【男女トラブル】「もらったつもりだった」と言われたお金を返してもらうには?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

本記事は、2026年10月時点の民法・民事訴訟法の規定をもとに、交際相手に渡したお金の返還について一般的な考え方を整理したものです。個別の事情によって結論は変わります。


交際中に相手へ渡したお金について、別れた後に返してほしいと伝えたところ、「あれはもらったつもりだった」「返す約束なんてしていない」と言われることがあります。渡した側は貸したと考えていても、受け取った側はもらったと受け止めている。このすれ違いは、交際関係のお金のトラブルでよく見られる形です。

 この記事では、「貸した」と「あげた」がどこで分かれるのか、相手が「もらった」と言い張っているときに何を手がかりに返還を求めていくのかを、手続の選び方とあわせて整理します。借用書がない場合の回収全般については、恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?でも解説しています。

「貸した」と「あげた」を分けるのは返す約束の有無

 お金を貸すことは、法律上は金銭消費貸借契約(民法587条)にあたり、相手が同じ額を返すと約束してお金を受け取ることで成り立ちます。これに対して贈与(民法549条)は、返してもらうことを予定せずに財産を渡す契約です。

 どちらの場合も、お金が相手の手に渡ったという事実は変わりません。分かれ目になるのは、渡したときに返す約束があったかどうかという点です。相手が「もらったつもりだった」と言うのは、お金を受け取ったことは認めたうえで、返す約束はなかったと反論している状態といえます。

返還を求める側が「返す約束」を示す必要がある

 裁判で貸したお金の返還を求める場合、請求する側が、お金を渡したことと返す約束があったことの両方を示す必要があります。振込記録などでお金を渡したこと自体は示せても、それだけでは返す約束までは示せないことが多く、交際関係では特にこの点が争いになります。

 そのため、相手が「もらった」と言い張っている場面では、返す約束をうかがわせる事情をどれだけ集められるかが、返還を求めるうえでの中心になります。

交際中のお金が「もらった」と受け止められやすい理由

 友人や知人との貸し借りと比べて、交際相手とのお金のやり取りは、貸したのかあげたのかが曖昧になりやすい傾向があります。主な理由は次のとおりです。

  • 関係が良好なうちは、借用書などの書面を作らないことが多くあります。
  • デート代や生活費、プレゼントなど、もともと返してもらうつもりのない支出と混ざりやすくなります。
  • 少額を何度も渡していると、どれが貸したお金なのか区別しにくくなります。
  • 「いつでもいいよ」「気にしないで」といった渡したときの言葉が、後から贈与の根拠として持ち出されることがあります。
  • 別れ話をきっかけに初めて返還を求めると、後付けの請求と受け止められやすくなります。


「貸した」と認められる方向に働く事情

 貸したのかあげたのかは、どれか1つの事情で決まるものではありません。交際の経緯、金額、回数、やり取りの内容などを総合して判断されます。目安として、次のような事情が手がかりになります。

確認する点貸したと認められる方向の事情あげたと受け止められる方向の事情
相手の言葉「借りる」「返す」「給料日に払う」などの言葉があるお礼の言葉だけで、返済には触れていない
返済の実績一部でも返してもらったことがある返済も催促も一度もない
金額二人の収入や生活水準に比べて大きい食事代や日用品など、日常の範囲に収まる
使い道相手の借金の返済、引っ越し費用、事業資金など相手個人の用途誕生日や記念日、二人の旅行など交際そのものに関わる支出
請求の時期交際中から返済の時期や方法を話していた別れた後になって初めて返還を求めた


メッセージの中で探しておきたいやり取り


  • 「貸して」「借りたい」という相手からの申し出。
  • 「来月返す」「ボーナスが出たら」など、返済の時期に触れた言葉。
  • 「まだ返せなくてごめん」など、返していないことを前提にした謝罪。
  • 返済の催促に対し、返す義務そのものは否定せずに猶予を求めた返信。
  • 振込の際に付けたメモ(「貸付」「立替分」など)。


 相手自身の言葉で返済に触れたやり取りが残っていれば、返す約束を示す有力な手がかりになります。スクリーンショットだけでなく、日付や相手のアカウントが分かる形で保存しておくと安心です。相手がメッセージを削除しても自分の端末には残っていることが多いため、機種変更の前にはバックアップを取っておきましょう。メッセージの履歴を手がかりに回収に至った例として、【解決事例】店舗型風俗店のキャストに貸した200万円|LINE履歴と弁護士会照会で回収に至った事例もご参照ください。

「あげる」と言った覚えがある場合の考え方

 渡したときに「返さなくていい」と伝えていた場合や、そう受け取られても仕方のないやり取りがある場合、後から返してほしいと求めても、原則として認められにくくなります。書面によらない贈与は、すでに渡し終えた部分については解除できないとされているためです(民法550条)。

 ただし、それで返還を求める道がすべて閉ざされるわけではありません。次のような事情があれば、別の考え方で返還を求める余地があります。

渡した理由そのものが偽りだった場合

 病気の治療費や家族の不幸、借金の返済など、相手から聞かされた事情を信じて渡したのに、それが事実ではなかったと分かった場合は、詐欺を理由に贈与を取り消す(民法96条)、不法行為として損害賠償を求めるといった構成が考えられます。結婚する意思がないのに結婚をほのめかしてお金を受け取っていた場合も同様です。

 もっとも、相手にだますつもりがあったことを示すのは容易ではありません。聞かされた話と実際の事情との食い違いを、具体的な記録で示せるかが焦点になります。詳しくは【男女トラブル】病気や不幸の話を信じてお金を渡していた|嘘だと分かった後、結婚をちらつかせて金銭・関係を得る|結婚詐欺と貞操権侵害の境界で解説しています。

目的をはっきり示して渡していた場合

 「結婚資金として」「同居を始める費用として」など、目的をはっきり示して渡していた場合、その目的が実現しなかったことを理由に返還を求める余地が生じることがあります。ただし、その目的が二人の間で共有されていたことを示す必要があり、渡した側の期待にとどまっていた場合は難しくなります。交際中に負担した生活費やプレゼント代の扱いについては、交際中に立て替えた生活費・プレゼント代は返してもらえる?をご覧ください。

返還を求めるときの進め方


  1. 渡したお金の日付・金額・方法・名目を一覧にし、裏付けとなる振込記録やメッセージを結び付けます。
  2. 一覧のうち、返す約束をうかがわせる記録があるものと、ないものとを分けます。
  3. 相手に対し、貸したお金として返還を求める旨を書面で伝えます。送った内容を記録に残すため、内容証明郵便を使うことも考えられます。
  4. 相手が応じない場合は、民事調停、支払督促、少額訴訟、通常の訴訟といった裁判所の手続を検討します。


 特に大切なのは2つ目の仕分けです。記録のない分まで一律に請求すると、相手の反論を招き、記録のある分の話し合いまで進みにくくなることがあります。どの範囲を請求するのかを、先に決めておくことをおすすめします。

請求のやり取りそのものが記録になる

 返還を求めたときの相手の返答も、後で意味を持つことがあります。「借りた分は少しずつ返す」といった返信があれば、返す約束があったことを示す材料になります。反対に、感情的な言葉の応酬になると話し合いが進みにくくなり、相手に反論の材料を与えることにもなりかねません。請求の文面は日付と金額を落ち着いて示し、返済の方法と時期を尋ねる形にとどめるのが無難です。

裁判所の手続の選び方


手続特徴向いている場面
民事調停調停委員を交えて話し合いでの解決を目指す。相手が応じなければ成立しない分割での返済など、話し合いの余地がある
支払督促書面の審査で裁判所から支払いを命じてもらう。相手が異議を出すと通常の訴訟に移る相手が返す約束そのものは争っていない
少額訴訟60万円以下の請求が対象で、原則1回の審理で判断が示される。相手が希望すると通常の訴訟に移る金額が小さく、証拠がそろっている
通常の訴訟金額の制限はなく、主張と証拠を時間をかけて整理する金額が大きい、または貸したかどうか自体が争われている


 相手が「もらった」と言い張っている場合、支払督促は異議によって通常の訴訟に移る可能性が高く、少額訴訟も1回の審理では整理しきれないことがあります。争いの中身と手元の記録に応じて、手続を選ぶことになります。

返還を求めるときに避けたいこと

 お金を返してもらいたいという気持ちが強いほど、請求の仕方が行き過ぎてしまうことがあります。返還を求めること自体は正当な権利の行使でも、方法によっては別の問題を生むおそれがあります。

  • 「家族や職場に知らせる」「SNSで事情を公表する」と告げて支払いを迫ると、恐喝や脅迫を疑われるおそれがあります。
  • 実際にSNSや共通の知人に経緯を広めると、名誉毀損やプライバシーの侵害として相手から責任を問われることがあります。
  • 断られた後も何度も連絡したり、自宅や勤務先に出向いたりすると、つきまといとして扱われる場面があります。
  • 相手の私物を「返済が済むまで預かる」と持ち続けると、別のトラブルの原因になることがあります。


 正当な請求と恐喝との境目については「金を返せ」と強く迫った|正当な債権回収と恐喝の境界、連絡の仕方の注意点は【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で解説しています。相手が連絡に応じなくなった場合は、【男女トラブル】相手が話し合いに応じない|連絡が取れないまま清算する方法もあわせてご覧ください。

時間が経っている場合の注意点

 貸したお金の返還を求める権利は、時間の経過によって消滅時効にかかることがあります。現在の民法では、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年が基本です(民法166条1項)。返済の期限を決めていなかった場合は、いつから数えるのかの判断が難しくなることもあります。

 一方で、相手が一部を返済したり、返済すべきことを認める連絡をしたりした場合には、時効がそこから改めて進み始めることがあります(時効の更新、民法152条)。数年前に渡したお金について返還を考えている場合は、最後に返済や返済に触れたやり取りがあった時期を確認しておくことが大切です。請求の種類ごとの期間は男女トラブルの時効早見表|請求の種類別に何年で消えるかにまとめています。

よくあるご質問


借用書がなければ、返してもらうのは難しいですか

 借用書がないと、返す約束を示すハードルは上がります。ただ、それだけで返還を求められなくなるわけではありません。メッセージのやり取り、振込記録、一部返済の記録などを積み重ねて、返す約束があったことを示していく方法があります。

「いつでもいいよ」と言って渡したお金は、贈与になりますか

 「いつでもいい」という言葉は、返済の時期を決めていないという意味にも、返さなくてよいという意味にも受け取れます。どちらにあたるかは前後のやり取りから判断されます。返済の時期を決めていない貸し借りであれば、相当の期間を定めて返還を求めることができます(民法591条1項)。

途中まで少しずつ返してもらっていた場合はどうなりますか

 一部でも返済を受けていたことは、返す約束があったことをうかがわせる事情の一つになり、時効の更新にもつながる場合があります。もっとも、相手が「返済ではなく別の趣旨で渡したお金だった」と説明することもあるため、振込のメモや前後のメッセージなど、返済であったことが分かる記録を残しておくことが大切です。

弁護士に相談することで変わること

 交際相手とのお金の問題は感情と切り離して整理するのが難しく、本人同士の話し合いでは「貸した」「もらった」の言い分が平行線になりがちです。弁護士が窓口となることで、手元の記録からどの範囲を請求できそうかを見極めたうえで、相手と直接やり取りをせずに返還を求めることができます。相手の連絡先や住所が分からなくなっている場合でも、相手を確かめるための手続をとれることがあります。

 「もらったつもりだった」と言われても、渡したときのやり取りやその後の返済の経過を丁寧にたどると、返す約束をうかがわせる事情が見つかることがあります。交際関係の解消に伴う金銭の清算について当事務所がお受けしている内容は、【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご紹介しています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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