【男女トラブル】二人の旅行代金を全部払っていた、半分を請求できる?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、婚約や内縁に至っていない交際中のカップルが、二人で行った旅行の費用を一方がすべて負担していた場面を念頭に置いています。婚約中の場合や、同棲して家計を一つにしていた場合は、考え方が変わることがあります。


交際していた頃は「自分が出すよ」と気持ちよく払っていた旅行代金も、別れた後や関係がこじれたときに振り返ると、「せめて半分は返してほしい」と感じることがあるかもしれません。宿泊費や航空券代はまとまった金額になりやすく、何度も旅行していれば、合計が数十万円に上ることもあります。

 ただ、交際中に一方が払った旅行代金は、法律上は相手へのプレゼントと同じように扱われることが多く、後から半分を請求できる場面は限られます。この記事では、請求が難しいとされる理由と、それでも請求の道が残る事情、請求する前に整理しておきたいことを順に解説します。

全部払っていたというだけでは、半分の請求は難しいことが多い

 結論から言えば、「二人の旅行代金を自分が全部払っていた」という事実だけを理由に、別れた後で半分を請求するのは難しいことが多いのが実情です。法律事務所の解説でも、交際中の一方が旅行代や飲食代をすべて負担していた場合、原則として返還の義務は生じないと説明されています。

 一方で、支払ったときに「あとで半分払うね」といったやり取りがあった場合や、旅行が相手の都合で中止になった場合、相手にだまされていた場合などは、請求の道が残ることがあります。分かれ目になるのは、お金を出したときに二人の間でどのような了解があったか、そしてそれを示す記録が残っているかです。

交際中の旅行代金は法律上どう扱われるのか


「自分が出す」と払った分は贈与と見られやすい

 交際中に一方が旅行代金を負担した場合、多くは自分の意思で相手の分まで払ったものとして、民法上の贈与(民法549条)にあたると考えられています。贈与は、あげる側と受け取る側の合意によって成立し、書面がなくても成り立ちます。「旅行は自分が出すよ」と伝えて払った場合はもちろん、何も言わずに毎回支払っていた場合も、相手から見ればごちそうしてもらったと受け止めるのが自然な場面が多いでしょう。

 弁護士ドットコムにも、「旅行代金は自分が出す」と伝えて行った旅行について、後で交際相手の浮気を知り、代金を請求したいという相談が寄せられています。相談者自身が、請求するのは筋が違うかもしれないと迷っている様子がうかがえます。別れの原因が相手にあったとしても、過去に気持ちよく出したお金の性質が、後から変わるわけではありません。

払い終わった分を「やはり返して」と言いにくい理由

 書面によらない贈与は、原則として各当事者が解除できますが、すでに渡し終えた部分は解除できません(民法550条)。旅行代金は旅行の前後に支払いが済んでいるのが通常なので、別れた後に「あのときの贈与はなかったことにしたい」と主張しても、認められにくいのはこのためです。

 また、お金を返すよう求める側は、それがあげたお金ではなく、貸したお金や立て替えたお金であることを示す必要があります。金銭の貸し借り(消費貸借、民法587条)が成り立つには、返す約束があったことが前提になるため、その約束を裏付ける記録がないと、請求は難しくなります。

半分を請求できる可能性があるのはどんな場合か


「あとで半分払う」という約束があった

 最も分かりやすいのは、支払いの時点で、相手の負担分を立て替えておくという合意があった場合です。「今回は先に払っておくから、後で半分ちょうだい」「給料日に払うね」といったLINEのやり取りがあれば、立て替えた分の返還を求める根拠になります。このとき請求できるのは約束した範囲であり、旅行全体の半分とは限らない点に注意が必要です。

割り勘や精算を続けてきた経緯がある

 交際中、旅行のたびに割り勘アプリで精算していた、毎回後から相手が半額を振り込んでいた、という経緯がある場合は、今回の旅行も同じ前提だったと主張しやすくなります。弁護士ドットコムには、おごるとは言わずに旅行の交通費や宿泊費を立て替え続け、後から期限を付けて返済を求める書面を送ったという相談もあります。ただし、精算の習慣があったことだけで、今回も返す約束があったと認められるとは限らず、その旅行ごとのやり取りが重視されます。

旅行に行けなかった・相手の都合でキャンセルになった

 予約した後に相手の都合で旅行が中止になり、キャンセル料が発生した場合や、相手が直前に来られなくなって一人分の追加料金がかかった場合は、旅行代金の負担とは別の問題になります。弁護士ドットコムニュースの弁護士解説では、「キャンセルした側が費用を負担する」という約束がない限り、相手に負担を求めるのは法律上簡単ではないとされています。他方で、払い戻された相手の分の代金を相手が受け取っていたような場合は、その分の返還を求める余地があります。キャンセルについては旅行・デートを一方的にドタキャンされた|キャンセル料・立替は請求できる?で詳しく解説しています。

婚約していた・交際そのものにだまされていた

 婚約していた相手から正当な理由なく婚約を破棄された場合は、婚約破棄による損害賠償の中で、結婚の準備に関わる支出が問題になることがあります。ただ、通常の旅行代金がそのまま損害として認められるとは限りません。また、既婚であることを隠されていた、はじめからお金を出させる目的で交際を装われていたといった事情があれば、不法行為による損害賠償や、詐欺を理由とする取消し(民法96条)を検討する余地があります。

 請求が認められやすい方向と難しい方向の目安を、表にまとめます。

事情請求が認められやすい方向請求が難しい方向
支払い時の言葉「立て替えておく」「後で半分」と伝えていた「自分が出す」「今回はおごる」と伝えていた
過去の経緯毎回、後から相手が半額を払っていた毎回こちらが負担し、精算の話は出なかった
記録精算を求め、相手が了承したメッセージがある口頭でのやり取りしか残っていない
請求の時期交際中から精算の時期を話していた別れた後に初めて請求を思い立った
旅行の実施相手の都合で中止になり、相手が払戻しを受けていた二人で予定どおり旅行を終えている


請求する前に整理しておきたいこと

 請求するかどうかを決める前に、手元の記録と金額を整理しておくと、相手との話し合いでも、弁護士に相談する場面でも役立ちます。

  • 予約サイトの明細やクレジットカードの利用明細など、誰がいつ、いくら支払ったかが分かる記録。
  • 旅行の前後のLINEやメールのうち、支払いや精算に触れたやり取り。
  • 相手から一部でも振込や現金での支払いがあった場合の、その記録。
  • 旅行ごとの内訳(交通費、宿泊費、現地での食事、相手個人のお土産など)。


 「半分」といっても、何の半分なのかを決めておく必要があります。二人分の宿泊費は折半しやすい一方、自分のために買ったものまで含めて計算すると、請求の根拠が弱く見えることがあります。相手の個人的な買い物を代わりに払っていた分は、旅行代金とは分けて考えるのが現実的です。交際中に出したお金全体の考え方は、交際中に立て替えた生活費・プレゼント代は返してもらえる?でも解説しています。

請求の進め方と、避けたい伝え方


話し合いから法的な手続までの流れ

 約束を示す記録がある場合は、まず相手に金額と内訳、支払ってほしい期限を伝えて話し合うのが一般的です。相手が応じない場合は、内容証明郵便で請求の意思を明らかにする、60万円以下の金銭の支払いを求める少額訴訟や支払督促、簡易裁判所の調停を利用する、といった方法があります。相手が支払いを約束した場合は、金額と支払方法を書面にしておくと、後の行き違いを防ぎやすくなります。

 請求できる権利には時効があり、請求できることを知った時から5年が一つの目安です(民法166条1項)。別れてから時間が経つほど記録も散逸しやすいため、迷っている段階でも、早めに整理しておくことをおすすめします。時効の詳細は男女トラブルの時効早見表|請求の種類別に何年で消えるかをご覧ください。

相手を追い詰めるような伝え方は避ける

 納得がいかない気持ちが強いと、何度も連絡を重ねたり、「払わないなら職場や家族に話す」と伝えたりしたくなることがあります。しかし、相手の弱みを示して支払いを迫ると、請求そのものに根拠があっても、恐喝や脅迫を疑われるおそれがあります。相手が連絡を拒んでいるのに繰り返し連絡することも、別のトラブルを招きかねません。直接のやり取りが難しいと感じたら、弁護士を窓口にすることも一つの方法です。

よくあるご質問


旅行のたびに「次は払ってね」と言っていた場合は請求できますか

 「次は払ってね」は、次回の負担を求める言葉とも、今回分の精算を求める言葉とも受け取れます。相手が今回分を返すと約束していたか、その後の旅行で実際に相手が払ったかによって評価が変わるため、前後のやり取りを合わせて確認する必要があります。

相手も旅行以外の費用を出していた場合はどうなりますか

 相手が食事代や日用品を負担していたなど、お互いにお金を出し合っていた場合、旅行代金だけを取り出して半分を求めると、相手からほかの支出の精算を持ち出されることがあります。交際全体のお金の流れを見たうえで、請求する範囲を決めるのが現実的です。【男女トラブル】交際期間の長さは金銭の清算に影響するのかもあわせてご覧ください。

相手から「もらったものだから返さない」と言われたら、どうすればよいですか

 支払ったときのやり取りに、返す約束をうかがわせる事情があるかを確かめることになります。記録のたどり方は、【男女トラブル】「もらったつもりだった」と言われたお金を返してもらうには?で解説しています。

関連する解説記事



 交際中に出した旅行代金は、後から半分を求めるのが難しいことが多い一方で、支払ったときのやり取りや旅行の経緯によっては、請求の道が残ります。請求するかどうかを決める前に、記録を整理し、相手との関係も踏まえて無理のない進め方を選ぶことが大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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