き合わせが早い段階で意味を持ちます。


 弁護士法人若井綜合法律事務所では、刑事事件のご相談を24時間受け付けています。件数や被害額の整理、店舗とのやり取り、今後の見通しについて、状況を伺ったうえでお伝えします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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