【男女トラブル】交際相手の親から手切れ金を提示されたら、受け取っても問題ない?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

交際相手の親から「息子(娘)と別れてほしい。そのかわりに、これを受け取ってほしい」と金銭を差し出されることがあります。結婚に反対されている、年齢差や家庭の事情を理由に交際を認めてもらえない、といった場面で起こりやすい話です。突然のことで、受け取ってよいのか、受け取ったら何かを約束したことになるのか、断ったら不利になるのか、判断に迷う方は少なくありません。

 この記事では、交際相手の親から手切れ金を提示されたときに、受け取る前に確かめておきたいことと、受け取った後に起こりうることを整理します。

本記事は2026年11月時点の法令にもとづいて解説しています。個別の事情によって結論が変わることがあるため、具体的な判断は専門家にご確認ください。


「手切れ金」は法律で決められた言葉ではない

 「手切れ金」は法律上の用語ではなく、一般には男女の関係を終えるときに一方から他方へ渡されるお金を指す言葉として使われています。交際相手の親が差し出す場合も、法律の目で見ると「誰が、何のために、どのような約束と引き換えに渡すお金なのか」によって位置づけが変わります。

受け取ること自体がただちに問題になるわけではない

 相手の側から申し出があった金銭を受け取ることは、それだけで違法になるものではありません。親が自分の財産から渡すのであれば、法律上は贈与(民法549条)として扱われるのが基本です。

 ただし、手切れ金は「交際を終えること」「今後連絡しないこと」などの条件とセットで提示されるのが通常です。問題になりやすいのはお金そのものより、受け取ることで何を約束したことになるのかという点です。

お金の性質は合意の中身で決まる


受け止め方中身の例受け取った後に問題になりやすい点
単なる贈与特に条件をつけず、気持ちとして渡す後から返してほしいと言われたときに、贈与だったことを示せるか
条件付きの贈与交際を終える、連絡しないなどの約束と引き換えに渡す約束を守らなかったとして、返還を求められるおそれ
解決金・和解金交際をめぐるお互いの言い分を清算する趣旨で渡す清算条項によって、自分の側の請求ができなくなるおそれ


 条件をつけて渡された贈与は「負担付贈与」(民法553条)として扱われることがあり、受け取った側が約束を守らない場合には、贈与契約を解除されて返還を求められる可能性があります。また、交際をめぐって双方に言い分がある場面で「これで終わりにする」という趣旨の書面を交わすと、和解(民法695条)としての性質を帯び、後から別の請求をすることが難しくなる場合があります。

受け取る前に確かめておきたいこと

 提示されたその場で返事をする必要はありません。「いったん持ち帰って考えます」と伝え、少なくとも次の点を確かめてから判断することをおすすめします。

何と引き換えのお金なのか

 「別れること」だけなのか、「今後一切連絡しない」「交際していたことを口外しない」「住まいや勤務先を変える」なども含むのかで、受け取った後の負担は大きく変わります。口頭で告げられただけの条件も、後から「そういう約束だった」と主張される材料になりえます。条件が曖昧なまま受け取ることは避けたほうが安心です。

 なお、交際を続けるかどうか、誰と結婚するかは本人どうしが決めることで、親に交際をやめさせる法的な権限があるわけではありません。交際や婚姻の自由をお金で縛るような約束は、内容によっては公序良俗(民法90条)との関係で効力が問題になる余地もあります。とはいえ、効力が否定されるかどうかは事情次第で、争いが長引くこともあるため、「どうせ無効になるだろう」と考えて受け取るのは慎重であるべきです。

交際相手本人はこの話を知っているか

 親が交際相手に相談せずに動いていることもあります。親との合意は、交際相手本人を縛るものではありません。あなたが「連絡しない」と約束しても、交際相手の側から連絡が来ることまでは止められず、その対応に困ることになりかねません。

 交際相手も別れることに納得しているのか、それとも本人の意思と関係なく親が動いているのかは、受け取るかどうかを考えるうえで大切な事情です。

自分の側に請求できるものが残っていないか

 交際中に貸したお金がある、婚約していて結婚準備の費用を出していた、妊娠や出産をめぐる費用の問題がある、といった場合には、手切れ金とは別に話し合うべきことが残っています。合意書に「本件に関し、本合意書に定めるほか何らの債権債務がないことを確認する」といった清算条項が入っていると、こうした請求までまとめて終わったことになるおそれがあります。

 婚約していた場合には、親の反対を理由とする破談が婚約の不当な破棄にあたるかどうか、親の働きかけが社会的に許される範囲を超えていないか、といった点も検討の対象になります。提示された金額に見合うかを考える前に、自分の側にどのような請求がありうるのかを整理しておくことが先決です。清算条項の働きについては、清算条項の意味|後から追加請求されないためにで詳しく解説しています。

誰が、どのような形で渡すのか

 父親・母親のどちらが出すのか、両親の連名なのか、交際相手本人も合意に加わるのかで、合意の当事者が変わります。現金を手渡しされる場合は、いつ・いくら・何の趣旨で受け取ったのかが後から分からなくなりやすいため、受領の記録を残しておく必要があります。親の知人などが「代わりに話をつけに来た」と名乗る場合は、本当に親から任されているのかの確認も欠かせません。確かめ方は【男女トラブル】相手の家族が代わりに交渉に出てきた|代理権の有無の確かめ方で取り上げています。

受け取った後に起こりうること


関係を続けた場合に、返還を求められることがある

 受け取った後も交際相手と会い続けた、復縁した、といった場合に、親から「約束が違う、返してほしい」と求められることがあります。条件付きで渡されたお金であれば、約束を守らなかったことを理由に贈与を解除され、返還を求められる可能性があります。合意書に違約金の定めがあれば、受け取った額を超える支払いを求められることも考えられます。

 受け取るかどうかは、今後本当に関係を終えるつもりがあるかどうかと切り離さずに考えたほうがよいでしょう。

受け取ったことが、別の意味で語られることがある

 「お金目当てだった」「金を要求された」などと、受け取った事実が交際相手や周囲に違う形で伝わることがあります。こちらから求めたのではなく、親の側から申し出があったことを、メッセージや書面の形で残しておくと安心です。

税金がかかる場合がある

 手切れ金が慰謝料など損害賠償の性質をもつ場合、基本的には課税されないと考えられています。一方、慰謝料の性質をもたない単純な贈与と評価される場合には、贈与税の対象になる可能性があります。交際相手の親は、もともとあなたに賠償をする立場にないことが多いため、贈与と見られやすい点には注意が必要です。贈与税には1年あたり110万円の基礎控除がありますが、金額が大きい場合は税務署や税理士に確認しておくとよいでしょう。

金額の交渉や受け取り方で気をつけたいこと

 提示された金額に納得できず、増額を求めること自体がただちに問題になるわけではありません。ただし、言い方には注意が必要です。「もっと払わないと別れない」「払わないなら職場や親戚に交際のことを話す」といった言葉で支払いを迫ると、恐喝(刑法249条)を疑われるおそれがあります。相手の申し出から始まった話であっても、交渉の過程で不安をあおる言葉を使えば、立場が逆転しかねません。

  • 提示されたその場で返事をせず、持ち帰って検討すること。
  • 条件と金額は、口頭ではなく書面で示してもらうこと。
  • 増額を求める場合は、貸したお金や婚約に関する費用など、自分の側の請求の内訳を示して話すこと。
  • 相手の家族・職場・知人に知らせることをほのめかさないこと。
  • 受け取るときは、日付・金額・趣旨を記した受領書を交わすこと。


合意書を交わすときに確かめたい条項

 受け取ることにした場合は、口約束で済ませず、合意書の形で内容を確定させておくことが大切です。相手方が用意した書面に署名する前に、少なくとも次の条項を確認してください。

条項確かめたい点
支払いの趣旨贈与なのか、解決金なのか。名目が受け取った後の扱いや税金に影響することがある
当事者親だけか、交際相手本人も加わるのか
交際の終了・接触禁止自分だけが連絡を控える内容になっていないか。相手から連絡が来た場合の扱いはどうなるか
口外禁止誰に対して、何を話してはいけないのか。範囲が広すぎないか
清算条項自分の側の請求まで消えてしまわないか
違約金・返還違反した場合にいくら払うのか。受け取る額と比べて過大でないか


 接触禁止や口外禁止の条項は、書き方次第で効き目も負担も大きく変わります。接触禁止条項・口外禁止条項の書き方と限界もあわせてご覧ください。その場の勢いで書面に署名してしまった場合の考え方は、【男女トラブル】別れ際に書いた誓約書を撤回したい|強く迫られて書いた書面で解説しています。

受け取りたくないときは、断ってもよい

 手切れ金の提示に応じる義務はありません。交際を続けるかどうかは本人どうしの問題であり、受け取りを断ったこと自体で法的な不利益を受けるものではありません。断るときは「お金は受け取れません。交際のことは本人と話し合います」と、短く、感情的にならずに伝えるのが無難です。

 断った後に、親から勤務先へ電話が来る、自宅を訪ねてくる、といった行動が続く場合は、記録を残したうえで、弁護士を窓口にして直接の連絡を控えてもらうよう求める方法も考えられます。親との直接のやり取りが負担になっているときは、早めにご相談ください。

よくあるご質問


交際相手も別れることに納得している場合は、受け取っても問題ない?

 交際相手と話し合ったうえで別れることに双方が納得しているのであれば、受け取ること自体に大きな問題はないことが多いでしょう。それでも、条件と清算の範囲は書面にしておくことをおすすめします。親と交際相手の双方が当事者になる形にしておくと、後から「本人は知らなかった」と言われる事態を避けやすくなります。

受け取った後で、やはり返したいと思ったら?

 受け取ったお金を返して、合意をなかったことにしたいと考える方もいます。相手が返金に応じれば合意の解消について話し合うことができますが、一方的に返金しただけで約束が当然に消えるとは限りません。合意書を交わしている場合は、解消についても書面で確認しておくのが安全です。

妊娠している場合も、同じように考えてよい?

 妊娠している場合は、手切れ金の話とは別に、出産や中絶の費用、認知、養育費といった問題があります。とくに子の認知を求める権利は、放棄する約束をしても効力が認められないと考えられており、手切れ金の合意書にまとめて片づけられるものではありません。親との話し合いの進め方は、【男女トラブル】妊娠を相手の親に伝える前に|家族が決められること・決められないことも参考になります。

関連する解説記事



提示された金額だけで決めないために

 交際相手の親から手切れ金を提示されると、金額の多寡に目が向きがちです。しかし、受け取るかどうかを左右するのは、何と引き換えなのか、自分の側に残っている請求はないか、交際相手本人がどう考えているか、といった事情です。当事務所では、合意書の内容の確認や、親とのやり取りの窓口を代わるご依頼もお受けしています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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