交際関係のモラハラ・精神的DV|証拠の残し方と法的対応
マッチングアプリで知り合い、毎日のようにメッセージを交わしている相手から、ある日「二人の将来のために資産を増やそう」「私も親族に教わって利益が出ている」と投資を勧められる。こうした相談は、男女トラブルのなかでも近年目立つものの一つです。相手に好意を持っているほど、断ることや疑うことに抵抗を感じやすく、気づいたときには送金額が膨らんでいることがあります。
本記事は2026年10月時点の法令と、警察庁・国民生活センターなどの公表資料をもとに作成しています。個別の事案での見通しは、送金の方法や相手の状況によって異なります。
この記事では、投資を勧められた段階で確かめたいこと、すでにお金を送ってしまった場合の初動、取り戻すための法的な手段とその限界を順に整理します。
マッチングアプリをきっかけにした投資の勧誘が増えている
国民生活センターは、出会い系サイトやマッチングアプリで知り合った相手から海外の投資サイトなどを紹介され、出金できなくなったという相談が多数寄せられているとして、こうした手口を「ロマンス投資詐欺」と呼び、注意を呼びかけています。恋愛感情や、投資した資金をなんとか取り戻したいという気持ちにつけ込む点が特徴とされています。
警察庁の統計でも、SNSやマッチングアプリで知り合った相手に恋愛感情や親近感を抱かせて金銭をだまし取る「SNS型ロマンス詐欺」は、2025年(令和7年)11月末時点の暫定値で認知件数4,992件、被害額約479億円と、前年同期を上回っています。各地の警察が公表している事例には、交際の将来のためと称して暗号資産での投資を持ちかけるものも含まれています。
もっとも、交際相手が投資の話をすること自体が違法なわけではありません。問題になりやすいのは、実在するかどうかも確かめられない相手の指示で、実態の分からない投資先にお金を出してしまう場面です。
よく見られるやり取りの流れ
公表されている相談事例を見ると、やり取りの進み方にはある程度共通した流れがあります。
- アプリで知り合い、早い段階から親しげなやり取りが続くようになります。
- 「ここでは話しにくい」などの理由で、LINEなど別のメッセージアプリへの移動を求められます。
- 二人の将来や結婚資金の話が出たあと、「専門家の親族に教わっている」「自分も利益が出ている」と投資を勧められます。
- 指定されたサイトやアプリに登録して少額を入金すると、画面上で利益が出ているように表示され、最初は少額なら出金できることもあります。
- 追加の入金を勧められ、送金額が大きくなっていきます。
- 出金しようとすると「税金」「手数料」「保証金」などの名目で、さらに支払いを求められます。
- 支払っても出金できず、相手とも連絡が取れなくなります。
このほか、実際に会ったうえでセミナーや店舗に連れて行かれ、副業のスクールや高額な商品の契約を勧められる例もあります。埼玉県の公表事例には、マッチングアプリで知り合った相手に誘われてセミナーに同行し、受講契約などで40万円余りを支払った後、相手と連絡が取れなくなったというものがあります。
お金を出す前に確かめたいこと
次のような事情がいくつも重なる場合は、送金を見合わせて、第三者に相談することをおすすめします。
- 一度も直接会っておらず、ビデオ通話も避けられていること。
- アプリの外のメッセージアプリへ移ることを急がされたこと。
- 「必ず利益が出る」「今だけ」など、確実さや急ぎを強調されること。
- 投資先が海外のサイトや聞き慣れないアプリで、運営会社の実態が分からないこと。
- 振込先が個人名義の口座であったり、振込先が毎回変わったりすること。
- 家族や友人には話さないよう言われていること。
投資の勧誘や暗号資産の取引を業として行うには、原則として金融商品取引業や暗号資産交換業の登録が必要です。勧められた業者が登録を受けているかは、金融庁のウェブサイトで確認できます。また、マッチングアプリの多くは、利用規約で物やサービスの勧誘、外部サイトへの誘導を禁じています。規約に反する誘いを受けたときは、運営会社へ報告することもできます。運営会社の責任については【男女トラブル・マッチングアプリ】アプリ運営会社に責任を問えるのか|利用規約と免責条項の読み方で解説しています。
好意を持っている相手の誘いを断るのは心苦しいものですが、「お金のことは一緒にしない」と伝えて、相手の反応を見ることも一つの方法です。投資ではなく「貸してほしい」と頼まれた場合の考え方は、【男女トラブル】会ってすぐにお金の相談をされた|貸す前に確認することで整理しています。
すでにお金を送ってしまったときの初動
送金した後に「おかしい」と気づいた場合、早く動くほど選べる手段が残ります。次の順で進めてください。
追加の支払いはいったん止める
出金のために「税金」や「手数料」を先に払うよう求めるのは、ロマンス投資詐欺の相談で繰り返し見られる求め方です。これまでの分を取り戻したい気持ちから応じると、被害がさらに広がるおそれがあります。相手から急かされても、まず支払いを止めて状況を確かめることが先です。
振込先の金融機関と警察に連絡する
国内の金融機関の口座に振り込んだ場合は、振込先の金融機関と警察にすぐに連絡してください。振り込め詐欺救済法に基づき、詐欺に使われた口座の取引が止められ、口座に残っている預金から被害額に応じた分配金を受けられる場合があります。この連絡は、弁護士に依頼しなくてもご本人が行えます。
ただし、口座に残高が残っていなければ、分配される額は限られます。また、暗号資産での送金や現金の手渡しは、この制度の対象になりません。警察には、最寄りの警察署のほか、警察相談専用電話(#9110)でも相談できます。
やり取りの記録を残す
相手のプロフィール画面、メッセージの履歴、投資サイトのURLや画面、振込の控えや利用明細は、スクリーンショットや印刷で保存しておきます。アプリを退会したり、相手にブロックされたりすると見られなくなることがあるため、退会する前に保存を済ませておくことが大切です。残し方の順序は【男女トラブル・マッチングアプリ】退会するとやり取りは消えるのか|証拠を残す順序で解説しています。
消費生活センターにも相談できる
事業者との契約が関わる場合は、消費者ホットライン(188)から最寄りの消費生活センターにつながります。海外の事業者とのトラブルについては、国民生活センターの越境消費者センター(CCJ)でも相談を受け付けています。
お金を取り戻すための法的な手段と、その限界
取り戻すための手段は、どこにどのような方法でお金を渡したか、相手がどこの誰か分かっているかによって変わります。
| 手段 | 使える主な場面 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 振り込め詐欺救済法による分配金 | 国内の預金口座に振り込んだ場合 | 口座に残高がなければ分配はわずかになる |
| 相手への返還請求・損害賠償請求 | 相手の氏名や住所が分かる場合 | 相手を特定できないと手続を進めにくい |
| 消費者契約法による契約の取消し | 好意に乗じて事業者との契約を結ばされた場合 | 社会生活上の経験が乏しいことなどの要件や、取消しの期間制限がある |
| 特定商取引法のクーリング・オフ | 副業の勧誘などが連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引に当たる場合 | 書面を受け取ってから20日以内などの期限がある |
| 刑事告訴 | 詐欺罪(刑法246条)に当たる事情がある場合 | 捜査や処罰は、お金の返還とは別の手続 |
相手が実在の人物で、だます意図で投資話を持ちかけていたのであれば、詐欺を理由に返還や損害賠償を求めることが考えられます(民法96条・709条)。振込先の口座が分かっていれば、弁護士会照会などを通じて口座名義人の情報を確かめられることもあります。損害賠償の請求には、損害と加害者を知った時から3年という時効があるため、時間がたつ前に検討することが大切です。結婚の約束を前提にお金を出していた場合の考え方は、結婚詐欺に遭ったかも|結婚詐欺の立証と損害賠償請求も参考になります。
一方で、暗号資産で送金した場合や、相手や運営者が海外にいる場合は、相手を特定することも、財産を差し押さえることも難しく、取り戻せないまま終わることが少なくありません。送金した後の見通しについては国際ロマンス詐欺で送金してしまった|被害回復の可能性と限界で詳しく解説しています。
「被害金を取り戻せる」という勧誘による二次被害
被害に遭った後、インターネット広告などで返金の見込みを強調する業者や事務所に依頼し、高額な着手金を支払ったものの回収できなかったという二次被害も報告されています。東京弁護士会などの弁護士会も、回収の見込みを十分に説明しないまま契約させる広告について注意を呼びかけています。また、「被害金を取り戻す手続をしている」と名乗って、さらにお金を求めてくる連絡が来ることもあります。
依頼する前に、回収の見込みと費用の内訳を書面で説明してもらい、その場で決めるよう求められても持ち帰って検討することをおすすめします。見分け方はロマンス詐欺の「二次被害」に注意|高額着手金を謳う相談先の見分け方で解説しています。
被害者のつもりが、罪に問われる側になるおそれ
投資の話が進むうちに、「あなた名義で口座を作ってほしい」「スマホを用意してほしい」「受け取ったお金を別の口座に移してほしい」と頼まれることがあります。他人に口座を渡す行為は犯罪収益移転防止法で処罰の対象とされており、だまし取られたお金の移動に関わると、詐欺への関与を疑われるおそれもあります。
頼まれても応じず、すでに応じてしまった場合は早めにご相談ください。詳しくは「口座を売っただけ」「名義を貸しただけ」は軽いのかと【刑事事件】スマホやSIMを他人に渡した|携帯電話不正利用防止法での扱いで解説しています。
家族や知人に打ち明けにくいとき
相手に好意を持っていた分、だまされたかもしれないと認めることには強い抵抗があるものです。相手から「家族には言わないで」と言われていることも多く、一人で抱え込んでいるあいだに送金を重ねてしまう例もあります。弁護士には守秘義務があり、ご相談の内容を本人の了解なく家族や勤務先に伝えることはありません。
ご家族の側から相談したい場合は、【親子問題】SNSで知り合った相手に子が金を送り続けている|ロマンス詐欺・投資勧誘の構造と、止められない理由も参考にしてください。
弁護士に相談するとできること
弁護士に相談すると、送金の経緯や記録を整理したうえで、どの手段が現実的かを一緒に検討できます。相手が国内にいて身元が分かる場合は、代理人として返還を求める交渉や訴訟を、身元が分からない場合は、口座の情報などから相手を確かめる手続を検討します。刑事告訴を考える場合も、告訴状に盛り込む事実の整理をお手伝いできます。
回収が難しいと見込まれる事案では、費用をかけても取り戻せる額が限られることを率直にお伝えします。そのうえで、これ以上の被害を防ぐための対応や、相手からの連絡への応じ方を一緒に考えます。
マッチングアプリで知り合った相手からの投資の誘いは、送金する前であれば、断ることで被害を防げます。送ってしまった後も、記録を残して早めに金融機関や警察に連絡することで、残せる手段があります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


