【男女トラブル】交際中に相手名義で借りた部屋に住み続けたい、名義を変えてもらえる?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

交際相手の名義で借りた部屋で一緒に暮らしてきたものの、別れることになった。仕事や通勤、子どもの学校、引越しにかかる費用を考えると、自分はこのまま住み続けたい。そうした場面で「部屋の名義を自分に変えてもらえば済むのでは」と考える方は少なくありません。

 ただ、賃貸の部屋の名義は、相手が「いいよ」と言えばその場で変わるものではありません。部屋を貸している貸主(大家さんや管理会社)の判断が入り、多くの場合は審査や費用も伴います。この記事では、相手名義の部屋に住み続けたいときに、名義変更がどのような仕組みで進むのか、相手が応じないときに何が起きるのか、話し合いで決めておきたい事項を順に整理します。

この記事は、婚姻していない交際相手の名義で借りた賃貸住宅を前提にしています。相手名義の持ち家や、契約者が亡くなった場合の扱いは異なるため、ここでは取り上げていません。


部屋の名義を決めるのは、相手と貸主

 賃貸借契約は、契約者(借主)である相手と貸主との間で結ばれています。一緒に住んでいたあなたは、入居者として届け出られていることはあっても、契約の当事者ではないのが通常です。あなたがその部屋に住めているのは、契約者である相手の権利に基づき、相手の了解のもとで暮らしているからだと考えられます。

 そのため、名義を変えるには、相手がその契約から抜けることに同意し、貸主があなたを新しい借主として認める、という二つがそろう必要があります。あなたと相手の二人だけで合意しても、貸主の承諾がなければ名義は変わりません。

立場主な権利と責任名義変更での役割
相手(現在の契約者)家賃の支払いや退去時の原状回復など、契約上の責任を負う契約から抜けること(解約・譲渡)に同意する
あなた(同居人)契約者の了解のもとで住んでいる新しい借主として申し込み、審査を受ける
貸主(大家さん・管理会社)誰に貸すかを判断する新しい借主として認めるかどうかを決める


 名義を変えないまま住み続けられるかという点については、【男女トラブル】相手名義の部屋に住んでいる|別れた後も住み続けられるかで解説しています。本記事では、名義を自分に移す場合の進め方に絞ってお伝えします。

「名義変更」の多くは、契約のやり直し


貸主の承諾が欠かせない理由

 民法では、借主が賃借権を他人に譲ったり、部屋を又貸ししたりするには、貸主の承諾が必要とされています(民法612条1項)。承諾を得ないまま譲渡や又貸しをした場合、貸主が契約を解除できることがあります(同条2項)。貸主にとって、誰が家賃を払い、誰が部屋を使うかは、貸すかどうかを決める大切な事情だからです。

審査と費用がかかることが多い

 実務では、名義変更を申し出ると、今の契約をいったん解約し、あなたを借主として新しく契約を結び直す扱いになることが少なくありません。この場合、あなたの収入や勤務先などについて入居審査があり、保証会社の利用や連帯保証人を求められることがあります。費用も、名義変更の手数料のほか、保証会社の初回保証料や火災保険料、物件によっては敷金・礼金や仲介手数料が改めてかかることがあります。

 どの程度の費用や書類が必要かは、物件や管理会社によって異なります。単身者向けの物件などでは、名義変更そのものを受け付けていない場合もあります。相手との話し合いと並行して、管理会社に「契約者を変えることができるか、その場合の手続と費用はどうなるか」を確認しておくと、話し合いの前提がはっきりします。

敷金は誰のものになるか

 契約時に相手が敷金を払っていた場合、敷金は契約者である相手との間で精算されるのが原則です。民法でも、借主が適法に賃借権を譲り渡したときは、貸主はそれまでの借主に敷金を返す必要があるとされています(民法622条の2第1項2号)。もっとも、あなたが初期費用の一部を負担していた場合や、敷金を新しい契約にそのまま引き継ぐ取り扱いをする場合には、二人の間で誰がいくら負担したかを清算する必要があります。退去時の費用の考え方については、同棲解消の敷金・原状回復・退去費用は誰が払う?もあわせてご覧ください。

相手が名義変更に応じないとき

 名義変更には相手の協力が必要です。二人の間で事前に約束していたような事情がない限り、相手に名義変更を法的に強制する方法は、一般には見当たりません。もっとも、応じない理由が「手数料を払いたくない」「敷金を返してほしい」「出ていくなら初期費用を返してほしい」といった金銭面にあるときは、費用の負担や清算の条件を調整することで話が進むこともあります。

名義が相手のまま住み続ける形の不安定さ

 名義を変えないまま、相手だけが出ていき、あなたが住み続けるという形を取ることもあり得ます。ただ、この形には次のような不安定さが残ります。

  • 相手が解約を申し入れれば契約は終わり、貸主から退去を求められることがあります。
  • 交際を前提に住まわせていた関係は、交際の終了とともに終わったと判断されることがあり、相手から部屋の明渡しを求められることがあります。
  • 相手に家賃を払って住む形は、貸主の承諾のない又貸しと評価され、契約を解除される理由になるおそれがあります。
  • 相手の側にも、家賃の滞納や部屋の損傷の責任を負い続ける不安が残るため、別れた後の関係がこじれやすくなります。


 最後の点は、相手にとっても名義を切り替える利点があるということでもあります。相手が名義変更に消極的なときは、契約者のまま責任を負い続けることの負担を伝えることが、話し合いの材料になることがあります。

相手が出ていかない場合

 相手が部屋に住み続けるつもりでいる場合、契約者である相手に対して、あなたの側から退去を求める根拠は乏しいのが通常です。この場合は、名義変更ではなく、自分が転居することを前提に、引越しまでの期間や費用の分担を話し合うことになります。

話し合いで決めておきたいこと


項目決めておく内容
名義変更の段取り管理会社への連絡を誰がするか、必要書類をいつまでにそろえるか
費用の負担名義変更の手数料、保証料、新たな初期費用を誰が負担するか
敷金と初期費用相手が払った敷金をどう扱うか、二人で負担した初期費用をどう清算するか
切り替えまでの家賃名義変更が終わるまでの家賃を、誰がどの口座から払うか
相手の退去日と荷物相手がいつ出ていくか、残った荷物をいつ引き取るか
鍵相手が持っている鍵(合鍵を含む)をいつ返すか
家具・家電二人で買ったものをどちらが引き取るか
光熱費・通信電気・ガス・水道やネット回線、スマホの家族割などの名義をどう切り替えるか


 話がまとまったら、口頭で済ませず、合意した内容を書面に残しておくことをおすすめします。名義変更の審査に通らなかった場合にどうするか(退去の期限や費用の負担)まで書いておくと、後の行き違いを防ぎやすくなります。家具・家電の分け方は【男女トラブル】同棲を解消するとき、家具・家電はどう分けるのか|共同で買ったものの扱いで、通信契約の切り替えは【男女トラブル】スマホの家族割やサブスクを共有している|別れた後の解約の順序で解説しています。

審査に通らなかったときの選択肢

 入居審査は貸主や保証会社の判断で行われ、結果の理由は示されないことが多いものです。審査に通らなかった場合でも、連帯保証人を立てる、別の保証会社の利用ができないかを相談する、といった方法で再検討してもらえることがあります。

 それでも名義変更が難しい場合は、退去を前提に、転居先が決まるまでの期間やそれまでの家賃の負担、退去費用の分担を相手と取り決めることになります。仮に相手が名義を残したままでよいと言ってくれた場合でも、貸主に無断のままにせず、事情を伝えて取り扱いを確認しておくことが大切です。

避けたい対応


  • 相手の署名や押印を代わりに書いて、名義変更や解約の書類を作ること。
  • 相手に知らせないまま、管理会社に「契約者は出ていった」と伝えて手続を進めようとすること。
  • 契約者である相手を締め出すために、鍵を勝手に替えること。
  • 相手の荷物を、了解を得ずに処分すること。


 他人の名前で書類を作れば、私文書偽造などの罪に問われるおそれがあります。また、契約者である相手を締め出したり、荷物を勝手に処分したりすれば、相手から損害の賠償を求められるなど、かえって自分の立場を弱めることになりかねません。鍵や荷物の扱いについては、【男女トラブル】別れた相手が合鍵を持っている|返してもらう交渉と、鍵を替える判断と【男女トラブル】相手の荷物が家に残っている・自分の荷物を取りに行きたい|勝手に処分してよいかで解説しています。

弁護士に依頼する場合にできること

 別れ話の後は、名義や費用の話をするたびに感情的な対立が蒸し返され、話が進まないことがあります。弁護士が窓口になれば、名義変更への協力、敷金や初期費用の清算、相手の退去日や鍵の返却といった条件をまとめて相手方と交渉し、合意した内容を書面にすることができます。貸主との契約手続そのものはご本人に行っていただく部分もありますが、相手方との条件を先に固めておくことで、手続を進めやすくなります。

 交際中に暴力や脅しがあった場合は、名義の問題より先に安全の確保を考える必要があります。警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談とあわせて、保護命令などの手続を検討する場面もあります。詳しくは交際相手からのDV(デートDV)|保護命令は使える?同棲の有無で変わる対応をご覧ください。

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 相手名義の部屋に住み続けられるかどうかは、相手の協力、貸主の判断、そしてあなた自身の審査という三つの要素で決まります。気持ちの整理がつかないうちに条件を決めてしまうと、後から費用や退去をめぐって争いが生じることもあります。何をどの順番で決めればよいかを整理するところから始めてみてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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