不倫慰謝料を払った後の求償権|不倫相手に負担を求められるか
本記事は、2026年10月時点の民法(2020年4月施行の改正後の規定)を前提に、パパ活の相手に頼まれて立て替えたお金の返還について、一般的な考え方をまとめたものです。個別の事情によって結論は変わります。
パパ活で知り合った相手から「家賃が払えないので立て替えてほしい」「スマホ代を今月だけ代わりに払ってもらえないか」と頼まれ、お金を渡したり代わりに支払ったりしたものの、その後連絡が途絶えてしまった。こうしたご相談は珍しくありません。
パパ活の関係では、食事やデートのたびに「お手当」としてお金を渡していることが多く、相手から「あれももらったお金だと思っていた」と言われると、返してもらえるのか分からなくなってしまいます。関係の性質上、周囲に相談しにくく、そのまま諦めてしまう方もいます。
この記事では、立て替えたお金が法律上どう扱われるのか、返ってくるかどうかを分ける事情、手元に残しておきたい記録、返還を求める手順と避けたい求め方を順に整理します。
「立て替え」と「お手当」は法律上の扱いが異なる
立て替えとは、本来は相手が払うべきお金を、後で返してもらう前提で代わりに支払うことです。現金を渡して「後で返す」と約束した場合は金銭の貸し借り(消費貸借)、相手の家賃や携帯料金を直接支払った場合は立替金として、いずれも返還を求められる関係になり得ます。
これに対して、会うたびに渡す「お手当」や、プレゼントとして渡したお金は、返してもらう約束のない贈与と考えられるのが一般的です。法律情報サイトに掲載された弁護士の解説でも、パパ活で受け取ったお金は贈与にあたり、受け取った側に返す義務はないという見解が示されています。
つまり、同じパパ活の関係の中で渡したお金でも、「返す前提だったのか」「あげるつもりだったのか」によって、返還を求められるかどうかが分かれます。
| お金の性質 | 典型的な場面 | 返還を求められるか |
|---|---|---|
| 立て替え・貸し付け | 家賃や携帯料金の立て替え、「来月返す」と言われて渡したお金 | 返す約束を示せれば、求められる可能性がある |
| お手当・贈与 | 会うたびに渡す謝礼、誕生日などのプレゼント代 | 原則として難しい |
| 性的関係の対価 | 性的な関係を持つことと引き換えに渡したお金 | 名目にかかわらず、返還を求めにくくなるおそれがある |
返ってくるかどうかを分ける事情
返す約束があったことを示せるか
最も大きいのは、「返す」という約束があったことを示せるかどうかです。借用書がなくても、LINEやアプリのメッセージで「立て替えてもらえる?」「給料が入ったら返すね」といったやり取りが残っていれば、貸し付けや立て替えだったことを裏づける材料になります。
反対に、記録がなく、口頭で「立て替えて」と言われただけの場合は、相手が「もらったと思っていた」と主張したときに、返す約束があったことを示すのが難しくなります。お手当と同じ時期・同じ方法で渡していると、両者の区別がつきにくくなる点にも注意が必要です。
相手が「もらったもの」と言ってきたとき
書面によらない贈与は、まだ渡していない部分については解除できますが、すでに渡した部分は取り消せません(民法550条)。そのため、相手の「もらったお金だ」という主張が認められると、返還を求めることは難しくなります。
もっとも、相手がそう言っているだけで贈与と決まるわけではありません。頼まれた経緯、渡した金額や回数、そのときの相手の返事などを合わせて、どちらの性質だったかが判断されます。「立て替え」という言葉自体が、返す前提を含む表現であることは、こちらの主張を支える事情の一つになり得ます。
性的関係の対価と見られるおそれ
注意が必要なのは、性的な関係を持つことと引き換えに渡したお金と見られる場合です。対価を受けて不特定の相手と性交することは売春防止法で禁じられており、こうした公序良俗に反する目的で渡したお金は、民法708条の「不法原因給付」として返還を求められなくなるおそれがあります。
名目が「立て替え」であっても、実際には関係を続ける見返りとして渡していたと評価されると、同じ問題が生じ得ます。一方で、本来の貸し付けにあたるお金まで当然に返還が否定されるわけではなく、渡した側と受け取った側の事情を比べて判断されることもあります(最高裁昭和29年8月31日判決)。どちらにあたるかは経緯によって分かれるため、請求に踏み切る前に整理しておくことが大切です。
相手の名前や住所が分かっているか
パパ活では、相手のアプリ上の名前やLINEのアカウントしか分からないことが少なくありません。正式に請求したり裁判を起こしたりするには、原則として相手の氏名と住所が必要です。
振込で渡した場合は、振込先口座の名義が手がかりになります。弁護士が依頼を受けて行う弁護士会照会などの手続で、相手の情報を調べられる場合もありますが、照会先が回答するかどうかは事案によって異なります。手渡しで、相手の情報がほとんどない場合は、回収の見通しが立ちにくくなります。
手元に残しておきたい記録
返還を求めるかどうかを決める前に、次のような記録を保存しておきます。相手がアカウントを削除したり、自分がアプリを退会したりすると見られなくなるものもあるため、早めの保存が大切です。
- 立て替えを頼まれたメッセージと、「返す」と書かれたやり取りの画面。
- 相手に送金した振込明細や、代わりに支払った家賃・料金の領収書。
- お手当として渡したお金と、立て替えたお金を区別できるメモ(日付・金額・名目)。
- 相手のアプリ上のプロフィール、LINEのアカウント名、聞いていた氏名や住んでいる地域。
- 連絡が途絶えた時期と、最後のやり取りの内容。
スクリーンショットは、日付と相手の表示名が写るように撮っておくと、後で整理しやすくなります。
返してもらうための進め方
返す時期を決めていなかった立て替えや貸し付けは、相当の期間を定めて返還を求めることができます(民法591条1項)。一般的には、次の順序で進めます。
- メッセージなど記録に残る方法で、金額と返済期限を示して返還を求めます。
- 返事がない、または支払われない場合は、内容証明郵便で請求します。
- それでも支払われない場合は、支払督促や少額訴訟、通常の訴訟を検討します。
少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に使える手続で、原則として1回の期日で審理が終わります。ただし、相手が通常の訴訟への移行を求めることもでき、相手の住所が分からなければ利用できません。支払督促も、相手が異議を述べると通常の訴訟に移ります。
また、返還を求める権利には時効があります。権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年が経つと、相手が時効を主張すれば請求できなくなります(民法166条1項)。何年も前の立て替えであれば、いつ発生したお金なのかをまず確認しておく必要があります。
金額が大きくない場合は、弁護士費用や手間とのバランスも考える必要があります。どの手段が見合うかは、金額や相手の情報の有無によって変わります。
避けたい求め方
返してもらいたい気持ちが強いほど、強い言葉で迫りたくなるものですが、求め方によってはこちらが責任を問われるおそれがあります。
- 「家族や職場に知らせる」と伝えて支払いを迫ること。
- 相手の写真や個人情報をSNSに載せること。
- 相手の自宅や勤務先に押しかけること。
- 相手が応じないのに連絡を繰り返し続けること。
相手の弱みを材料に支払いを求めると、恐喝罪や脅迫罪にあたるおそれがあり、正当な貸金の回収であっても違法と評価されることがあります。SNSへの書き込みは名誉毀損やプライバシー侵害の問題を生じさせ、執拗な連絡や待ち伏せは、内容によってはストーカー規制法との関係も問題になります。冷静な方法で請求を続けることが、回収の可能性を残すことにつながります。
なお、相手が18歳未満だった場合は、お金の返還より先に、ご自身の刑事上の責任が問題になる可能性があります。返還を求める連絡をする前に、弁護士に相談してください。
だまし取られたと感じたとき
立て替えを頼まれた理由がうそだった、最初から返すつもりがなかったように見える、という場合は、詐欺にあたる可能性もあります。ただし、返済されないことだけで詐欺が成立するわけではなく、お金を受け取った時点で相手に返すつもりがなかったことなどを示す必要があります。
頼まれた理由が事実と異なると分かった、同じような話を他の人にもしていた、といった事情があれば、警察への相談も選択肢になります。刑事手続と、お金を返してもらう民事の請求は別の手続であり、どちらを優先するかは状況によって異なります。
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弁護士に相談するという選択
パパ活の相手に立て替えたお金は、「立て替え」として頼まれた経緯が記録に残っていれば、返還を求められる場合があります。一方で、お手当との区別、性的関係の対価と見られるおそれ、相手の特定といった点で、通常の貸し借りよりも整理が必要な事情が多いのも事実です。人に知られたくないという事情も含めて、まずは経緯を整理するところからご相談いただけます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


