「参考人」として呼ばれた|被疑者に切り替わる瞬間
本記事は、2025年6月施行の改正刑法(懲役・禁錮の拘禁刑への一本化)と、2023年の性犯罪に関する法改正を反映した内容です。実際の見通しは、事案の内容や捜査の状況によって異なります。
風俗店を利用してしばらく経ってから、警察から「少し話を聞かせてほしい」と電話が来ることがあります。店名や日時だけを告げられ、何の件なのかははっきり説明されないことも少なくありません。
このような連絡を受けると、「自分は逮捕されるのか」「家族や会社に知られるのではないか」と強い不安を覚えるのは自然なことです。ただ、警察から話を聞きたいと連絡が来たことは、それだけで疑いをかけられていることを意味するわけではありません。店の摘発に関連して、利用客の一人として事情を聞かれるだけの場面もあります。
本記事では、風俗店の利用後に警察から連絡が来たときに考えられる背景と、折り返しや事情聴取の前に確かめておきたいこと、聴取の場で気をつけたい点を整理します。
警察が風俗店の利用客に連絡してくる主な背景
警察が利用客に連絡してくる理由は、大きく分けると「店側の違法営業を調べている場合」と「利用客本人の行為が問題になっている場合」があります。どちらに当たるかで、その後の見通しは大きく変わります。
| 連絡の背景としてよくある場面 | 警察が客に話を聞く理由 | 客の立場の目安 |
|---|---|---|
| 店が売春防止法違反や風営法違反で摘発された | 店の営業実態を裏づける証言を得るため | 参考人として扱われることが多い |
| 店で18歳未満の人が働いていたことが判明した | 誰が、いつ、どのようなサービスを受けたかを確認するため | 相手との行為の内容によっては被疑者となることがある |
| キャストが警察に被害を申告した | 申告された行為の有無や経緯を確認するため | 被疑者として扱われる可能性がある |
| 店内やホテルでの撮影・録音が問題になった | 撮影の有無や画像の保存状況を確認するため | 被疑者として扱われる可能性がある |
店側の違法営業を調べている場合
店が売春防止法違反(場所の提供や周旋など)や風営法違反(無許可営業や禁止区域での営業など)で摘発されると、警察は店に残っていた予約の記録や顧客の電話番号、クレジットカードの利用履歴などから利用客をたどり、事情を聞くことがあります。
売春防止法は売春の相手方となること自体を禁止していますが、利用客に対する罰則は定められていません。そのため、店の違法営業について話を聞かれる場面では、利用客は店の営業実態を確かめるための参考人として扱われるのが一般的です。店の摘発と客の関係については、利用した風俗・メンエスが摘発された|客も逮捕・事情聴取されるのかでも解説しています。
利用客本人の行為が問題になっている場合
一方で、キャストが「同意のない行為をされた」と警察に相談した場合には、不同意わいせつ罪(刑法176条)や不同意性交等罪(刑法177条)の疑いとして、利用客本人に話を聞くことになります。無断で撮影や録音をしていた場合には、性的姿態撮影等処罰法違反などが問題になることもあります。
また、相手が18歳未満だった場合には、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)や、各都道府県の青少年保護育成条例違反が問題になり得ます。年齢を知らなかったという事情がどのように評価されるかは、相手が18歳未満だと知らなかった|年齢の確認と認識の評価で詳しく扱っています。
折り返しの電話をかける前に確かめておきたいこと
警察から着信があった場合、すぐに折り返したくなるかもしれませんが、まずは落ち着いて次の点を確認することをおすすめします。
- 電話をかけてきたのが本当に警察かどうか(警察署の代表番号を自分で調べ、そこから担当部署につないでもらう)。
- 所属する警察署と部署、担当者の名前。
- どの件についての聴取なのか(店名、日時、事件の種類)。
- 自分が参考人として呼ばれているのか、被疑者として呼ばれているのか。
- 希望される日時と場所、持ち物の有無。
風俗店の利用をめぐっては、警察を名乗って金銭を求める連絡が届くこともあります。警察が電話で示談金や罰金の振込みを求めることは通常ありませんので、お金の話が出た場合は特に慎重に確かめてください。
立場について尋ねても、電話口では明確な答えが返ってこないこともあります。その場合でも、尋ねたこと自体が不利に扱われるわけではありません。電話での受け答えについては、「警察から電話が来た」|折り返す前に確認したい3つのこともあわせてご覧ください。
任意の事情聴取に応じる義務はあるのか
逮捕されていない段階での事情聴取は任意捜査であり、法律上は出頭を断ることも、途中で退出することもできます(刑事訴訟法198条1項ただし書、223条)。
ただし、正当な理由なく出頭を断り続けると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると受け止められ、捜査機関が逮捕を検討する事情の一つになることがあります。仕事の都合で指定の日時に行けない場合は、断るのではなく、日程の調整を申し出る方が穏当です。日程の調整については、警察からの呼出しの日程は調整できるのか|仕事との両立で解説しています。
事情聴取の場で気をつけたいこと
記憶にないことを推測で話さない
風俗店の利用から時間が経っていると、日時や会話の内容をはっきり覚えていないことがあります。曖昧な記憶を推測で補って話すと、後から事実と食い違い、供述が変わったと評価されるおそれがあります。覚えていないことは「覚えていない」と伝えて差し支えありません。
また、被疑者として取調べを受ける場合には、自己の意思に反して供述する必要がないこと(黙秘権)が保障されています(刑事訴訟法198条2項)。黙秘をするかどうかは事案によって判断が分かれるため、黙秘したほうがよいのか|黙秘の効果とリスクの整理も参考にしてください。
調書の内容を確認してから署名する
聴取の内容は、供述調書という書面にまとめられるのが一般的です。調書は読み聞かせや閲覧によって内容を確認でき、誤りがあれば訂正を求めることができます。内容に納得できない場合は、署名押印を断ることもできます(刑事訴訟法198条4項・5項)。
特に、性的な行為の有無や同意の状況にかかわる部分は、言葉の選び方一つで受け取られ方が変わることがあります。自分の言ったことと違うニュアンスでまとめられていないか、落ち着いて確認することが大切です。調書以外に作成される書面については、取調べで作られる書面は調書だけではない|供述書・上申書・捜査報告書の違いで整理しています。
スマートフォンの提出を求められた場合
撮影や連絡のやり取りが問題になっている事案では、スマートフォンの任意提出を求められることがあります。任意提出は文字どおり任意ですが、提出した端末からは、問題になっている件以外のデータも確認される可能性があります。応じるかどうかを判断する際の考え方は、【刑事事件】警察に「スマホを任意で出してほしい」と言われた|応じる前に確認することをご覧ください。
家族や勤務先に知られることはあるのか
参考人として話を聞かれるだけの段階で、警察が利用客の家族や勤務先に事情を伝えることは、通常は考えにくいところです。連絡先として自分の携帯電話を伝えておけば、自宅に連絡が来る可能性も小さくできます。
一方で、被疑者として逮捕された場合には、勾留によって長期間出勤できなくなるなど、結果として周囲に知られる可能性が高まります。どのような経過をたどるかは事案によって異なるため、早い段階で見通しを確認しておくことが、生活への影響を抑えることにつながります。
弁護士に相談することで変わること
警察から連絡が来た段階で弁護士に相談すると、連絡の背景として考えられる事情を整理し、自分の立場や今後の見通しを把握しやすくなります。聴取の前に、話すべきことと慎重に扱うべきことを確認しておけば、当日の受け答えも落ち着いて臨めるでしょう。
キャストからの被害申告が背景にある場合は、弁護士を通じて被害を訴えている方との示談を検討することも考えられます。示談が成立すると、処分の判断にあたって考慮される事情の一つになります。ただし、加害を疑われている側が自分で相手に連絡を取ると、働きかけと受け止められるおそれがあるため、直接の接触は控えた方がよいでしょう。
なお、弁護士が取調室に同席することは、現在の実務では通常認められていません。その分、事前の打ち合わせや、聴取の合間・終了後の相談を通じて支える形になります。相談のタイミングについては、【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味でも解説しています。
よくあるご質問
一度しか利用していない店でも連絡が来ることはありますか
利用回数にかかわらず、予約の記録などから利用の事実が確認できれば、連絡が来ることはあります。利用が一度だけであっても、事情を聞かれること自体は珍しくありません。
参考人として呼ばれたのに、後から被疑者になることはありますか
聴取の結果や他の証拠から、本人の行為が問題になると判断されれば、立場が変わることはあり得ます。参考人として呼ばれた場合でも、事実と異なることを話さないよう注意してください。
店から「警察に行く」と言われていたのですが、関係はありますか
店やキャストが実際に警察へ相談した場合には、その件で連絡が来ている可能性があります。店から示談を求められている状況で警察からも連絡が来た場合は、両方の手続を見据えた対応が必要になります。被害申告後の流れについては、【風俗トラブル】被害届が受理されたと言われた|その後の流れと呼び出しまでの期間をご覧ください。
まとめ
- 警察から話を聞きたいと連絡が来ても、それだけで疑いをかけられているとは限りません。
- 折り返す前に、警察署の代表番号で本当の連絡かを確かめ、どの件か、自分の立場は何かを確認しておくと安心です。
- 任意の事情聴取は断ることもできますが、日程の調整を申し出る方が穏当です。
- 聴取では推測で話さず、調書の内容を確認してから署名することが大切です。
- 被害申告が背景にある場合は、示談を含めた対応を弁護士と早めに検討することが考えられます。
風俗店の利用をめぐる警察からの連絡は、背景によって取るべき対応が大きく異なります。一人で判断せず、聴取を受ける前の段階で状況を整理しておくことが、落ち着いて手続に向き合う第一歩になります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


