【ストーカートラブル】家族がストーカー被害に遭っている|家族が代わりに相談するとき
この記事は、2026年11月時点の法令にもとづいて書いています。ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)は令和7年の改正(令和7年12月30日施行)を反映し、刑罰の表記は2025年6月1日施行の拘禁刑にそろえています。迷惑防止条例は東京都の条例を例にしています。
「取引先の担当者に業務の確認を何度か送ったら、上司経由で『ストーカーのようで怖いと言われている』と伝えられた」「退職した元同僚に引き継ぎの件で連絡したところ、警察から電話が来た」。仕事上の連絡のつもりだったのに、相手からストーカーと受け取られてしまったというご相談は、刑事事件の窓口でも少なくありません。
ストーカー規制法は「恋愛感情などの好意を満たす目的」の行為を対象にしているため、「仕事の用件なのだから当たらない」と説明されることがあります。その説明自体は誤りではありませんが、業務の用件があっても、連絡の回数や時間帯、話題の混ざり方によっては、好意の目的があると見られる場面があります。また、恋愛感情がなくても、別の法令が問題になることもあります。
この記事では、仕事上の連絡がストーカーと受け取られたときに、法律上どこで線が引かれるのか、言われた直後に何をして何を控えるのか、業務を続けなければならない場合の連絡の組み立て方を整理します。元交際相手への清算の連絡や、警察の警告を受けた後の流れなど、関連する論点は別の記事で詳しく扱っています。
仕事上の連絡がストーカーと受け取られる場面
よくある3つの場面
ご相談で多いのは、次のような場面です。
- 取引先や顧客の担当者に、業務の確認や営業の連絡を繰り返していた。
- 退職・異動した元同僚に、引き継ぎや貸し借りの件で連絡を続けていた。
- 業務の連絡に、食事の誘いや私生活についての話題が少しずつ混ざっていった。
いずれも、出発点は業務上の用件です。ところが、相手から見ると「用件にしては多い」「用件と関係のない話が増えている」と感じられ、不安につながっていることがあります。
相手が不安を感じやすい要素
相手が不安を覚えるきっかけは、連絡の中身よりも、連絡の仕方であることが少なくありません。たとえば、返事がないまま連絡を重ねる、深夜や休日に送る、会社のアドレスではなく個人のLINEやSNSに送る、職場の外で待つ、自宅や私生活の予定に触れる、といった事情です。
本人は業務のつもりでも、相手が受け取るのは「回数・時間帯・手段・話題」から見た印象です。相手が「やめてほしい」と伝えた後も連絡が続いていると、その印象は強まりやすくなります。
法律上の線引き|目的と連絡の仕方の両方で決まる
ストーカー規制法は「好意の感情」を満たす目的が要件
ストーカー規制法の「つきまとい等」にあたるには、特定の人に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことによる怨恨の感情を満たす目的が必要です(ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項)。拒まれたにもかかわらず電話やメール、SNSのメッセージを連続して送る行為も、この目的があれば「つきまとい等」の一つになります(同項5号)。
そのうえで、「つきまとい等」を反復して行うと「ストーカー行為」となり、刑罰の対象になります(同法18条)。そのため、純粋に業務上の用件だけで連絡していたのであれば、本来はこの法律の対象から外れます。
業務の用件があっても、好意が混ざっていると見られる場合
問題は、この「目的」が本人の申告だけで決まるわけではない点です。目的は、連絡の内容や頻度、相手との関係、それまでの経緯といった外から見える事情から推し量られます。業務の用件と並んで、食事の誘い、容姿や私生活への言及、個人的な連絡先の求めなどが含まれていると、好意の目的もあったと見られやすくなります。
判断に影響しやすい事情を、両側から並べると次のとおりです。
| 業務の連絡と受け取られやすい事情 | 好意の目的を疑われやすい事情 |
|---|---|
| 会社のアドレスや業務用のツールで送っている | 個人のLINEやSNSに送っている |
| 業務時間内に、用件だけを書いている | 深夜や休日に送り、私的な話題が混ざる |
| 上司や同僚もCCに入っている | 一対一のやり取りだけになっている |
| 返事がなければ、窓口を替えて確認している | 返事がないまま同じ相手に送り続けている |
| 業務の記録(案件の履歴・社内の指示)と内容が合う | 業務の必要と関係のない誘いや要求がある |
「仕事の連絡だった」と説明するときに支えになるのは、業務の必要を示す客観的な記録です。言い分だけでは足りず、案件の経緯や社内の指示と連絡の内容が合っているかどうかが見られます。
恋愛感情がなくても問題になる法令
ストーカー規制法の目的にあたらない場合でも、ほかの法令が問題になることがあります。東京都の迷惑防止条例は、正当な理由なく、ねたみや恨みその他の悪意の感情から、相手に不安を覚えさせるような方法でつきまとう行為を禁止しています(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条の2)。業務上の不満や対立から連絡を重ねていた場合は、こちらが検討されることがあります。条例の内容は都道府県ごとに異なります。
また、連絡の中に相手や家族への害を伝える言葉があれば脅迫罪(刑法222条)、義務のないことを無理にさせれば強要罪(同法223条)、相手の職場に大量の電話をかけて業務を止めれば業務妨害罪(同法233条・234条)が問題になり得ます。強い口調のメッセージが重なっている場合については、しつこいDM・メッセージを送った|脅迫とストーカー規制法の重なりで解説しています。
「ストーカーだ」と言われた直後にすること・控えること
本人への連絡をいったん止め、業務の窓口を切り替える
最初にすることは、相手本人への連絡をいったん止めることです。業務上どうしても必要な用件があっても、自分から直接送るのは控え、上司や別の担当者、会社の代表窓口に引き継ぎます。相手が「やめてほしい」と感じていると分かった後の連絡は、たとえ用件があっても、拒まれた後の連絡として扱われるおそれがあるためです。
元交際相手との荷物やお金の清算のように、正当な用件があるのに連絡しにくい場面での考え方は、【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面でも整理しています。
弁明や謝罪の連絡を自分でしない
誤解を解きたい、ひと言謝っておきたいという気持ちから、相手に連絡したくなることがあります。しかし、相手が不安を感じている段階では、弁明や謝罪の連絡そのものが「まだ連絡してくる」と受け取られることがあります。共通の知人や同僚を通じて伝えてもらう方法も、内容や頻度によっては同じように見られます。謝罪の扱いについては、【ストーカートラブル】謝りたい|謝罪の連絡そのものが問題になる理由で詳しく説明しています。
やり取りの記録を消さずに残す
送ったメールやメッセージ、通話の履歴は、消さずに残しておきます。自分に不利に見える部分を消すと、残った記録だけでは業務上の用件があったことを示しにくくなります。あわせて、次のような記録も整理しておくと、後で事情を説明するときの支えになります。
- 担当していた案件の内容と、連絡が必要になった経緯。
- 上司や社内からの指示、業務チャットでの共有の記録。
- 連絡した日時・手段・内容と、相手からの返事の有無を並べた時系列のメモ。
会社・警察・相手方の代理人から連絡が来たとき
社内で事情を聞かれたら
相手が会社の窓口や上司に相談している場合、社内の調査として事情を聞かれることがあります。社内の手続は、刑事手続とは別に進みます。感情的に反論するよりも、業務の経緯と連絡の内容を時系列で説明し、記録を示すほうが、事実に沿った判断につながりやすくなります。社内で認めた内容が、後の手続で参照されることもあるため、事実と違う点は違うと伝えることが大切です。
警察から警告や事情聴取の連絡が来たら
警察から、相手への連絡をやめるよう警告を受けることがあります(ストーカー行為等の規制等に関する法律4条)。令和7年の改正で、相手からの申出がなくても、警察が職権で警告できるようになりました。警告は刑罰ではありませんが、その後も連絡を続けると、公安委員会による禁止命令や検挙に進む可能性があります。禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が定められています(同法19条1項)。
身に覚えがないと感じていても、まずは警告の内容に従って連絡を止め、事実と違う点は弁護士を通じて伝えるのが現実的です。警告を受けた後の流れは警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのかで、任意の事情聴取に応じる前の準備は【ストーカートラブル】任意で事情を聞きたいと言われた|応じる場合の準備で解説しています。
相手方の弁護士から書面が届いたら
相手が弁護士に依頼し、連絡をやめるよう求める書面が届くこともあります。この場合も、相手本人に直接連絡して事情を説明するのは控えます。返答が必要かどうか、どこまで事実を認めるかは、書面の内容によって変わります。返し方の考え方は、【刑事事件】弁護士から警告の書面が届いた|ストーカーと名指しされたときの返し方で整理しています。
業務を続けなければならない場合の連絡の組み立て
担当と連絡手段を見直す
取引が続いている、同じ部署にいるなど、業務上の接点がすぐにはなくならない場合もあります。そのようなときは、担当者を替える、連絡は会社の公式アドレスや業務用のツールに限る、上司や同僚を必ずCCに入れる、といった形で、一対一のやり取りにならない仕組みを会社と相談して整えます。
時間帯・回数・内容を絞る
連絡は業務時間内に、用件だけを簡潔に書きます。返事がないときに同じ相手へ重ねて送るのではなく、窓口を替えて確認します。私的な話題や誘いは入れません。業務の連絡であることが、文面と手段の両方から分かる形にしておくことが、誤解を繰り返さないための土台になります。
よくあるご質問
相手から一度も「やめて」と言われていなくても、ストーカーになりますか?
メールやSNSの連続送信は、拒まれたにもかかわらず続けた場合が対象です。ただし、つきまといや待ち伏せなど、拒否の有無を要件としない行為もあります。また、直接言われていなくても、返事がない状態が続いている、上司を通じて困っていると伝えられたといった事情は、拒否の意思として受け止めるのが安全です。連絡の回数と法律上の扱いについては、連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで解説しています。
業務上必要な連絡まで止めると、仕事に支障が出ます。どうすればよいですか?
自分一人で判断して連絡を続けるのではなく、上司や会社の担当部署に事情を伝え、担当替えや窓口の一本化を相談するのが現実的です。会社として連絡する形をとれば、業務を止めずに、相手本人との一対一のやり取りを避けることができます。
警告を受けたら、前科がつきますか?
警察の警告は刑罰ではないため、それだけで前科がつくことはありません。ただし、警察には記録が残り、その後に連絡を続ければ、禁止命令や検挙につながる可能性があります。前科がつく場面との分かれ目は、【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合で詳しく説明しています。
まとめ
- ストーカー規制法の「つきまとい等」には、恋愛感情その他の好意の感情などを満たす目的が必要です(ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項)。
- 業務の用件があっても、連絡の回数・時間帯・手段・話題によっては、好意の目的があると見られることがあります。
- 恋愛感情がなくても、悪意の感情によるつきまといとして迷惑防止条例が問題になることがあります(東京都迷惑防止条例5条の2)。
- 脅しや無理な要求、業務を止めるほどの連絡は、脅迫罪・強要罪・業務妨害罪が問題になり得ます(刑法222条・223条・233条・234条)。
- ストーカーと言われたら、相手本人への連絡を止め、業務の窓口を切り替え、弁明や謝罪の連絡も自分ではしないことが基本です。
- 警察の警告は相手の申出がなくても出されることがあり、その後の連絡は禁止命令や検挙につながる可能性があります(同法4条・5条・19条)。
- 業務の経緯を示す記録と、連絡の時系列は、消さずに整理しておきます。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカーと受け取られた側の刑事事件に関するご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。社内での説明や警察対応の準備、相手方の代理人とのやり取りについても、事情を伺ったうえで見通しをお伝えします。
仕事上の連絡のつもりだったのに相手から不安を訴えられた方、警察や相手方の弁護士から連絡が来て対応に迷っている方は、相手に連絡する前に一度ご相談ください。


