【解決事例】メンズエステの交際関係を理由とした300万円の要求に、1円も支払わず対応した事例
交際していた相手と別れた後、相手の代理人を名乗る弁護士から「受任通知」が届くことがあります。書面には「今後のご連絡は当職宛てにお願いします」「ご本人への直接のご連絡はお控えください」といった文言が並び、突然のことに戸惑う方は少なくありません。書かれている内容に納得がいかない、事情を説明したい、預けたままの荷物を返してほしい。そうした思いから、元恋人に直接連絡したくなる場面もあるでしょう。
この記事では、元恋人の弁護士から受任通知が届いたときに、自分から本人へ連絡してよいのか、伝えたい用件があるときはどうすればよいのかを、通知を受け取った側の立場から整理します。
本記事は2026年10月時点の法令をもとにしています。ストーカー規制法は近年改正が続いているため、具体的な事情については最新の運用を確認したうえでご判断ください。
結論|本人への連絡は控え、用件は代理人弁護士に伝える
受任通知が届いた後は、元恋人本人への連絡は控え、伝えたいことがあれば代理人の弁護士に伝えるのが基本です。
受任通知そのものに、裁判所の命令のような強制力があるわけではありません。それでも、相手が弁護士を通じて「直接の連絡は控えてほしい」と明確に伝えてきた後に連絡を重ねると、その連絡は「拒まれているのに続けた連絡」として受け止められやすくなります。内容によってはストーカー規制法などの問題に発展するおそれがあり、話し合いの場面でもこちらに不利な事情として扱われることがあります。
一方で、受任通知が届いたからといって、こちらの言い分を伝える機会がなくなるわけではありません。「連絡の窓口が本人から弁護士に変わった」と受け止めるのが、実態に近い理解です。
受任通知とは何か
受任通知は、弁護士がある人の代理人として事件を引き受けたことを、相手方に知らせる書面です。男女間のトラブルでは、交際の解消を伝えるとともに、今後の連絡窓口を弁護士に一本化することを目的として送られることが多くみられます。
受任通知に書かれていることが多い内容
- 弁護士が依頼者の代理人に就いたことの通知。
- 今後の連絡を弁護士宛てにしてほしいという求め。
- 依頼者本人や家族、勤務先への直接の連絡・訪問を控えてほしいという求め。
- 交際の解消や、預け物・金銭の清算についての依頼者の意向。
- 慰謝料や返金などの請求と、回答の期限。
すべての受任通知に請求が書かれているわけではなく、連絡窓口の変更と接触を控える求めだけが記載されていることもあります。請求が含まれているときは、「連絡をどうするか」と「請求にどう応じるか」を分けて考えると整理しやすくなります。
受任通知に法律上の強制力はあるのか
借金の整理(債務整理)の場面では、貸金業法により、受任通知を受け取った貸金業者が本人に直接取立てをすることが禁じられています。これに対し、個人どうしの男女トラブルで送られる受任通知には、本人への連絡を法的に禁じる直接の効力はありません。
また、弁護士には、相手方に弁護士がついているときに、その弁護士の承諾なく相手方本人と直接交渉してはならないというルールがあります(弁護士職務基本規程52条)。ただ、これは弁護士に向けた規律で、受任通知を受け取った一般の方を縛るものではありません。
とはいえ、「強制力がないのだから連絡しても問題ない」と考えるのは早計です。次に述べるような事情から、直接の連絡には慎重になる必要があります。
本人に直接連絡すると何が起きうるか
ストーカー規制法の「つきまとい等」にあたるおそれ
ストーカー規制法は、恋愛感情や、それが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で、特定の人に対して行う一定の行為を「つきまとい等」として規制しています。拒まれているにもかかわらず、電話やメール、SNSのメッセージを続けて送ることも、その一つに挙げられています。
受任通知は、相手が直接の連絡を望んでいないことをはっきり示す書面です。その後に復縁を求める内容や、相手を責める内容のメッセージを繰り返し送れば、つきまとい等にあたると判断されるおそれが高まります。相手が警察に相談すれば、警察からの警告や公安委員会の禁止命令といった手続に進むこともあります。
家族や共通の友人を通じた連絡にも注意が必要
本人に直接ではなく、相手の家族や共通の友人に伝言を頼む方法にも注意が必要です。ストーカー規制法は、本人だけでなく、その家族など社会生活のうえで密接な関係にある人に対する行為も対象にしています。勤務先に連絡したり、自宅を訪ねたりすることも、相手の不安を大きくし、問題をこじらせる原因になりがちです。
話し合いの場面で不利に扱われるおそれ
受任通知の後に直接の連絡を続けたことは、相手方の弁護士によって記録され、その後の交渉で「通知後も接触をやめなかった」という事情として持ち出されることがあります。慰謝料の請求や、裁判所に接近禁止を求める手続の中で、こちらに不利な事情として扱われる可能性もあります。
| 連絡の方法 | 起こりうること |
|---|---|
| 本人へのLINE・電話・SNSのメッセージ | 拒まれた後の連絡として、つきまとい等にあたるおそれがある |
| 家族・共通の友人を通じた伝言 | 本人以外を巻き込んだ接触として、相手の不安を強めるおそれがある |
| 自宅・勤務先への訪問や連絡 | 警察への相談や、接近禁止を求める手続に進むきっかけになりやすい |
| 代理人弁護士への連絡 | 通知で示された連絡方法であり、通常の連絡として受け止められる |
伝えたい用件があるときは代理人弁護士に連絡する
受任通知に記載された弁護士は、元恋人の代理人です。弁護士宛てであれば、電話や書面、メールで連絡することに問題はありません。
荷物やお金の清算など、事務的な用件
相手の部屋に置いたままの荷物を返してほしい、貸したお金を返してほしい、預かっている合鍵を返したい。こうした用件は正当なものですが、受任通知が届いた後は、本人に直接伝えるのではなく、弁護士を通じてやり取りするのが安全です。正当な用件のつもりでも本人に直接連絡した結果、ストーカーと受け止められてしまう場面については、【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で解説しています。
受任通知が届いても、こちらが持っている請求の権利がなくなるわけではありません。貸したお金の返還などを求めたいときは、その旨を弁護士に伝えれば、依頼者である元恋人に取り次がれます。
謝りたい・気持ちを伝えたいとき
「一言謝りたい」「最後に気持ちを伝えたい」と考える方もいます。その気持ちは自然なものですが、相手が連絡を控えるよう求めている以上、謝罪の連絡であっても、相手には負担や不安として受け止められることがあります。謝罪の意向があるときも、まず代理人弁護士に伝え、相手に受け取る意思があるかどうかを確かめてもらう順序をとるのが穏当です。
代理人弁護士と話すときの心構え
相手方の弁護士は、あくまで元恋人の利益のために動く立場です。こちらの相談に乗ったり、こちらに有利な助言をしたりする立場ではありません。電話で話した内容が記録され、後のやり取りで使われることもあります。
感情的なやり取りは避け、伝えたい用件を絞って、できれば書面やメールで伝えると、言った・言わないの行き違いを防ぎやすくなります。請求や事実関係について、その場で認めるかどうかを答えにくいときは、「確認のうえ回答します」と伝えて時間をとることもできます。
届いた書面が本物かを確かめる
受任通知は弁護士の事務所から郵便で届くのが一般的ですが、元恋人本人からLINEなどでPDFや画像が送られてくることもあります。弁護士ドットコムにも、元交際相手から受任通知のデータだけが送られてきて、その後しばらく書面が郵送されてこないという相談が寄せられています。
書面の真偽が気になるときは、日本弁護士連合会のウェブサイトにある弁護士検索で、記載された弁護士が実在し、登録された事務所と一致しているかを確認できます。事務所への問い合わせには、書面に書かれた番号ではなく、自分で調べた番号を使うとより確実です。
ただし、真偽を確かめる目的であっても、元恋人本人に問い合わせるのは避けたほうがよいでしょう。確認は弁護士の側に対して行うのが基本です。
元恋人のほうから連絡が来たら
受任通知の後に、元恋人本人から連絡が来ることもあります。返信すること自体がただちに違法になるわけではありませんが、やり取りを重ねるうちに話がこじれたり、後になって「通知後も連絡してきた」と言われたりするおそれがあります。
返信する場合は、「弁護士の先生を通してお話しします」といった短い内容にとどめ、届いたメッセージは消さずに保存しておきましょう。自分も弁護士に依頼している場合は、届いた連絡をそのまま自分の弁護士に共有し、対応を任せるのが安全です。すでに警察から警告を受けているときの考え方は、【ストーカートラブル】相手から先に連絡が来た|返信したら違反になるのかで取り上げています。
受任通知が届いた直後にしておきたいこと
- 書面と封筒の保管、届いた日付の記録。
- 請求の有無・回答期限・連絡先となる弁護士の確認。
- 元恋人本人や家族、共通の友人、勤務先への連絡の見合わせ。
- 交際中のメッセージや金銭のやり取りの記録の保存。
- 用件がある場合の、代理人弁護士への連絡とその記録。
- 請求や事実関係に争いがある場合の、早めの弁護士への相談。
受任通知に回答期限が書かれていても、その期限自体に法的な拘束力があるわけではありません。ただ、何の反応もしないまま放置すると、相手方が訴訟などの手続を検討するきっかけになることがあります。期限内の回答が難しいときは、「現在検討しており、いつ頃までに回答する」と弁護士に伝えておくとよいでしょう。通知を放置した場合の見通しは、相手方の弁護士から通知書が届いた|無視のリスクと対応で詳しく解説しています。
自分も弁護士に依頼するという選択
相手が弁護士を立てた場合、こちらも弁護士に依頼すれば、弁護士どうしでやり取りを進めることができます。直接連絡したくなる気持ちを抑えながら一人で対応する負担が軽くなるほか、請求の内容が妥当か、接触を控える約束をどこまで受け入れるか、預け物やお金の清算をどう進めるかといった点を、法的な見通しを踏まえて判断できます。
特に、慰謝料や返金の請求を受けている場合、すでに警察から連絡や警告を受けている場合、こちらにも返してほしいお金や物がある場合は、早めに相談しておくと対応の幅を保ちやすくなります。依頼するかどうかの判断の目安は、相手に弁護士がついた|自分も弁護士を立てるべきかの判断もあわせてご覧ください。
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- 【刑事事件】弁護士から警告の書面が届いた|ストーカーと名指しされたときの返し方
- 【ストーカートラブル】謝りたい|謝罪の連絡そのものが問題になる理由
- SNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れ
- 【男女トラブル】相手の荷物が家に残っている・自分の荷物を取りに行きたい|勝手に処分してよいか
元恋人の弁護士から受任通知が届くと、本人と直接話せば分かってもらえるのではないかと考えてしまいがちです。しかし、通知が届いた後の直接の連絡は、こちらの意図とは違う受け止め方をされるおそれがあります。伝えたいことは弁護士を通じて伝えるという形に切り替えることが、結果として自分の言い分をきちんと届けることにつながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


