【男女トラブル】元恋人に貸したお金の取り立てを、業者に頼んでもいい?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

交際中に貸したお金が、別れた後も返ってこない。連絡しても返事がない、返すと言いながら先延ばしにされる。そうした状況が続くと、インターネットで見かけた「取り立て代行」「回収代行」の業者に任せてしまいたいと考える方もいるかもしれません。この記事では、元恋人に貸したお金の回収を業者に頼むことが法律上どう扱われるのか、依頼した側にどのような不利益が生じうるのか、そして代わりにどのような手段があるのかを整理します。

この記事は、個人どうしで貸し借りしたお金を、貸した側が取り戻そうとする場面を前提にしています。貸金業者や金融機関からの借入れの取り立ては扱っていません。


結論|回収の交渉を業者に任せることには、法律上の大きな制約がある

 報酬を受け取って、他人に代わり借金の返済を求める交渉を引き受けることは、原則として弁護士(一定の金額までは認定司法書士)にしか認められていません。弁護士資格のない業者が「取り立て代行」として交渉を行うと、弁護士法に違反するおそれがあります。また、法務大臣の許可を受けた債権回収会社(サービサー)であっても、個人間の貸し借りで生じたお金は扱える範囲に入っていません。

 そのため、「業者に頼んでもいいか」という問いに対しては、回収の交渉そのものを弁護士以外の業者に任せるのは避けたほうがよいというのが答えになります。一方で、相手の居場所を調べる、請求の書面を送るといった周辺の作業には、法律の範囲内で第三者の手を借りられるものもあります。以下で順に見ていきます。

業者に任せられない理由


報酬を得て他人の交渉を引き受けることの禁止(弁護士法72条)

 弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、法律事件について代理や和解などの法律事務を取り扱うことを業とすることを禁じています。いわゆる「非弁行為」です。返済をめぐって相手と言い分が食い違っている貸金の回収は法律事件にあたると考えられており、業者が依頼者に代わって相手と返済額や支払方法を交渉することは、この規定に触れるおそれがあります。

 この規制の目的は、守秘義務や懲戒制度といったルールに服していない者が報酬目当てに法律問題へ関与し、依頼者や相手方に損害を与えることを防ぐ点にあります。違反した場合の刑事罰も定められています。

債権を買い取って取り立てる形も禁止される(弁護士法73条)

 「代行ではなく、債権を買い取って自社の権利として回収する」とうたう業者もあります。しかし弁護士法73条は、他人の権利を譲り受けて、訴訟などの手段でその権利を実行することを業とすることも禁じています。名目を「買取り」に変えても、実質が取り立ての引受けであれば問題は解消されません。

 加えて、債権を譲り渡してしまうと、その後は貸した本人が相手に請求する立場を失います。業者との間で代金の支払いがうやむやになった場合に、取り戻すのが難しくなる点にも注意が必要です。

債権回収会社(サービサー)は個人間の貸金を扱えない

 債権回収会社(サービサー)は、法務大臣の許可を受け、弁護士法の特例として債権の管理回収業務を行う会社です。ただし扱えるのは「特定金銭債権」と呼ばれるものに限られ、金融機関や貸金業者の貸付債権、リース・クレジット債権などがその中心です。個人どうしの貸し借りで生じたお金はこれに当たらないため、サービサーに回収を頼むことはできません。

 相談先・依頼先ごとの違いを整理すると、次のとおりです。

相談・依頼先個人間の貸金について担える範囲
弁護士請求書面の送付、相手との交渉、支払督促や訴訟、強制執行まで、金額の上限なく代理できる
認定司法書士140万円以下の請求について、交渉や簡易裁判所での訴訟を代理できる
行政書士請求書面などの作成にとどまり、相手との交渉は行えない
探偵(調査会社)相手の所在などの調査はできるが、回収の交渉は行えない
債権回収会社(サービサー)個人間の貸金は扱えない
「取り立て代行」をうたう業者報酬を得て交渉を引き受けると、弁護士法に違反するおそれがある


依頼した側にも生じうる不利益

 「自分が直接やるわけではないから」と考えがちですが、業者に任せた結果は依頼した側にも跳ね返ってくることがあります。主なものは次のとおりです。

  • 業者が相手を脅したり自宅や勤務先に押しかけたりした場合、依頼の経緯によっては、恐喝や脅迫に関わった者として事情を聴かれるおそれがあります。
  • 相手から、行き過ぎた取り立てを理由に損害賠償や慰謝料を求められることがあります。
  • 弁護士法に反する契約は無効とされる余地があり、支払った着手金や報酬をめぐって業者とのトラブルになることがあります。
  • 交際の経緯や相手の個人情報を、守秘義務を負わない第三者に渡すことになります。
  • 相手が態度を硬くして連絡を絶ち、話し合いや裁判での解決がかえって難しくなることがあります。


 なお、報酬を受け取らない友人や知人に頼む場合は弁護士法72条の問題にはなりにくいものの、強い口調で迫ったり、相手の家族や職場に話を広げたりすれば、同じように恐喝や名誉毀損の問題が生じえます。正当な請求と恐喝の境目については、恐喝と借金の取り立ての境界|個人間の債権回収がアウトになる線で詳しく解説しています。

第三者の手を借りてよい部分

 回収の交渉を業者に任せることはできなくても、すべてを一人で抱える必要はありません。法律の範囲内で頼めることもあります。

相手の居場所が分からないとき

 別れた後に転居して連絡が取れない場合、探偵業の届出をした調査会社に所在の調査を依頼することは、法律の範囲内で行えます。ただし、調査会社にできるのは調べることまでで、見つけた相手に返済を求めることは業務に含まれません。弁護士に依頼した場合は、弁護士会を通じた照会などの手続で、相手の住所を確かめられることもあります。

書面で請求したいとき

 内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を誰に送ったかを郵便局が証明する仕組みです。それ自体に支払いを強制する力はありませんが、請求した事実が記録に残り、後に裁判となったときの資料にもなります。自分で送ることもできますが、文面によっては相手を刺激したり、後で不利になる言い回しが残ったりするため、送る前に専門家に確認してもらうと安心です。

自分で請求するときに越えないほうがよい線

 貸したお金を返してほしいと求めることは、正当な権利の行使です。ただ、求め方によっては、請求する側が責任を問われる立場に回ってしまいます。次のような行動は控えたほうがよいでしょう。

  • 深夜や早朝に何度も電話やメッセージを送ること。
  • 相手の家族や勤務先に借金の事実を伝えたり、立て替えを求めたりすること。
  • SNSで相手が返済しないことを公表すること。
  • 「払わなければ〇〇する」と不利益を予告して支払いを迫ること。
  • 相手の自宅に押しかけ、帰るよう求められても居座ること。


 自分の求め方が行き過ぎていないか気になる方は、「金を返せ」と強く迫った|正当な債権回収と恐喝の境界もあわせてご覧ください。

お金を取り戻すための手順

 業者に頼らずに回収を目指す場合、おおむね次の順序で進めます。

  1. 振込の明細、LINEやメールのやり取り、借用書やメモなど、貸した事実と金額を示す資料を集めます。
  2. 相手に返済を求める連絡を、記録の残る方法で行います。
  3. 応じない場合は、内容証明郵便などの書面で期限を区切って請求します。
  4. それでも支払われない場合は、支払督促、少額訴訟(60万円以下の請求)、通常の訴訟といった裁判所の手続を検討します。
  5. 判決などを得ても支払われないときは、給与や預貯金の差押え(強制執行)を検討します。


 交際中のお金については、相手から「もらったものだ」と言われることが少なくありません。貸したのか贈ったのかの区別については別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いで、借用書がない場合の考え方については恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?で解説しています。

 また、貸したお金を請求できる期間には限りがあります。2020年4月1日以降に貸したお金は、原則として、返済期限が来たことなど請求できることを知った時から5年で時効にかかります。時間が経っている場合は、早めに確認しておくことが大切です。請求の種類ごとの期間は男女トラブルの時効早見表|請求の種類別に何年で消えるかにまとめています。

弁護士に依頼した場合にできること

 弁護士は、依頼者の代理人として相手と直接やり取りし、返済額や支払方法の交渉から裁判、強制執行までを一貫して担うことができます。代理人からの通知が届くことで、それまで連絡に応じなかった相手が話し合いに応じることもあります。代理人の通知が働きやすい場面とそうでない場面については、弁護士に窓口を移すという選択|代理人通知が効く場面・効かない場面で触れています。

 一方で、貸した金額が小さい場合には、弁護士費用が回収できる額を上回ってしまうこともあります。相手に支払う資力があるかどうかも、結果を左右します。依頼する前に、見込まれる費用と回収の見通しを照らし合わせて判断することが大切です。費用の考え方は弁護士費用の内訳|相談料・着手金・報酬金・実費・日当・手数料で整理しています。

よくあるご質問


「成功報酬のみ」「着手金ゼロ」とうたう回収代行なら問題ない?

 報酬の受け取り方が成功報酬であっても、報酬を得る目的で交渉を引き受けることに変わりはないため、弁護士法の問題は残ります。弁護士や認定司法書士であることを示さずに「回収」をうたう広告には、慎重になったほうがよいでしょう。依頼を考えている相手が弁護士かどうかは、日本弁護士連合会のウェブサイトで確認できます。

相手の家族に立て替えてもらうよう求めてもよい?

 家族が保証人になっていない限り、相手の家族に返済の義務はありません。家族に支払いを求め続けると、相手の側から迷惑行為として問題にされるおそれもあります。ただし、家族が自らの意思で立て替えを申し出た場合に、それを受け取ること自体は差し支えありません。

すでに業者に依頼してしまった場合はどうすればよい?

 まずは、業者がどのような方法で相手に接触しているかを確認してください。脅しや押しかけといった行き過ぎた行為が見られる場合は、速やかに依頼の中止を伝えることが考えられます。そのうえで、業者との契約内容、支払った金額、相手とのやり取りの記録を手元にそろえ、弁護士に相談してください。業者との契約をどう扱うかと、元の貸金の回収をどう進めるかを分けて検討することになります。

まとめ

 元恋人に貸したお金を取り戻したいと考えるのは当然のことですが、回収を急ぐあまり業者に任せると、依頼した側が新たなトラブルを抱えることになりかねません。貸した事実を示す資料を整え、法律に沿った手続で進めることが、結果として回収への近道になることが多くあります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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