【日本版DBS】確認される『特定性犯罪』の範囲|対象になる罪・ならない罪

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

本記事は、こども性暴力防止法とその施行令、こども家庭庁の「こども性暴力防止法施行ガイドライン」(令和8年9月改訂)および「こども性暴力防止法に関するQ&A」(令和8年4月)をもとに、2026年9月時点の内容で作成しています。制度は2026年12月25日の施行前であり、対象となる条例の指定などは今後見直される可能性があります。


2026年12月25日に施行される日本版DBS(こども性暴力防止法)では、学校や保育所、国の認定を受けた学習塾などで子どもと接する仕事に就く人について、性犯罪の前科の有無が国に確認されます。ただし、確認の対象になるのは性犯罪の前科すべてではありません。法律が「特定性犯罪」として一つずつ列挙した罪の前科に限られます。

 「痴漢で罰金を受けたことも確認されるのか」「昔の強制わいせつ罪はどう扱われるのか」「のぞきや下着の窃盗はどうか」といった疑問は、どの罪で有罪が確定したかによって答えが分かれます。本記事では、特定性犯罪の範囲を条文に沿って整理し、対象になる罪とならない罪の分かれ目を説明します。制度全体の仕組みや、確認を受ける職場・職種については【日本版DBS】子どもに関わる仕事の性犯罪歴確認が始まる|対象になる人・ならない人で解説しています。

特定性犯罪かどうかは「罪名」で決まる

 特定性犯罪は、こども性暴力防止法2条7項が、刑法などの条文を挙げる形で定めています。そのため、ある前科が対象になるかどうかは、行為の印象ではなく、判決や略式命令でどの罪が認定されたかによって決まります。

 被害者の年齢は問われません。こども家庭庁のQ&Aでも、成人に対する犯罪も含まれるとされています。電車内の痴漢や駅での盗撮のように、子どもとは関わりのない場面の事件でも、列挙された罪で有罪が確定していれば確認の対象になります。

 反対に、列挙された罪であっても、対象になるのは有罪が確定した場合に限られます。不起訴や示談で終わった事件は、刑事裁判による事実認定を受けていないため含まれません。

特定性犯罪にあたる6つの区分

 法律が挙げる特定性犯罪は、次の6つの区分に分かれます。

区分主な罪根拠となる条文
刑法不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ・監護者性交等とこれらの未遂、不同意わいせつ等致死傷、16歳未満の者に対する面会要求等、強盗・不同意性交等176条、177条、179条〜182条、241条1項・3項、243条
盗犯等防止法常習として強盗・不同意性交等をする罪4条
児童福祉法児童に淫行をさせる罪60条1項(34条1項6号)
児童買春・児童ポルノ禁止法児童買春とその周旋・勧誘、児童ポルノの所持・提供・製造など、児童買春等目的の人身売買等4条〜8条
性的姿態撮影等処罰法性的姿態等の撮影(いわゆる撮影罪)、撮影された画像の提供・保管、影像の送信・記録2条〜6条
都道府県の条例痴漢、盗撮・のぞき、卑わいな言動、青少年との淫行政令で指定された条例


未遂や致死傷、面会要求も含まれる

 刑法の罪には、不同意わいせつや不同意性交等そのものだけでなく、その未遂罪や、被害者にけがを負わせた場合の致死傷罪も含まれます。16歳未満の者に対するわいせつ目的の面会要求や、性的な姿態の映像を送るよう求める行為(刑法182条)も対象です。直接の接触に至っていない段階の行為でも、この罪で有罪が確定すれば確認の対象になります。

児童ポルノは「所持」でも対象になる

 児童買春・児童ポルノ禁止法は、4条から8条までがまとめて挙げられています。そのため、児童買春だけでなく、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持・保管する罪(7条1項)も含まれます。他人に提供していない場合でも、この罪で有罪が確定していれば対象です。

盗撮は法律の罪でも条例の罪でも対象になる

 2023年7月に性的姿態撮影等処罰法が施行され、盗撮の多くは同法の撮影罪として処罰されるようになりました。それ以前の盗撮は、主に各都道府県の迷惑防止条例で処罰されており、現在も事案によっては条例違反として扱われることがあります。日本版DBSでは、どちらの罪で有罪になった場合も特定性犯罪にあたります。撮影罪によって生じた画像を他人に提供した罪や、提供目的で保管した罪も同様です。

条例違反が対象になる仕組み

 条例の罪は、次の4つの行為のいずれかを罰するものが対象とされ、具体的な条例は政令(こども性暴力防止法施行令2条)で指定されています。

  • みだりに人の身体の一部に接触する行為(いわゆる痴漢)。
  • 正当な理由なく、通常衣服で隠されている下着や身体をのぞき見し、撮影し、または撮影目的でカメラなどを向けたり設置したりする行為。
  • 上の2つ以外で、みだりに卑わいな言動をする行為。
  • 児童と性交し、または児童にわいせつな行為をする行為。


 政令では、47都道府県それぞれの迷惑防止条例と青少年健全育成条例が名指しで挙げられています。1つ目から3つ目の行為は迷惑防止条例、4つ目の行為はいわゆる淫行処罰規定を置く青少年健全育成条例が対象です。東京都の場合は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」と「東京都青少年の健全な育成に関する条例」がこれにあたります。条例の名称は地域によって異なり、長野県では「長野県子どもを性被害から守るための条例」が指定されています。

 どの都道府県で処罰されたかによって扱いが変わることはありません。また、改正や廃止によって現在は存在しない条例の規定で処罰された場合も、施行令の附則によって対象に含められています。今後の条例の改廃も、政令に反映していくこととされています。

法改正前の罪名で有罪になった場合

 性犯罪の規定は、2017年と2023年の刑法改正で大きく変わりました。改正前の罪名で有罪になった前科については、法律の附則2条により、次の罪も特定性犯罪とみなされます。

  • 2023年改正前の強制わいせつ罪、強制性交等罪、準強制わいせつ罪・準強制性交等罪と、これらの未遂罪。
  • 2017年改正で削除された集団強姦等の罪・集団強姦等致死傷罪と、改正前の強盗強姦罪・同致死罪、これらの未遂罪。
  • 2017年改正前の規定による、常習として強盗強姦をする罪。


 また、懲役と禁錮は2025年6月から拘禁刑に一本化されましたが、それより前に言い渡された懲役やその執行猶予の判決も、拘禁刑の判決として扱われます(附則3条)。ここに挙げていない旧法の罪名で有罪になった方は、判決書の罪名と適用法令をもとに個別に確認することをおすすめします。

特定性犯罪に含まれない罪

 性的な要素のある事件でも、法律に列挙されていない罪で有罪になった場合は、特定性犯罪にはあたりません。主なものは次のとおりです。

  • 公然わいせつ罪、わいせつ物頒布等罪。
  • 下着の窃盗などで適用される窃盗罪、住居侵入罪。
  • ストーカー規制法違反。
  • のぞき見などで適用される軽犯罪法違反。
  • いわゆるリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)違反。


 注意したいのは、似た行為でも、適用された罰則によって結論が分かれる点です。たとえば、のぞき見は軽犯罪法で処罰されることもあれば、迷惑防止条例で処罰されることもあり、後者であれば特定性犯罪にあたります。性的な画像を拡散した事件も、リベンジポルノ防止法違反であれば対象外ですが、盗撮で得た画像を提供した性的姿態撮影等処罰法違反や、被写体が18歳未満の場合の児童ポルノ提供罪であれば対象になります。

 なお、下着の窃盗やストーカー行為については、国会の附帯決議で対象への追加を検討するよう求められており、法律の附則にも施行後3年をめどとした見直しの規定があります。現時点では対象外ですが、将来の改正で範囲が広がる可能性があります。

1つの判決に複数の罪が含まれる場合

 1つの事件で、住居侵入罪と撮影罪のように複数の罪が同時に裁かれることがあります。この場合、判決で認定された罪の中に特定性犯罪が含まれていれば、その判決は確認の対象になると考えられます。反対に、捜査の段階では性犯罪を疑われていても、最終的に窃盗罪や住居侵入罪だけで有罪になった場合は、特定性犯罪の前科にはあたりません。

 また、事業者に交付される犯罪事実確認書には、罪名や事件の内容は記載されません。該当する場合に記載されるのは、実刑・執行猶予・罰金のどの区分にあたるかと、裁判が確定した日です。照合の過程で国の側では判決の内容が確認されますが、事業者に伝わる情報はこの範囲にとどまります。

確認される期間との関係

 特定性犯罪の前科が確認されるのは、一定の期間内に限られます。拘禁刑の実刑は刑の執行を終えた日などから20年、拘禁刑の執行猶予は裁判が確定した日から10年、罰金は納付を終えた日などから10年です。略式手続による罰金も含まれ、執行猶予が取り消された場合は実刑と同じ20年の区分になります。

 これらの期間は、刑法34条の2の「刑の消滅」の期間より長く定められています。法律が対象を「刑を言い渡す裁判が確定した者」と定めているため、刑の言渡しが効力を失った後でも、期間内であれば確認の対象になります。期間を過ぎた後は「該当しない」と記載され、過去に該当していたことは事業者に伝わらないとされています。刑の消滅の考え方は前科と前歴はどう違い、どこに残るのか|期間と照会される場面で説明しています。

ご自身の前科が対象か確かめるには

 過去の事件が特定性犯罪にあたるかどうかは、記憶や当時の報道ではなく、判決書や略式命令に記載された罪名と適用法令で確かめるのが確実です。手元に書類がない場合は、当時の弁護人に確認する方法のほか、検察庁で確定した事件の記録の閲覧を請求できる場合もあります。

 これから処分が決まる事件では、痴漢や盗撮のように法律の罪でも条例の罪でも対象になる類型が多く、どの罰則が適用されるかで結論が変わるとは限りません。分かれ目になるのは、有罪が確定するかどうかです。事実関係に争いがあるのか、認めたうえで被害の回復に取り組むのかによって、処分が決まるまでにとるべき対応は変わります。

よくあるご質問


公然わいせつ罪で罰金を受けたことがあります。確認の対象になりますか

 公然わいせつ罪は特定性犯罪に列挙されていないため、その罪だけで処罰された前科であれば対象になりません。ただし、同じ判決で不同意わいせつ罪や条例違反など、列挙された罪も認定されている場合は別です。

20年以上前の強制わいせつ罪の前科はどう扱われますか

 改正前の強制わいせつ罪も、附則により特定性犯罪とみなされます。そのうえで、実刑であれば刑の執行を終えた日などから20年、執行猶予であれば裁判の確定から10年を過ぎていれば、確認の結果は「該当しない」となります。どちらにあたるかは、判決の内容と刑の執行状況によって決まります。

まとめ


  • 日本版DBSで確認されるのは、法律が「特定性犯罪」として列挙した罪で有罪が確定した前科に限られます。
  • 特定性犯罪は、刑法の性犯罪のほか、児童福祉法、児童買春・児童ポルノ禁止法、性的姿態撮影等処罰法の罪と、都道府県の迷惑防止条例・青少年健全育成条例の罪で構成されています。
  • 被害者が大人の事件や、痴漢・盗撮による条例違反の罰金も含まれます。
  • 法改正前の強制わいせつ罪や強制性交等罪なども、附則により対象に含められています。
  • 公然わいせつ罪、窃盗罪、住居侵入罪、ストーカー規制法違反などは、現時点では対象外です。


 過去の事件が特定性犯罪にあたるのか、いま捜査を受けている事件がこの制度とどう関わるのかは、判決や処分の内容を一つずつ確かめていくことで見通しが立ちます。罪名や適用法令がはっきりしない段階でも、手元にある資料から整理を始めることができます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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