【ストーカートラブル】禁止命令の前の聴聞に呼ばれた|聴聞で述べること
本記事は、2025年12月30日施行の改正ストーカー規制法(職権による警告の創設など)を反映しています。個別の事案でどの規定が当てはまるかは、事実関係によって異なります。
「つきまといを受けていた相手から、『どうしても直接謝りたい。一度だけ会ってほしい』とメッセージが届いた」「謝罪を断ったら、また何かされるのではないかと不安になる」。ストーカー被害のご相談では、加害者本人から謝罪の申出を受け、会うべきか、返事だけでもすべきかと迷っている方からこうした声をお聞きします。
謝りたいという言葉を受け取ると、会わないことが冷たい対応のように感じられたり、一度会えば終わるのではないかと考えたりすることもあると思います。この記事では、加害者本人から直接「謝りたい」と連絡が来た場面を中心に、会う前に知っておきたいことと、その日のうちにできる対応を整理します。
「謝りたい」という連絡に、応じる義務はない
最初に押さえておきたいのは、謝罪の申出に応じる義務も、返事をする義務もないという点です。謝罪を受けるかどうか、会うかどうかは、被害を受けた方が自分の安全と気持ちを優先して決めてよい事柄です。会わないことで、被害を受けている側に法的な不利益が生じる仕組みはありません。
謝罪の連絡も「つきまとい等」にあたることがある
ストーカー規制法は、恋愛感情などの好意の感情や、それが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的で行われる一定の行為を「つきまとい等」として規制しています(同法2条1項)。その中には、面会や交際など義務のないことを要求すること(同項3号)や、拒まれたにもかかわらず連続して電話やメッセージを送ること(同項5号)が含まれています。
連絡の文面が謝罪であっても、相手が「会うこと」を求めている点は変わりません。すでに連絡を拒んでいる、ブロックしているといった状況で謝罪のメッセージが繰り返し届く場合や、面会を強く求められる場合には、それ自体がつきまとい等として扱われることがあります。
警告や禁止命令が出ている場合
相手が警察から警告(同法4条)を受けている、または公安委員会から禁止命令(同法5条)を受けている場合、謝罪を理由とした連絡でも、その警告や命令に反する行為となるおそれがあります。禁止命令に違反した場合は罰則の対象となります(同法19条・20条)。警告の後に接触があったときは、禁止命令に進む判断材料になり得ます。
2025年12月30日施行の改正により、警告は被害を受けた方からの申出がなくても、警察の職権で出せるようになりました。すでに警察に相談している方は、謝罪の連絡が来たこと自体を担当者に伝えておくことが大切です。警告後も接触が続いている場合の考え方は、【ストーカートラブル】警告が出たのに接触が続いている|禁止命令への切り替えで解説しています。
会う前に知っておきたい3つのリスク
面会そのものが、相手の求めていたものである場合
謝罪の気持ちが本心からのものであっても、被害を受けた方から見れば、相手が「もう一度自分に会う機会」を求めていることに変わりはありません。会えたことで、相手が「話せば会ってもらえる」と受け止め、次の連絡のきっかけになってしまう場合もあります。面会の場で感情が高ぶり、話し合いが思わぬ方向に進むおそれも否定できません。
「許した」と受け取られる言葉が残る
謝罪の場で「もういいです」「分かりました」と答えたことが、後になって「被害者は許している」という趣旨で持ち出されることがあります。刑事手続が進んでいる場合には、被害届の取下げや処分の軽減を求める流れにつながることもあり得ます。謝罪を受け入れるかどうかと、手続をどう進めるかは、切り離して考えることが大切です。
こちらの情報が相手に伝わる
会う場所や時間を決めるやり取りの中で、現在の住まいの地域や生活のリズム、新しい連絡先などが相手に伝わることがあります。転居や連絡先の変更をしている方にとっては、慎重に考えたい点です。
連絡の届き方ごとの考え方
「謝りたい」という申出は、本人から直接届くとは限りません。届き方によって、当面の対応が少しずつ異なります。
| 連絡の届き方 | 当面の対応の目安 |
|---|---|
| 本人からのLINE・SMS・メール | 返信せず記録を残し、警察や弁護士に伝える |
| 本人からの手紙 | 開封するかどうかを含めて慎重に扱い、封筒ごと保管する |
| 相手の家族や共通の友人を通じた連絡 | 伝言役の方に応じない意向を伝えてもらうか、窓口を弁護士に移す |
| 相手の弁護士からの申入れ | 面会と謝罪・示談は分けて考え、こちらも弁護士を通して回答する |
手紙が届いた場合については【ストーカートラブル】相手から謝罪の手紙が届いた|受け取るかどうか、相手の弁護士から面会を求められた場合については【ストーカートラブル】相手が弁護士を通じて「会って謝りたい」と言ってきた|面会を断っても謝罪や示談の道は残るで詳しく解説しています。
連絡が来た日にしておきたいこと
- 返信や会う約束はしません。既読をつけてしまっても、慌てて返事をする必要はありません。
- メッセージの画面を、送信者・日時・本文が分かる形で保存し、手紙であれば封筒も含めて保管します。
- 警察に相談している場合は、謝罪の連絡が来たことと、その内容を担当者に伝えます。
- 待ち合わせの場所や日時が書かれていた場合は、その時間帯にその場所へ近づかないようにします。
- 今後の窓口をどうするかを、弁護士に相談して決めます。
記録は、後に警告や禁止命令を求めるとき、また損害賠償を求めるときの資料になります。連絡が「謝罪」の形をとっていても、削除せずに残しておくことをおすすめします。
すでに返信してしまった場合
「会いません」「連絡しないでください」と一度返信したことが、それだけで不利に働くことは通常ありません。むしろ、連絡を拒んでいることがはっきりした記録になる面もあります。その後は追加のやり取りを続けず、返信した内容も含めて保存しておきましょう。会う約束をしてしまった場合でも、約束を取り消すことはできます。取消しの連絡を自分で送ることに不安があれば、弁護士から伝える方法もあります。
謝罪を受けて区切りをつけたいと考えるとき
謝罪を受けることで気持ちに区切りをつけたいと考えるのは、自然なことです。その場合でも、直接会うことだけが方法ではありません。弁護士を窓口にして謝罪文を受け取る、示談の中で接触しないことの約束や違反した場合の取り決めを定めるといった形で、相手と顔を合わせずに進めることができます。
こちらが弁護士に依頼していれば、相手方に弁護士がついている場合、その弁護士は正当な理由なく被害を受けた方本人と直接交渉することができません(弁護士職務基本規程52条)。示談で定めておきたい内容は、【ストーカートラブル】示談に入れる条件|接触禁止・転居・違約金で解説しています。直接の話し合いを避けたい理由については、【ストーカートラブル】加害者と直接話し合うのは危険?代わりに誰が話せばいい?もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
「一度だけ会えば、もう連絡しない」と言われました。会ったほうが早く終わりますか?
会うことで連絡が止まるとは限らず、かえって次の連絡のきっかけになる場合もあります。連絡を止めることを目的とするのであれば、警察による警告・禁止命令や、弁護士を通じた接触禁止の取り決めなど、会わずに使える手段を検討することをおすすめします。
返事をしないと、相手が逆上しないか心配です。
その不安はもっともなものです。返事をしないことに加えて、警察に連絡があったことを伝え、身の回りの安全について相談しておくことが大切です。弁護士が窓口になる場合も、相手への伝え方や時期を、安全面を踏まえて検討します。
相手の家族から「本人が謝りたいと言っている」と連絡が来ました。
家族を通じた申出であっても、応じる義務はありません。被害届の取下げを求められるなど、謝罪以外の働きかけが含まれていることもあります。【ストーカートラブル】相手の家族から被害届を取り下げるよう迫られている|応じる前に考えることと、働きかけを止める順序もご参照ください。
相手が逮捕された後に、謝罪の申出がありました。
逮捕後は、多くの場合、加害者の弁護人を通じて謝罪や示談の申入れが届きます。応じるかどうかは自由に決められます。逮捕後の連絡の流れは、【ストーカートラブル】ストーカーの加害者が逮捕された後、私に連絡は来る?で整理しています。
まとめ
- 加害者からの謝罪の申出に、会う義務も返事をする義務もありません。
- 謝罪の形をとっていても、面会の要求や拒まれた後の連続した連絡は、つきまとい等にあたることがあります。
- 警告や禁止命令が出ている場合は、謝罪を理由とした連絡も、それに反する行為となるおそれがあります。
- 連絡が来たら返信せずに記録を残し、警察や弁護士に伝えることが大切です。
- 謝罪を受けたい場合も、弁護士を窓口にして、会わずに謝罪文の受取りや示談を進めることができます。
ご相談について
「謝りたい」という言葉を前にして、断ってよいのか迷うのは、相手に対して誠実であろうとしているからこそだと思います。ただ、謝罪をどう受け取るかは、ご自身の安全を確保したうえで考えれば足りることです。返事をする前の段階でも、どうしたらよいか判断がつかないときはご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


