【刑事事件・ストーカー事件】警告の対象者と同じ駅を使っている、生活圏をどう変える?

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

本記事は、2025年のストーカー規制法改正(警察が申出によらず警告できる職権警告の新設など)と、2025年6月施行の拘禁刑への一本化を反映した内容です。個別の事情によって扱いは変わりますので、具体的な判断は弁護士にご相談ください。


警察からストーカー規制法に基づく警告を受けた後、相手と同じ駅を通勤や通学で使い続けていることに不安を感じる方は少なくありません。引っ越しや転職をすぐにできるわけではなく、かといって毎日顔を合わせる可能性のある環境をそのままにしてよいのか、判断に迷うところです。
 この記事では、警告が何を禁じているのかを確認したうえで、同じ駅を使うことがどのような場面で問題になりやすいのか、生活圏をどの順序で、どの程度変えていけばよいのかを整理します。警告そのものの意味や今後の流れについては、警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのかもあわせてご覧ください。

警告が禁じているのは「同じ駅にいること」ではない

ストーカー規制法の警告は、相手に対する「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」をこれ以上繰り返してはならない、と求めるものです。法律が規制しているのは、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことによる怨恨の感情を充足する目的で行う、つきまとい・待ち伏せ・見張り・押し掛け・うろつきなどの行為です。
 そのため、通勤や通学のために同じ駅を利用していること自体が、ただちに警告の対象となる行為にあたるわけではありません。駅は多くの人が日常的に使う場所であり、生活のために必要な移動まで一律に禁じる仕組みにはなっていないと考えられます。
 一方で、警告を受けたという事実がある以上、相手や警察は「再び接近してくるのではないか」という目で見ている状況にあります。同じ行動であっても、警告前より慎重に受け止められやすいという点は意識しておく必要があります。

それでも駅が問題になりやすい理由

駅は、相手の通勤・通学の経路上にあり、決まった時間帯に必ず通る場所です。そのため、本人に接近する意図がなくても、行動の重なり方によっては待ち伏せや見張りと受け止められるおそれがあります。

待ち伏せ・見張りと受け止められやすい場面

ストーカー規制法は、住居や勤務先、学校のほか、相手が現に所在する場所や通常所在する場所の付近での見張りも規制の対象にしています。どこがこれにあたるかは個別の事情によって判断されますが、日常的に使う駅の改札やホームの周辺で、用事がないのにとどまっている様子が繰り返されると、問題視される可能性は否定できません。

行動の例受け止められ方の傾向
決まった時刻に改札を通り、そのまま乗車する通常の利用として説明しやすい
改札の外やホームで、理由なく長時間立ち止まる待ち伏せ・見張りと見られるおそれがある
相手の利用時間帯に合わせて自分の時間を変える接近の意図を疑われやすい
相手を見かけて声をかける、近くに寄っていく警告の対象行為と評価されるおそれが高い
相手と同じ車両・同じ乗車位置を選び続ける偶然とは受け止められにくい


偶然の重なりが続いたときの見え方

一度や二度、駅で姿を見かけた程度であれば、偶然として扱われることが多いと考えられます。ただ、同じ時間帯に同じ改札で何度も顔を合わせる状況が続くと、相手には「警告後も行動が変わっていない」と映ることがあります。相手が改めて警察に相談すれば、禁止命令の申出や、ストーカー行為罪としての捜査に進む可能性もあります。
 自分に接近する意図がないことと、相手がどう受け止めるかは別の問題です。だからこそ、意図の有無を説明できる状態にしておくことに加えて、重なりそのものを減らしておくことが現実的な備えになります。

生活圏を変える前に確かめておくこと

いきなり大きく生活を変える前に、次の点を確認しておくと、どこまで変えればよいかの見当をつけやすくなります。

  • 警告書に記載された行為の内容と、警告に至った経緯。
  • 自分が知っている範囲での、相手の通勤・通学の時間帯や利用している出入口。
  • 自分の生活のうち、時間や経路を変えられる部分と変えられない部分。
  • 駅以外に重なりそうな場所(駅前の店舗、ジム、病院など)の有無。


 警告書の内容が分からない場合や、口頭での警告だった場合は、警告をした警察署の担当者に、どのような行為が問題とされたのかを確認しておくことも考えられます。なお、相手の行動を把握するために新たに相手のことを調べる必要はありません。確認するのは、すでに自分が知っている範囲で足ります。

生活圏の変え方|負担の小さいものから順に

生活圏を変えるといっても、最初から転居や転職を考える必要はありません。負担の小さい調整から順に検討し、それでも重なりが残る場合に次の段階へ進むのが現実的です。

時間帯をずらす

最も取り組みやすいのは、駅を使う時間帯を変えることです。相手の通勤・通学の時間帯が分かっている場合は、その時間帯を避けて、少し早めに出る、あるいは遅めに出るといった調整をします。時差出勤やフレックスタイムなど、勤務先の制度を使える場合もあります。

出入口・乗車位置・路線を変える

同じ駅でも、使う改札や出口、乗車する車両を変えるだけで、顔を合わせる可能性は下がります。隣の駅や別の路線を使える場合は、定期券の区間を変えることも選択肢になります。通勤経路を変えるときは、勤務先への届出が必要な場合もありますので、社内の手続も確認しておきます。

駅周辺での立ち寄り先を見直す

駅前のコンビニや飲食店、書店、ジムなど、駅周辺で立ち寄る場所が相手と重なっている場合は、利用する店舗や時間帯を見直します。駅の利用そのものより、駅周辺でとどまる時間のほうが、見張りやうろつきと受け止められやすい点に注意が必要です。

転居や勤務地の変更を検討する

上記の調整をしても重なりが避けられない場合や、相手の住居が駅のすぐ近くにある場合は、転居や勤務地の変更を検討する段階に入ります。ただし、警告を受けたことを理由に転居が義務づけられるわけではなく、どこまで生活を変えるかは、重なりの程度や今後の見通しを踏まえて判断することになります。住まいの判断については、【ストーカートラブル】相手の家の近くに住んでいる|引っ越すべきかの判断で詳しく扱っています。

避けるための行動が、かえって疑われることもある

相手と顔を合わせないようにしようとして、相手の予定や居場所を確かめたくなることがあります。しかし、そうした行動は、目的が「避けるため」であっても、外からは相手の動静を探っているように見えるおそれがあります。

  • 相手のSNSを見て、外出の予定や行動範囲を確かめること。
  • 共通の知人に、相手の通勤時間や最近の様子を尋ねること。
  • 相手に直接連絡して、駅を使う時間を調整しようとすること。
  • 相手の通勤時間帯に駅の様子を見に行き、重ならないかを確かめること。


 特に、相手に直接連絡して時間の調整を持ちかけることは、連絡そのものが警告に反する行為と受け止められるおそれがあります。相手側に伝えたいことがある場合は、自分から連絡するのではなく、弁護士を通じる方法を検討してください。相手から連絡が来た場合の扱いについては、【ストーカートラブル】相手から先に連絡が来た|返信したら違反になるのかをご参照ください。

駅で相手を見かけたときの動き方

時間や経路を変えても、偶然見かけてしまうことはあり得ます。その場合は、次の順で落ち着いて行動することが大切です。

  1. 相手に声をかけたり、目で追ったりせず、そのまま視線を外します。
  2. 同じ改札や車両に向かっている場合は、別の改札を使う、次の電車にするなどして距離を取ります。
  3. 駅構内やその周辺にとどまらず、予定どおりの目的地へ移動します。
  4. 帰宅後に、見かけた日時・場所・自分がとった行動を簡単にメモしておきます。


 見かけたことを相手に知らせる必要はありませんし、謝罪や説明のために近づくことも控えるべきです。その場では何もせずに離れることが、結果として自分を守ることにつながります。

記録を残しておく意味

相手が警察に再び相談した場合、駅で姿を見かけたという事実だけが伝わることもあります。そのときに、自分が通勤や通学のために駅を使っていたこと、相手に接近する意図がなかったことを客観的に説明できるかどうかが重要になります。
 交通系ICカードの利用履歴、勤務先の出退勤記録、通学の時間割などは、自分の行動を後から示す資料になり得ます。また、生活圏を変えるためにとった対応(時間帯の変更、定期区間の変更、転居の検討など)を記録しておけば、警告後に行動を改めようとしていたことを説明する材料にもなります。

禁止命令が出た場合や、相手から申出があった場合

警告に違反しても、それ自体に刑罰はありません。ただし、警告後も同様の行為が続いていると判断されれば、都道府県公安委員会から禁止命令が出されることがあります。禁止命令の有効期間は原則1年で、必要があれば延長されることもあります。
 禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金、禁止命令に違反したものの「ストーカー行為」にあたるまでには至らない場合でも6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。禁止命令が出た後は、生活圏の重なりをより慎重に扱う必要があります。禁止命令の内容と期間については、禁止命令が出た|違反した場合の刑罰と期間・更新で解説しています。
 また、警告の段階を経ずに、ストーカー行為罪として被害届や告訴が出される可能性もあります。前科との関係については、【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合をご覧ください。

弁護士に相談できること

警告後の生活圏の調整は、自分一人で判断すると、変えすぎて生活が成り立たなくなったり、逆に必要な配慮が足りなかったりすることがあります。弁護士にご相談いただければ、次のような点をご一緒に整理できます。

  • 警告書の内容や経緯を踏まえて、どの行動に注意すべきかを確認すること。
  • 通勤・通学の事情を踏まえて、現実的な生活圏の調整方法を考えること。
  • 相手側に伝えるべき事情がある場合に、代理人として窓口を担うこと。
  • 警察から再度連絡があった場合や、事情を聞きたいと言われた場合の対応を準備すること。


 同じ駅を使っているという状況は、どちらかが悪いという話ではなく、警告後の生活の中でどう重なりを減らしていくかという問題です。警告を受けた事実を重く受け止めつつも、必要以上に萎縮せず、説明できる形で生活を整えていくことが大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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