【ストーカートラブル】子どもの学校や保育園に、ストーカーの件を伝えておくべき?
本記事は、2026年10月時点の法令(ストーカー規制法、東京都の迷惑防止条例など)をもとに作成しており、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法の内容も反映しています。個別の事情によって取れる手段は変わりますので、具体的な対応はご相談のうえで判断してください。
別れた相手が自分の通っているジムに新しく入会してきた、行きつけのカフェや美容室の近くで何度も見かけるようになった、といったご相談をいただくことがあります。自宅や職場ではないため「たまたまかもしれない」「お店に迷惑をかけたくない」と考え、様子を見続けてしまう方も少なくありません。
ジムや行きつけの店は日常的に足を運ぶ場所であるからこそ、そこに相手が姿を見せ続けると、生活の自由が大きく損なわれます。本記事では、こうした行為がストーカー規制法でどう扱われるのか、偶然と意図的な接近をどう見分けるのか、施設・警察・弁護士にそれぞれ何を相談できるのかを整理して解説します。
ジムや行きつけの店も「通常所在する場所」にあたり得る
ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で行われる一定の行為を「つきまとい等」として規制しています(同法2条1項)。その1号には、つきまといや待ち伏せのほか、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所もしくは通常所在する場所の付近での見張り、押し掛け、うろつきが挙げられています。
「通常所在する場所」は2021年の改正で加えられた言葉で、住居や勤務先に限らず、本人が日常的にいる場所を含むものと考えられています。定期的に通うジムや習い事の教室、行きつけの飲食店や美容室なども、利用の頻度や生活との結びつきによってはこれにあたり得ます。また、その時にいる店に押し掛けたり、店の外で見張ったりする行為は「現に所在する場所」に対する行為として対象になります。
もっとも、待ち伏せや見張り、押し掛けなどがストーカー行為として扱われるのは、身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法で行われた場合に限られています(同法2条4項)。施設に姿を見せたという一点だけで判断されるのではなく、回数や時間帯、相手の振る舞い、別れの経緯などを含めて見られることになります。
偶然か、意図的な接近かを見分ける手がかり
ジムや店は誰でも利用できる場所のため、相手にも利用する自由があります。そのため、相談先に状況を伝えるときは、偶然では説明しにくい事情を具体的に示すことが大切です。たとえば、次のような事情は意図的な接近をうかがわせる手がかりになります。
- 別れた後になって、同じジムや同じ店の利用を始めたこと。
- 自分の利用する曜日や時間帯に合わせるように現れること。
- 自分が利用先を変えると、移った先にも現れること。
- 施設の中で話しかけてくる、近くの席や器具を選ぶ、こちらを見続けているといった振る舞いがあること。
- 施設の外や駐車場、帰り道で待っていること。
- SNSの投稿や共通の知人を通じて、自分の行き先を知った形跡があること。
反対に、相手が交際前から同じジムの会員だった、近所の店で利用時間がもともと重なっていたという場合には、それだけでつきまといと評価されるとは限りません。その場合でも、別れた後に話しかけや待ち伏せ、後をついてくるといった以前とは違う行動が加わっていれば、その部分が問題になり得ます。
施設の中で相手を見かけたときの対応
施設の中で相手を見かけたときは、自分から近づいて問いただしたり、その場で言い合いになったりすることは避けたほうが安全です。口論になると、周囲からはお互いのもめごとと受け止められ、後で状況を説明しにくくなることもあります。
不安を感じたら、まずスタッフに声をかけて事情を手短に伝えてください。受付の近くで過ごす、帰りはスタッフに出口まで付き添ってもらう、家族や友人に迎えに来てもらうといった方法も考えられます。帰り道に後をついてこられるおそれがある場合は、まっすぐ自宅に向かわず、人の多い場所や交番を経由することも一つの方法です。身の危険を感じる場面では、ためらわずに110番通報をしてください。その場での動き方については、【ストーカートラブル】待ち伏せされたとき、その場でどう行動すればいい?でも解説しています。
施設に相談するときに伝えたいこと
ジムや店の多くは、利用規約や会員規約で他の利用者への迷惑行為を禁じています。施設に相談すると、次のような対応を検討してもらえることがあります。
- 相手が来館した際にスタッフが様子に注意を払うこと。
- 自分の来館予定や利用時間を、問い合わせがあっても相手に伝えないこと。
- 利用店舗や時間帯の変更、休会の手続に柔軟に応じること。
- 入退館の記録や防犯カメラの映像を保存しておくこと。
- 規約に基づき、相手に注意や利用の制限を行うこと。
ただし、相手の退会や出入り禁止を決めるのは施設であり、こちらから強制することはできません。また、施設が相手に注意をすれば、誰が相談したかは事実上相手に伝わります。相手の反応が心配な場合は、施設への依頼を記録の保存や個人情報の管理にとどめ、相手への働きかけは警察や弁護士を通じて行うという選択もあります。
防犯カメラの映像は保存期間が短いことが多いため、保存は早めに頼んでおくことをおすすめします。映像の扱いについては【ストーカートラブル】防犯カメラの映像を証拠にする|設置と保存の注意点もあわせてご覧ください。施設側への相談の進め方は、【ストーカートラブル】習い事・ジムで知り合った人からのつきまとい|施設への相談と、警察・弁護士へ進む目安でも取り上げています。
記録を残しておく
施設に現れる行為は、一回ごとに見ると「たまたま」と受け止められやすいため、積み重ねを示せるかどうかが大切です。次のような記録をその日のうちに残しておくと、警察や弁護士に状況を伝えやすくなります。
- 相手を見かけた日時、場所、相手の様子と、その日の自分の利用予定。
- 施設のスタッフに伝えた日時と、スタッフの対応。
- 話しかけられた内容や、帰り道でついてこられた経路。
- 別れた後にやめてほしいと伝えた日時と方法。
- 相手が自分の行き先を知った経路として思い当たること。
記録を集める目的であっても、相手の行動を確かめるために後をつけたり、相手を刺激するような連絡をしたりすることは避けてください。かえって状況がこじれるおそれがあります。
警察に相談すると何ができるか
警察には、最寄りの警察署のほか、相談専用電話(#9110)でも相談できます。つきまとい等によって不安を覚えさせている相手に対しては、警察が繰り返さないよう警告をすることができます(ストーカー規制法4条)。2025年12月30日に施行された改正により、被害者からの申出がなくても、警察が必要と判断した場合には職権で警告を出せるようになりました。
さらに、都道府県公安委員会が、つきまとい等を繰り返してはならないと命じる禁止命令を出すこともあります(同法5条1項)。ストーカー行為をした場合には1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、禁止命令に違反してストーカー行為をした場合には2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が定められています(同法18条・19条)。
警察で「施設に来ているだけでは」と受け止められそうなときは、上で整理した記録を示し、偶然では説明しにくい事情を具体的に伝えることが大切です。なお、交際とは別の理由で恨みを持たれてつけ回されているような場合には、ストーカー規制法ではなく、東京都の迷惑防止条例(5条の2)の「つきまとい行為等」の規制で扱われることもあります。相談しても警告に至らない場合の次の手段については、【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段で解説しています。
弁護士に相談すると何ができるか
弁護士は、ご相談者の代理人として相手に通知書を送り、ジムや店を含めて接触をやめるよう求めたうえで、今後の連絡は弁護士を通すよう伝えることができます。相手と直接やり取りせずに済むため、施設で顔を合わせる不安を抱えたまま自分で話し合う必要がなくなります。
話し合いに応じる相手であれば、特定の施設に立ち入らない、自分の利用時間帯には来館しない、一定の距離以上に近づかないといった条件と、違反した場合の違約金を定めた合意書を作ることも考えられます。相手にも施設を利用する自由があるため、どこまでの条件で合意できるかは交渉によりますが、施設名や範囲を具体的に書面にしておくことで、後の違反を確かめやすくなります。合意書に入れる条件は【ストーカートラブル】示談に入れる条件|接触禁止・転居・違約金で詳しく解説しています。
話し合いがまとまらない場合や接触がやまない場合には、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てることも選択肢になります。費用や期間の目安は【ストーカートラブル】接近禁止の仮処分にかかる費用と期間の目安|担保・審尋・決定後の手続までをご覧ください。
よくあるご質問
自分が別のジムや店に移るべきでしょうか
移ることで当面の接触を減らせる場合もありますが、移った先にも相手が現れるようであれば、利用先を変えるだけでは解決しにくいといえます。急いで決める前に、施設や警察への相談で状況を変えられないかを検討してみてください。移る場合は、新しい行き先がSNSの投稿や共通の知人を通じて伝わらないよう注意が必要です。
相手が交際前から同じジムの会員でした。相談しても意味はありますか
相手が以前から利用していたという事情だけで、つきまといと評価されるわけではありません。ただ、別れた後に利用時間を合わせてくる、話しかけてくる、帰り道で待っているといった変化があれば、その部分は相談の対象になり得ます。施設内での接し方について、施設に配慮を求めることもできます。
見かけるだけで、話しかけてはきません。それでも相談できますか
話しかけてこない場合でも、繰り返し同じ場所に現れることで不安を感じているのであれば、相談してかまいません。見張りや待ち伏せは、言葉を交わさなくても成り立ち得る行為です。記録を残しながら早めに状況を伝えておくことで、その後の対応を選びやすくなります。
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まとめ
- 定期的に通うジムや行きつけの店も、ストーカー規制法の「通常所在する場所」にあたり得ます。
- 相手にも施設を利用する自由があるため、別れた後の利用開始や時間の重なりなど、偶然では説明しにくい事情を記録しておくことが大切です。
- 施設には見守りや個人情報の管理、記録の保存などを相談できますが、相手の退会を強制することはできません。
- 警察は警告や禁止命令を、弁護士は通知書や合意書、仮処分を担い、状況に応じて組み合わせて検討することになります。
好きで通っている場所を、相手のために手放さなければならないのかと悩まれる方は少なくありません。施設を変えるか、施設に相談するか、警察や弁護士に動いてもらうかは、相手の行動の内容や危険の程度によって変わりますので、迷われている段階でも状況を整理するところからご相談いただければと思います。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


