【男女トラブル】婚姻届への署名を迫られている|勝手に出されないための不受理申出
本記事は、2026年10月時点の民法・刑法・民事訴訟法・弁護士法などに基づいて解説しています。2025年6月施行の改正刑法により懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されており、本文中の法定刑はこれを反映しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は専門家にご相談ください。
「オンラインゲームで3年ほど一緒に遊んできた仲間に頼まれ、生活費などの名目で何度か送金した。返済の話をした途端に連絡が途絶え、分かるのはハンドルネームとLINEのアカウントだけ」。反対に、「ゲームで知り合って交際していた相手と別れたら、これまで渡したお金や課金の代金を返せと言われている」というご相談も寄せられます。ゲームをきっかけにした関係は、会ったことがあるかどうかにかかわらず、男女間の金銭トラブルに発展することが珍しくありません。
「貸したお金は返してもらえる」「ネットで知り合った相手にお金を貸すのは避けるべき」といった一般的な説明は、それ自体は誤りではありません。ただ、ゲームで知り合った相手との場合には、相手の本名や住所が分からない、お金が現金ではなく電子マネーやギフトカード、課金の肩代わりといった形で動いている、ゲーム内のチャット記録が消えてしまうといった、通常の貸し借りでは表に出にくい事情が重なります。
この記事では、オンラインゲームで知り合った相手との金銭トラブルについて、渡したお金の法的な性質の考え方、残しておきたい記録、相手の素性が分からないときの進め方、請求するときの注意点を整理します。最初から金銭をだまし取る目的で近づいてくる、いわゆる国際ロマンス詐欺の被害回復については、別の記事で扱っています。
オンラインゲームで知り合った相手との金銭トラブルの特徴
相手の素性がハンドルネームしか分からない
オンラインゲームでは、何年も毎日のように会話をしていても、相手について知っているのはハンドルネームやゲーム内のID、DiscordやLINEのアカウント程度ということがよくあります。年齢や住んでいる地域、仕事についても、相手の自己申告をそのまま受け止めているにすぎません。
お金を返してもらうための手続は、相手の氏名と住所が分かっていることを前提に組み立てられています。そのため、ゲームで知り合った相手との金銭トラブルでは、「いくら渡したか」と同じくらい「相手が誰か」をどう確かめるかが、解決の見通しを左右することになります。
現金以外の形でお金が動く
ゲームで知り合った相手との間では、銀行振込や送金アプリのほか、ギフトカードのコードを送る、相手のアカウントの課金を代わりに支払う、ゲーム内のアイテムや通貨、アカウントそのものを有償でやり取りするといった形でお金が動くことがあります。
なお、多くのゲーム運営会社は、利用規約でゲーム内の通貨やアイテム、アカウントを現実のお金で取引することを禁止しています。規約に反する取引であった場合、アカウント停止などの措置を受けるおそれがあるほか、交渉の場で相手からその点を持ち出されることもあります。
恋愛感情や仲間意識が判断に影響する
同じチームで長く遊んできた仲間意識や、ゲームを通じて生まれた恋愛感情があると、「財布をなくした」「家賃が払えない」「病院に行くお金がない」といった頼みを断りにくくなります。少額の依頼が繰り返され、気づいたときには合計額が大きくなっていたという経過は、法律相談サイトに寄せられている相談でもよく見られるものです。
お金を渡す前の段階で確認しておきたいことは、【男女トラブル】会ってすぐにお金の相談をされた|貸す前に確認することで解説しています。
渡したお金は「貸した」のか「あげた」のか
貸したお金であれば返還を求められる
返すことを約束して金銭を受け取る契約は、民法上の消費貸借にあたります(民法587条)。借用書がなくても、「来月返す」「給料が入ったら返す」といったメッセージが残っていれば、貸付であったことを示す材料になります。
返済の時期を決めていなかった場合でも、相当の期間を定めて返済を求めれば、その期間が過ぎた時点で返済の義務が生じます(同法591条1項)。借用書がない場合の回収の考え方については、恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?もあわせてご覧ください。
交際や援助の流れで渡したお金は贈与と見られやすい
一方で、交際中のプレゼントや、「応援したい」という気持ちで渡したお金、返済の話が一度も出ていない課金の肩代わりなどは、贈与と評価されやすくなります(同法549条)。書面によらない贈与であっても、すでに渡し終えた部分を後から取り消すことはできません(同法550条)。
返還を求められるかどうかは、渡したときに「返してもらう約束」があったかどうかで大きく分かれます。後から「貸したつもりだった」と主張しても、その時点のやり取りに返済をうかがわせる言葉がなければ、貸付と認められにくいのが実情です。
だまされて渡した場合
存在しない病気や事故を理由にお金を求められたなど、相手の嘘を信じてお金を渡した場合には、詐欺による意思表示として取り消したうえで返還を求める(同法96条1項)、あるいは不法行為として損害賠償を求める(同法709条)という考え方もあります。
また、最初から返すつもりがないのに嘘をついてお金を受け取った場合には、詐欺罪(刑法246条、10年以下の拘禁刑)が問題になり得ます。ただし、返済が滞っているというだけで直ちに犯罪になるわけではありません。嘘の説明を信じてお金を渡していた場合の整理は、【男女トラブル】病気や不幸の話を信じてお金を渡していた|嘘だと分かった後で詳しく扱っています。
まず残しておきたい記録
ゲーム内のチャットは消える前に保存する
ゲーム内のチャットやボイスチャットは、一定期間で消える仕様になっていたり、相手のアカウントが削除されると見られなくなったりすることがあります。お金の依頼や返済の約束が書かれたやり取りは、日時と相手のIDが分かる形でスクリーンショットを撮っておくことが大切です。
DiscordやLINEに移ってからのやり取りも同様です。メッセージは、前後の流れが分かるように一続きで保存しておくと、後で「どういう趣旨で渡したお金か」を説明しやすくなります。記録の残し方の基本は、男女トラブルの証拠の集め方|LINE・録音・写真を法的に有効にするで解説しています。
お金の流れを示す記録
次のような記録は、いつ、いくらを、どのような形で渡したかを示す材料になります。
- 銀行振込の明細や、振込先の口座名義が分かる画面。
- 送金アプリの取引履歴と、相手のアカウント名。
- ギフトカードの購入レシートと、コードを送ったメッセージ。
- 課金を肩代わりした際のクレジットカードの利用明細。
- 相手のプロフィール画面、ゲーム内のID、フレンド登録の記録。
とくに振込先の口座名義や電話番号は、相手の本名や住所をたどる手がかりになることがあります。手元の記録を一覧にして、日付順に整理しておくとよいでしょう。
ブロックや退会の前に確かめること
相手との関係が悪くなると、相手をブロックしたり、ゲーム自体をやめたりしたくなることもあると思います。ただ、ブロックや退会、アプリの削除によって、過去のやり取りが見られなくなる場合があります。気持ちの整理をつける前に、必要な記録がそろっているかを確かめておくことをおすすめします。
相手の本名や住所が分からないときの進め方
手元の情報から相手をたどる
振込をしていれば、振込先の口座名義から相手の氏名が分かることがあります。電話番号やメールアドレス、SNSのアカウント、本人が話していた勤務先や出身地なども、相手を特定する材料になり得ます。
ただし、自分で相手の自宅や勤務先を探し回ったり、共通のゲーム仲間に相手の住所を聞いて回ったりすることは、後述のとおり別のトラブルを招くおそれがあります。
弁護士会照会と裁判手続の中での照会
弁護士は、受任した事件について、所属する弁護士会を通じて企業などに必要な事項の報告を求めることができます(弁護士法23条の2)。携帯電話会社や金融機関に対して、電話番号や口座の契約者の氏名・住所の報告を求めることが検討されますが、照会先が回答に応じるかどうかは個別の判断になります。
訴訟を起こした後であれば、裁判所を通じて調査の嘱託を行う方法もあります(民事訴訟法186条)。なお、ネット上の投稿によって名誉を傷つけられた場合などとは異なり、貸したお金を回収する目的だけで発信者情報開示の手続を使うことは、通常はできません。弁護士会照会の仕組みについては、弁護士会照会とは|風俗トラブルで相手方を特定する仕組みでも触れています。
ゲーム運営会社への問い合わせの限界
ゲーム運営会社に相手の登録情報を教えてほしいと頼んでも、個人情報保護の観点から、利用者個人の求めに応じて開示されることは基本的にありません。運営会社には、規約違反の通報や、詐欺的な勧誘をしているアカウントの報告という形で関わってもらうのが現実的です。
相手の氏名と住所が判明しない限り、訴訟などの手続を進めるのは難しいというのが実情です。相手をたどる手がかりがどの程度あるかによって、取りうる手段が変わります。
返還を求めるときの手順と注意点
記録に残る形での請求から始める
相手と連絡が取れる場合には、まずLINEやメールなど記録に残る方法で、金額と返済期限を示して返済を求めます。相手が分割での返済を申し出たときは、合計額、毎月の支払額、支払日、支払いが遅れた場合の扱いを書面に残しておくと、後の争いを防ぎやすくなります。
相手の住所が分かっている場合には、内容証明郵便で請求する方法もあります。内容証明郵便には直接の強制力はありませんが、請求した日付と内容を証明でき、時効の完成を6か月間猶予させる効果があります(民法150条1項)。
少額訴訟・支払督促・通常訴訟
請求額が60万円以下であれば、原則1回の期日で審理を終える少額訴訟を利用できます(民事訴訟法368条1項)。そのほか、書類審査で支払いを命じてもらう支払督促(同法382条)や、通常の訴訟も選択肢になります。判決などを得ても相手が支払わない場合には、給与や預金の差押えといった強制執行に進むことになります。
時効にも注意が必要です。貸したお金の返還請求権は、権利を行使できることを知った時から5年で時効にかかるのが原則です(民法166条1項1号)。詐欺を理由とする損害賠償請求は、損害と加害者を知った時から3年とされています(同法724条1号)。請求の種類ごとの期間は、男女トラブルの時効早見表|請求の種類別に何年で消えるかにまとめています。
請求の仕方が問題にされないために
返してほしいという気持ちが強いほど、連絡の回数が増えたり、言葉が強くなったりしがちです。しかし、「返さないならゲーム内で晒す」「家族に知らせる」といった伝え方は、脅迫や恐喝と受け取られるおそれがあります。ゲーム内の掲示板やSNSで相手を名指しして非難することも、名誉毀損として責任を問われる可能性があります。
交際関係にあった相手に、断られた後も繰り返し連絡したり、待ち伏せをしたりすると、ストーカー行為として扱われる場面もあります。正当な清算の連絡であっても注意が必要な点は、【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で解説しています。
返金を求められている側の場合
受け取った経緯を整理する
ゲームで知り合った相手から、交際が終わった後に「これまで渡したお金や課金した分を返せ」と求められることもあります。この場合も、受け取ったときに返す約束があったかどうかが出発点です。プレゼントとして受け取ったものや、相手が自分の意思で課金したものについて、当然に返す義務が生じるわけではありません。
一方で、返すと約束して受け取ったお金であれば、貸付として返済の義務を負います。感情的なやり取りを続ける前に、受け取った時期、金額、その時のやり取りを一覧にして、どれが貸付でどれが贈与にあたるのかを仕分けておくことが、話し合いの土台になります。
「詐欺で訴える」と言われたとき
返金を求める側から、「返さないなら詐欺で警察に行く」と告げられることもあります。受け取った時点で返すつもりがあり、嘘をついてお金を受け取ったのでなければ、返済が遅れていることだけで詐欺罪が成立するわけではありません。
ただし、言われるままに一括払いを約束したり、事実と異なる内容の書面に署名したりすると、後で不利に働くことがあります。民事の紛争と刑事事件の境界については、「詐欺だ」と言われて返金を求められている|民事の紛争と刑事の境界で詳しく扱っています。
よくあるご質問
数千円ずつ何度も渡した少額のお金でも、返してもらえますか?
1回あたりの金額が少なくても、貸したお金であれば返還を求めることができます。ただ、回数が多いほど「貸した」「あげた」の区別があいまいになりやすいため、1回ごとに、どのような名目で、返す約束があったのかを記録から確かめていくことになります。弁護士に依頼する場合は、回収の見込みと費用のバランスも含めて検討するとよいでしょう。
ギフトカードのコードを送ってしまいました。取り戻せますか?
送ったコードがまだ使われていなければ、発行会社に連絡することで利用を止められる場合があります。すでに使われてしまった場合には、カードそのものを取り戻すのは難しく、相手に対して金銭での返還を求めることになります。購入時のレシートとコードを送ったメッセージは、いずれも保存しておいてください。
警察に相談すれば、お金を返してもらえますか?
警察は犯罪の捜査を行う機関であり、個人間のお金の貸し借りを取り立てる役割は担っていません。最初からだますつもりだったことがうかがわれる場合には詐欺として相談することが考えられますが、返金を受けるには、民事上の請求を別に進める必要があるのが通常です。詐欺の被害に使われた口座については、金融機関や警察に早めに相談することで、口座の凍結などにつながることもあります。海外を拠点とするグループによる被害の場合は、国際ロマンス詐欺で送金してしまった|被害回復の可能性と限界もご参照ください。
まとめ
- ゲームで知り合った相手との金銭トラブルでは、相手の本名と住所をどう確かめるかが解決の見通しを左右する。
- 返す約束をして渡したお金は消費貸借として返還を求められる(民法587条、591条1項)。
- 交際中のプレゼントや応援の気持ちで渡したお金は、贈与と評価されやすい(同法549条、550条)。
- 嘘を信じて渡したお金は、詐欺による取消しや不法行為として返還・賠償を求める余地がある(同法96条1項、709条)。
- 相手の特定には、弁護士会照会や訴訟の中での調査嘱託が使われることがある(弁護士法23条の2、民事訴訟法186条)。
- 60万円以下の請求は少額訴訟を利用でき、貸金の返還請求権は原則5年で時効にかかる(民事訴訟法368条1項、民法166条1項1号)。
- 晒しや家族への連絡をほのめかす請求は、脅迫・恐喝や名誉毀損と受け取られるおそれがある。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。男女トラブルの対応に10年以上取り組み、オンラインゲームやSNS、マッチングアプリで知り合った相手との金銭の清算についても、全国からご相談をお受けしています。ご相談は24時間365日、電話・メール・LINEで受け付けています。
ゲームで知り合った相手に渡したお金を返してほしいとお考えの方も、反対に返金を求められて対応に迷っている方も、お一人で相手とのやり取りを続ける前に、一度ご相談ください。事務所の対応については、【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でもご案内しています。


