【ストーカートラブル】被害者等通知制度を使う|相手の処分や出所の時期を知る

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年10月9日時点のストーカー行為等の規制等に関する法律(令和7年法律第83号による改正後のもの。以下「ストーカー規制法」といいます)、刑事訴訟法、更生保護法、および法務省「被害者等通知制度実施要領」(令和7年6月1日施行の改正後のもの)に基づいて記載しています。刑の名称は、2025年6月1日施行の改正刑法により懲役・禁錮が拘禁刑に一本化された後の表記によります。


ストーカー被害のご相談では、「相手が逮捕されたと聞いたが、その後どうなったのか誰からも連絡がない」という声と、「刑務所に入ったと聞いたものの、いつ出てくるのか分からず落ち着かない」という声を、どちらもよくお聞きします。相手の処分や所在が分からない状態は、それだけで日々の生活に影を落とします。

 被害者向けの解説では、「被害者等通知制度を使えば、相手の処分や出所の時期を知ることができる」と案内されるのが一般的で、それ自体は誤りではありません。ただ、この制度は手続の段階によって窓口と知らされる内容が変わり、自分から申し出ておかないと届かない項目もあります。また、ストーカー事案では、警告や禁止命令の段階にとどまっている間は、この制度の対象になりません。

 この記事では、ストーカー事件で被害者等通知制度を使う場面に絞り、段階ごとに何が知らされるのか、どう申し出ればよいのか、そして制度の限界をどう補うのかを整理します。相手が不起訴になった場合の対応や、釈放の当日に備えることについては、それぞれ別の記事で詳しく扱っていますので、あわせてご覧ください。

被害者等通知制度とは何か|ストーカー事件で使える場面

検察庁を中心とした「知らせる仕組み」

 被害者等通知制度は、事件の処理結果、刑事裁判の結果、加害者の受刑中の処遇状況、刑務所からの出所時期などを、被害者やその家族に知らせるための仕組みです。法律で定められた手続ではなく、法務省の「被害者等通知制度実施要領」に基づいて、全国の検察庁で統一的に運用されています。判決が確定した後の仮釈放や保護観察に関する事項は、地方更生保護委員会や保護観察所から通知されます。

 罪名による限定はないため、ストーカー規制法違反の事件はもちろん、つきまといに伴う脅迫、住居侵入、器物損壊などで相手が立件された場合にも利用できます。

警告・禁止命令の段階では対象にならない

 注意が必要なのは、この制度が「刑事事件」を前提にしている点です。ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令は、警察本部長等や公安委員会による行政上の措置であり、それだけでは検察庁に事件が送られていません。警告や禁止命令の段階にとどまっている間は、検察庁の被害者等通知制度で相手の状況を知ることはできません。

 この段階では、警察からの通知が中心になります。2026年3月に全面施行された改正ストーカー規制法では、警告や禁止命令をしたときは、被害者からの申出に基づくものでない場合であっても、速やかに被害者に通知することとされました(ストーカー規制法4条3項・5条6項)。相手が禁止命令に違反したり、ストーカー行為罪などで検挙されたりして事件が検察庁に送られた時点で、被害者等通知制度の対象になります。

通知を受けられる人

 通知を受けられるのは、被害者本人のほか、その親族、内縁関係にある方や婚約者などの親族に準ずる方、そして弁護士である代理人です(被害者等通知制度実施要領第2)。目撃者などの参考人も一部の事項について通知を受けられますが、不起訴の理由の骨子や受刑中の処遇状況などは、被害者側に限られています。

段階ごとに知らされることと窓口

 相手の処分や所在に関する情報は、手続の段階ごとに知らせる機関が異なります。全体像を整理すると、次のとおりです。

段階主に知らされること窓口
警告・禁止命令警告や禁止命令をした事実とその内容警察(警察本部長等・公安委員会)
捜査・処分処理結果(公判請求・略式命令請求・不起訴など)と処理年月日。希望すれば身柄の状況や不起訴理由の骨子事件を扱う検察庁
公判係属する裁判所と公判の日時、判決の主文、上訴・確定の別事件を扱う検察庁
受刑中収容先の刑務所、満期出所予定の年月、処遇状況(おおむね6か月ごと)、釈放された年月日事件を扱った検察庁
仮釈放審理・保護観察仮釈放審理の開始と結果、保護観察の開始・処遇状況・終了地方更生保護委員会・保護観察所
釈放の直前(再被害防止)釈放予定の時期(月の上旬・中旬・下旬)、必要に応じて釈放後の住所地担当の検察官等


捜査から判決まで|処分結果・公判期日・裁判結果

 検察官や検察事務官から事情聴取を受けた際には、通知を希望するかどうかを確認されるのが通常です。ここで希望を伝えると、事件の処理結果、公判期日、裁判の結果が通知されます。事情聴取の機会がなかった場合でも、被害者や代理人の弁護士から照会すれば、同じ事項の通知を受けることができます(被害者等通知制度実施要領第4)。

 相手が不起訴になった場合の確認の仕方や、その後の身の守り方は、【ストーカートラブル】相手が不起訴になった|処分の結果を知る方法と身を守る準備で詳しく扱っています。起訴されて公判が開かれる場合には、通知された公判期日をもとに、裁判に関わる方法を検討することもできます。法廷での関わり方については、被害者参加制度|法廷でできることとできないことをご覧ください。

判決確定後|受刑中の処遇状況と出所の時期

 実刑判決が確定し、相手が刑務所に入った後は、収容されている刑務所の名称と所在地、満期出所予定の年月、受刑中の処遇状況、実際に釈放された年月日などを知ることができます。執行猶予の言渡しが取り消された場合には、その年月日も通知の対象です。

 もっとも、満期出所の予定は「年月」の単位にとどまり、釈放された年月日は実際に釈放された後に通知されるものです。釈放の時期を知る方法と、その日に向けた準備については、【ストーカートラブル】相手が釈放される|時期を知る方法と、その日に備えることで詳しく整理しています。

仮釈放と保護観察|地方更生保護委員会・保護観察所からの通知

 相手が満期より前に仮釈放される可能性がある場合や、保護観察付きの執行猶予判決を受けた場合には、地方更生保護委員会や保護観察所から、仮釈放審理の開始と結果、保護観察の開始や処遇状況、終了の年月日などが通知されます。

 仮釈放審理が始まったことを知ると、その審理を行う地方更生保護委員会に対して、仮釈放についての意見や被害に関する心情を伝える制度を利用できます(更生保護法38条)。保護観察中には、保護観察所を通じて心情等を相手に伝える制度もあります(同法65条)。どちらも利用できる期間が限られているため、通知を受けておくことがその前提になります。

申し出なければ届かない項目がある

事情聴取での確認だけでは足りない

 事情聴取の際に確認されるのは、主に処理結果、公判期日、裁判結果の3つです。勾留や保釈といった相手の身柄の状況、起訴された事実の要旨、不起訴裁定の主文や理由の骨子などは、被害者側が特に希望した場合に通知される事項とされています(被害者等通知制度実施要領第4)。

 ストーカー事件では、相手が保釈されたかどうかが、被害者の生活に直接関わります。身柄の状況まで知りたい場合は、「釈放や保釈があったら知らせてほしい」と、はっきり伝えておくことが大切です。口頭で伝えた場合でも、担当者の氏名や伝えた日付を手元に控えておくと、後の確認がしやすくなります。

確定後の通知は改めて書面で申し出る

 受刑中の処遇状況や出所に関する通知は、判決が確定した後に、事件を扱った検察庁へ書面で申し出る仕組みになっています。裁判確定の通知を希望していれば、その通知とあわせて申出用の書面が送られてきます。申出は判決の確定後であればいつでもできるため、事件から時間が経っていても利用できます。

通知されない場合・間に合わない場合がある

 事件の性質などから、通知することが相当でないと検察官が判断した場合には、希望していても全部または一部が通知されないことがあります。加害者の更生を妨げるおそれがある場合などがその例とされています。

 また、前述のとおり、釈放された年月日は事後の通知です。制度を利用していれば安心というわけではなく、通知の時期と内容には限界があることを前提に、ほかの手段と組み合わせて備えることが現実的です。

出所の「直前」を知るための再被害防止の通知

通常の通知との違い

 被害者等通知制度とは別に、再び被害に遭わないよう、転居など相手との接触を避けるための措置をとる必要がある場合に限って利用できる通知があります。こちらは、相手の釈放直前に、釈放予定の時期(通常は月の上旬・中旬・下旬の単位)が知らされるもので、特に必要があるときは釈放後の住所地が通知されることもあります。

 この通知を受けられるかどうかは、犯罪の動機、相手と被害者との関係、相手のこれまでの言動などに照らして、検察官が判断します。ストーカー事件では、相手の執着の強さや過去の言動を具体的に伝えることが、判断の材料になります。担当の検察官、検察事務官または被害者支援員に、通知を希望する理由とあわせて申し出ます。

警察の再被害防止の取組みと組み合わせる

 警察も、同じ加害者から再び危害を加えられるおそれのある被害者を「再被害防止対象者」として指定し、関連する情報の連絡や、警戒、相手への警告などの措置をとる取組みを行っています。刑事施設などから警察へ釈放に関する情報が伝えられる仕組みもあり、警察はその情報を被害者に伝える必要性を個別に判断しています。

 検察庁への申出と、警察署の担当者への相談の両方を並行して進めておくと、情報が届く経路が一つに限られず、備えの時間を確保しやすくなります。

ストーカー事件で通知制度を使うときの注意点

連絡先・住所の扱い|転居を考えている場合

 通知は、電話や郵送などの方法で行われます。相手の出所に備えて転居を考えている場合には、通知の届け先をどうするかを早めに決めておく必要があります。転居後に届け先の変更を忘れると、肝心の通知が届かないおそれがあります。

 代理人の弁護士を通知先にすれば、新しい住所を各機関に伝える場面を減らしつつ、通知を確実に受け取ることができます。住所を知られないための対策全般については、引っ越したのに住所を突き止められた|居場所を知られない対策で整理しています。

告訴をしている場合の通知との関係

 被害届ではなく告訴をしている場合には、被害者等通知制度とは別に、刑事訴訟法に基づく通知も受けられます。検察官は、起訴・不起訴の処分をしたときは告訴人に速やかに通知しなければならず(刑事訴訟法260条)、不起訴の場合には、請求があれば理由を告げなければなりません(同法261条)。

 法律上の義務として通知される点が、運用による通知制度との違いです。被害届と告訴のどちらを選ぶかについては、被害届と告訴の違い|ストーカー・脅迫でどちらを選ぶをご覧ください。なお、不起訴の判断に納得できない場合には、不起訴に納得できない|検察審査会への申立てで扱っている手続も検討の対象になります。

知った情報をどう使うか

 通知で得た情報は、身を守る準備の時期を決めるために使います。たとえば、出所や仮釈放の時期が近づいたら、警察への相談の継続、禁止命令の申出や延長の検討、裁判所での接近禁止の仮処分の検討などを進めます。警察の手続と裁判所の手続の使い分けは、接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで解説しています。

 一方で、通知された情報をもとに、被害者の側から相手や相手の家族に連絡をとることは、新たなトラブルのきっかけになりかねません。相手との連絡が必要になる場面では、直接ではなく、代理人を通すことをおすすめします。

弁護士が代理人として関わる意味

申出の漏れを防ぎ、通知の受け手になる

 被害者等通知制度は、弁護士である代理人も通知を受けられる仕組みになっています。弁護士が代理人になれば、事件の段階に応じて、どの機関に何を申し出るべきかを整理し、身柄の状況や不起訴理由の骨子など、特に希望しなければ届かない項目の申出を漏れなく行うことができます。

 通知の受け手を弁護士にしておくと、ご本人が通知のたびに不安な思いで内容を確認する負担も軽くなります。届いた情報の意味を確認し、次にとるべき対応をその場で相談できる点も利点です。

通知の先にある対応まで見通す

 通知は、相手の状況を知るための手段にすぎません。知った情報をもとに、禁止命令の申出、民事保全、損害賠償の請求、相手側からの示談の申入れへの対応などを、一連の流れとして組み立てることが重要です。ストーカー被害で代理人を立てることの全体像は、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味でご確認いただけます。

よくあるご質問

事件から何年も経っていますが、今からでも出所の時期を知ることはできますか。

 判決が確定した後の通知は、確定後であればいつでも申し出ることができます。事件を扱った検察庁に問い合わせ、申出の書面を提出してください。どの検察庁が扱ったか分からない場合でも、最寄りの検察庁の被害者ホットラインで相談に応じてもらえます。

本人ではなく家族が通知を受けることはできますか。

 被害者の親族や、内縁関係にある方、婚約者など親族に準ずる方も、通知を受けられる対象に含まれています。また、弁護士である代理人も通知を受けられます。ご本人が直接やり取りをすることに負担を感じる場合には、家族や代理人を窓口にすることも検討できます。

相手が禁止命令を受けただけの場合、相手の状況を知る方法はありますか。

 禁止命令の段階では刑事事件になっていないため、検察庁の被害者等通知制度は使えません。この段階では、警察からの警告や禁止命令に関する通知を受けたうえで、警察署の担当者と継続的に連絡をとることが中心になります。禁止命令には有効期間があり、延長の手続もあるため、期限が近づいたら早めに相談しておくことが大切です。禁止命令の期間や違反した場合の扱いについては、禁止命令が出た|違反した場合の刑罰と期間・更新もあわせてご覧ください。

まとめ


  1. 被害者等通知制度は、法務省の実施要領に基づき検察庁などが運用する仕組みで、処分結果、裁判結果、受刑中の状況、出所の時期などが知らされる(被害者等通知制度実施要領第1・第3)。
  2. 警告や禁止命令の段階では刑事事件になっていないため、この制度は使えず、警察からの通知が中心になる(ストーカー規制法4条3項・5条6項)。
  3. 事情聴取の際の確認で通知されるのは主に処理結果・公判期日・裁判結果で、身柄の状況や不起訴理由の骨子は特に申し出る必要がある(被害者等通知制度実施要領第4)。
  4. 受刑中や出所に関する通知は判決確定後に書面で申し出るもので、満期出所予定は年月単位、釈放年月日は事後の通知にとどまる。
  5. 釈放直前の時期を知るには、再被害防止のための通知を検察官に申し出て、警察の再被害防止の取組みと組み合わせる。
  6. 仮釈放審理中は意見等の聴取、保護観察中は心情等の伝達の制度を利用できる(更生保護法38条・65条)。
  7. 告訴をしている場合は、処分の通知と不起訴理由の告知も受けられる(刑事訴訟法260条・261条)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。被害者等通知制度の申出や通知の受け手を弁護士が担い、知らされた情報をもとに、警察との連携や禁止命令、民事上の手続まで含めた対応を一緒に組み立てます。

相手の処分がどうなったのか分からず不安を抱えている方も、出所や仮釈放の時期が近づいて備えを考えたい方も、まずはお気軽にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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