【不貞慰謝料・請求された側】自宅に書面が届く場合の対処と、送付先の変更

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

慰謝料の話が書面という形で現れるとき、その最初の場面はたいていご自宅です。郵便受けに見慣れない差出人の封筒が入っていた、留守にしている間に家族が書留を受け取っていた、というご相談は少なくありません。このとき気にかかるのは、書面の中身と同じくらい、「この先も同じ場所に届き続けるのか」「送り先を変えられないのか」という点ではないかと思います。この記事では、自宅に書面が届く場面をどう受け止めればよいのか、送付先について何ができて何ができないのかを整理します。

この記事で扱うこと・扱わないこと


  • 自宅に届く書面を、送り主が誰かによって分けて考える方法。
  • 受け取ったのが本人か家族かで、扱いがどう変わるか。
  • 送付先を変えたいときに、誰に何を頼むことになるか。
  • 郵便の仕組みでできること・できないこと。


 一方で、届いた書面の種類ごとの見分け方や応答の期限、請求された金額が妥当かどうか、相手方の証拠にどう反論するかといった論点は、それぞれ別の記事で扱っています。ここでは「届き方」と「届き先」に絞ってご説明します。

「自宅に届く」場面は、送り主によって意味が変わる

 封筒だけを見ていると、どれも同じ「自宅に届いた郵便」に見えます。しかし、送っているのが相手方なのか裁判所なのかで、受け取ったことが持つ意味も、送付先を変えられる範囲も違ってきます。

送り主届く書面の例受け取ったことが持つ意味
相手方本人手紙、メッセージ請求が伝えられたという事実が残る
相手方の代理人弁護士通知書、内容証明郵便請求の意思表示が到達したものとして扱われる
裁判所訴状と呼出状、支払督促、調停の呼出状法律の定める「送達」がされたことになり、応答の期限が動き出す


 この違いを先に押さえておくと、後で出てくる「送付先を変えられるか」という問いにも、場面ごとに違う答えが出てくる理由が分かりやすくなります。

相手方や代理人から届く場合


受け取っても、支払う義務が生じるわけではない

 通知書や内容証明郵便は、相手方が「こういう請求をします」という意思を伝えるための書面です。受け取ったこと自体によって支払義務が確定するわけではありませんし、書面に書かれた期限も、差出人が希望として設定した日にすぎません。この点は請求された金額の考え方とあわせて、別の記事で詳しくご説明しています。

受け取らなくても「届いた」と扱われることがある

 意思表示は、相手方に到達した時点から効力を生じます(民法97条1項)。ここでいう到達とは、書面の中身を実際に読んだことまでは求められず、内容を知ることができる状態に置かれたことで足りると考えられています。
 さらに、相手方が正当な理由なく到達を妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます(同条2項)。受け取りを拒む、不在票を放置して保管期間を経過させる、といった対応が、常にこの規定に当たるとまでは言えませんが、事情によっては「届かなかったことにはならない」と扱われるおそれがあります。受け取らないという選択が、そのまま時間を止めることにはつながりにくいということです。

家族が代わりに受け取った場合

 内容証明郵便は一般書留として差し出されるため、配達員が手渡しで交付します。もっとも、名あて人ご本人でなければ受け取れないという仕組みではなく、同居のご家族などが受け取ることもできます。差出人が本人限定受取という取扱いを選んでいれば別ですが、これは差出人の側で選ぶオプションであり、受け取る側から指定できるものではありません。
 ご家族が受け取り、その場で開封したり、ご本人に渡さないまま置いていたりした場合でも、書面の内容を知ることができる状態には置かれていたと評価される余地があります。「自分は見ていない」という説明が、そのまま到達を否定する材料になるとは限りません。

裁判所から届く場合は、受け取った人が誰かで結論が変わらない

 訴状や呼出状などの重要な書類は、法律の定める方式に従って届けられます。これを送達といいます。ここから先は、郵便の話ではなく手続のルールの話になります。

同居しているご家族が受け取ると、本人に送達されたことになる

 送達をすべき場所でご本人に出会わないときは、同居者などであって書類の受領について相当のわきまえのある人に書類を交付することができ、それによって送達の効力が生じます(民事訴訟法106条1項)。これを補充送達といいます。
 最高裁も、同居者などに交付された後、その書類が実際にご本人へ渡されたかどうか、渡した事実が告げられたかどうかは、送達の効力に影響しないとしています(最高裁昭和45年5月22日判決)。つまり、ご家族が受け取って引き出しにしまったままであっても、手続の上では「本人に届いた」ことを前提に日程が進んでいきます。

郵便局の窓口で受け取る場合も同じ扱いになる

 106条1項は、郵便の業務に従事する者が郵便局の営業所で書類を交付すべきときも同様である、と定めています。不在票を持ってご家族が郵便局に取りに行った場合も、補充送達として扱われることになります。窓口で受け取ったから自宅で受け取ったのとは違う、ということにはなりません。

渡されないまま手続が進んでしまった場合

 問題になりやすいのは、書類を受け取ったご家族とご本人との間に、その件について立場の対立がある場合です。慰謝料の場面では、配偶者が受け取ったというケースがこれに当たりえます。
 この点について最高裁は、同居者などとご本人との間にその訴訟に関して事実上の利害関係の対立があるにすぎない場合には、交付によって補充送達の効力は生じるとしたうえで、対立があるために速やかに渡されることが期待できず、実際に渡されず、そのためご本人が訴訟の提起を知らないまま判決がされたときには、再審の事由があるとしました(最高裁平成19年3月20日決定)。
 整理すると、送達そのものは有効に成立し、期日は進み、判決も出ます。そのうえで、後から手続をやり直す道が例外的に開かれている、という構造です。当然に救済されるわけではなく、渡されなかったこと、そのために知らなかったことを説明できる材料が必要になります。心当たりがある場合には、判決や決定の内容を確認したうえで、早めにご相談いただくことをおすすめします。

勤務先で受け取られた場合には通知があるが、自宅の場合には定めがない

 あまり知られていない点ですが、送達の場所が勤務先で、そこにいた人が書類を受け取った場合には、裁判所書記官がその旨をご本人に通知しなければならないとされています(民事訴訟規則43条)。これは106条2項、つまり就業場所での補充送達についての定めです。
 一方で、ご自宅で同居者が受け取った場合(106条1項)については、同じような通知の定めが置かれていません。ご自宅は本来ご本人に最も近い場所として想定されているためと考えられますが、結果として、ご家族が受け取って渡さなかった場合には、ご本人が気づく手がかりが制度上は用意されていないことになります。自宅に届くという場面の難しさは、この非対称に表れています。

送付先を変えたいときは、頼む相手が場面ごとに違う

 「自宅に送らないでほしい」という希望は自然なものですが、その希望を伝える先は一つではありません。誰に頼むかによって、変えられる範囲も、いつから変わるのかも異なります。

頼む相手できること限界
相手方または相手方の代理人以後の書面を別の宛先に送るよう求める応じる義務はなく、断られることがある
裁判所書類の送達を受ける場所を届け出る、届け出た場所を変更する最初の書類は住所あてに送られる
郵便局転居届を出して転送を受ける転居の事実が前提で、期間や対象に制限がある


 この表からも分かるとおり、交渉の段階では相手方の同意が要り、手続の段階では裁判所への届出が要り、郵便の段階では生活の実態が要ります。どれか一つを整えれば全部の書面が別の場所に届くようになる、という仕組みにはなっていません。

相手方に送付先の変更を求める場合


応じる義務はない

 相手方には、こちらの指定した宛先に送らなければならない義務はありません。もっとも、実際には、連絡が取れる窓口がはっきりしたほうが交渉は進めやすくなるため、宛先を示せば受け入れられることも珍しくありません。伝えるときは、連絡を避けたいという趣旨ではなく、この宛先であれば確実に受け取れるという趣旨で書いておくほうが、話が通りやすくなります。

代理人を立てると、以後の書面は事務所あてになる

 弁護士に依頼して受任の通知を出すと、以後のやり取りは代理人の事務所を窓口として進むのが通常です。書面の宛先も事務所になりますので、送付先を変える方法としては最も安定した形になります。
 ただし、これは相手方が弁護士に依頼している場合に弁護士どうしのやり取りとして機能するもので、相手方ご本人からの直接の連絡までを止める仕組みではありません。この点は、通知書を出す側の名義の選び方とあわせて別の記事で整理しています。

勤務先を宛先にすることの副作用

 自宅を避けたいという理由から勤務先を宛先として示す方がいますが、勤務先はご自身以外の人が郵便物に触れる場所でもあります。届いた封筒を同僚が扱うことも、部署あてに届くこともあります。自宅で家族に知られる可能性と、職場で第三者に知られる可能性を並べて比べたうえで判断されるほうがよいと思います。勤務先が手続上の宛先になった場合にどうなるかは、別の記事で扱っています。

手続に入った後は、裁判所に届け出る


最初の書類はご自宅あてに送られる

 訴えが起こされると、まず訴状の副本と呼出状が送達されます。送達は、原則としてご本人の住所などにおいて行われます(民事訴訟法103条1項)。この最初の書類は、弁護士に依頼していたかどうかにかかわらず、ご自宅あてに送られるのが通常です。裁判所は、その時点ではご本人の住所しか知らないためです。「弁護士に頼んでおけば裁判所からの書類も全部事務所に届く」という説明を目にすることがありますが、少なくとも最初の一通については当てはまりません。

受け取った後は、送達を受ける場所を届け出られる

 当事者は、送達を受けるべき場所を受訴裁判所に届け出ることとされています(同法104条1項)。この届出をすると、以後の送達はその場所で行われます。届出書には、その場所が就業場所であることなど、届け出る場所との関係を明らかにする事項を書きます(民事訴訟規則41条3項)。実務上は、答弁書に送達場所を記載する形で届け出ることもあります。
 この届出については、家族や職場に知られないための実務という記事で、届出書の選択肢や送達受取人を届け出た場合の副作用まで詳しくご説明していますので、あわせてご覧ください。

一度届け出た場所は、後から変更できる

 届け出た場所が事情に合わなくなることもあります。転居した、代理人を立てた、当初に選んだ宛先で受け取りにくくなった、といった場合です。
 この点について、届け出た場所や送達受取人を変更する届出をすることができると定められています(民事訴訟規則42条1項)。最初の届出のときと同じ方式で、変更の届出をすることになります。最初に選んだ宛先で固定されてしまうわけではありませんので、後から見直すことは可能です。ただし、変更は届け出た後の書類について働くもので、すでに送られた書類の扱いが遡って変わるわけではありません。

郵便の仕組みでできること・できないこと

 郵便のサービスを使って届き先を動かせないか、と考える方もいらっしゃいます。仕組みを正確に知っておくと、期待できることと期待できないことの線が引けます。

転居届は、転居していることが前提

 転居届を出すと、届出日から1年間、旧住所あての郵便物が新住所に転送されます。期間が過ぎた後は差出人に返還されます。提出の際には本人確認が行われ、登録までに数営業日かかります。
 注意したいのは、これが引っ越しに伴うサービスであって、住んでいる場所を変えないまま届き先だけを移すための手続ではないという点です。また、封筒に「転送不要」と表示されているものは転送されません。裁判所からの書類がこの仕組みでどう扱われるかについては、公表されている情報が一致していないため、ここでは断定を避けます。少なくとも、転居届は裁判所からの書類を確実に受け取るための手段ではない、という前提で考えておくほうが安全です。

郵便局留めは、差出人が決めるもの

 郵便局留めは、自宅に配達せず郵便局に留め置いてもらい、窓口で受け取る仕組みです。特別な手続や手数料は不要で、受け取るときに本人確認書類が必要になります。保管期間は郵便局に到着した日の翌日から起算して10日間で、経過すると差出人に返送されます。到着の連絡は郵便局からは来ません。
 ここで押さえておきたいのは、局留めは差出人があて名欄に郵便局名を書くことで成立する仕組みであって、受け取る側から「自分あての郵便を局留めにしてほしい」と申し出て設定できるものではないということです。すでに局留めで届いている郵便物の転送先や配達先を変えたい場合でも、あて先に記載がなければ差出人による手続が必要になります。自宅を経由させない方法として局留めを思い浮かべる方は多いのですが、こちらの一存で選べる仕組みではありません。

本人限定受取も、差出人が選ぶもの

 本人限定受取は、郵便物に記載された名あて人か、差出人が指定した代人だけが受け取れる取扱いです。ご家族に開封される可能性を下げる方法として意味はありますが、これも差出人が選ぶオプションです。到着の通知が届いてから受取人の側で指定することはできません。詳しくは前述の別記事でご説明しています。

「届かないようにすること」と「期限を守ること」は両立しにくい

 ここまでの整理から見えてくるのは、届き先を動かそうとする工夫の多くが、受け取りにくくする方向にも働くという点です。

  • 受け取らずに保管期間を経過させると、到達したものとみなされる場面がある。
  • 局留めを使うと、自分から取りに行かない限り書面を目にする機会がない。
  • 転送は反映までに日数がかかり、その間の郵便物が旧住所に届く。
  • 裁判所からの書類は、受け取った人が誰であっても手続が進む。


 実務の場面で最も避けたいのは、届き先を整えることに時間を使っている間に、応答の期限を落としてしまうことです。応答の期限は、こちらの都合とは無関係に進みます。優先順位としては、まず届いている書面の期限を確定させ、そのうえで届き先の設計を考える、という順番のほうが結果的に安全です。

すでにご家族が受け取ってしまった場合

 封筒の状態や受け取った日付は、後になって意味を持つことがあります。受け取った日をいつと見るかで期限の起算が変わりますし、封筒に残る表示から、どの手続の書類なのかを読み取れることもあります。封筒は捨てずに、書面と一緒に保管しておいてください。
 ご家族に事情を説明するかどうかは、それぞれのご事情によります。ただ、書面が届き続ける状況では、伏せたままにしておくことが難しくなっていく場面もあります。何をどこまで伝えるかを含めて、方針を決めてから動かれるほうが、行き当たりばったりの説明を重ねるよりも負担が小さくなることが多いように思います。
 なお、宛名の方がその住所に住んでいないのに受け取ってしまった、というときは、事情を書いた書面を裁判所に出して説明する方法があります。この場合は、受け取った書類の扱いも含めて、早めに確認されることをおすすめします。

請求する側から見た「自宅に送る」ということ

 請求する側の立場でも、この構造は知っておく意味があります。自宅あてに送れば、ご本人以外の方の目に触れる可能性があります。相手方に配偶者や同居のご家族がいる場合、その方が封筒を開けることもありえます。
 そこから、想定していなかった展開になることがあります。相手方が話し合いに応じにくくなる、事実関係を確かめる前に周囲に広がる、こちらの氏名や住所が相手方の家族に伝わる、といった形です。自宅以外に送ることのリスクは各所で語られていますが、自宅に送ることにも、届いた後に誰が読むかという不確定な要素があるという点は、あわせて考えておかれるとよいと思います。
 もっとも、送り先を選ぶ余地が乏しい場面もあります。手続に入れば、送達の場所は法律のルールに従って決まっていきます。この点は、相手方が受け取らない場合の対応を扱った記事で別に整理しています。

よくあるご質問


Q. 受け取りを拒否すれば、なかったことになりますか

 なりません。交渉の段階では、正当な理由なく到達を妨げたと評価される場合に、通常届くはずだった時に届いたものとみなされることがあります(民法97条2項)。手続に入った後は、受け取らなかった場合に備えた仕組みが法律に用意されており、結果として手続は進みます。拒否は、時間を止める方法にはなりにくいとお考えください。

Q. 引っ越せば、書面は届かなくなりますか

 届き先が変わるだけで、請求そのものが消えるわけではありません。転居届による転送には期間の制限があり、対象外の郵便物もあります。また、住所を移せば、相手方がその住所を調べる手段を用いることも考えられます。引っ越しを届き先の対策として位置づけるのは、あまり現実的ではないと思います。

Q. 家族が開封してしまいました。何か問題になりますか

 ご本人あての書面をご家族が開封したこと自体が、慰謝料の話の中で直ちに不利に働くことは通常ありません。実務上気にしていただきたいのは、開封した日と受け取った日が分からなくなることのほうです。封筒と中身をそろえて保管し、いつ届いたかを確認できるようにしておいてください。

まとめ


  1. 自宅に届く書面は、送り主が相手方か裁判所かで、受け取ったことの意味が変わる。
  2. 交渉の段階では、受け取らなくても到達したものとみなされる場面がある(民法97条1項2項)。
  3. 裁判所からの書類は、同居のご家族が受け取っても本人への送達として扱われる(民事訴訟法106条1項)。
  4. 渡されないまま判決に至った場合、例外的に手続をやり直す道が開かれることがある。
  5. 勤務先での補充送達には本人への通知の定めがあるが、自宅の同居者の場合には置かれていない。
  6. 送付先を変えるには、相手方への依頼、裁判所への届出、郵便の手続という別々の入口がある。
  7. 一度届け出た送達場所は、変更の届出によって後から見直せる(民事訴訟規則42条1項)。
  8. 郵便局留めや本人限定受取は差出人が選ぶ仕組みで、受け取る側からは設定できない。
  9. 届き先を整えることよりも、応答の期限を落とさないことを先に置く。


ご相談をお考えの方へ

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、慰謝料の請求を受けた方からのご相談を数多くお受けしています。届いた書面の性質の見分け、応答の期限の確認、送付先を含めた今後のやり取りの設計まで、状況に応じてご一緒に考えます。池袋と新橋に事務所があり、ご来所のほか、オンラインや電話でのご相談にも対応しています。
 書面が届いてから動ける時間は限られていることが少なくありません。中身に納得できないまま抱え込む前に、一度ご事情をお聞かせいただければと思います。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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