レジの現金・釣銭を自分のものにした|少額でも立件されるのか
デリヘルを利用した後に、店が18歳未満の女性を在籍させていたとして摘発された、あるいは派遣された女性が実は18歳未満だったと知らされた。このような場面で、客の側にも刑事責任が及ぶのかを心配して相談に来られる方は少なくありません。結論からいえば、相手が18歳未満だったという事実だけで罪が決まるわけではなく、行為の内容と、相手が18歳未満であることをどの程度認識していたかによって、問われる罪と見通しが分かれます。この記事では、デリヘルの客の立場から、成立しうる罪と、捜査が及ぶ流れ、警察から連絡があったときの考え方を整理します。
この記事は、2025年6月施行の拘禁刑への一本化と、2023年の性犯罪に関する刑法改正を反映した内容です。青少年健全育成条例は都道府県ごとに内容が異なるため、東京都の条例を中心に説明します。
デリヘルの客に問われうる罪
| 罪名 | 対象となる相手 | 主な内容 | 法定刑 |
|---|---|---|---|
| 児童買春罪 | 18歳未満 | 対償を供与し、またはその約束をして性交や性交類似行為、性的な部位に触れる行為などをすること | 5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| 青少年健全育成条例違反(東京都) | 18歳未満 | 青少年とみだらな性交または性交類似行為を行うこと | 2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪 | 16歳未満(13歳以上16歳未満は5歳以上の年齢差がある場合) | 同意の有無にかかわらず性交等やわいせつな行為をすること | 不同意性交等罪は5年以上の有期拘禁刑、不同意わいせつ罪は6月以上10年以下の拘禁刑 |
| 児童ポルノ製造罪など | 18歳未満 | 性的な姿態を撮影して記録すること | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(製造の場合) |
中心になるのは児童買春罪
デリヘルの利用で客が最も問われやすいのは、児童買春・児童ポルノ禁止法の児童買春罪です。この罪の「対償」は、児童本人に渡すお金に限られず、児童をあっせんした者に対して支払うものも含まれます。そのため、店に支払った利用料金も対償にあたると評価されるのが一般的です。
また、対象となる行為は性交に限られません。性交類似行為のほか、性器や乳首などに触れる行為、触れさせる行為も含まれます。いわゆる本番行為がなかったとしても、通常のサービスの範囲で児童買春罪に該当する可能性がある点には注意が必要です。対償の考え方は児童買春の『対償』とは何か|金銭以外の提供でも成立するのかで詳しく説明しています。
青少年健全育成条例との関係
東京都の青少年健全育成条例は、18歳未満の青少年とみだらな性交や性交類似行為を行うことを禁じています(同条例18条の6、24条の3)。児童買春罪が対償の授受を前提とするのに対し、条例は対償がない場合も対象になります。デリヘルの利用では通常は対償があるため、まず児童買春罪が検討され、状況によって条例違反が問題になるという関係にあります。どちらで立件されるかの整理は児童福祉法違反と児童買春はどちらで立件されるのかもご参照ください。
相手が16歳未満だった場合
2023年の刑法改正により、16歳未満の者に対する性交等やわいせつな行為は、同意の有無にかかわらず不同意性交等罪や不同意わいせつ罪の対象となりました(13歳以上16歳未満の場合は、行為者が5歳以上年長であることが要件です)。法定刑が大きく異なるため、相手の年齢がいくつだったのかは見通しに直結します。詳しくは16歳未満との性的行為|「5歳差要件」と年齢の錯誤をご覧ください。
分かれ目は「18歳未満と認識していたか」
児童買春罪は故意犯であり、成立には相手が18歳未満であることの認識が必要です。相手が18歳以上だと信じていた場合には、児童買春罪の故意は認められないことになります。ただし、ここにはいくつか注意点があります。
「かもしれない」と思っていた場合も故意になりうる
故意は、18歳未満だとはっきり知っていた場合に限られません。「18歳未満かもしれないが、それでも構わない」と考えて行為に及んだ場合も、未必の故意として故意が認められることがあります。取調べでは、容姿や会話の内容から18歳未満かもしれないと思わなかったか、という点を繰り返し尋ねられることが多いのはこのためです。
認識の有無を判断するときに見られる事情
認識があったかどうかは、本人の言い分だけでなく、客観的な事情も含めて判断されます。主に次のような事情が検討されます。
- 店のサイトやプロフィールに記載されていた年齢。
- 店が年齢確認をしていると表示していたか、届出のある店だったか。
- 本人が告げた年齢や、学校・家庭などに関する会話の内容。
- 外見や服装、所持品などから受けた印象。
- 利用の回数や、店を通さないやり取りがあったか。
- LINEなどのメッセージに年齢をうかがわせる記載があるか。
店のサイトに「18歳以上が在籍」と書かれていたことや、本人が18歳以上だと言っていたことは、認識を否定する方向の事情になります。一方で、会話の中で学年の話題が出ていた、制服などを身につけていたといった事情があれば、未必の故意を疑われやすくなります。年齢を偽られていた場合の評価は年齢を偽られていた|児童買春事件で年齢の不知はどこまで通るかで詳しく扱っています。
条例には過失を問う規定を置くものもある
児童買春罪とは異なり、都道府県の条例の中には、青少年の年齢を知らなかったことを理由に処罰を免れることはできず、知らなかったことに過失がない場合に限って処罰しない、という趣旨の規定を置くものがあります。このような規定がある地域では、年齢確認をどこまで尽くしたかが問われることがあります。行為があった場所によって適用される条例が異なるため、出張先や旅行先で利用した場合は、その地域の条例を確認する必要があります。
客に捜査が及ぶのはどんなときか
客が捜査の対象になるきっかけとして多いのは、店の摘発や、18歳未満の女性が補導・保護されたことです。店の経営者などが児童福祉法違反などで摘発されると、押収された顧客名簿や予約履歴、送迎の記録、女性のスマートフォンに残ったやり取りなどから、利用者が特定されることがあります。
予約に使った電話番号やメッセージアプリのアカウント、カードなどの決済記録、ホテルの利用記録は、利用者をたどる手がかりになりえます。もっとも、利用者全員が一律に立件されるわけではなく、女性の供述や記録の内容から、行為の内容や年齢の認識が具体的に問題になる利用者が捜査の中心になる傾向があります。摘発から客の特定に至る流れは【風俗トラブル】利用した店が摘発された|顧客名簿・予約履歴はどこまで捜査に使われるのかと【風俗トラブル】摘発が報道された|利用者として特定される現実的な経路で説明しています。
警察から連絡が来たときに考えておきたいこと
参考人としての聴取か、被疑者としての取調べか
店の摘発に関連して連絡が来た場合、店側の事件の参考人として話を聞かれる場合と、客自身が被疑者として取調べを受ける場合とがあります。参考人として呼ばれた場合でも、話の内容によって立場が変わることがあるため、どちらの立場で呼ばれているのかを確認しておくことが大切です。呼び出しへの応じ方は警察から呼び出しの電話が来た|任意同行・出頭要請への対応もご参照ください。
供述調書は後から修正しにくい
年齢の認識が争点になる事件では、取調べで作成される供述調書の一言一句が見通しを左右することがあります。「若く見えたかもしれない」といった曖昧な言い方が、未必の故意を認める内容として記載されるおそれもあります。署名する前に内容をよく確認し、事実と異なる部分があれば訂正を求めることができます。どのように話すか、あるいは黙秘を選ぶかは、証拠の状況や本人の記憶をふまえて判断すべき事柄です。取調べの前に弁護士と方針を確認しておくことが望ましいでしょう。黙秘については黙秘したほうがよいのか|黙秘の効果とリスクの整理で整理しています。
示談の相手は女性の保護者になる
相手が18歳未満の場合、示談交渉の相手方は通常、法定代理人である親権者になります。保護者の処罰感情が強いことも多く、本人や家族が直接連絡を取ろうとすると、かえって事態を難しくするおそれがあります。示談を検討する場合は、弁護士を通じて進めるのが一般的です。書面の当事者の考え方は未成年の被害者と示談する|親権者の同意と書面の当事者をご覧ください。
処分の見通し
年齢の認識を認めた場合でも、初犯で利用が1回にとどまるようなときは、略式手続による罰金となる例もあります。一方で、利用の回数が多い、相手の年齢が低い、撮影をしていたといった事情があると、公判請求される可能性が高まります。年齢の認識を争う場合には、認識を否定する事情を記録や証拠からどこまで示せるかが重要になります。いずれにしても、見通しは事案ごとに大きく異なります。初犯の場合の見通しは児童買春・児童ポルノ事件の初犯|罰金で済むのかもご参照ください。
よくあるご質問
店のサイトに「18歳以上」と書いてあれば、罪にならないのですか
サイトの表記は、年齢の認識を否定する事情の一つになります。ただし、それだけで必ず罪にならないとはいえません。本人とのやり取りや外見など、ほかの事情とあわせて判断されます。
本番行為をしていなければ問題にならないのですか
児童買春罪の対象には、性的な部位に触れる行為なども含まれます。本番行為がなかったとしても、児童買春罪の成否が問題になることがあります。
店から「未成年だった、お金を払え」と言われたらどうすればよいですか
その場で支払いに応じる前に、事実関係を確認することが大切です。年齢の主張が事実かどうかが分からないまま金銭を求められる場合には、恐喝などの問題が含まれていることもあります。「未成年だった」と脅された|事実確認と恐喝への対応もご覧ください。
関連する解説記事
ご相談をご検討の方へ
デリヘルの利用で相手が18歳未満だったと分かった場合、問われる罪や見通しは、行為の内容、年齢の認識、店とのやり取りの記録などによって変わります。不安なまま警察の呼び出しに応じるのではなく、まずは事実関係を整理し、どのように対応するかを決めておくことが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


