【男女トラブル】元恋人が自分の両親に請求の手紙を送ってきたら?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

本記事は、2026年10月時点の法令に基づいて解説しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。


別れた元恋人から、ある日突然、自分ではなく実家の両親あてに「お金を返してほしい」「誠意ある対応を求める」といった手紙が届くことがあります。両親から連絡を受けて初めて知り、どう説明すればよいのか、両親が払わなければならないのかと戸惑う方は少なくありません。
 この記事では、元恋人が両親に請求の手紙を送ってきた場面について、両親に支払う義務があるのか、手紙の書き方によってどのような問題が生じ得るのか、届いた後に本人と両親がそれぞれ何をしておくとよいのかを順に整理します。

両親あての手紙でよくあるご相談


  • 元恋人から、交際中に貸したお金を返せという手紙が実家に届いた。
  • 親あてに「お宅の娘(息子)にされたことへの償いを」と書かれた手紙が来た。
  • 交際中の私生活のことまで細かく書かれていて、親に読まれてしまった。
  • 親が心配して、自分で相手に電話しようとしている。
  • 「返事がなければ勤務先にも知らせる」と書いてあった。


 こうした手紙は、本人と連絡が取れない、本人が応じないといった事情から、家族を通じて支払いを促す目的で送られることが多いようです。まずは、両親が請求に応じる立場にあるのかどうかから確認します。

両親に支払う義務はあるのか


成人した子の借金や賠償を親が負うことは原則としてない

 お金を返す義務や損害を賠償する義務は、原則として、お金を借りた本人や行為をした本人が負うものです。成人した子が交際相手との間で負った債務について、親であることだけを理由に支払いを求められることは、通常はありません。
 民法には、責任能力のない未成年者などが他人に損害を与えた場合に親などの監督義務者が責任を負うという規定(民法714条)がありますが、成人した子の交際をめぐるトラブルで、この規定が親に及ぶ場面は想定しにくいといえます。

両親が支払いを求められる可能性がある場面

 ただし、次のような事情がある場合は、両親自身が請求の当事者になっていることがあります。手紙を受け取った時点で、心当たりがないか確かめておくと見通しが立てやすくなります。

事情考え方
両親が保証人・連帯保証人として署名している保証の範囲で両親にも支払いを求められることがある
両親自身が元恋人からお金を借りた・受け取った両親本人の問題として扱われる
両親が「代わりに払う」と約束した約束の内容や経緯によっては、両親の債務として扱われるおそれがある
交際当時、子が未成年で責任能力がなかった監督義務者としての責任が問われる余地がある


 いずれにも当てはまらなければ、両親が手紙の請求に応じる法的な義務は、基本的にはないと考えられます。

両親が返事をすると話が変わることがある

 注意したいのは、両親が手紙に返事をしたり電話をかけたりする中で、「親として責任を取ります」「少しずつでも払います」などと伝えてしまう場面です。言葉の選び方によっては、両親自身が支払いを約束したと受け取られ、本来は負っていなかった義務をめぐって話がこじれるおそれがあります。
 また、両親が一部を支払うと、相手は「家族に連絡すれば払ってもらえる」と考え、連絡が続いたり、金額が上乗せされたりすることもあります。両親が支払うかどうかは、本人と話し合い、請求の中身を確かめてから決めても遅くありません。

請求の中身は本人に対するものとして確かめる

 両親に支払う義務がないとしても、手紙に書かれた請求そのものが本人との関係で正当かどうかは、別に検討する必要があります。交際中にお金を借りていたのであれば、本人には返済の義務が残っていることがあります。
 手紙を読むときは、少なくとも次の点を確かめておくと整理がしやすくなります。

  • 何の名目で請求しているか(貸したお金、立て替えた費用、慰謝料など)。
  • 金額の根拠が示されているか、交際中のやり取りや振込記録と合っているか。
  • もらったお金なのか、借りたお金なのか、当時の認識に食い違いがないか。
  • 別れる際に、すでに合意や清算をしていないか。
  • 支払期限や、応じなかった場合の対応がどう書かれているか。


 すでに別れ話の際に合意して清算が済んでいる場合や、贈与として受け取ったお金である場合には、請求に応じる必要がないこともあります。前回の合意でどこまで終わっているかについては、【男女トラブル】一度は合意したのに相手が追加の要求をしてきた|前回の合意で終わっている範囲の見分け方でも解説しています。

手紙を送ること自体はどう評価されるか


請求するだけなら直ちに違法とはいえない

 お金を返してほしいと求めること自体は、正当な権利の行使であることもあります。本人の連絡先が分からず、やむを得ず実家に手紙を送ったという事情であれば、それだけで違法と評価されるとは限りません。

脅迫や恐喝が問題になる書き方

 一方で、「払わなければ勤務先や近所に知らせる」「親戚中に話す」など、支払わない場合の不利益を示して支払いを迫る書き方になっている場合は、脅迫罪(刑法222条)や恐喝罪(刑法249条)が問題になる可能性があります。請求の内容に根拠があっても、求め方が社会的に許される範囲を超えると、こうした罪にあたり得るとされています。請求と取り立ての線引きについては、恐喝と借金の取り立ての境界|個人間の債権回収がアウトになる線も参考になります。

交際中の私的な事情が書かれている場合

 手紙に交際中の性的な事柄や妊娠・中絶、病歴など、他人に知られたくない事情が書かれていることもあります。名誉毀損罪は「公然と」事実を示した場合に成立するため、両親だけにあてた手紙では成立しにくいと考えられていますが、複数の親族や勤務先などにも送られ、広く伝わる可能性がある場合には、別の評価になることがあります。
 また、刑事上の罪にあたらない場合でも、私生活の事情をみだりに第三者へ知らせる行為は、プライバシーの侵害として民事上の損害賠償の対象になる余地があります。周囲への情報の広め方が問題になる場面は、【男女トラブル】別れた相手が共通の友人に悪口を広めている|名誉毀損になる線でも取り上げています。

手紙が繰り返し届く場合

 やめてほしいと伝えた後も手紙が続く場合、送り主の目的によってはストーカー規制法の「つきまとい等」にあたることがあります。同法は、本人だけでなく、その親族など密接な関係にある人に対する行為も対象としており、拒まれたにもかかわらず連続して文書を送ることも行為類型の一つに挙げています。もっとも、同法の対象となるのは恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的がある場合に限られるため、金銭の回収だけが目的と見られる場合には、別の手段を検討することになります。

手紙が届いたら早めに整えておくこと


  1. 手紙は捨てずに、封筒(消印・差出人の記載)とともにそのまま保管する。
  2. 両親から届いた日時や経緯を聞き取り、メモに残しておく。
  3. 両親には、相手に返事や電話をしないようお願いする。
  4. 自分と相手との間のやり取り(LINE、振込記録、借用書など)を集めておく。
  5. 自分から相手に連絡する前に、何をどう伝えるかを決めておく。


 手紙を受け取ったことに腹を立て、すぐに相手へ抗議の連絡をしたくなることもあると思います。しかし、感情的なやり取りになると、売り言葉に買い言葉で相手の要求が強まったり、こちらの発言が後で不利に扱われたりするおそれがあります。返事の内容を決める前に、一度立ち止まって整理しておくことが大切です。

両親の側で気をつけたいこと

 この記事を両親の立場で読まれている方もいらっしゃると思います。子を守りたいという思いから、相手に直接会いに行ったり、言い分を伝える手紙を返したりしたくなるかもしれません。ただ、両親が交渉の場に出ることで、相手が「家族が窓口になった」と受け止め、連絡先が両親に移ってしまうことがあります。
 まずは子と話をして、手紙の中身に心当たりがあるか、どのように対応したいかを確かめることをおすすめします。子が成人している場合、相手との問題を解決する当事者はあくまで子本人です。両親が支援するとしても、お金を立て替えるかどうか、誰が相手とやり取りするかは、子と相談したうえで決めておくと、後の行き違いを防ぎやすくなります。
 反対に、相手の家族が交渉に出てきた場面の考え方は、【男女トラブル】相手の家族が代わりに交渉に出てきた|代理権の有無の確かめ方で解説しています。

弁護士に窓口を代えると何が変わるか

 弁護士にご依頼いただくと、弁護士が本人の代理人として相手に受任通知を送り、以後の連絡は弁護士あてにするよう求めます。あわせて、両親や勤務先など本人以外への連絡を控えるよう伝えることもできます。受任通知に法的な強制力があるわけではありませんが、代理人が入ったことで家族への連絡が止まるケースは少なくありません。受任通知の働きについては、受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかをご覧ください。
 そのうえで、請求の中身に根拠があるかを確かめ、支払う必要があるものとないものを分けて交渉します。支払う場合には、清算条項や本人・家族への接触禁止を盛り込んだ合意書を交わし、同じ請求が繰り返されないよう手当てします。家族に知らせると迫られた事案の解決例として、【解決事例】「家族に知らせる」と迫られ300万円を求められた男性が、通告書の送付で請求が止まり借用書も返ってきた事例もあわせてご覧ください。

よくあるご質問


手紙を無視していても大丈夫ですか

 両親あての手紙について、両親が返事をする義務はありません。ただし、本人に対する請求に根拠がある場合、無視を続けると相手が訴訟などの法的手続をとることもあります。裁判所から書類が届いた場合は放置せず、早めにご相談ください。

両親が立て替えて払えば終わりにできますか

 支払いの際に、これで全て解決したことを確認する書面を交わしていなければ、後から別の名目で請求が続くこともあります。支払うかどうかを決める前に、金額の根拠と、支払った後に何が終わるのかを確かめておくことが大切です。

両親に知られたくない事情があります。相談できますか

 ご相談の内容が、ご本人の同意なく両親やご家族に伝わることはありません。連絡方法や書面の送り先についても、ご事情に合わせて調整します。詳しくは、家族に知られずに解決できるか|連絡方法・書面の送付先の設計で解説しています。

関連する解説記事



 元恋人から両親あてに請求の手紙が届くと、家族を巻き込んでしまったという負い目から、急いで支払って終わらせたいと考える方もいらっしゃいます。しかし、両親に支払う義務があるか、本人への請求に根拠があるか、手紙の書き方に問題がないかは、それぞれ分けて確かめることができます。両親と情報を共有し、相手への返事を急がずに整理するところから始めてみてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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