【不貞慰謝料・請求された側】無視するとどうなるのか|放置の帰結
交際中に、自分が契約しているトランクルームや、自宅の敷地にある鍵付きの物置を相手に使わせていた。別れた後も中には相手の荷物が残ったままで、鍵も相手が持っている。こうしたご相談では、「中の物を片付けてよいのか」「契約を解約してよいのか」「鍵を替えてよいのか」という3つの迷いが重なっていることが少なくありません。
場所を使わせる関係そのものは終わらせることができますが、中にある荷物は原則として相手の物であり、こちらの判断だけで処分することは避けるべきです。本記事では、物置やトランクルームを貸していた側の立場から、法律上の位置づけと、荷物を引き取ってもらうまでの進め方を整理します。
本記事は、2026年10月時点の民法・刑法の規定をもとに一般的な考え方を解説しています。トランクルームの利用条件は運営会社ごとに異なりますので、実際の対応はお手元の契約書・利用規約とあわせてご確認ください。
最初に確かめておきたい3つのこと
対応を考える前に、次の3点を整理しておくと、できることとできないことの境目が見えやすくなります。
| 確かめること | 主な確認先 | 対応への影響 |
|---|---|---|
| 物置・トランクルームの契約者は誰か | 契約書、利用規約、運営会社からの請求書 | 解約や鍵の管理を誰が決められるか |
| 中の荷物の持ち主は誰か | 購入の経緯、相手とのやり取り、写真 | 処分や移動をしてよい物かどうか |
| 鍵や暗証番号を誰が持っているか | 合鍵の本数、暗証番号やアプリの共有状況 | 相手が今も自由に出入りできる状態か |
自分が契約者で、中の荷物が相手の物、鍵も相手が持っているという組み合わせが、この記事で主に取り上げる場面です。荷物の中に二人で一緒に買った物が含まれている場合は、その分け方も別に話し合う必要があります。家財全般の分け方については、【男女トラブル】別れた後に共通のペット・車・家財をどう分けるかで解説しています。
物置やトランクルームを使わせていた関係を、法律から見ると
無償で使わせていた場合は「使用貸借」にあたることが多い
利用料を受け取らずに場所を使わせていた場合、法律上は「使用貸借」(民法593条)という契約にあたると考えられることが多くあります。使用貸借は、借りた側が使い終わった後に借りた物を返すことを約束する契約で、交際中に口頭で「使っていいよ」と伝えただけでも成立し得ます。
期間や使う目的を特に決めていなかった場合、貸した側はいつでも契約を解除できるとされています(民法598条2項)。「引っ越し先が決まるまで」など目的を決めていた場合でも、その目的に従って使うのに足りる期間が過ぎれば、解除することができます(民法598条1項)。契約が終われば、相手は借りていた場所を返す必要があり、その前提として中の荷物を引き上げることになります。
なお、相手が利用料の一部を負担していた場合には、無償の使用貸借とは別の関係と評価される余地があり、終わらせ方の考え方が変わることがあります。費用の負担状況は、振込記録やメッセージで確認しておくとよいでしょう。
運営会社との契約は、こちらの名義のまま続いている
トランクルームと呼ばれるサービスには、倉庫業法の登録を受けた事業者が荷物を預かる「寄託」型のものと、収納スペースを貸すだけの「レンタル収納スペース」型のものがあります。鍵を渡して自由に出し入れできる形のものは、後者であることが一般的です。
いずれの場合も、運営会社との関係では契約者であるあなたが利用者であり、利用料の支払いや、解約時に空にして返す責任を負うのは原則としてあなたです。また、利用規約によっては、契約者以外の人に使わせること自体が禁止されていることもあります。相手との関係を整理する前に、規約のどこに何が書かれているかを一度読み返しておくと、運営会社に相談する際にも話が進めやすくなります。
中の荷物を勝手に処分・売却してはいけない理由
自分が契約している場所に置かれていても、相手が買った物や持ち込んだ物の持ち主は相手です。持ち主の了承なく捨てたり売ったりすると、次のような責任を問われるおそれがあります。
- 相手の財産を失わせたとして、不法行為に基づく損害賠償を求められる可能性があります(民法709条)。
- 捨てたり使えない状態にしたりした場合、器物損壊罪(刑法261条)にあたる可能性があります。
- 売却して代金を受け取った場合、横領罪(刑法252条)にあたる可能性があります。
法律には、他人の物でも長期間占有を続ければ所有権を取得できる「取得時効」という制度もありますが、相手の物と分かっている場合は20年の経過が必要とされ(民法162条1項)、現実的な解決策とはいえません。
また、相手が「もういらないから捨てて」と口頭で言っていた場合でも、後になって「そんなことは言っていない」と争いになることがあります。処分してよいという意思は、メッセージや書面など、後から確認できる形で受け取っておくことが大切です。
鍵を替える・暗証番号を変えることはできるか
契約者として、運営会社に鍵の交換や暗証番号の変更を申し出ることは、規約上認められている場合が多いと考えられます。自宅の敷地にある物置であれば、所有者として鍵を替えること自体も可能です。相手に勝手に出入りされる状態が続くことへの不安は、もっともなものです。
ただし、相手の荷物が中に残ったまま鍵を替えると、相手は自分の物を取り出せなくなります。この状態が長引くと、「荷物を返してもらえない」と相手から責められたり、話し合いがこじれたりするきっかけになりかねません。鍵を替える場合は、相手に引取りの日時を示し、立会いのうえで出し入れできるようにしておくなど、荷物を返す段取りとセットで考えることをおすすめします。合鍵そのものの扱いについては、【男女トラブル】別れた相手が合鍵を持っている|返してもらう交渉と、鍵を替える判断もあわせてご覧ください。
荷物を引き取ってもらうまでの進め方
一般的には、次のような順序で進めると、後から争いになりにくくなります。
- 中の荷物を確認できる範囲で写真に撮り、おおまかな一覧を作っておきます。
- 相手に、使わせる関係を終えたいことと、引取りの期限・方法を、メッセージや書面で伝えます。
- 期限までに引取りの日時を決め、立会いのうえで搬出してもらうか、相手の了承を得て着払いで送ります。
- 引取りが終わったら、鍵の返却を受け、残った物の扱いについても書面やメッセージで確認しておきます。
- 期限を過ぎても応じてもらえない場合は、改めて書面で通知し、弁護士を通じた交渉や法的手続を検討します。
相手に伝える内容の例
- 物置・トランクルームを使ってもらう関係を終えたいという意思。
- 引取りの期限(準備に必要な期間を見込んだ日付)。
- 引取りの方法(立会いでの搬出、着払いでの発送など)。
- 鍵や暗証番号の返却・変更の予定。
- 期限までに引取りがなかった場合の扱いについての相談。
注意したいのは、「期限までに引き取らなければ処分します」と一方的に伝えただけでは、処分の同意を得たことにはならない点です。相手から「処分してよい」「所有権を放棄する」という返答を得られれば、その内容を書面に残しておくことで、後の争いを防ぎやすくなります。口頭で決めた条件を後から書面にする方法は、【男女トラブル】口約束で別れの条件を決めてしまった|後から書面にする方法で解説しています。
連絡が取れない・応じてもらえない場合
相手が連絡に応じない場合は、内容証明郵便で引取りを求め、通知した事実を記録に残す方法があります。相手の現住所が分からないときは、弁護士に依頼することで、一定の要件のもとで住所を調べられる場合があります。
それでも引取りに応じてもらえない場合は、裁判所の手続で、荷物の引取りと場所の明渡しを求めることも考えられます。費用や時間がかかるため、荷物の量や価値、毎月の利用料の負担とのバランスを見ながら判断することになります。連絡が取れないまま清算を進める考え方については、【男女トラブル】相手が話し合いに応じない|連絡が取れないまま清算する方法もご参照ください。
連絡の回数や方法にも気を配る
荷物の引取りという正当な用件であっても、別れた相手に繰り返し連絡したり、自宅や勤務先を訪ねたりすると、受け取り方によってはトラブルが広がることがあります。連絡は要点をまとめて回数を抑え、記録に残る方法を選ぶとよいでしょう。この点は、【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で詳しく取り上げています。
解約や利用料の支払いはどう考えるか
相手の荷物が入ったままトランクルームを解約すると、運営会社の規約に基づいて、残った荷物が契約者の残置物として扱われ、撤去や処分の費用を請求されることがあります。運営会社が荷物を処分した場合に、相手から「勝手に処分させた」と責められるおそれもあります。解約日を決める前に、引取りの見通しを立てておくことが現実的です。
交際中の利用料については、相手に負担してもらう約束をしていたのであれば、その分を求めることが考えられます。一方、こちらの好意で無償にしていた場合は、さかのぼって請求することは難しいことが多いでしょう。ただし、使わせる関係を終えると伝えた後も相手が荷物を置き続けた期間については、その間の利用料相当額を損害として求める余地があります。
反対に、相手が管理する場所に自分の荷物が残っている場合
相手名義のトランクルームや、相手の実家の物置に自分の荷物を置いたまま別れたという逆の場面もあります。この場合、荷物は自分の物ですが、相手が管理する場所に無断で立ち入ったり、鍵を壊して取り出したりすることは避けるべきです。相手に引渡しを求め、立会いの日時を決めて取りに行くか、送ってもらう方法を話し合うことになります。
家に残った荷物の扱いについては、【男女トラブル】相手の荷物が家に残っている・自分の荷物を取りに行きたい|勝手に処分してよいかもあわせてご覧ください。
弁護士に相談することでできること
荷物の引取りは、金額としては大きくない問題に見えるかもしれません。しかし、別れた相手と直接やり取りを重ねることに負担を感じる方は多く、話し合いが感情的になって別の問題に広がることもあります。
- 弁護士が窓口となり、相手と直接やり取りをせずに引取りの期限や方法を伝えられます。
- 引取りの経緯や、処分・所有権放棄の合意を書面に残し、後の争いを防ぎやすくなります。
- 相手が応じない場合に、法的手続を含めた次の手段を見通しを持って検討できます。
よくあるご質問
相手が「いらないから捨てていい」と言った場合は、処分してよいですか
相手がはっきり処分を了承しているのであれば、処分すること自体は考えられます。ただし、口頭のやり取りだけでは後から争いになることがあるため、メッセージや書面など、内容を確認できる形で了承を得てから処分するほうが安全です。対象となる物の範囲も、できるだけ具体的に確認しておきましょう。
相手の荷物が傷んだりなくなったりしたら、責任を負いますか
場所を貸していただけで荷物を預かったわけではない場合、時間の経過による通常の劣化まで責任を負うとは考えにくいところです。ただし、荷物を自宅に移すなど、こちらで管理を始めた場合は、扱い方によって責任を問われるおそれがあります。移動させる前に、相手に了承を得ておくことをおすすめします。
交際中に払った利用料を、相手に請求できますか
相手が負担すると約束していた分であれば、求めることが考えられます。約束がなく好意で払っていた分は、さかのぼっての請求は難しいことが多いでしょう。使わせる関係を終えると伝えた後の期間については、事情によって請求の余地があります。
まとめ
別れた恋人に貸していた物置やトランクルームは、使わせる関係を終わらせることはできても、中の荷物は原則として相手の物です。契約者・荷物の持ち主・鍵の状況を確かめたうえで、期限と方法を示して引き取ってもらい、そのやり取りを記録に残していくことが、後のトラブルを防ぐ近道になります。相手と直接話すことが難しい場合や、引取りに応じてもらえない場合は、早めに専門家へ相談することも選択肢の一つです。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


